魔法科高校の編輯人   作:霓霞霖

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第百十八話 若手会議3・孤立と求心

「重ねて言いますが、第1回となる今回は交流に重きを置いています。ですから、議題は反魔法師運動対策としながらも、それに関する自由な意見発表の場にしたいと思います。あくまで意見発表の場なので、実現性はあまり考えなくて構いません。言い方は悪いですが、荒唐無稽な意見でも、俺としては歓迎です。そういう意見も、皆の知恵でブラッシュアップしてみれば、良い対策案になるかもしれませんから」

 

 俺の掲げた理想に皆が瞠目している内に、俺は議題を定め、意見のハードルを下げ、会議の流れに指向性を与えておいた。

 一同は趣旨を理解し、議題を理解し、自身の意見を整えるために黙考する。

 そんな中、先んじて動いたのが智一である。

 

「意見を良いですか?……私は、反魔法師運動対策には、より非魔法師の方々から理解を得る事が必要だと思います」

 

「『理解を得る』、ですか……。我々魔法師は理解を得るために社会貢献してきたと思うのですが。これ以上の理解を求めるとなると、あざとい人気取りをするしかないのでは?」

 

「あざとい人気取りと言うと、テレビに出演して歌って踊る感じですかね?生憎、私はどちらも不得意ですが」

 

 智一の発した、反魔法師運動対策はより理解を得る事という意見。それに対し、三矢元治(もとはる)と記されたネームプレートを下げている男が、これ以上の理解を得るには、あくどい、あるいは小賢しいという意味で『あざとい』と評される方法をしかないと、苦言を呈する。

 その苦言に使われた『あざとい』を、わざとなのか、六塚は可愛らしさアピールという意味で読み取って、芸能活動、と言うかアイドル活動へと結び付けた。

 荒唐無稽な意見でも構わないとした俺の意図を、彼女は正確に理解しているようだ。

 

「六塚さんのテレビ出演は、絶対に世間の注目が集まると思いますが……。私は、魔法師の社会貢献を分かりやすく示すべきだと考えています」

 

 六塚の意見を否定はしないが、自分の言いたい事から逸れていたのか、苦笑いを浮かべていた智一。そんな彼は少し無理矢理だが、自身の言いたい事へと繋げていった。

 

「『分かりやすく示す』……、なるほど。では、魔法協会に広報部門でも設けてもらいますか」

 

「『分かりやすく示す』という事でしたら、貢献しているシーンを動画で配信するのは如何でしょうか?」

 

「動画配信なら、地上波は難しくても、衛星チャンネルやケーブルなら可能かもしれませんね。マスコミよりは、魔法師に協力的なメディアを見つけやすいと思います」

 

「メディアへの露出となりますと、見栄えも重要ではないでしょうか?出演者の容姿は優れているに越した事はないでしょう」

 

「実力も重要では?貢献しているシーンとなると、凶悪事件の調査や災害への対処をしているシーンになるでしょうから」

 

 智一の意見を支持する方向で、複数人から様々な意見が出てきた。どの意見も少し軽薄であるが、会議の趣旨には合っているので問題ない。

 

「容姿と実力を兼ね備えた魔法師……。あっ、それなら、七草真由美さんが適任ではありませんか?」

 

 20代前半だろう女性(ネームプレートが光を反射していて名前は読み取れなった)。彼女の意見も会議の趣旨には合っていた。ただ、克人と将輝、そして達也が不穏な流れを感じ取り、眉根をわずかに歪めている。

 

「真由美ですか……。そう評していただけるのは嬉しいですが、あれは少し性格に難がありまして……。もっと適した人が居るのではないでしょうか?」

 

 真由美を話題に上げられた智一。その話題に対して謙遜しているような彼の応答に、俺は演技臭さを嗅ぎ取る。

 まるで、他人から別の話題を引き出そうとしているような。

 

「真由美嬢以上に適した人、ですか……?そんな人が果たして……」

 

 そうして、皆はその名を引き出される。

 

「四葉家の次期殿、ですね」

 

「ああ、彼女なら最上でしょう」

 

「ええ。彼女は我々の象徴とするに相応しいご麗人かと」

 

 皆が四葉家の次期当主、深雪を広報役の看板に押し上げた。冗談交じりに美辞麗句も飛び出しているが、本気交じりである事も窺える。

 皆が、本気で深雪を看板にしようとしている。

 もちろん、達也はそれを良しとしない。

 

「十六夜」

 

 その達也の声は、大声を出した訳でもないのにはっきりと俺の耳に届いた。そして、会議の参加者全員にも。

 会議は一気に静まり返る。

 

