魔法科高校の編輯人   作:霓霞霖

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第百二十話 蜘蛛の巣はいくつか

2097年4月19日

 

 日曜に『若手会議』を催してから少し日が経った本日金曜日。

 次の『若手会議』はいつ開催するのかと、各家から俺宛てにお便りがたくさん届いたり。実際いつ開催するのかと、克人や智一と話し合ったり。『若手会議』に関する告知やお便りの受付を行うネットサイトを作るべきではないかと、上記の2人と協議したり。

 侍郎の訓練を第一高内、千葉家道場問わず見に行ったり。侍郎から『こんなに元気そうなのに、どうして保健室登校を……?』と聞かれたり。『こういう体質だからだよ……』と、侍郎が所属する剣術部の人たちに囲まれて見る見る顔が青くなっていく様を見せ付けたり。

 そんな少し変わっていながらも日常と呼べる日々を過ごしていた。

 

 ちなみに、そろそろ大丈夫かと教室に顔を出したら一気に視線が集まり、授業中も頻繁に覗き見られる事もあって、保健室にトンボ返りしている。俺の体調が見るからに悪くなっていたのもあるが、生徒たちの集中力散漫を回避したいという講師側の要望も含まれている。

 

(俺、もう教室で授業受けられないかもな……。ま、良いんだけどさ……。元より集団生活って得意じゃないし……)

 

 複雑な思いを抱かせるイベントで、少しセンチメンタルになりながら自宅に帰った俺だった。

 何かを察してか、周妃は夕飯に満漢全席を振る舞う。

 もちろん、俺はセンチメンタルを頭の奥底に追いやり、料理に舌鼓を打つのだった。

 

「そう言えば、大人(ターレン)

 

「……ん?どうした?患者が見つかったか?」

 

 料理を自分の分だけ取り分けながら、唐突に切り出してきた周妃。その唐突さから、周胤の方から今しがたテレパシーが飛んできたものかと、俺は少し身構えた。

 周胤からの連絡となると、『僵尸術』・『付喪神』・『リライト能力』による治療(仮称として『再起術(ヅァイチィシゥ)』と呼んでいる)の被験者、患者が見つかったのだろうか。

 相変わらず『再起術(ヅァイチィシゥ)』は試験の1回しかできていないので、俺としてはその連絡である事が望ましい。

 

 余談だが、試験で実験体となったのはジロー・マーシャルだった。横浜事変の際、日本を嗅ぎまわるネズミを嗅ぎまわるという小遣い稼ぎをしていた人である。

 原作では出番のすぐ後に死んだ人だが、現実では俺が助けたのもあって生き延びた。

 しかし、生き延びるために仕事をキャンセルしたそうで信用はガタ落ち。信用で商売しているようなものだったので、それからは小遣い稼ぎも難しくなってしまった、との事。

 再起を図るべく縋ったのが、『再起術(ヅァイチィシゥ)』による強化手術だったのだ。

 どうやってマーシャルが『再起術(ヅァイチィシゥ)』の存在を知ったのかと言えば、周が手駒(『分霊(フェンリン)』ではなく、ただの死体の『付喪神』)を使って直接教えただけだった。周はまだ『再起術(ヅァイチィシゥ)』を広めたくないらしい。

 とかく、そうしてマーシャルは『再起術(ヅァイチィシゥ)』を施され、成功。さらなる力を手に入れ、『再起術(ヅァイチィシゥ)』の強化手術を受けた対価として、現在は周の小間使いとなっている。

 対価分の働きをしても、周の小間使いを辞められるかは、残念ながら定かではない。

 まぁ、手術料を天引きされている給料も悪くないそうだし(マーシャル談)、失った信用を取り戻すのも手間だろうから、案外マーシャルから率先して小間使いをやり続けるかもしれない。

 

 とかく、『再起術(ヅァイチィシゥ)』の試験は成功し、安全性は多少ながら保証された。これで組織拡大に使える、と思ったのだが。その機会が、一向に訪れないのである。

 

「申し訳ありませんが、その話ではありません」

 

 脳内で色々語って膨らませていた俺の期待感は、周妃に真顔で切って捨てられた。

 周妃が俺の使い減りを恐れているのは、相変わらずのようだ。

 

