話はカケカケの思惑とは裏腹に、お来られる展開は終わったように見える。でも落とし穴は既に開かれていた。
それではどうぞ。
「それで会議ってのは何すか? 先輩」
コソコソと立ち上がっていそいそと服を着ながら俺は先輩達に会議の内容を問いかけた。俺の立案した計画がおかしな方向に向かっているとは言っていたけど、帳簿を盗んだぐらいじゃ作戦が大きく変わる事態にはならないはずだし。誘拐未遂事件と関係が有るという事なのか。
「無論、イッセー達の事だ。木場はまだ使える所までは育つようだが、実戦配備するにはもっと磨かねばならん。それにイッセーか、ヤツの方はあの性格を利用して力押しするしか作戦は有るまい。塔城の方は瞬発力と小回りの利く特性でかく乱に徹する事が出来ればとは思うが」
バゼルザーク先輩は主力を担う前線部隊をこの三人と決めつけて説明していく。しかしいかんせん訓練期間の短さと経験不足は否めずに主力としての突破力に欠ける。
「そうね。グレモリーについては論外、姫島についても自分の力を生かす事を嫌っているなら話は無し、そしてアーシアちゃんは治癒に特化しすぎていて戦力外なのはポーラちゃんの言う通りね」
マクレノリス先輩も彼と同様に問題点を明かしながら攻め手に欠いている事を安易に漏らす。女性陣が主力込みで考えにくくなっているのは前衛以上に危険だ。自分の身も守れない王様には監禁でも何でもして防衛力を上げなければならないのが戦場の常だ。
そしてリバーサル先輩が片目を細めながら、職業病とも言えるほどの気配察知能力を持ち出して話を引き続けてきた。
「出来るモンなら、あの建物の奥に隠れて出てこねぇガキにも出てきてもらわねえと勝ち筋が全然見えやしねえ」
「そこで我々の仕組んでいる『婚約自体の無効化』なのだが、どうも雲行きが怪しくなっていてな」
リバーサル先輩が肩を竦めているとバゼルザーク先輩の口から不穏な空気が漏れ出てきた。俺の作戦にはおかしな変更点は無かったと思う。それに俺の考えられる限りで作戦変更するしかない事態は想定して無いけど。
俺、何かやっちゃいました?
「別に時渡が悪いとは言わんが、騒ぎが今以上に大きくなる可能性がある」
「するってぇと、もしかしてのもしやってやつか?」
「まさかのまさかなんじゃ無いのかしら」
ジャベリン先輩とマクレノリス先輩が何を察したのか興味本位な微笑を浮かべながらもを乗り出してくる。俺の計画だと確か2重帳簿による脱税とか隠し資産とかの話を暴くはずなんだけど。
俺が話について行けずに困惑していると、なぜかザクトベリガ先輩が無言で俺の肩に手を乗せてきた。そしてその反対側の肩を、今度はジャベリン先輩が手を乗せてくる。
「やるじゃねえか、時渡よぉ。幹部になっての初成果がこんなデッケェ看板になるなんざ、支部長クラスでも早々無いぜ?」
「確かにこれ程までの手土産ならセヴェス様も貴様の事を見直すかもな。我々に次ぐほどの成果とも言えるからな」
「か、勝手な事言って……」
「おうよ、、そうと決まっちゃいねえ事を言ってもしょうがねえだろ」
場がノリノリになってきた所を止めようとする俺に、いなせな声で先輩達を諫める先輩が居た。おおっ!? 助け舟カモンッ!?
「どうせならやっこさんの作戦開始まで泳がせちまってなぁ、逃げられねえ程の証拠を固めてから、鼻っ柱をへし折りに行く方が手柄になんだろうが」
……ダークネスぅ……やはりこの方もダークネスだったよぉ……。
俺は助け舟と思っていたリバーサル先輩の一言で、助け舟が津波と一緒になって俺の期待を押し流して砕いた。ダークネスだとポーラさんが居なければ手柄は自分でむしり取るか奪い取るが当然だからな、その様をありありと見せつけられた。
「あの嬢ちゃん連中には勝ち目なんざねえんだ、後々の動きを考えろよ?」
「そうね、少なくてもあのお嬢ちゃんの婚約者かしら? それともお嬢ちゃんのお兄さんかしらね? 渡りをつけて貴方だけでも結婚式に行けるように手配しなさい。どちらの作戦に転んでも結婚式に会場に行く必要はあるわよ?」
マクレノリス先輩からの有り難い助言に俺は本当に泣きそうだった、悪い意味で。畳みかけて来るんじゃねえ、と。
「まさか、俺に貴族潰しってのをやれと?」
「「「「「今頃か!?」」」」」
……合唱までされてしまった。
余談だが、この後に戦線離脱をリアスに説明して納得させるのにも手間を取ったが何とか納得してもらい、無事に拠点へと戻る事が出来た。トリーの姿が見えなかったような気がするが、グレモリー側で何とかするだろうし異世界支部側でも動きは有るはずだ。