ハイスクールD×D 2人の竜戦騎   作:バグパイプ

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どうも、バグパイプです。

いよいよレイナーレ編も終わりが見えてきただけにギャグが増える増える。

そして隊長が一目置かれている理由も出ます。隊長はこれで組織のトップ陣を揺るがしてます。

それではどうぞ。


第69話 哀れなカラスの末路と大仕事

「そういえば、先程の礼がまだであったな小僧、ワシの名はセヴェス・ヘルメサイヤという。貴様の名を聞かせてはくれぬか?」

 

 隊長がイッセーに対して礼儀を尽くそうと名乗り、名を問いかける。彼はそれを聞いていつものノリで名を明かした。雰囲気を変えるにはお約束に近いものだがその効果はてきめんだった。

 

 レイナーレ? あっちで羽が数本舞っているのは見たけれどあとは知らん。

 

「ふむ、イッセーか。良い名だ。先程の気概の礼の前にこれを受け取るが良い」

 

 隊長はその貌に好々爺とした笑みを浮かべ懐の内ポケットから金色のバッジを取り出して彼に差し出す。そのバッジを見て俺は我が目を疑った。

 

「なっ! ダークネスの幹部バッジ!?」

 

 ダークネスの幹部にしか許されない特別なバッジでシリアルナンバーによって序列さえ決められているあのバッジが、なぜかイッセーの手に渡された。

 

「えっ、これを俺に?」

 

「なかなかの意地であった。そしてこれは無様な部下のしでかして事への詫びとして受け取って欲しい」

 

 手の中にあるバッジの価値が分からずに戸惑うイッセーに、今度はふがいない部下に代わっての詫びを口にする。

 

 そのふがいない部下って俺だよな絶対に。

 

 そう結論付ける俺の目の前でなぜか隊長が横たわったままのアーシアの所へと歩み寄る。

 

「この娘もこのような死に様では浮かばれぬというもの。無為な死に様に添えられる華などあるまい」

 

 隊長はそう言葉を漏らしながらアーシアの傍に立ち、正拳突きをするような構えを取り出した。

 

 だがそこに待ったの手がかかった。グレモリー陣営の主、リアスだ。

 

「待ってちょうだい! アーシアを復活させられるかもしれない手があるわ!」

 

「貴様の言う、かも知れぬ手立てに用など無い!」

 

 隊長はその待ったを一喝で退ける。……て、あれ? それじゃどうやって?

 

「た、隊長! それってまさか!」

 

 俺の横から不意にポーラさんが声を上げる。しかし彼はその声に耳を貸さず、静かに腰を落とし、構える。その構えは間違いなく拳の一撃を打ち込む構えだ。

 

「ヴァーアンスタァントン・ヌォエ!」

 

 隊長が構えた拳を咆哮と共に鋭く打ち出し、大気を震わせた。あの言葉はドイツ語で事象ゼロ、事象破壊を意味してたはずだ。という事はまさか……。

 

 老体の打ち出す拳とは思えない鋭さを秘めたその一撃は、周囲の光景をガラス細工のように別の物を写した世界に代わり、その光景を一気に破砕してしまった。

 

 その破片が粉雪のように降り、溶けるように消えていく。その先に見えるものは、目を白黒させながらも理解が利かずに呆けているアーシアの姿だった。しかもボロボロになっていた筈の下着どころかあの修道衣の姿で。

 

「……ぬぅ、久方ぶりゆえに加減を違えたか」

 

 加減って何だよ、隊長!

 

 隊長が自分の拳を見つめながらポツリとこぼした言葉に思わず内心で突っ込んでしまう。加減の違いでいろんなモンを無かった事にするなよ。せめて俺の失態を巻き込んで無かった事にしてくれ。




(小説のメモ帳)

事象ゼロ(ヴァーアンスタァントン・ヌォエ)

 ゼロの術式という、魔力や神気、体力などに依存しない特殊な呪術で、術式の掌握を必須とするがその術式自体が複雑怪奇であり難解を極める。

 だがその術式の深層さえも理解したものは、神の領域に至り、森羅万象はもとより時空さえも意のままに歪めるという。

 その術式の一つがこの「事象ゼロ」であり、過去に起きてしまった事象を無かった事にしてしまう迷惑にも程がある術式である。

 この術式のせいで副司令が司法庁勤務時代に死者の魂を運ぶ仕事に失敗し、始末書を書かされてしまったのはここだけの話。

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