容安暑さが薄れ始めてきましたが体調にはお気を付けください。自分はへばってます。
それでは、どうぞ。
それで、謝罪に対する返答はどうなのかね?」
バゼルザークの言葉にリアスは少しだけ間を置くと、力の抜けた様な返答を口にした。
「ふぅ、、解りました、謝罪を受け取りましょう」
「そのお言葉をありがたく思いますよ、お嬢さん」
リアスの受諾の言葉を聞いてバゼルザークはその顔に笑みを浮かべる。でもその目は笑っていない。何か不満でもあるのだろうか、そこは様として知れない。
「しかし、この夜分に女性が出歩くというのは歓心しませんね。むしろ寒心する行為だと私は思っている」
「そのことについては謝罪を。時渡さんに電話をしてみたら話し中だったものだから」
リアスの話を聞くと、要は急な用事なので出てくるしか無かったという事らしい。何ともはやだ。それでいてその用事と言うのが単刀直入に言ってオカ研の事だ。
「ライザーとの勝負に先駆けて唐突な話なのだけれど、山で修行する事にしたわ」
「さいですか、なら食糧とかの準備に宿泊する宿の手配、交通手段とかも考えないとな」
リアスの修行宣言に俺は思わずすべき事項を羅列してしまう。このお嬢様の事だ、大半の事は自分の家で何とかするんだろうと思いながらも必要事項を羅した訳なんだが。
「その事なら問題ないわ。食料は修行の一環で運んでいくけど、宿は私の家の別荘を使うし、交通手段なんて転移でどうにでもなるでしょ」
やっぱりだよこの野郎。
俺は予想通りの返答に呆れてしまうが、俺の背後の面々が修行を過酷なものに変えてしまうだろう。何たって俺にあんな出鱈目な特訓を強いた連中だからな。
「そういう事なら我々は誰が誰を鍛えるかを決めておけば良さそうだな。幸いにも手すきの熟練者で揃えているから問題はあるまい」
「……何となくで感づいてたけど、そういう事なのね?」
「そういう事だ、我々の組織では教えを乞う者には教えを押し付ける所が有るのでね」
何となくで拒めない雰囲気を察していたらしいリアスに対して諦めろと遠回しに脅迫するバゼルザーク先輩。
「だけどさ、まさかたったの10日で誰だかと遣り合うっててのかい? 無茶が過ぎるねぇ」
ジャベリン先輩がそう言って思わせぶりな視線をリアスに向ける。ダークネス幹部が見てもハンデというにはあんまりな話に同情を禁じえないのだろうか。
「やり様もねえだろ。結婚式までそう日にちがねえんだ、それを時間をくれるだけでもありがてぇと思わねえとな」
リバーサル先輩はそう言ってリアス達を気遣う。
だが俺は知っている。気遣いを見せる五人組が、その10日という時間が有ればただのド素人を、そこそこ戦える傭兵にまで鍛え上げる事が出来る鬼教官の集まりだって事を。力が無いなら無いなりの戦い方をすれば良い、戦略が無ければ戦略を埋め込んでみせる。技術が無いなら技術を叩きこんでしんぜようの鬼教官達を。
「少しでも多くの時間を修行に費やすなら、俺の方でメシの方をやっとくか」
「いや、食事の準備も修行の一環、集中力を養う事に使えば良い」
リバーサル先輩の気遣いをバゼルザーク先輩はやんわりと断る。バゼルザーク先輩は戦略軍略侵略と言った戦術のイロハをしっかりと学んできたエリートだし、任せても大丈夫だろ。
「んだな、それも修行か」
「だがリバーサルの腕を借りれるなら借りたい。栄養学についてはお前が頼りになる」
「……応よ」
バゼルザーク先輩の言葉にリバーサル先輩は思わせぶりな返事をして目を細める。長年の付き合いで気心が知れてるだけあってか、この程度の会話で高度な戦略のやり取りをしている、とマクレノリス先輩が言っていた。
「そうなると、アタシ等のする事は地力を押し上げてやる事かい?」
「それは基本だな。出来るなら弱点の一つでも潰せれば上等だとは思うのだが」
「……そいつぁ、欲張りってなモンさね、バゼルザークの旦那」
ジャベリン先輩はそう言って肩を竦めてみせる。困ったもんだとでもいうのだろうか。現役の傭兵といえどもこの要求は無茶と言えるからな、手に余っては仕様も無いだろう。
「そういう事でしたら、グレモリー家の別荘の一つを訓練所にお使いください。そうしていただけるとこちらとしても助かります」
「その申し出は有り難い。こちらとしては感謝させていただきますよ」
グレイフィアの申し出にバゼルザーク先輩が感謝の言葉を述べる。こちらはタヌキの化かし合いならぬ腹黒狐の化かし合いだからな、見ごたえは十分にあるよ。迫力からして桁違いだ、さすがは既婚者。