2097年4月28日
「急患って。随分と急な話だな、周胤」
また死体扱いされた事も不機嫌な要因だが、主因は別にある。
「説明してもらいたい。何がどうして、お前は急患を受け入れた?少し前まで随分と渋ってたのに」
そう。今まで渋っていた『
「今回の患者様は、前々から狙っていたお相手なのです。安全な連絡経路を構築できればと思っていたところ、昨日の依頼人様から紹介したいと申し出てくれました」
『
「
昏睡状態の娘を起こした手術をその目にして、防衛大臣が紹介してくる相手。防衛大臣の知己であり、不治の病に罹っている病人であり、防衛大臣が治療してほしいと紹介する存在であり、おまけにこの未知の治療を即日依頼する人物。
上記の情報に加え、周胤も前々から候補に挙げていたという事も踏まえると、その相手に
「ええ。何しろ、今回の患者様は日本防衛には欠かせぬお方でありながら、しかしいつ倒れてもおかしくないのですから、防衛大臣もその根治に意識を割く事でしょう」
「……待て。……その患者様ってもしや」
日本防衛に欠かせない。いつ倒れてもおかしくない。その2つの情報も加わった事で、
「もうお察しの事と思いますが、念のため答え合わせを。今回の患者様は、日本国家公認戦略級魔法師、十三使徒の一角、五輪澪様でございます」
周胤から平静に明かされた今回の患者、その正体に、
五輪澪。国際的に公開されている13人の戦略級魔法師、その1人であり、日本唯一の国家公認戦略級魔法師である彼女。
しかし、その絶大な魔法資質に反して、その肉体は虚弱。普段の移動にすら動力付の車椅子を常用するほどで、国家公認戦略級魔法師でありながら、公の場に立つどころか、そもそも戦略級魔法師として任務に就く事も滅多にない。
ただし、彼女の持つ戦略級魔法『
それ故に、魔法技術は魔法先進国に並ぶとはいえ、USNAや大亜連という大国が居並ぶ中、日本という小国が独立を維持できているのだ。
(そんな独立維持の要とも言える人物がいつ倒れてもおかしくないとなれば、そりゃ防衛大臣は治療を勧めるわな……)
そう。日本防衛に、独立の維持に欠かせない存在がいつ倒れてもおかしくないとすれば、防衛大臣なんて防衛を担っている人間は気が気ではないのである。
(そして、その紹介に五輪澪が乗ってきたって事は、五輪澪個人、または五輪家全体、あるいはその両方も、気が気じゃないって事だ)
五輪澪が聞ける『
ともかく。たった1例の、しかも全く症例が違うそれに、五輪澪は乗ってきたのだ。乗る事を彼女が言い出したのか、家が言い出したのか、そのどちらなのかは分からない。
でも、両方ともに了承して望んできているのは確かだ。でなければ、成功不確かな手術に五輪澪が出てくるはずがないし、五輪家が五輪澪を送り出すはずがない。
そして、成功不確かな手術に乗ってくる程、逼迫した状態なのも確かだ。ともすれば、近い内に五輪澪が死ぬと恐怖させるような、そんな状態である事が疑える。
(……また、足りるか分からないな)
昨日の患者と同じく、『アウロラ』が足りるか分からない。
とすれば、頭に過るのは昨日の事、あの篝の事だ。
あの人間味ある篝が、また自分の前に表れるかもしれない。
その思考を遮るように、ノック音が響く。
「お連れしました」
「入れ」
周胤の言葉に
周胤が先に入室し、そうして促すように手を差し出せば、彼の後ろに控えていた人物たち、車椅子を押す五輪洋史と、その車椅子に乗る五輪澪が境を跨ぐ。
そうして、
両者共に、お互いの顔をまじまじと見る。
それによって
それも仕方ない感想かもしれない。何故なら、五輪澪は不健康を思わせる程の色白な肌をしていながら、背筋は真っすぐ伸びているし、瞳に輝きがない癖にその目には力を感じさせる。付け足すなら、その肌には染み1つないし、髪も艶がある。不健康そうなのに、美貌があるという、非常にチグハグな存在である。
(……少し、光宣に似ているか)
芸術性を感じさせる存在という事で、
五輪澪へのそんな感想を
「貴女、もしかして戦略級魔法師?」
疑問形でありながら確信を持っているように述べられた、五輪澪のその言葉。それを聞いた
「……何故、そう思う?」
