魔法科高校の編輯人   作:霓霞霖

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第百二十三話 幕間~狐同士の睨み合い~

2097年4月23日

 

 曜日は火曜日。時刻は午後7時少し過ぎ。

 俺が望むヴィジホン画面には、国防陸軍第101旅団の旅団長・佐伯広海少将、第101旅団1大隊である独立魔装大隊の大隊長・風間玄信中佐、十師族の四葉家当主・四葉真夜、その息子である大隊の特務士官・司波達也、以上4名が映されている。

 

〈佐伯少将殿、並びに風間中佐殿。お忙しい中、会談に応じていただき、真にありがとうございますわ〉

 

 真夜は礼節を弁え、四葉の要請に応じてくれた佐伯と風間へ頭を軽く下げた。

 そう。この4名(俺含めて5名)は、とある会談を行うため、回線を繋げているのだ。ただ、佐伯と風間には大事な話があるとだけ伝え、何の会談であるかは教えていないが。

 しかし、その分かり切った重大性に、2人は表情を硬くしている。

 

〈こちらがソ連による北海道侵攻への対処で忙しいのは、そちらも把握しているでしょう。そのような時に如何様な用件で呼び出したのですか?〉

 

 ソ連による北海道侵攻を1度防いでみせた独立魔装大隊。しかし、まだソ連には侵攻の意志が見られるため、独立魔装大隊含めた現地に居る国防軍は厳戒態勢を敷いている。

 佐伯はその事をあえて明言し、不機嫌である事を取り繕っていた。少しでも、自分たちが優位を保てるように。

 

〈端的にお伝えします。俺、大黒竜也は、国防軍を退職します〉

 

 そんな優位をまやかしとするように、達也は退職表明を不躾なまでに切り出した。

 予想はしていたのか、驚愕の様子は見せない佐伯と風間。ただ、眉間の皴が深まった様子までは、隠せていない。彼女らにとって、その予想は最悪のそれだったのかもしれない。

 

〈……その発言の意味を、貴女方四葉は理解しておられるので?〉

 

〈達也を自分たちが自由に使える戦力である。そんな貴女様方の勘違いを正せるという意味で、十全に〉

 

 四葉側の責任者である真夜を佐伯は鋭く睨んでいるが、真夜はまったく応えておらず、ただ微笑みを返していた。

 国防軍など歯牙にもかけていない事を、真夜は如実に表現している。

 

「佐伯少将殿、風間中佐殿。俺は、国防軍に不信感を抱いています」

 

 達也の国防軍辞退に関して、真夜が四葉家全体としての決定である事と、その意志を表す役目を果たしたところで、俺はその決定に至った感情論を、でっち上げた動機を、悲しげに口に出す。

 佐伯と風間の視線が、俺に集中する。

 

「……今月19日に、達也は国防軍情報部からの襲撃を受けました」

 

〈なんだと……!〉

 

 ここに来て、ようやく佐伯たちが驚愕を顔に出した。どうやら、情報部の動きは把握しておらず、そして共有もされていなかったようだ。

 情報部だけの独断専行だったのか、それとも第101旅団だけが除け者にされたのか。とかく、佐伯たちが達也を不穏分子扱いしていなかった事は確かだ。色々懸念はしていると思うが。

 

「その時にけしかけてきた人員は、USNA軍工作部隊。マクシミリアン・デバイスの日本工場という事になっていたUSNA軍工作拠点を攻撃し、そこで捕縛した軍人たちを傀儡にしていたのです」

 

〈くっ……、情報部は何を考えているっ……。USNAの怒りを買う事が国益に反する、そんな事も分からない程に腐り果てたか……!〉

 

 俺から与えられた情報、自分らの足も引っ張られかねない別派閥の愚行を聞かされ、佐伯は情報部への苦言を腹の底から漏らしていた。

 彼女が情報部と対立ないし不和状態であり、また彼女自身がそれを愚行と判断できる程度の頭を持っている事は、俺としては吉報か。国防軍内の内部闘争が俺の妄想ではなくなってきているところは、悲報に他ならないが。

