女体盛りと言う文化、難しいですね。
それではどうぞ。
「……なるほどね、親善の交流としての昼食会という形にしたという事なんだね?」
「その方が俺の方でも計画の中にあったんで用意が楽なんですよ」
俺はサーゼクスからの質問に対して安牌だと答え、その理屈を語って見せる。もともと俺が学校の屋上で女体盛りと言う18禁も知るかの所業を決行したいとネタを温めていた所に露出狂の南極が来てくれたのだから一気に妄想が加速し、挙句にに司令からの緊急依頼として突き付けられたこの世界の代表者の接待役で決行にまで及んでしまったわけだ。俺と司令で責任を持つんだ、文句は言わせない。
「しかし魔王様、彼とはどこで知り合ったのですか?」
「どこでも何も、彼とは初対面で、彼の組織とはこれで3度目の接触だよ。もっとも前の2回はテレビ電話越しと言った所だけどね」
ライザーが疑問に思った事を口にすると、サーゼクスはすんなりと返答する。司令が動いたんだよ、この件も何もかも。でも非公式だとしても口外して良い事と悪い事の区別はつけてほしかったな。
「それで組織の方から接待を任されたんで俺が動いたわけだ。南極を巻き込んで、早々出来ない事をして組織の力の片鱗を見せつけようと、な」
そう言いながら俺は2人に醤油差しを渡す。組織の力はこの程度の小規模じゃ収まらないけど、必要以上に脅かすのも問題なのだ。だからこの程度の些細な事でもサーゼクスの琴線に触れた様で彼の口元が僅かに緩んでいる。
「僕としてはこういう事は後が怖いという逸話が山ほどある事は知っているけど、こういうものとなるとそれを知っててもやってみたいという欲望に駆られるのが分かる気がするよ」
「えっ? 魔王様は妻子持ちである事を聞き及んでますが?」
「そうなのか? じゃあなおの事、後々の恐怖を乗り越えるためにも英気を養わないと」
「そういう事。この場は世の中の嫌な事なんて全部忘れて楽しんだ方が幸せなのよ、お分かり?」
俺と南極に説き伏せられ、疑問符を浮かべたライザーが口を閉ざす事しか出来なくなった。まあ、南極の言う通りに後の事は後の事、それがどれだけ怖くてもこの場ではまだ起きてないのだから楽しんだ方が良い。南国の声がどこから来たのか分かって無さそうなのが不安……。
……いや、これ自体が地獄に墜ちるまでの休息だとしても。
後が怖いと背筋を震わせつつも同じ穴の狢達はそれぞれの料理に箸をつけて舌鼓を打つ。うん、ぷりっぷりに身が引き締まっている刺身だ。
「ほぉう、なかなか美味い刺身だ!身が引き締まっていて歯ごたえが良いのがたまらんぞ!」
「ライザー、そいつは今朝港から直接、南極が仕入れてきた真鯛だよ」
「なるほど、採れたてだからの味というヤツか。贅沢だな」
「時渡君、こっちの魚は何だい?」
サーゼクスの問いかけに対して俺は目を向け、その魚を見る。赤みの魚でサクから斜めに切りましたと言わんばかりの長方形の形を見て俺は理解した。
「ああ、これはクロマグロですよ。解凍に手間取ったから今が食べごろかと思われます」
「ふむ、ありがとう。見事な料理の腕前だね、美味しい料理を有難う」
「いえいえ、例には及びませんよ、仕事のうちなので」
「なら私にも構ってよ! 私にも仕事させろ!」
サーゼクスの称賛に照れる俺に、黙っているはずの『皿』が暴言を吐く。確かに彼女は仕事で皿の役目をしているが、露出出来ない不満の解消のために用立てただけなのですっかり忘れていた。
「黙れ露出狂。皿の分際で何抜かしやがる」
南極と俺の応答に他の2人が呆気に取られている。いや、女体盛りと言う日本の食文化に疎い2人だから俺が動かないと最後まで食事会だと思い過ごすのは明白だけど。まさかマネキンを皿にしてると思ってたのか?
「露出狂って、コレをコイツは趣味でやってるというのか!」
「ウン♪」
ライザーが南極を指差しながら確認してくるが、当の本人が肯定してしまう。それも満面の笑顔で。
「彼女は何者なんだい? 君と同じ組織の者と見受けるけど」
「彼女は南極一三、どっかの路地裏の四角くて怪しい夜の自販機で売られてる様なヤツですよ」
「売春婦でもやってるのか?」
サーゼクスの問いに答える俺に向かってライザーが訝し気に目を細める。どうも微妙な齟齬を感じる台詞だ。
「ライザー、コイツは空気人形の付喪神だぞ? スケベな青少年だけが何となく気にする程度の気恥ずかしい存在だぞ?」
「コラ」