「貴女のオーラを感じて、そう思ったの。貴女のオーラ、私にも負けてない。いえ、凌駕しているかもしれない」
当然、
「サイオンでもプシオンでもない、ただ、おそらくそれらに関係していると、私が直感的に感じているそれ、『オーラ』。私は生まれた時から、それをずっと感じ取れた。そして、感じ取った『オーラ』から、相手の魔法資質を推測できる。自慢なのだけど、この推測を外した事はないのよ?」
自分独自の感覚に共感してもらえない事は慣れているのか、五輪澪は少しでもその感覚を理解してもらおうと、少なくとも出任せは言ってない事を証明しようと、これまた慣れたように語っていく。
「司波深雪さんと司波達也さん、それと、一条将輝さんをご存知かしら。私も直接会った事はないから画面越しで、なのだけど。私の見立てでは、あの方たちも戦略級魔法師の素質があると思っているわ。司波達也さんなんかは、非公式の戦略級魔法師なのではないかしら?」
とうとうと語られる五輪澪の推測に、
達也が非公式戦略級魔法師という事を、五輪澪は言い当てているのだ。達也はそうであると推測できる材料が散見されるし、なんだったら国家公認戦略級魔法師の権限で調べは付いているのかもしれない。
だが、
実際、
故に、五輪澪のその推測を、出任せと一笑に伏す事ができない。むしろ、真実として想定しないと危うい。そう恐れさせてくる。
「でも不思議ね。貴女のオーラは、今まで見た事がないわ?油絵の厚塗りみたい。表出しているオーラの奥に、別のオーラが―――」
「貴女はそんな雑談をしに来たのか?五輪澪」
五輪澪が続ける言葉に、
五輪澪の言葉が、
いや、十中八九見通しているのだろう。戦略級魔法を使えるのは本体である十六夜の方で、五輪澪は
だからこそ、それ以上見通されないように、
「失礼。貴女のような、可愛らしくも強いオーラを持つ人とは初めて会ったから、つい気分が弾んでしまったわ?」
「俺の治療を受けに来た。おおよそ、その虚弱体質を治してほしいんだろう」
「……、ええ。私の体を万全にしていただきたく、貴女の治療を受けに来たの」
「素性も実績も分からない闇医者モドキに縋ってでもか」
「もちろん。基礎代謝が上がるだとか、身体能力が逸脱するだとか、魔法以外の特殊能力を得るかもしれないだとか。寿命が、減るだとか。そんな副作用を呑み込んででも、私は縋りたいの」
五輪澪の酷く暗い瞳が、
「だって、こんな人生、生きているって言えないじゃない」
五輪澪に生物感がないのは、彼女が暗い瞳をしているのは、それに尽きる。
虚弱を押して、皆に推されて、母国の盾となった。とても少ない体力は、その母国の盾を務めるのがやっとだ。プライベートを楽しむ余力など、残っているはずもない。
人生全てが母国の盾として費やされる事が、五輪澪は確定しているのだ。
だから五輪澪は、人として生きる事を諦めた。母国の盾として、戦略兵器として在る事に妥協した。
今までは、そうだった。
「ねぇ、虚弱体質を治せるかもしれないと、万全の身体を得られるかもしれないと聞かされた時の私の気持ち、分かる?人間を止めた私に、戦略兵器としか在れない私に、人間になれる可能性があると聞かされて、どんな気持ちになったか、分かる?」
暗い瞳で、精気のない姿で、五輪澪は涙を流す。今まで我慢していた分の涙を流す。
「我慢していたの。ずっと我慢していたの。そんな甘い話はないと、ずっとずっと我慢していたの。でも、大臣の娘さんが目を覚ました事実を見せ付けられて、我慢できなくなってしまった」
堰は切れてしまった。凍り付かせていた思いは溶け出してしまった。
五輪澪はもう、戦略兵器としてある人生に、耐えられない。
「私は、人として生きたい。人生を生きたい。生を謳歌したい。もう、兵器としてだけ在り続けるのなんて嫌」
母国を守りたい気持ちは確かにある。でも、それだけの人生で終わりたくない。
人なのだから、自分の人生を生きたい。
五輪澪はそう、生の感情を吐き出す。
「私を、助けて?」
自分ではどうしようもない。だから助けてほしい。
助けてくれるなら、その相手が悪人だって良い。
だって、もう感情を押し殺せないのだから。
「……私からも、お願いします」