 

「その他に、情報部は第一高校の生徒をかどわかし、達也の出方を窺う餌にしました。軍事演習の要人役という名目で、高校から連れ出して」

 

〈……〉

 

 USNAの怒りを買う程の愚行とは認識しなかったのだろう。ただし、達也の不信感を煽りかねないその愚行に、唸りはする佐伯である。

 

〈四葉殿、達也、十六夜殿〉

 

 唸る上司に代わってか、風間が口を開く。

 

〈今回の事、私の方から謝罪しよう。言い訳になるだろうが、我々はその企てを知らず、また、関与もしていない。そうして我々は東京から離れ、付け入る隙を与えてしまった。すまなかった。この通りだ〉

 

 風間は頭を深々と下げた。素直に非を認めるというのは、軍全体に悪評を呼び込む行為であるため、軍人なら避けるべき行為のはずだ。それにも拘らず、風間は非を認めている。そうして誠意を見せる事で、俺たちを絆そうとしているのか。

 

〈中佐が負うべき責任ではないでしょう。非は、襲撃を実行した首謀者にあります〉

 

 達也はただ率直に事実を述べ、自身らが敵意を向けている対象が風間たちでない事を伝えたが。率直すぎて言葉が足りておらず、風間の誠意を切り捨てているようにも聞こえかねない。

 

「風間さん、頭を上げてください。風間さんや佐伯少将は悪くありません。貴方方はむしろ、こうならないように動いてくれていた。貴方方は達也が無遠慮に使われぬよう、距離を置こうとしてくれていたのは、俺はもちろん、達也も母も分かっています」

 

 俺は達也の足りない言葉を即座に補った。風間たちの誠意をしっかり受け取っていると。

 今回の俺はこういう発言をする立場、風間や佐伯に理解を示す役だ。真夜も、あえて反発しているような発言をする立場、という役である。達也は思った事を率直に言うよう、指示してあるだけで、どちらの役になるかは指定していないが。

 

「ですが、貴女方の苦慮を、情報部は踏みにじった。……情報部を排除しようとは考えておりません。ただ、達也をこのまま国防軍に預けておけないとは、思っております」

 

〈……情報部は我々が所属する陸軍とは別個の組織であり、それでありながら陸海空軍と繋がりがある組織です。あそこが煽れば、動いてしまう部隊はあるかもしれない。それは、ご理解いただけますか?〉

 

「陸軍かつ戦闘魔法師団である貴女方では抑えきれない、という事まで理解しているつもりです……。ならばこそ、達也を四葉家全体で保護する必要があります」

 

 達也脱退によって引き起こされるだろう事態を佐伯はちらつかせ、俺を揺さぶろうとしてくる。俺が全体主義であるという噂が彼女の耳にも届いているのだろう。

 しかし、その全体主義は身内の安全が前提である事を、家族のための全体主義である事を、俺は断言した。身内を売ってまで全体を守るつもりは、俺にはないのだ。そもそも、俺の命題は真夜への奉仕にあるのだし。

 とかく。俺は達也の安全を優先する事に関して、佐伯たちが達也を守る力がない事を暗に引き合いに出した。

 国防軍に所属する魔法師は多いが、それでも全体からすれば少数であり、なのに重要戦力として重用される存在だ。そのため、国防軍内部でも魔法師部隊は煙たがられているのである。重用する側である佐伯も含めて。

 そこから推測するに、第101旅団は軍内部での発言力が大きくない事が窺える。

 

「でも、再度明言しますが、四葉に情報部を排除しようとする意志はありません。同時に、俺は事を荒立てたくありません。そのために、俺は達也と国防軍の距離を正したい」

 

〈……何か考えがおありで?〉

 

 このままではただ達也が離反する現状で、佐伯は俺の言葉に希望を見出したらしい。深まっていた皴をわずかに解した彼女は、俺に続きを促した。

 