「どうした、達也」

 

「この会議は、交流を深める場、ただ意見発表をする場と、お前は言ったな」

 

「ああ、確かに言った。言い間違いではないし、言葉を違えるつもりもない」

 

「ならば、この会議で何か合意に至ったとしても、それに強制力は発生しない、という事だな」

 

「そうだ。この会議には何の強制力もない」

 

「四葉殿、それは……」

 

 今まで出来上がっていた和が崩れる。俺と達也のやり取りでそう予想したのだろう五輪洋史は、躊躇いながら諫めようとしてきた。

 でも、俺はそれで止まる気はない。

 

「この会議で何かを強制する事には断固反対です。社会のためだから、全体のためだからと、個人を生贄にする事は間違っています。倫理観でそう言っているのではありません。俺は、自己保身でそう言っています」

 

「じ、自己保身、ですか……?」

 

 五輪洋史は、そして周りも、強制力の有無と他人を守る行為、同時に、この他人を守る行為と自己保身、そのそれぞれの関連性を見出せていなかった。

 だが、強制力の撤廃は、自己保身と確かな繋がりがあるのだ。

 

「……もし深雪に、四葉家次期当主に無理矢理広報役の看板を強制したならば。次に何かを強制された人は、絶対に断れなくなります。四葉家の次期当主すら全体のためを思って嫌な仕事をやってくれているのに、十師族の次期当主でもない君は断る気か?と」

 

 そう。深雪を、自身より社会的地位が高い人間を生贄にしたら、それより地位が低い人間は、生贄にされる事を断れなくなる。

 1人生贄に捧げたら、巡り巡って自身もいつか生贄に捧げられるかもしれないのだ。

 

「そう、ですね……。ええ、そうでした……」

 

 意外にもこのかなり悲観的な考え方に、五輪洋史は目から鱗を落としてから、深く頷いていた。

 いや、よくよく考えれば、意外でもないのか。

 

「私は姉を、戦略級魔法が使えるというだけで、国家公認戦略級魔法師という仕事を押し付けてしまった……。虚弱を押して国家に尽くす事を強制してしまった……」

 

 そう。戦略級魔法『深淵(アビス)』の会得者にして国家公認戦略級魔法師である五輪澪を姉に持つのが、他ならぬ彼、五輪洋史なのだ。

 彼は、嫌な仕事を強制した、魔法師を1人生贄に捧げた人間なのだ。ただ、その両手を強く握りしめる様子からは、大きな後悔が窺える。

 ある意味で彼も、嫌な仕事を強制された人間なのかもしれない。姉に嫌な仕事を強制するという、嫌な仕事を。

 

「申し訳ない、十六夜殿。誰かに何かを強制するような意見は、私が言って良いモノではなかった。むしろ、誰にも強制しないという意見は、私から出すべきだった。私は十六夜殿のその意見に、この会議に強制力を持たせない事に賛同します」

 

 五輪洋史は俺のその意見にはっきりと、確かな意気を込めて賛同した。その態度は、まるで二度と過ちを犯さないと、誓っているようである。

 

「ちょ、ちょっと待ってください。話が大きくなっていませんか?ただ広報部の看板役を務めてもらうだけですよ?それを『生贄』と言うのは、あまりに大げさではありませんか?嫌な仕事の強制うんぬんも、広報部の看板がそういう仕事だとは思えませんし。そもそも、強制するんじゃなくて、説得すれば良いだけの話では……」

 

「そうですね。『生贄』だとか、『嫌な仕事』だとかは、大げさな表現でしょう」

 

 20代後半の男性が誇張された表現を正そうとしてくる。俺は一旦、誇張表現だった事は肯定した。

 この手の話し合いではまず、相手の言葉を一部でも肯定しておいた方が良いと、俺は考えている。初手から否定で入ると、相手が意固地になってこっちの言葉を聞かなくなるかもしれないからだ。

 まぁ、この部分肯定を全体肯定と解釈し、揚げ足を取ってくる輩も居るが。この会議に集った者たちがそんな悪辣な者たちではないと信じたい。

 

「ですが、その大げさな表現はわざとです。今は生贄と言う程でもないでしょうが、いずれはその表現が正しいところまで膨れ上がると、俺は考えています。お前より地位も力もある奴があれだけ頑張ってるんだから、お前はあれ以上に頑張らねばならない、とね。そうやって背負わせる仕事を膨れ上がらせていけば、行き着く先は生贄と同等になるでしょう。サイオンを生成するくらいしかできないお前は、せめてその力だけでも有効利用するため、サイオンを生み出すだけの機械にならなければならない、とか」