車椅子を押していた五輪洋史は、五輪澪を国家公認戦略級魔法師に推してしまった1人である彼は、頭を下げた。
「この治療を受ける事は、五輪家の総意です。副作用も契約内容も、家全体が了承しています。……私たちは、私は、姉に人生を諦めさせてしまった。私たちは、その償いがしたかった。それがマフィアと取引する事になるのだとしても、私たちは構わない」
償いがしたい。五輪洋史も、五輪家全体も、その感情を押し殺してきたのだろう。護国のためには仕方ないのだと。
ある意味で、この甘い話で我慢できなくなったのは、彼らもだったという事だ。
「どうか姉を、助けてください」
頭を深々と下げている五輪洋史が今どんな表情をしているのか、
ただ、彼の足元を濡らす雫が、彼の目から零れているのだけは確かだ。
「……貴方たちが契約内容を了承し、守ると言うなら、こちらも同様にするだけだ。さっさと手術を開始しよう」
手術する事は契約で決まっている事で、そこに意志などは関係ない。
でも、
その積極性から五輪澪と五輪洋史が何を感じ取ったかは、2人の晴れた面持ちから推して知るべしだ。
五輪澪は協力的だ。
そうして『僵尸術』を受け、死んだように、というか実際死んで脱力するのだが。その光景を目にした五輪洋史は、ただ手術の成功を祈り続けている。
「……やっぱりか」
月、篝の丘にて、十六夜は横たわる五輪澪の姿を視認した。
予想通り、五輪澪は昨日の患者と同じくらい、透明だったのだ。
これではおそらく、治療に足りない。
だから、十六夜はゆっくり振り返った。
背後にまた現れた、彼女を正面に捉えるために。
「こんにちは。1日ぶりになりますか?」
半透明の篝が、十六夜に人間味あふれる微笑みを向けている。
「……悪いけど、俺は圧縮言語を解読できてないからな」
「……残念です。貴方も、私と同じ高次の存在のはずなのに」
十六夜が人間味あふれる篝を人間のように扱って軽口を告げれば、篝はやはり人間味あふれる微笑みを続け、しかし悲しさをわずかに混ぜた。
篝が残念がっているのを、十六夜でも感じ取る。
「……是なら縦に、否なら横に首を振ってくれ。……理解できてるか?」
イエス・ノーだけの質疑応答を十六夜が求めると、篝は笑みを深めて首を縦に振る。
十六夜は篝がしっかり応答していると判断し、質疑を始める。
「貴女は、地球をシミュレーションしたか?」
『Rewrite』原作における月の篝と同じく、地球環境を、生物の進化をシミュレーションし、生物の未来を模索したのか。
十六夜のその問いに、篝は表情を曇らせながら首を縦に振る。
「そのシミュレーションは、俺と同じ能力、『リライト能力』を持つ者に止められたのか?」
『文明の庭』、地球を始まりから終わりまでシミュレーションできる超高性能演算機である石板。この丘の天辺にあるそれを破壊したのはリライターなのか。
篝は苦笑しながら首を縦に振る。
「……貴女は、それで良かったのか」
『Rewrite』原作と違い、リライターと手を取り合うハッピーエンドに至れなかった事を受け入れているのか。
篝は、一度地球を慈しむように見つめてから、十六夜に向き直って首を縦に振る。
地球の子らが今も生きているのだから、それで良いのだと。
「ありがとう。私の事を慮ってくれているのですよね?でも、これは当然の報いで、だけど最大限の報酬なのです」
篝は笑っている。何処までも嬉しそうに。地球で人が生き足掻いている事が、彼らに未来のある事が、とても嬉しいように。
「慮ってくれたお礼、と言っては何ですが、貴方の懸念を1つ解消しましょう。……地球に、篝はいません。私を殺したリライターが狙ってやったのか、篝を生み出すシステムは完全に壊れています」
「……いや、だからアンタの言葉を聞き取れないんだって」
「地球に、篝、居ない」
篝は十六夜も理解できるように、どうにかジェスチャーで何かを伝えようとした。
地球を指差し、その後に篝自身を指差し、それから両手で『×』を作っている。
「……地球に、篝は、星の裁定者は居ないのか」
十六夜が篝のジェスチャーをどうにか読み解けば、篝はそれが正しいと言うように何度も首を縦に振る。