「俺の考えは、達也を軍属ではなく、外部協力者とするモノです。達也に出動要請ができる状況を限定的にし、浅慮な登用を抑え、しかし設定した状況ならば登用できる。そういう契約を取り決めたいのです」

 

〈……なるほど。運用法としては、国家公認戦略級魔法師・五輪澪殿に対するモノに近くなるか。そしてそれが、軍の判断でできると〉

 

 俺の考えを述べれば、それが如何様なモノであるかの考察を風間が口にした。感心しているような様子から、そういう契約を結んだ場合のメリットも考察できているようだ。今まで同様に出動要請できないのに、それでもメリットがあると考えてくれる事には、彼の良識を感じる。

 もしかして、達也が軍に悪用される危険性を唱え始めたのは、佐伯ではなく彼の方だったのか。

 

「戦略級魔法の使用要請に関しては、厳格な取り決めを話し合いたいです。それ以外の要請なら、今までと同等とは行きませんが、柔軟に対応したいと思いますが……」

 

〈今まで達也さんが力を振るう大義名分を用意してくれた事、私も感謝しておりますの。この譲歩は、そのお礼と受け取ってくださいね〉

 

 ある程度条件を緩くしそうな俺の物言いを言質とされないようにか、真夜がそう、目が笑っていない笑顔で譲歩できるラインがそこまでない事を仄めかした。感謝していると言っても、充分対価は支払ったと。譲歩はあくまで恩情だと。

 

「指示系統は、第101旅団に限定したいと思っています。正直、俺は貴女方以外の国防軍を信用できない」

 

 後で真夜から説教されないよう、俺も譲れないラインをしっかり引いた。それも、佐伯たちに特別感を与える形で。

 

〈……〉

 

〈少将、これは良い機会かと〉

 

〈……続けなさい〉

 

 佐伯の思考に割り込む風間。しかし、それに目くじらを立てる事なく、思考の材料として、佐伯は耳を傾ける。

 

〈以前より、我々独立魔装大隊、ひいては国防軍も、特例で所属させている大黒特尉に依存しているきらいが窺えておりました。非常人員である特尉に依存するのは、非常事態において対応の遅れを起こす可能性が高く、また、国防軍全体の練度低下に繋がる恐れがあります〉

 

 国防軍が達也を頼り過ぎている事、それが引き起こす危険を、風間は平静に説いた。前々からずっと頭の中にあった懸念だったのだろう。

 

〈そして、大黒特尉は正規の軍人ではありません。軍事行動を慣熟しておりますが、本来行うべき訓練を済ませていないどころか、正式な入隊手順を踏んでおりません。非常時特例を適応しておりますが、軍法違反と捉えられてもおかしくはありません〉

 

 続いて、達也の存在が軍法違反とされる可能性も、風間は説いた。一応は軍法にある特例で法を守っているという体裁を整えているが、捉え方次第では違法とされかねない。弱みを探る敵対者や、ショッキングなネタが好みのマスメディアなら、そうしかねないだろう。

 つまり、達也の軍属は、わりと国防軍の弱みなのである。

 

〈では、非公認戦略級魔法師の放逐を、貴方は良しとすると?〉

 

〈元より、日本政府が戦略級魔法師の自由を認めております。五輪澪氏が政府直属でも軍属でもない事がその証明です〉

 

〈彼女は虚弱体質であるために、どちらの業務にも耐えられないと判断されたからこその自由でしょう。それに、彼女の身辺警護は政府から正式に五輪家へと委託されています〉

 

〈それです〉

 

 日本唯一の国家公認戦略級魔法師・五輪澪。彼女は国防軍どころか日本魔法師協会にも、まして日本政府にも所属していない。あくまでも、国家公認戦略級魔法師として政府が認めた上で、政府からその身辺警護、悪く言えば管理を五輪家に任されている状態だ。そうする事で、政府指揮下にある体裁を整えている。

 その管理体制を、風間は指し示した。

 

〈その体制を、我々第101旅団が模倣すれば良いのです〉

 