 

「き、機械になれだなんて、そんな人権を無視したような事を強いられるはずが……」

 

「最悪の想定、ではあります。でも、あり得ないと、確信できますか?今でも魔法師の人権は軽視されているのに?……2月に魔法大学付属第二高校の生徒が巻き込まれた、反魔法主義者による暴行事件をご存知でしょうか。暴行犯が薬物による心神喪失状態だったと診断されたため、不起訴になったという事も含めて」

 

 魔法師だからと言って人権が無視されるはずがない。そんな希望的観測に縋る男性に対し、俺はそれを最悪の想定としつつも、そうなり得る証拠を提示した。

 被害者は後遺症もなく完治しているが、これ程の凶悪事件となれば通常、心神喪失による免責は適応されない。間違っても、無罪になる事はない。

 なのに、件の暴行事件は不起訴、事実上の無罪判決である。

 

「被害者が魔法師だった。たったそれだけの理由で、犯罪者は無罪放免となりました。これは、魔法師の人権が軽視されている証拠ではないでしょうか」

 

「そ、それは……」

 

 俺の論に、男性は何も反論できなかった。最悪の想定とした事が被害妄想ではないと、彼は理解したのだろう。

 

「皆さん、どうかお聞きください。地位の有無は関係ありません。1人の魔法師に何かを強制した時点で、次に強制されるのは我々になります。下が頑張ってるんだから上はもっと頑張れ、という話になるだけです」

 

 結局、誰を犠牲にしても全体が巻き込まれる。雪だるま、いや、ドミノ倒しに近いかもしれない。1つ牌を倒せば、連鎖して全ての牌が倒されるのだ。上手く繋がっていなければ、いや、上手く繋がりを断てていれば、途中で連鎖を止められるかもしれないが。

 

「強制するんじゃなくて、説得すれば良い、という事について。俺はこれにも反対させてもらいます。まずもって、何をして強制と説得の区別を付けるのか、俺には分からない」

 

 強制と説得。その意味の違いは当然分かっている。だが、実情では違いがないだろう。

 

「例えばの話です。俺、克人さん、智一さんが、3人揃って1人を説得に行きます。そうして何度も言うんです。皆がそう望んでいる。どうか頼めないか、と」

 

 四葉直系、十文字家現当主、七草直系。この3人が、全体の合意があると、名目上の説得をする。

 ここに集う者たちの中でも魔法師界に影響力がある3人が、名家多数の代表として、相手へ同意するように迫るのだ。これで、己が意志を貫いて反対し続けられる者が、果たして何人居るか。果たしてこれが、強制する事と何が違うのか。

 六塚温子なら、上記3名より影響力があるため、ある程度同意を渋る事はできるだろう。でも、頼んでいる事が全体の利益に繋がる事ならば、十師族当主だとしても、いつまでも渋ってはいられない。他家に非難する材料を与えるようなものだ。そういう、家の面子という部分も考慮に入れると、十師族当主の方が断れないかもしれない。

 

「だから今回、誰かに何かを強制する事、説得する事は避けたいと思います。できるならば、後々の会議でも」

 

 『若手会議』において、一切の強制力を排除しなければならない。俺は、参加者全員にそう強く訴えかけた。

 皆が静まり返っているのは変わらない。だが、その意味合いは変わっている。

 皆が、俺の述べた懸念について、熟考しているのだ。

 克人と智一、それに五輪洋史も温子も、発言を控えている。五輪洋史はすでに同意しているからだろう。そして、他3人は、皆の熟考に影響を与えないため、なのだろう。

 ここに集まっているのは二十八家の人間とはいえ、若手だ。大勢を重んじて、権力者の意見に迎合してしまいかねない。

 

 そうして、時間にして1分、体感ではもっと長い時間が流れる。皆は熟考の上、それぞれの意見を決めた面もちをしていた。

 

「どのような意見であれ、俺は尊重するつもりです。だから、その意見を胸に、自分なりに立ちまわっていただきたい」

 

 俺はあえて、それぞれの意見を発表させない。少数派と多数派を生んで対立するような事を避けるためだ。

 この場はあくまで、交流を深める場、ただ意見発表する場なのである。意見を戦わせる場所でも、互いに非難し合う場でもない。

 

「さて、話が大分逸れてしまいましたね。元に戻しましょう。えーと、確か四葉家次期当主を広報部の看板役にするという話で、達也は何か意見があったんだったか」

 