「マクシミリアン・デバイスの日本工場に設けられていたUSNA軍工作部隊の拠点が16日に国防軍からの襲撃を受け、USNA軍工作員が捕虜となったようですが。シリウスに目立った動きはありません。おそらく、今回は派遣されないかと」

 

「うん。……うん、何処から詳しく聞いたものか」

 

 周妃から情報をぶちまけられ、俺は困惑した。

 とりあえず、以前に出した指示、十三使徒の動向を把握するよう言ったモノの成果を報告している、というのだけは理解する。

 

「マクシミリアン・デバイスはUSNAに本社を置くCADメーカーであり、国自体からかなり融資を受けた企業です。他国のCAD開発に後れを取りたくないという思惑の融資だったのでしょうが、融資は融資。マクシミリアン・デバイスにとって、USNAに大きな借りがある事は変わりありません。USNAの命令で、USNA軍の国外秘密拠点に国外工場という名目を貸す程度はするでしょう」

 

「……なるほど。マクシミリアン・デバイスの日本工場は、そもそもUSNA軍工作部隊の拠点だったと」

 

「しっかりCADメーカー工場としての機能も持っていました。まぁ、そうしなければ秘密拠点である事を疑われますし、そうしておけば従業員に偽装して工作員を出入りさせられますからね」

 

 周妃は俺が何処に疑問を持っていたのか言うまでもなく、先んじてその答えをくれた。

 その有能さには何度目かの感心をする。

 本当に手元に置いて良かった。こいつが野に放たれていたら、俺は心労で倒れていただろう。

 

「何故国防軍が今さらになってその拠点を襲撃したのかは、まだ調査中です。国防軍もUSNA軍の秘密拠点かと疑っていたようですが、USNAとは同盟国であり、おまけに妨害工作をした証拠もなかったので、今までは泳がせていたはずです」

 

「……何か、襲撃する大義名分を得た?……敵対行為の兆候を掴んだ、とかか?」

 

「残念ながら、こちらの情報網には何も掛かっていません。……ただ、個人的な所感を述べるとしたら。国防軍の一部、それも何か思惑を持っている者たちが独断で襲撃に踏み切ったのかと。元より疑われていた場所への襲撃ですから、疑いが真だったら独断専行の責任は有耶無耶にできると踏んだのでしょう。そして、国防軍の上層部は、偽だったら責任を追わせて足切りできると、静観を決め込んだ」

 

「襲撃したのは国防軍内部でも煙たがられている集団って事か?なんだか足の引っ張り合いを見せ付けられているみたいで、頭が重くなってきたんだが……」

 

 自分の比にならない狡賢さが発揮されている国防軍の内輪揉め。

 何処の組織も内輪揉めに行き着くのは、仕方がない事なのだろうか。

 

「抑えつけるのではなく、あえて暴走させて発散させるのは、中々学ぶべき点のある組織運営の術だとは思いますよ。私の所感が合っていればの話ですが」

 

 周妃は組織の行き着く果てを仕方がない事と達観しているようだ。故に、その事には目もくれない。ただその内輪揉めのやり方に、優れた運営手腕を見出していた。

 確かに、下手に殴り合い殺し合いをするのではなく、相手が失態を犯すまで待つというのは賢いだろう。だから俺も『自分の比にならない狡賢さ』とは評したのだ。

 

「……まぁ良い。祖国の防衛力が内輪揉めしているのは良くないが、俺がどうにかできる範囲ではないし、できたとしても矛先が俺に向くだけだ。シリウスが動かないなら、こっちが動く大義名分もない。そも、シリウスが動いたとしても下される指令は捕虜救出。ついでに破壊工作をしてこいとか言われてない限り、スルーが安定だ」

 

 国防軍が勝手にやっている事だ。リスクリターンは全て国防軍のモノであるし、他人の尻拭いなど勘弁願いたい。

 だからこそ、俺は報告された事態に対して静観を決め込む事にした。

 達也から連絡が来るまでは。

 

「……ん?……達也から、か」

 