「そうか……。そうか……、良かった……。本当に良かった……。俺、また何か間違ったのかって、怖かったんだ。都合の良い妄想に縋って、自分の使命を見過ごしてきたんじゃないかって」
昨日、この篝を見たせいで、十六夜は疑っていたのだ。篝はもう居ないとした結論が自分の妄想だったのではないかと。自分は、リライターの使命から逃げているのではないかと。
今日、この篝自身が証言してくれたおかげで、その疑いは晴れた。都合の良い妄想ではなかったと、十六夜は安堵した。その安堵感は、体の力が抜け、不意に尻もちをついてしまう程のモノであった。
「大丈夫です。貴方を縛る運命はもうない。貴方は、既に運命を乗り越えた。だからこそ、貴方は生きて、人類も生きている」
「……褒めてくれてるのは分かったよ。何故なのかは全くだが」
屈んで目線を合わせてきた篝。慈しみを感じさせるその視線から、十六夜は彼女の思い、その表層だけは読み取れた。読み取ったそれは合っていたようで、篝はまたニッコリと笑っている。
「さて。貴方はここに、私とのお話しだけをしに来たのではないのでしょう?」
「ん?ああ。五輪澪は、彼女は患者だ。昨日と同じように、彼女を『リライト能力』で書き換えて、万全な体に治そうとしてる」
立ち上がって、半透明な状態で横たわる五輪澪に視線をやった篝。十六夜は篝が五輪澪に関心があると察し、説明した。
篝は理解を示すように、笑顔で頷く。
「『アウロラ』、足りないのですよね?ここのを使ってください」
篝は、腕に巻かれたリボンを十六夜へと伸ばした。使えと言わんばかりの態度である。
「昨日みたいに、補ってくれるのか?」
「はい。私は、貴方にそうするだけの借りがあるのです」
十六夜の質問に頷きで以って肯定する篝は、何処か申し訳なさそうな顔をしていた。
ただし、それは数瞬だけだ。数瞬後には、慈悲に満ちた微笑みへ変わる。
「それに。もう何の役割もないこの場と私をただ存続させて無為に消費するより、誰かを救うために使う方が有意義です」
「……使ってくれた方が有難いって?」
誰かを救う事は有意義だとするように、篝は頷く。
「……了解した。有り難く使わせてもらう」
十六夜は篝の思いを受け止めた。
それに呼応するように、篝のリボンは十六夜の左腕に巻き付く。十六夜は、自身の中に暖かいモノが流れ込んでくるのを感じた。
それが、『アウロラ』だ。
「……これで受け渡せるんだったら、昨日なんで刺したん」
「ワンチャン切り掛かられるかと思ったので」
「……」
篝の苦笑に、十六夜は篝のお茶目を察した。
どうせ言葉を聞き取れないのだと、これ以上の抗議を諦める十六夜。さっさと手術を再開する。
半透明の五輪澪に自身の右腕を重ね、存在情報を、記憶を読み取る。
読み取った記憶はただの情報であると意識し、共感・同情する事を避けながら、しかし克明に五輪澪の情報を脳裏に刻んだ。
(……彼女、もしかして九島光宣と同じ症状、いや、あれを悪化させたモノか?)
流れ込んでくる情報から推測、いや、勘と呼んだ方が良い当てずっぽう。
光宣の病弱体質は、自身の強大なサイオンにそれを収める器たるサイオン体が壊されているというモノであり、しかしサイオンが強大であるためサイオン体の回復も早い、いわゆる体を壊してもすぐに回復するというそれである。
では、そのサイオンがさらに強大であれば、サイオン体の回復は間に合わないのではないか。
それが、五輪澪の虚弱体質、その正体なのではないか。
そんな、根拠もない発想に十六夜は至っていた。
(つまり、サイオン体を壊されないくらいに強固、あるいは柔軟にすれば良いって事だ。ま、とりあえずそういうイメージもしておこう)
十六夜は、ただ万全な体に書き換えるという漠然としたイメージに、粘土製の器を弾性のある金属性に変えるイメージを付加する。
そうすれば、半透明だった五輪澪は急激に色を取り戻し、透明度を失ったところで、この場から消える。
『付喪神』が破棄された。つまりは、書き換えがとりあえず成功したのである。治療が完全であるかは不明だが。
「……。ありがとう、篝。充分だ」
流れ込んでくる暖かみはなくなったが、十六夜の腕に巻き付いたままのリボン。十六夜はそのリボンをもう解いて良いと示すのも合わせ、篝に純粋な感謝の気持ちを伝えた。