 俺は話を元に戻すと言うか、次の議題を明確にし、合わせて達也に意見発表を促した。

 

「……司波達也です。……積極的に社会貢献し、その光景を広く配信する事によって理解を得る。大変結構な事だと思います」

 

 この状況故に集まってしまった注目が嫌なのか、達也は俺を一睨みしてから意見を述べていく。

 

「ですが、窺っていた限りですと、凶悪事件の調査や災害への対処に狙いを定めていた様子。それらは警察や国防軍、消防の仕事です。横からしゃしゃり出て彼らの仕事を、ひいては功績を奪うのは不躾だと思いますが?」

 

 そうして、達也は深雪を槍玉にあげられて気が立っていたのか、そんな辛辣な意見を歯に衣着せずに言い切った。

 その辛辣さに、周りは眉間に皴を作っている。すぐに怒号を飛ばさないだけ良識があるというものだ。

 しかし、達也がヘイトを買ったのは確かだ。そのヘイトが達也を孤立させかねないので、俺は空気を和らげに掛かる。

 

「……達也」

 

「……なんだ」

 

「言い過ぎだ」

 

「お前が言えと、言ったようなものだろう」

 

「誰も周りを威嚇しろとは言ってない。反対意見を言うにしたって、もう少し言葉選びを、だな?……皆様、(ウチ)の兄が申し訳ありません。なにぶん、嫁の事になると頭に血が上りやすくて。いやほんと、嫁を妹と勘違いしてた頃から溺愛してて。実はただの親戚で、しかも婚約者になれた事で舞い上がっていると言うか、神経質になっていると言うか……」

 

「十六夜」

 

「達也、頼むから少し静かにしていてくれ。お前が深雪の事をとても大切に思っている事は、これで充分以上に伝わったから」

 

「……」

 

 俺は周りに達也と兄弟コントを披露した。周りに謝りを入れ、ついでに達也の元シスコン兼現ゾッコンであると虚偽を周りに流布したため、達也は物申したげだったが、俺は有無を言わせず黙らせる。

 周りが苦笑したり笑いを堪えていたりで空気が和んでいる。これが俺の狙いだったと察してか、達也は大人しく黙ってくれた。すごく不機嫌そうに唸っていたが。

 

「皆様、再度謝罪申し上げます。兄が大変申し訳ありませんでした。……ですが、正直、兄の意見には同調できる部分もあります」

 

 もう1度謝ってから、謝る原因となった意見に同調する俺。周りは意外感を顔に出していた。これで、注目は俺に集まる。もう誰も達也を見てはいない。

 

「仕事や功績を奪ううんぬんではなくて、ですね。単純に、素人が邪魔をすべきではないと思うのです。国防軍は当然、警察も消防も、しっかりと訓練を受けたプロフェッショナル。そこに、実力はあるとはいえ、その手の仕事について不勉強な人間を混ぜるのは、被害を拡大する恐れがあります」

 

 単純な話、実力者を送り込んだって素人には変わりなく、現場からしたら邪魔でしかないのだ。

 それを言われて気付いたのだろう周りは、自分の稚拙さにも気付いてちょっと苦い顔をしている。

 

「しかし、積極的に広報活動をするというのは良い案だと思います。だから、少し方向を変えましょう」

 

「方向を変える、と言いますと?」

 

 積極的に社会貢献をアピールするという意見を最初に出した智一。彼は自身のその意見が捻じ曲げられる事を気にしてか、俺の発言を追及してきた。

 

「『あざとい人気取り』をするんです」

 

「……まさか、アイドル活動を真面目に行うと?」

 

「そのまさかですよ」

 

 智一は温子が冗談で言っていた事、あざとい人気取りがアイドル活動である事に、俺の発言をすぐ繋げられていた。だが、俺がアイドル活動という案を真面目に押すとは考えてなかったのだろう。彼は呆気にとられた顔をしている、俺が真面目であると聞いてなおさらに。

 

「また少し話が逸れてしまうのですが。俺は、魔法師として生きる道が血生臭いモノしかなく、それ以外の道がないのかと、思案し続けてきました。国防軍は言わずもがな、研究者だってCADや魔法という兵器を生み出す、血生臭い事が仕事となります。警察や消防はそうじゃないかとも思いましたが、かのテロで警察に死傷者が出た事を考えますと、比較的そうではない、というだけです」

 

 魔法師は、戦うための道具を作るか、危ない現場に出るか。そういう血生臭い生き方しかない。俺は、その事について憂いているかのように言葉を紡いでいく。

 