 日本政府が行っている戦略級魔法師の管理体制を、第101旅団でも行う。

 それが、風間の考えだった。

 実際、俺も良い考え、というか良い解釈だと、感心する。

 出動要請が出せる条件を取り決める、いわば契約では、独立魔装大隊と四葉家が対等な立場になってしまう。少なくとも、傍から見ればそうなるだろう。これでは、国防軍が民間組織と自分らが同等の権力を持っていると認めるようなモノ。それは、メンツが許さない、という話なのである。

 対し、身辺警護、管理の一任であれば、国防軍が民間組織に命令を降している立場になり、国防軍の方が強い権力を持つ形になる。これなら、国防軍のメンツは保てるのだ。

 

(それに、政府のやり方を模倣するのも上手いな)

 

 管理を一任するという政府のやり方を模倣すれば、他所も文句が付けづらくなる。その模倣したやり方に文句を付けるという事は、模倣元にも文句を付ける事、日本政府に文句を言う事になるからだ。

 まぁ、日本政府に文句を言ったって、政府自体がそれに目くじら立てる事は、国家反逆に繋がるモノでもない限り滅多にない。ただし、だからこそ日本政府は取り合わない。

 そうして、文句付けられた日本政府が取り合わないのだ。国防軍が同じく取り合わなくても、非難されるいわれはない。だってそれが、日本政府も認めている正しい振る舞いなのだから。

 

(例え国防軍の別派閥に非難されたって、第101旅団は取り合わなくて良い訳だ)

 

 管理の一任という形にすれば、国防軍のメンツは保てる。おまけに、文句言われたって聞き流して良い。

 実に合理的な考えであり、良い折衷案だと、俺は感じている。

 

〈……他派閥及び民衆から撤回の要求を通される事はないでしょう。しかし、批判は絶えないのでは?〉

 

〈今と変わりないでしょう〉

 

 今も批判が絶えない。そんな言葉を、佐伯への反論として風間が吐き出した。

 魔法師の人権問題に関する批判。それに合わせて、独立魔装大隊、独自の判断で動く事が多いその隊に対する批判にも、彼らは曝されているのかもしれない。真実は、訊かずにおこう。

 

〈今は批判だけで済みますが、特尉の辞退を認めれば、それが別派閥との衝突に発展しかねません〉

 

〈……お聞きしたい、佐伯閣下。別派閥と『四葉』、衝突するとしたら、閣下はどちらをお選びになりますか〉

 

 どこか哀愁や諦観を孕んでいるように、風間はそう反論を続けた。その反論が、佐伯の言葉を詰まらせ、苦みと怒りで歯噛みさせる。

 

〈閣下。もし『四葉』との衝突をお選びになられるのでしたら、私は大隊の皆に辞表を書かせます〉

 

〈貴方は、命惜しさに国を捨てると!?〉

 

〈己の愛国心に部下の命は賭けられません。それに、閣下もお分かりでしょう。『四葉』との衝突には、命を惜しまず望まなければならないのです〉

 

 佐伯も風間も、『四葉』との衝突は命懸けになると認識している。だからこそ風間は、自分の命はともかくとして、部下の命は賭けられない。分の悪い賭けに、部下を付き合せる事はできない。

 

〈閣下は常より、より良い選択をして来られました。だから、私はその選択に従ってきたのです。そうして救われ、今日(こんにち)まで生き延びました。私にはその恩に報い、地獄まで付き合う覚悟があります。ですがその覚悟も、意志を継ぐ者が居るという確信があってこそのモノ。私の意志を継ぐ者たちである部下には、生き残ってもらわねばならんのです〉

 

 風間は語気こそ平坦だが、滲む気迫には感情の高ぶりがあった。

 自分の愛国心を継いでくれる部下が居る。ならばこそ彼は命を懸けて国を、部下を守れる。

 それが、かつて軍上層部に逆らってまで大越紛争に直接介入した軍人の、後に続く命を尊んだ男の、その根幹なのだろう。

 

〈……っ〉

 

〈閣下、ご決断ください〉

 

〈……大黒特尉の脱退を認める事は、現状ではできません〉

 

