リアスが帰った後の、悪だくみをする大人の面々。でも好事魔多しと言うか何と言うか。
それでは、どうぞ。
「時渡の方はともかくとして、IDカードの方は偽造が必要なのでね、貸してもらうぞ」
「あいさ」
俺はバゼルザーク先輩の要求を呑んでリアスから渡されたばかりの
IDカードを他のヤツの分も一緒に渡す。
「うむ、確かに。もっとも、単純に保険程度の意味合いしか無いがな」
「どうせ連中のこった、検問破りぐらいは朝飯前だろ?」
「陽動部隊まで揃っているからな、検問の一つや二つ軽々と破るだろう」
あの三人の隊長に孫だけの能力が……って、南極が居れば要道は完璧だよな。クリスティーがどんな付喪神かは知らないけど乗り物系なら足の確保も完璧だろうし、相手の事を煙に巻くならトトリンで事足りるか。でも、思慮する時に窓を見るのは何でだろう? 窓に何かあるのか?
俺の脳裏にあの3人の隊長の顔を浮かべていると、支部長室のドアが開き、そこから脳裏に描いていた三人組が入ってきた。しかも明確に風呂上りと判る格好で。
「いいお湯だったわぁ~」
「ぶっ!」
一番に入ってきた南国の格好に俺は思わず鼻血を吹いた。まさかのニーソックス『だけ』だった。多分アイツが陽動部隊なのかも知れない。だって常識という検問を破ってきたから。
「あ、話終わった?」
「貴様はまたその恰好か」
さすがバゼルザーク先輩、南極の格好に目くじらを立てても動揺はしてない。凄いもんだと思ったら、いつの間にやら彼の横にマクレノリス先輩が居た。
「どうして風呂に入ってきたヤツが裸ニーソなんだよ!」
「仕方ないでしょ! 着替えに全身網タイツを持っていったらダメ出しされちゃったのよ!」
南極の返答を聞いて俺達男性陣は思いっきり吹いた。湯上りに全身網タイツだなんて、風通しが良すぎてタマランだろ! 恥ずかしくないのかよ!
……下着は見えないから恥ずかしくないモン、か? それとも興奮するのか? 両方の様な気がして気が気じゃないな。
「支部長も注意しないか! こういう規律破りが居ては面倒で適わん!」
「お前も同レベルだよ畜生!」
俺は思わず怒鳴りつけてくるクリスティーに怒鳴り返してしまう。そして俺は自分の背後にある窓の横に視線だけを向けて問いかける。
「……それで、アンタはまだ、ここに居るのか?」
「……意外ですね、気配は消していたのですが」
「なに、ここに居る6人の先輩は全員気づいてたんだ、俺が気付かないと幹部の肩書きがウソにされそうなんだよ」
窓枠の横の壁に立って静寂を纏うメイドに対して俺は自嘲気味に鼻で嗤う。
「かなり穏やかでは無さそうな話をされていた様子でしたが、宜しいのですか? 私が私が戻ってお嬢様にお話ししても?」
「その程度で潰れる計画なら考えるまでも無い。我々の部下共の能力は犯罪級なのでね、始末に負えないのだよ」
挑発的な視線を投げながら言葉を並べたてるグレイフィアにバゼルザーク先輩が苦笑を浮かべながら返答する。ダークネスの人員を出せばほぼ全員が犯罪級なのは間違いない、服役中の囚人だらけだし。ポーラさんとイッセーにアーシアぐらいだろ、犯罪歴の前科も無いのは。
「ああ、手癖の悪さも天下一品だ、手が焼けちまうぜ?」
リバーサル先輩も彼に便乗して不敵な笑みを浮かべる。カードの偽造ぐらい相手が防ぐのは目に見えるって事なのか? それでも越えるぐらいの芸当をウチの連中はやってみせると。
「その検問所がどこに在るのかも知らずに向かわれるのでしょうか? 理解できませんね」
「失礼ながらこの町にある、とある駅のエレベーター、あれは魔法で細工しているようですが、まだまだ……」
バゼルザーク先輩はなぜか駅のエレベーターを指摘する。するとメイドの視線が鋭さを増した。
「いつ、お気づきになられたのでしょうか?」
「ここの支部長と落ち合う間に、散策していてね。この辺りの1キロ四方で3か所、魔力を施した仕掛けを見つけたよ。交通の便に制限を持たせることで侵入を容易に出来ない様にする。どこの世界にもありがちな防衛手段だ」
二人の会話を聞いて俺は思わず呆れてしまう。俺を待ってる間にそんな事をしてたのかと。そしてあわよくばそこから悪さをしに行くつもりだったのかもしれないと予測さえしてしまう。