 止まっていた箸を動かそうとしたところで、携帯端末のバイブレーション。おまけに表示されている着信相手が達也だったので、俺は嫌な予感を覚えた。

 食事を不味くする報告など食事中に受けたくはない、というのが俺の本心だ。だが、嫌な予感を覚えたままでも食事が不味くなる。

 俺は渋々、意を決して応答する。

 

「どうした、達也。何かあったか」

 

〈端的に言うが、俺と深雪が襲われた〉

 

 達也の声音は平坦だった。その声を聞いた俺は落胆しているが。嫌な予感は当たったと。

 

〈深雪を総合スクールに送った際、まず孤立した俺が襲われた。相手は人を操る術がかけられた、USNA軍スターダストだった〉

 

 深雪は淑女教育として和洋のマナー、ダンス、生け花、茶の湯などの講座を受けられる『総合スクール』に週一で通っている、という話はさておき。

 達也の報告に俺は思わず頭を押さえた、ここに繋がるのかと。

 俺の推測が正しければ、周妃からの報告にあったUSNA軍拠点への襲撃は、達也へけしかける操り人形を得るために行われた事、という訳だ。

 一応明記するが、達也が『傀儡法』などの魔法名をあげるのではなく、『人を操る術』と表現した辺りに違和感は覚えている。同時に不穏さを感じたので、その部分は追及しない。絶対ロクでもない、『傀儡法』に掛かっていた方がマシなやり方だったのだろうと、容易に想像できる。

 

「……達也、その件に関連する情報だと思うから共有するが。3日前に国防軍がマクシミリアン・デバイスの日本工場、実態はUSNA軍の秘密拠点だったそれに国防軍が襲撃を掛けている」

 

〈十六夜も知っていたのか。……十中八九、俺を襲撃してきたのはそこで国防軍が捕まえた者たちだろうな〉

 

「訳が分からない……。工作の疑いがあったとはいえ、同盟国の軍人を捕まえて、やる事が一国民へけしかける事……?」

 

 達也も秘密拠点襲撃について知っていた上に、俺と同じ推測に至ってくれている。達也の情報網と頭の良さには頭が下がるが、国防軍の行動については頭が重くなる。さっきから全然軽くならない。

 

〈一応捕捉しておくが、首謀者は国防軍の情報部である事まで絞り込めている〉

 

「ああ、その情報は実に有難い……。頭が多少は軽くなった……」

 

 敵が国防軍全体でないという情報は、本当に有り難い。ともすれば、首謀者が国防軍内部でも煙たがられている集団である可能性が高くなる。内輪揉めしている可能性も高くなったが。おまけにこっちにまで被害が出る始末である。軽くなったのは、体感で1㎏くらいか(超人の体感で)。

 

〈その直後、俺が深雪の安否を確認しに行った際にも襲われた。そっちはスクール生徒に扮していた、普通の魔法師だ〉

 

「……念のため聞くが、深雪が人質に取られたり?」

 

〈俺が来たところで深雪に襲い掛かっていたが、俺が防いだ。その後に別の一般人を人質に取られたが、人質を無視して倒した。もちろん、人質は無傷だ〉

 

「と、なると考えられるのは、……お前の出方を窺っていた、とかか?」

 

 襲撃者の動き方が、俺にはどうにも不思議でならなかった。達也と深雪を分断できていたのに、わざわざ達也を待って深雪を襲うなど、達也たちを害する以外の目的があるようにしか考えられない。

 思うに、達也の行動原理を試したかったのではないだろうか。

 

〈……俺がUSNA軍を相手にしてどう出るか、一般市民が人質に取られてどう出るか。首謀者は俺を試したと?〉

 

「……首謀者は国防軍情報部なんだよな?とすれば、達也が友軍である事は知りながら、その人となりは知らない距離感だ。お前に愛国心、あるいは正義感があるのか、推し量りたかったのかもしれない」

 

〈俺は情報部の方では不穏分子扱いを受けている、という事か〉

 

 達也も、そして俺も、『不穏分子扱い』というのが非常に腑に落ちた。

 首謀者はどうにも、達也を国防軍人の1人、有り体に言って軍の道具としたいようだ。そのための試験が今回の襲撃だったのだろう。

 

「……国防軍脱退、急ぐ必要がありそうだな」

 

〈契約内容はまだ煮詰まっていない〉

 

