今回は支店を変えてライザー視点からのお話となります。
あの胡散臭い主人公ズを傍から見るとどうなるのか、何となく試してはみました。
それではどうぞ。
ライザーSIDE
時渡の部下が、アイツを介して俺様の妹、レイヴェルに何かを渡した様だ。何でも俺様の眷属を越えて妹に危害を加えようとする連中に対する隠し玉として預けるそうだ。
俺様自慢の眷属共が護衛も出来ないとでも言うのか?
俺様がそう問い詰めると、時渡は眉尻を下げて言い訳とばかりに言葉を並べてきやがった。
「そういう事じゃない。どんな事にだって最悪の事態には備えるモンだろ」
「俺様の自慢の!」
「そうじゃない、万全に備えてもどこかで漏れが出るって事だ。その漏れを防ぐための防波堤だ、理解しろよ」
反論をしようと口を開いた俺様だったが、時渡の正論に言葉を飲み込む事しか出来なかった。無論、アイツ自身にも疑いは無いとは言えないが、この屋敷全体がフェニックス家の結界で厳重に守られている今では疑う余地は無い。侵入者が塀を上って何事も無く侵入出来た時点でフェニックス家ゆかりの者だと判明するからだ。ヤツが俺よりも強いとしても単独でこの塀を乗り越えられる道理は無い筈だ。
「もっとも、ここでの襲撃にしくじった時点で、後々襲撃できる状況は一つしか考えられないけどな」
「……まさか結婚式か!」
俺様はヤツの疑問符に思わず声を荒げたがヤツはそれに動じず、その顔に苦笑を浮かべるだけだった。そしてヤツの顔から苦笑が失せた直後、ヤツの懐から電話の呼び出し音のような機械音がこぼれてきた。それを聞いてヤツは懐から電話を取り出し、会話を始めた。
「もしもし、……そうか、そっちが成功し……って余計なモンが付いてきた? なるほど、それは現場判断で動いてたらマズいモンだな。分かった、物が有るならそいつも組み込んで動く」
時渡の電話を盗み聞きしていると、奇妙な単語がヤツの口から漏れ出て来る。何なんだ、その余計なモンとか組み込んで動くとか。
「ライザー、申し訳ないが俺達の方で急な仕事が入った。済まないが人間界の方にまで送ってくれないか?」
「あ、ああ、それぐらいは構わないが……急な仕事というのは何なんだ? 話せない事なのか?」
俺様は直感で俺達の事に関係した仕事だと判断し、ヤツから情報を絞り出そうと食いついてみた。
「ああ、話すと長くて恥ずかしい身内のドジだからな、話したくないんだ」
時渡はそう言って俺様の質問をはぐらかそうとしている。だがそれはそれで気になる話とも言えるな。興味がそそられる。
「本当に恥ずかしい話なんだよ、任務中に受け取った荷物の中に、あるはずの無い使用済みの避妊具が有って、それを出してみたら現場を通りすがりの一般人に見られちまったんだと。それで思わず身柄を攫って拠点に戻ったからどうしましょうという、困った話になってるんだそうだ」
「何なんだそれは」
時渡の説明を聞いて俺様は呆れとも苦笑とも付かない様な声音が漏れた。そういう物を持ち歩くの事自体が問題だとは思うんだが……。
「拠点に戻れば医者やら薬剤師も居るから何とかなると踏んだんだろ?」
あきれる俺にヤツはそう言って眉尻を下げる。しかもその後ろではレイヴェルを解放していたあの女が申し訳なさそうに縮こまりながら一枚の紙きれを手にぶら下げていた。『精神科薬物療法認定薬剤師』とかなんか書かれているみたいだが。
「まぁ、組織の方は人材には困ってないからな。表立って知られてはいないけど打点詞、じゃ無くて堕天使か、そういうのも居るって話だし」
俺はその『堕天使』という単語を聞いて思わず問い詰めた。
「おい、貴様! まさかこっちの世界の堕天使の事を言ってるんじゃないだろうな!」
「こっちの世界に来る前から居るんだよ。俺達の世界にも堕落した天使が」
時渡の返答を聞いて俺様としては納得するしか無い様な気がする。一癖も二癖も有るような連中が群雄闊歩している様な所ならば、無下に一蹴する話でも無いだろう。
「ただ単に表に出てこないだけで、居ないって訳じゃ無いんだとさ」
「ほぉう……それは気になる話だな」
「向こうにも向こうの都合ってモンが有るんだとさ、ウチの司令がそういう事を言ってたな」
時渡の返事に俺様は目を向けたが、当たり障りのない返事を出されちまった。こうなると取り付く島もない話になるから、忌々しいが引くしかない。
まったく、忌々しいものだな。