お詫びもかねて連投です。
それではどうぞ。
紙の束をテーブルに出したバゼルザーク先輩が俺を睨みながら問いかけてきた。声音に何かを含ませながら。
「で、時渡、これが何なのか分かるか?」
「まごうことなく紙の束です」
バゼルザーク先輩の問いに迷わず即答したら、胸倉を片手で掴まれて物理的に迷わずあの世に行きかけた。
「貴様というヤツは!」
「冥界の現場が未調査なのを棚に上げてんじゃねえよ!」
バゼルザーク先輩の罵声に反論したら今度はロープで逆エビ反りに吊るされた。うおぅ! 締まるぅ!
「本部までもが取っ掛かりを得て情報収集を始めていたというのに、貴様というヤツは何をしていた!」
先輩はモロに牙をむいて俺を叱責する。その激怒振りにはなぜか怨念がこもってたのか、俺の前髪が少しばかりチリッと焦げた。憤怒型の怨念は炎の形を執るのかよ。
「幹部になって日が浅いとはいえ、貴様とてダークネスの幹部だろうが! 己の名に泥を塗る様な拙速では!」
「落ち着けや、バゼルザーク」
怒りに任せて怒鳴る彼に、横からリバーサル先輩がその肩を叩く。
「時渡のヤツだってやるこたぁやってるんだ、むしろ異世界支部の立ち上げとあの嬢ちゃん達の仕事、その上に情報収集だなんざ、手に余るってなもんだ。違うか?」
「いやしかしだな……」
「しかしってのもねえだろ。むしろよくやってんじゃねえか。あんな問題連中を3つも抱え込んで2つの仕事を同時進行、そこに別件をぶち込んだら手に余っちまっても仕方ねえもんだ」
「そういう時こそ、部下への役割分担が……」
「その役割分担の出来ねえ部分を時渡が引き受けてるんだ。そんくれぇはテメェだって分かんだろ、元大臣様よぉ?」
言いくるめられ始めたのか、激怒成分に陰りの見えるバゼルザーク先輩に、ここから一気に行くぜとばかりにリバーサル先輩がまくしたてる。二人ともこの手の口論は得意の筈なんだけど、場数の違いというか、踏んできた修羅場の質の違いが出来てた感じだする。
頼りになります、先輩! キッチリカッチリやっちまってください! しばらく俺の事を怒れなくなるまで!
「そのくらいは分かっている、その部隊人事も含めて異世界支部に関するものは司令と隊長の2人が企てて我々が手配したのだからな」
「あんですとっ!?」
思いがけない暴露話に俺の眼が飛び出た。でもよくよく考えれば思い当たる節は無いとは言えなかった。あの2人の性格だ、このくらいはしても不思議は無い。止めるストッパー役が居なければ。
「それはとにかく、この書類の束はフェニックス家簒奪に関する書類だ。賛同するだろう親類貴族や背後関係を含めた他家からの支援、果てには決行日まで記されている。これをこのまま魔王とやらに持ち込んでいけば任意聴取までは行くだろう」
書類の束を受け取り、それを1枚1枚めくっては見るけど、俺に目には象形文字だかなんかが記されている様にしか見えなくて何1つ読めません。家紋かなんかのような丸い象形文字の集まりが多分、どこだかの家の魔法陣を表してるんだろう程度には分かるような気がするだけで。
「読めないものを読もうとして、壮絶なくらい落ち込んだ」
そんな俺の前に、バゼルザーク先輩がレポート用紙の束を差し出してきた。有るならさっさと出してくれよ。
「まさかと思って翻訳文を書き留めておいたが、本当に必要となるとは思わなかったぞ」
『まぁ、そっちの都合は都合だが、こっちにも話の一つぐらいは振って欲しかった気持ちはあるな』
いつの間にか通信が終わってたような雰囲気の中で、未だに通信が続いていたことに俺は二の句が告げられなかった。
『とにかく、状況としては結婚式をかき乱す作戦に移行する段取りになった、という事で良いんだな? 時渡』
「えっ? あ、はい、そうなります」
不意に話を振られて思わず脊髄反射みたいな答え方をしてしまった。そして馬鹿が図に乗った。
「そして花嫁さんを滅茶苦茶にするのね! エロ同人誌みたいに!」
「それをやったらマズいだろーがッ!」