「101旅団と交渉する形にしよう。一方的に決めた契約内容じゃ、あちらも頷けないだろう」

 

〈それもそうか。では、母上にも話を―――〉

 

「いや。待て、達也」

 

 達也が真夜にも話を通すべくコールするのを、俺は制した。

 妙案が思い付いたのだ。

 

「今回の首謀者を暴れさせてからにしよう。そうして脱退交渉の時にこう言うんだ。自分たちを襲ってきた国防軍(貴方たち)が信じられなくなった、と」

 

 そう。俺は交渉をこちらの優位に進めるべく、正当な脱退理由があるに越した事はないと、思い付いたのだ。

 好都合にも、その正当な脱退理由はあちらが用意を進めてくれている。友軍からの攻撃という、最適な脱退理由を。

 

〈……相手はもう1度仕掛けてくるか?〉

 

「後1度は確実だろう。同盟国の軍人を訳も知らずに容赦なく倒し、人質を無視して下手人へ攻撃したんだ。俺が今回の首謀者だったら、もう不穏分子から処分対象に格上げしてる。慎重にもまだ試すか、消去するか、あるいは()()()するか、だな」

 

 目的がその3択のどれなのかは分からないが、後1回仕掛けてくるのは確実だ。実に好都合である。

 

「ま、俺ならそもそもこんな事はしないが。家事手伝いロボットやライオン相手じゃないんだ。従順な下僕に仕立て上げるのは、土台無理なんだよ」

 

 達也を害する選択をした事について、俺は首謀者の気が知れなかった。

 俺は達也の実力を原作知識でほぼ完ぺきに把握しているため、達也が敵にするなんて考えたくもないのだ。

 今回の首謀者が達也の実力を俺と同レベルで把握しているはずもないが、沖縄海戦での達也の活躍は聞いているはずだ。『デーモン・ライト』、『ディバイン・レフト』などと言う異名が付いた程なのだから。

 それとも今回の首謀者は、それらの活躍を尾ひれの付いた誇張や、敵軍を威圧するための欺瞞情報とでも思ったのだろうか。

 

(後は……、強力すぎる兵器が暴走しないように徹底的な管理をしたい、とかか)

 

 四葉各家の現当主たちがそうであったように、強力すぎる力に恐怖を覚えてしまった訳だ。もしかしたらその力が自身に振るわれるかもしれないと。だから、そうならない保証が欲しいと。

 何にせよ、やはり気が知れない。相手が一個人である以上、ゴマすってでも仲良くすべきだ。仲良くすれば絆す事ができ、危険性はかなり下がる。

 

(いや。これも俺が達也の親類縁者だから言える事か。達也が強い関心を抱くのは一番に深雪、その次は黒羽姉弟だったしな)

 

 達也にゴマをすっても、絆す事ができないかもしれない。達也は深雪至上主義であり、実の両親すら天秤には乗らないのだ。

 彼の中には兄弟愛しかない。そのご相伴に与れているのは、原作では疑似的な弟妹である従妹弟(いとこ)(正確に言えばハトコか)、黒羽姉弟だけだ。現実ではどうにか俺もそこに食い込めている、というところなのである。

 さらに言えば、原作では仲が悪かったり関わりが浅かったりする従兄姉(いとこ)(こちらは正確に言えばハトコより遠い親戚)、勝成や夕歌はご相伴に与れていない。現実では原作程仲が悪くはないため、実際の関心具合は不鮮明だが。

 とかく、達也と従弟の立場である事も含め、彼と良好な関係を育める機会があった俺は、とても幸運だったのだ。

 

 閑話休題。

 

〈お前の考えは分かった。今は大人しくしていよう〉

 

「すまない。ありがとう」

 

〈謝罪されるまでもない、十六夜〉

 

 お互いがお互いに言葉を掛けた。

 そうしてから、どちらともなく通話を終了させるのだった。

 

「……敵は国防軍情報部でしたか」

 

 通話が終わるや否や、周妃は聞こえていた俺の言葉だけで状況をおおよそ察したようで、苦悶の声を漏らしていた。

 周妃としては、自身の手でそこまで特定しておきたかったのだろう。

 

「悔やむ必要はないだろう。お前の情報網は国防軍から大分叩き出されているだろうし」

 