「それで、去年の4月に第一高校で行われた実験、常駐型重力制御魔法式熱核融合炉。あれなら、魔法師の新たな生きる道が開けると思いました。思ったのですが。あれは、魔法師が常駐しなければならない。つまり、魔法師をエネルギー精製の道具として縛り付ける事になる。魔法師の人権軽視が促進されかねない」

 

 達也が公開実験した常駐型重力制御魔法式熱核融合炉。あれは未完成品だと、達也はいつしか評していた。あのままでは魔法師をエネルギー精製の道具にするだけだと、俺と同じ考えを達也は持っていたのだろう。そもそも達也は、深雪に平穏な暮らしを与えるため、魔法師の人らしい生き方を模索している訳だし。

 

「その他にも、生き方を考えました。加速系や移動系を物資運搬に用いる土木業。振動系、加重系、吸収系を金属加工、合金精製に用いる鉄鋼業。それらを考え出してみても、上述したのと同じです。魔法師が道具扱いされて終わる未来がある」

 

 利用価値が重機や工業機械の代替品では、魔法師が人として生きるのには足らない。非魔法師に魔法師が人間である事を認めさせなければならない。当然、革命なんて血生臭い方法以外で。

 

「そこで、『あざとい人気取り』という言葉から、思い付きました。俺たち魔法師を人として認めさせるには、人でなければできない事を、魔法師として発展させて行う必要がある。つまりは、魔法でのパフォーマンスを加えた、アイドル活動こそが必要なのです」

 

 半ばと言うか完全に与太な話を、俺は無駄に熱意を込めて断言した。

 熱意の籠った与太話というのは、案外人の心を打つものだ。熱に浮かされる、判断力が麻痺する、とも言えるかもしれないが。

 

「エネルギー精製、土木業、鉄鋼業、その他多くの生きる道を捨てるつもりはありません。国防軍、魔法学研究、警察や消防と、以前からの社会貢献も継続すべきです。ですが、それに執心してしまっては、道具になり下がる未来へと加速していく。そんな未来を迎える前に、我々魔法師は、人々に示さなければならないのです。我々は人であり、奴隷や家畜、まして道具などではないと」

 

 とかく、俺はアイドル活動という与太が、しっかりと大義を持った計画であると、言葉を締めくくった。

 

「この意見に対する、懸念点、疑問点、問題点がありましたら、是非ともご意見ください」

 

 俺がそう意見を募れば、皆が魔法師アイドル・プロデュース計画に頭を回し始める。

 一見ふざけた計画ではあるが、同時に夢と未来がある計画として、真面目に議論されていった。

 

 議論の途中、割と俺から口にしようと思っていた意見も、いくつかが他人の口から出る。

 危険な仕事でないため、実力は度外視できる。よって、魔法科高校に入学できなかったような、悪く言えば魔法資質が低い者も起用できるのではないか、とか。

 魔法師の容姿は高水準であるため、天性の美貌を1人押し出すのではなく、そこそこの美人を集めてグループとして推し出せば良いのではないか、とか。

 

 若手が集まっているが故に、そんな熱に浮かされた真面目な議論が続くのだった。 




ネームプレートが読み取れなかった女性、その他名前が明記されない人物たち:メタ的な無名キャラ。
※原作でも若手会議に出席しているのだから、二十八家の人間である事は確かなのですが、現在(2023/10/21)においても再登場しておりません。じゃあ勝手にキャラ付けして良いか、というと、二十八家の人間という、再登場してもおかしくはないキャラだと思いましたので、判断が尽きません。なので本作においては、メタ的な無名キャラとさせていただきました。あまりよろしくない処置だとは思いますが、ご理解をいただきたく思うと共に、そのような処置をした事について、謝罪申し上げます。

強制力撤廃に賛同する五輪洋史:元々健康とは言い難かった姉・五輪澪が国家公認戦略級魔法師を任せられた事について疑問を抱いており、徐々に虚弱となっていく姉を見て、その疑問は膨らみ続けている。同時に、かつて姉が持つ強力な魔法資質への憧憬と嫉妬で以って国家公認戦略級魔法師の拝命を後押しした事に、彼は後悔し続けている。あの時、自分が後押ししなければと。願えるなら、誰か姉の代わりになってほしいと。

そこそこの美人を集めてグループとして推し出せば良い:アイドルグループ『M(ミルキー・)M(マジシャン・)M(ミストレス)666(トライヘキサ)』、その始まり、かもしれない。
※このアイドルグループは実在の人物や団体、及び『劣等生』原作などとは関係ありません。

 閲覧、感謝します。
 次回の更新は、10月29日の予定です。
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