朝からカケカケ達は何をしているんでしょうかと言う所で、問題行動は咎められるべきだよね、と。
それではどうぞ。
俺の目の前でトリーに出した仕事の報酬が俺のケツになるのか気が気でない時に、食卓の場に馴染んで俺達の騒ぎに介入していなかった少女がその場で椅子から立ち上がり、その口を開いた。
「時渡さんにコロールさん、あと南極さんも、床に正座してください」
その口を開いた少女は、ダークネスの幹部達を束ねる隊長の娘、ポーラさんことポラリス・ヘルメサイヤだった。その声を聴いて俺とトリーは呆気に取られて動けなかったが、南極は何を考えたのか椅子を跳ね飛ばしてその場に立ち上がり、胸元の封印球から手榴弾を手に取ってそのまま放り投げる。驚いたことに手榴弾のレバーがピンが抜かれた勢いではじけ飛ぶ。しかも投げる動作の時にピンの穴に指を掛けて抜ける様にしていたとは。
マズい! レバーが外れた手榴弾は爆発まで4秒しか猶予が無い。俺がそう思った瞬間、南極の事態が物理的にも硬直した。
「加速度ゼロ(ベシュロイニグン・ヌォエ)」
ポーラさんが何かの単語を呟いた途端に南極の動きが停止し、放り投げた手榴弾さえもその場に停止してしまった。アッと思った次の瞬間には起きるはずの現象が……起きなかった。
「もう、こんな所で手榴弾なんてものを出さないでください」
空中に止まったままの手榴弾を一瞥してから困った様な口調でポーラさんが呟く。しかしその言葉の後でさえも手榴弾は自分の役割を放棄したかの如くそこに止まったまま微動だにしない、爆発もしない。ニュートンの物理法則さえも無視して停滞している。
加速度ゼロという、時間停止とも呼べる危険な術式をまさかの女子中学生が使いこなしているのだ。それ故に彼女は望んでもいないダークネスの幹部のまとめ役に就任させられている。あらゆる物理攻撃を文字通りに停められるから。
ただ隊長のように事象を消去するまでには至っていないのは術式の計算式が間違えているのか、それとも組み上げる術式の順序が違っているのか、行使する本人しか理解できない。
「まったく……幹部最強を相手に勝てるとでも思っていたのか、不遜にも程が有るというものを」
「隊長の仕込んだ嬢ちゃん相手に勝てるヤツなんざ、組織の上のバケモン連中だけだぜ?」
爆発の威力を受けて後ろに倒れる彼女を尻目に彼は愚痴を漏らす。そう、バゼルザーク先輩は唯一格上と認める隊長の手ほどきを受けた彼女の実力を畏怖している。また、リバーサル先輩は彼女の実力を大きく評価している。
この騒ぎを目の当たりにしたグレモリー眷属達は、気絶しているアーシアを除いて全員がその出来事に茫然としていた。顔色なんかかなり悪いし、体も気のせいか震えている様に見える。
「……何が起きたの……かしら」
「あの手榴弾が放り投げられた所から訳が分かんないんすけど」
リアスとイッセーから出た呟きを聞いてポーラさんが親切に説明を始めた。
「あの、お騒がせしてすみません。ウチの南極さんがとんでもない事をしたものですから、それを止めました」
頭を下げる彼女に、その場の面々から嫌な汗が噴き出てしまっているのかもしれない。かくいう俺も嫌な汗が噴き出て止まらない。
この騒ぎのお陰でトリーに対する俺からの依頼が台無しになり、別の機会で話をする羽目になった。またおケツのすったもんだをするんだろうかと頭を抱えてしまったが、ポーラさんからその事が出たら困るので立ち会いますからと、時間を決められてしまった。
『ダークネスの良心』はここでも仕事をしてくれるそうです。物凄く有難い事です、頭が上がりません。
そして今本当に、物理的に頭が上げられません。他の幹部達に俺達3人が首根っこを掴まれて土下座させられてます。俺達の前には腰に手を当てて口をとがらせているポーラさんがお説教の雨を降らせてきてます。
この場で剥かれなかった事には感謝してます。だけど首が痛いので力を緩めてくださいお願いします、本当に痛いんです。首の骨がミシミシ言ってます、息も苦しいんですお願いします。