〈……閣下〉

 

〈故に、その現状が改善するまで、出動要請の発令を禁じ、代わりに出動依頼を出す事としましょう〉

 

 佐伯のより悪い選択に1度落胆した風間だったが、佐伯が提示したその代替案に胸を撫で下ろす。佐伯は強硬姿勢を取る気がなく、また、現状を改善する意欲が見られた事に、風間は安堵したのだ。彼女はまだ、より良い選択ができる上官であると。

 

〈四葉の皆様方、戦略級魔法を使用する機運が各国で増している現状に、国防軍内部はかなり神経質になっています。この現状で特尉の脱退を強行するのは、いくつかの派閥を暴走させかねません。それだけ、達也殿の能力を評価している、という事です〉

 

〈私たちが欲しいのは達也さんへの評価ではなくて、達也さんの身の安全なのだけど?〉

 

〈第101旅団の戦力を達也殿の護衛にいくらか割きます。そうして暴走する過激派をいくらか削り、暴走や批判を抑えた後、貴女方に大黒特尉の身辺警護を完全委託します〉

 

 反感を抱いている真夜に、歩み寄りを図る佐伯。達也を守るために自前の戦力も動かすという、しっかり自分も動く姿勢を見せていた。過激派、つまり自分らの敵対派閥を削るという実利をちゃっかり得ようとしているが。まぁ、無償で働かれるよりは信用できるだろう。

 

〈我々は貴方たち軍と早急に手を切り―――〉

 

「母さん、それ以上はいけない」

 

 相手の譲歩をさらに強請(ねだ)ろうとした真夜を、俺は制する。

 

〈……十六夜、こちらは当然の権利を行使しようとしているだけよ?〉

 

「佐伯少将だって、ワガママを言ってる訳じゃない。全体を鑑みての判断をしてるんだ。その上で、できる限りの譲歩をしてくれている。これ以上強請(ねだ)るのは、ワガママだよ」

 

 あっちは自分の都合をかなり曲げてくれた。ならば、こちらもこちらの都合を曲げるべきなのだ。

 それに、そもそも国防軍と敵対ないし離別したい訳ではない。敵は作らないに越した事はない。

 

「それに、過激派を削れるって事は、四葉の敵も削れるって事だ。ここは、それに向けて佐伯少将と手を取り合うべきだよ」

 

 既に敵である存在が少なくなるなら、それも越した事はない。

 だからこそ、俺は達也の国防軍脱退を少し先延ばしにしてでも、佐伯の案に乗る事を選んだ。あっちが脱退を凄く先延ばしにしてくるようなら、その時はその時だ。脱退する事に関しては、もう決定事項なのである。国防軍(他所)のいざこざに巻き込まれたくはない、というのが偽らざる本心だ。

 

〈……はぁ。……達也さん、貴方はどう?〉

 

〈十六夜の案で良いかと〉

 

 俺の制止で気勢が削がれたのか、真夜は張りつめていた空気を抜いて、達也に問う。達也はその問いに、ずっと変わらない真顔で返した。

 達也としては、正直どっちでも良かったのか。あるいは、俺の判断に全幅の信頼を置いてくれているのか。後者であるのが最上だが、あまりそういう楽観視はしないでおこう。

 

〈……分かりました。達也さんの軍属はしばらくそのままに、しかし、出動要請ではなく出動依頼のみとした上で、しかる後に身辺警護の一任という形で脱退させる。それで呑みましょう〉

 

〈一任した後の出動要請が出せる条件について、それまでに話し合いましょう〉

 

 仕方ないという、然もこちらが譲歩したかのような真夜。さりげなく達也脱退後の出動要請条件について省いていたが、それを見過ごさずにしっかり明言する佐伯だった。

 

 こうして、真夜と佐伯は目が笑ってない微笑みを返し合い、風間と達也は僅かに顔を顰め合い、俺だけが苦笑して、このヴィジホン会談を終えるのだった。




 閲覧、感謝します。
 次回の更新は、1月14日の予定です。

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