 周妃、いや、周公瑾は国防軍の1基地をたぶらかし、そこに潜伏した事がある。

 国防軍からすれば、敵に良いように使われたその一件は痛恨の極みだろう。再発防止のため、周公瑾が当時使った手口の対策はもちろん、それ以外の手段、スパイによる誘導とかを恐れてそれらも対策したに違いない。我が国の軍なのだから、そうであってほしいという願望だが。

 

「……大人(ターレン)の仰る通り、私が密かに掛けていた洗脳はことごとく解かれてしまいました」

 

 どうやら俺の願望は叶っていたようだ。周妃は痛い腹を割って、俺の願望が現実になっている事を証言した。

 国防軍の情報が得づらくなっているという事なのだから、よく明かしてくれたものだ。

 

「重ねて言うが、悔やむ必要はない。俺は国防軍に対してそこまで関心がないんだ。無駄に足を引っ張られるのは困るが、その場その場で対処できる。むしろ、相手の弱みを握れて万々歳だ」

 

 国防軍が自国民に手を出したなんて事実は、弱み以外の何物でもない。だからこそ、あからさまに足を引っ張ってくる事はないだろう。大々的にやろうとすれば、それこそ弱みを握りたかった別派閥が挙って袋叩きにしてくれるはずだ。

 実際、その袋叩きにする大義名分が欲しいから、国防軍上層部は今回の首謀者である情報部を泳がせているのだろう。

 こういう、お互いを牽制してくれるという観点では、内輪揉めをただ非難する事はできないかもしれない。国を守るための組織なのだから一致団結してほしい、というのが一国民としての本音だが。

 

「外に目を向けてくれ、周。内は四葉で事足りる」

 

「……畏まりました、大人(ターレン)

 

 何処か納得がいっていないようではあるが、深々と頭を下げる周妃だった。




『再起術(ヅァイチィシゥ)』:『僵尸術』・『付喪神』・『リライト能力』により、対象の遺伝子を書き換える技。
 手順として、対象に十六夜の血を飲ませる事によって簡易的な儀式と対象内部への魔法的受信機投与を行い、簡易版『僵尸術』を行使。対象を生きる屍・傀儡(かいらい)へと変える。
 『僵尸術』の傀儡(かいらい)となった対象に『付喪神』を行使。対象を十六夜の分身体、十六夜の一部とする。
 『付喪神』によって十六夜の一部となった対象に『リライト能力』を行使。対象の遺伝子を十六夜の意図するように書き換える。この際、対象をただ『超人』とするだけもできるし、対象の身体を万全なそれに書き換える事もできる。
 後者の、万全な身体への書き換えで、対象の病を治癒する事もできるし、四肢の欠損・未発達を治す事もでき、また、身体をある程度若返らす事もできる。
 しかし、万全な身体への書き換えだけを目的としていても、副次的に『超人』へ書き換わってしまう。現状、その副次効果を排除する事はできていない。

再起術(ヅァイチィシゥ)』の最初の被験者となったジロー・マーシャル:横浜事変直前、スパイの排除を願われた依頼をキャンセルした後も普通に生きていた。だが、その依頼キャンセルのせいで信用を失い、収入に困っていた。そこに、未認可の強化手術(『再起術(ヅァイチィシゥ)』による超人化)の治験及び以降の小間使いとして、周が声を掛け、ジローは藁にも縋る思いで、あるいは人生最大の大博打として、その話に乗っかったのであった。
 『再起術(ヅァイチィシゥ)』で『超人』となり、狩猟系超人なったジロー。彼は以降、安定して仕事を斡旋してくれる周の下で働き、周の狙い通りに(てい)の良い小間使いとなっている。
 ちなみに、彼が手にした狩猟系超人技能は、未来予知に届き得るレベルの危機感知であり、自身の身に迫る危機を高い精度で感知し、感知した危機の回避を反射的に行う事ができる。
 また、超人としてのスペックは下の上。超人となった千葉寿和や壬生紗耶香と純粋な肉体勝負をした際、確実に勝利できる。ただ、十六夜とでは確実に敗北する。

 閲覧、感謝します。
 次回の更新は、11月26日の予定です。

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