それではどうぞ。
電話を掛けて着たライザーから聞き出せた情報ではフェニックス家の末席に位置する者が妙な金遣いを始めている、それも長期的な運用を視野に入れた物品購入や、妙にガラの悪い連中と裏で密会を重ねているという話だった。話の内容についてはこれからその家に押しかけて問い詰める算段を立てている最中だとか。
結論、今これから突入して証拠が有るうちに制圧しなければ、舌先三寸で逃げられるのは明白だ。もしかしたら俺達が盗み取った資料のお陰で連中が逃げおおせる可能性まであるけど。だって現物は今、俺の手元にあるし、その家に置かれている証拠は複製品だから、貶める罠を家に投げ込まれたとシラを切られる可能性しか無い。本物がこっちの手に有る以上は逃げられてはいけない。
「ここは俺が入れ知恵をして彼に手柄をくれてやる必要が有るか。でもなぁ、ライザーが手柄を立てるってのがなぁ~」
俺は思わず本音が口から漏れ出た。あんな刻野郎に活躍の場をくれてやるのは正直言って気に食わねえ。イッセーはライザーの事を『焼き鳥』とか言ってたけど、俺のカシコイ脳みそならこう言う、ニワトリ程度の頭なんだから『コゲコッコ』と。
『……なにやら酷い話を聞かされた気分なんだがな、時渡』
「おう、本音が出た。気にするな」
『まったく、貴様という男は。俺様じゃ無ければ貴族侮辱罪で捕まってるぞ』
「まったくだ。ウチの組織の力を使えば逮捕されても不起訴からの無罪放免や、脱獄なんかまでホイホイ用意してみせるってのに」
『……この野郎……』
俺はライザーに悪ぶれる事無くのらりくらりと本音を語ると彼の口から悔しそうな声が電話越しに漏れ出た。ウチの組織を舐めるなよ? 冗談抜きで脱獄犯まで所属しているんだ、命の保証も出来ない強制労働という形で。
「だからな、今その連中を捕まえたところで旨味なんで知れてるだろ? もっと効果的に使えよ。今の内に捕縛部隊を下げて警戒任務に回せばお前の結婚式で警備班の増援に使えるだろ?守るべき対象が多いなら警備班の数は必然的に増やしたいだろうし、狙ってる連中だって本番までの人員は必要数確保したいはずだ。それを踏まえた上で襲撃対象と位置が割ればまっすぐ狙ってきてくれるんだ、防衛線はフェニックス家の力としては再生能力と土地勘があるから不利になる要素は薄い。当主の方もそれなりには迎撃態勢を整えるんだろ?」
『まさか貴様、結婚式を誘いの罠に使えというのか!』
「向こうから来てくれるんだ、お誂え向きだろ。それにフェニックス家の三男坊の晴れ舞台に大きな華がやって来てくれるんだぜ? 使わねえ手はねえな。しかもグレモリーとのレイティングゲーム、お前の必勝ときてるんだ、結婚式の日取りが無駄になる要素もねえな」
俺は彼がひるんだ気配を察して俺の作戦に乗せるための誘引をまくしたてる。俺の予想では結婚式でライザー自身が何らかの手痛い負傷をするとは見越してる。あのリアスを色々な意味で慕ってるイッセーだ、結婚式に招待しなくても殴り込みを仕掛けてくるぐらいは解るし、魔王様の事だから可愛い妹をライザーに渡すとはどうにも考えにくい。もっと言っていいならグレイフィアが黙ってライザーにリアスの身柄をのし付けて渡すほど愚かには思えない。
解決してない問題としてレイヴェルの誘拐未遂事件が有る。その解決としてライザーの結婚式を囮にして主犯格のおびき寄せに使ってもバチは当たるまい。結婚当事者の親族として彼女も出席する羽目になってるから、彼女を狙ってるヤツなら招待されて無くても来るのは間違いない所だ。
「一番の問題は警察への根回し何だけどな、魔王様が権限発動しかねないんだよな、この情報が有ると」
『待て、今からそっちに行っても良いか? 電話で話が出来る範囲を超えすぎて困惑しているんだ』
「そいつは御愁傷様だ。座標の特定が出来るなら構わねえ」
俺はライザーが異世界支部に来訪する旨を了承し、話の詳細を詰める段取りを組む事にした。そうしなければフェニックス家簒奪計画を阻止する作戦がまとまりそうにないと感づいたからだ。
『そうだな、フェニックス家の当事者にも一枚噛んで貰わんと納められん規模になった様だしな』
副司令も通信越しに聞いていたのか俺の了承に理解を示す。本部で計画書の翻訳と解析をしただろうからこその判断だとは思う。でも司令を放置して半紙を進めて大丈夫なのか? 貴族の分家とはいえ1家族を破滅させるような話を企んで。
『本来なら魔王の部下を使って摘発すべき話だが、フェニックス家の婚姻を袖にされる以上は手土産が無ければ恥を?くというもの。お誂え向きに手土産が湧いて出たんだ、そいつを使って本家の息子さんの権威失墜を防ぐ方が賢明だろうさ』
「俺には恥の上塗りにしか思えねえ話なんだけどな」
『本家の椅子取りゲームなんてものは水面下でまま有る話だ、未然に防いだ功績ってのは本家を守る分には悪く無いと思うぞ?』
副司令の思惑に対して口を出す俺だが、その口を彼に悪くない正論で反撃されてしまう。