しかし、篝は、沈んだ表情をしながら、十六夜を見つめている。
「……篝?」
「……私は、貴方に謝罪したいのに。……その意志を明確に伝えられない事が、悔しくて仕方がありません」
罪悪感を帯びる瞳が、十六夜を映している。
「……お前は、何か俺に悪い事をしたのか?」
「……はい。貴方を、利用し続けた。貴方の知識を借り、さらには貴方の魂を弄んだ。……この世界を、この未来を迎えるには、そうするしかなかった。でもそれは、貴方を利用した事に対する免罪符にはなり得ません。……だから私は、貴方に償いがしたい」
ただ言葉を紡ぐ篝。何を意図した言葉なのか、十六夜には分からない。
だが、彼女のその目には覚えがある。
篝のその目は、贖罪したい者がする目なのだ。ふとした時に鏡に映った自分がしている目なのだ。
「……安心してくれ、篝。お前から『アウロラ』を貰う機会はいくらでもある。今後も患者を治療してかないといけないからな」
十六夜は居たたまれなくて、その原因たる篝の罪悪感を少しでも拭えるように、慰めの言葉を吐いた。
ただでさえ周が『
その事は、篝にも勘付かれているのだろう。慰めも虚しく、篝の表情が晴れる事はない。
「じゃ、じゃあ、俺はそろそろ行くわ」
居たたまれなさが限界を超えた十六夜は、逃げるように意識を地球へと戻す。
草木が淡く輝くその神聖な丘には、十六夜の行方を追うように地球を見上げた、1人の少女だけが残された。
「……」
「お戻りになられましたか、
椅子に座らせていた
一応捕捉するが、このテンプレートな行いには患者や依頼人に
「……、周胤。状況は、て……。うん……」
周胤から治療結果の報告を催促しようとした
「ねぇ見て、洋史!逆立ちしながら腕立てもできるわ、親指一本で!これ、ずっとやって見たかったの!」
親指だけで倒立腕立てをしている五輪澪。少なくとも虚弱体質は治療できた事をこれでもかと表す、これ以上ない光景である。
「ね、姉さん!下着、下着見えちゃうから!」
「下着なんて見られても減るもんじゃないわ!私は下着どころか全裸を毎日見られてるんだから!」
「そ、それは世話係の人だろう!?」
五輪澪は体が万全になった事でハッチャけており、洋史はその変わりように困惑を禁じ得られずにいる。
「……悪いが、ちょっと良いか?」
「あら、戻ってきたのね!」
そうして、五輪澪は
「ありがとう。本当にありがとう。貴女のおかげで、私は諦めていた人生を、人としての生を取り戻せる」
酷く暗かった五輪澪の瞳は、希望に輝くそれへと変わっている、その瞳が恩人を網膜に焼き付けんとばかりに、
その行為が、
「この恩は必ず返すわ、私の何を賭けてでも。だから、
「……
「……そう。……そういう事ね、分かったわ」
五輪澪の手を、彼女が抱く恩義を、
「……自分の
その言葉はとても小さく呟かれ、超人ではない
ただ、五輪澪から溢れ出す妖艶さは肌でが如く感じ取り、怖気を覚えるのだった。
五輪澪:どんどん虚弱になっていく中、それでも力を持つ者の責任感と、故郷を愛する愛国心を持ち、以って心が圧し潰された女性。結果、責任感と愛国心だけで生きてきたような存在となった。
そんな彼女はあるはずのない希望の光が目に入り、ないと思っていた救済をその身に経験し、その心には情熱が注がれることとなったわけである。
彼女は相手の魔法資質を光のように知覚する特別な知覚系魔法を持っている。あくまでそういう知覚系というだけで、霊子放射光過敏症ではないし、プシオンは視認できない。
メタ的な話、ほぼオリジナルキャラクター。本作ではこういうキャラだと、ご了承ください。
五輪澪の超人スペック:超人の中でも下の下。Rewriteで言えばガーディアンに入りたての西九条灯花レベル。それでも短距離走世界記録保持者のペースで数㎞は走れる(超人になった壬生紗耶香とほぼ同等)。
五輪澪の超人技能:種別は汚染系に属するが、新たな固有魔法を獲得するような事はなく、以前までの魔法資質が純粋に強化された。また、相手の魔法資質を光のように知覚する知覚系魔法も強化されており、以前以上に相手の情報を読み取れるようになっている。油絵の厚塗りと称した、その奥の光までも。
閲覧、感謝します。