魔法科高校の編輯人   作:霓霞霖

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第百三十九話 望外

2097年6月9日

 

 面倒事を(こな)した土曜は既に昨日の事。何も予定がないはずの日曜日。

 今日くらいは休めるかと気を休めていたのだが、そうも行かないのが現実だ。

 

 予定外の報告が、周妃からもたらされたのだ。

 

「……俺も耳が悪くなったかな?……なんか、USNAがまたバカをやったと聞こえたんだが」

 

「そういう感想が出てくる時点で、聴覚は、ついでに思考能力も正常でしょう。USNAがまたパラサイトを呼び出したのですから」

 

 聞き間違いを期待したのだが、周妃は念押しに再度報告した。『USNAがまたパラサイトを呼び出した』と。大事な事なので脳内で反芻し、都合3度その事実を頭に入れる。

 

「……何をどうしてそうなったんだ?」

 

 俺は怒りを通り越して困惑していた。USNAってそんなバカだったっけと、事実を受け入れ切れていない。

 

「詳しい経緯は分かりませんが、パラサイトを呼び出す場、マイクロブラックホール生成・蒸発実験の場には、あのレイモンド・クラークが居たようです」

 

「……レイモンドに唆されたって?……いや、ハッカーに唆されんなよ。……情報精査もできないのかよ、USNA軍は」

 

 結果として、以前もパラサイトを呼び出したマイクロブラックホール生成・蒸発実験を実行したUSNA軍の一派(スターズ第三隊)と、その実験に立ち会ったレイモンドは、あえなくパラサイトに憑依されたらしい。

 

「……実験以降、まだ目立った動きはないんだよな?控えてたスターズ随一の精神干渉系魔法(ルーナ・マジック)使いとやらが、精神の変質を上手く抑えたのか?」

 

「そこまでは……。ただ、その人物の力量を鑑みるに、パラサイトの浸食を防げるとは思えません。出来て自身1人かと」

 

 スターズ第三隊はパラサイトへの対抗策を用意していたが、周妃からすれば、対抗できるはずもないという話。

 パラサイトを甘く見過ぎであるし、そもそも何のために呼び寄せたのか、意味が分からなすぎる。

 

「パラサイトの浸食は受けていると仮定して……。以前の失敗を踏まえ、密かに増殖するためか……?」

 

 スターズ第三隊やレイモンドの思惑はともかくとして、その先を思考する。憑依したパラサイトは、どう動くつもりなのか。

 パラサイト自体には、生殖本能しかない。生きる。そして増える。それだけだ。

 吸血鬼事件、前回のパラサイト騒動も、言ってしまえばそれだけ。どうやったら自分たちは生存できるのか。どうやったら自分たちは増えられるのか。それを模索していただけにすぎない。

 その過程に犠牲が出たのだが。パラサイトからしてみれば、自分たちが増えるため・生きるために人間を結果として殺してしまうのは、俺たち人間が肉を食うために動物を結果として殺している事と、なんら変わらないのだろう。酷い言い方をすれば、下等生物はいくら殺しても気にならない、という訳だ。

 

(パラサイトが人殺しを逡巡するとは思えない。だから、今回も人を襲うはずだ。まだ暴れていないのも、前回の失敗を踏まえてと考えれば、何らおかしくはない。ないんだが……)

 

 自身で出した仮説に、違和感を覚える。

 相手の目的は、本当に、密かに増殖する事だけなのだろうか。

 

「……ダメだな、判断材料が少なすぎる。……、周妃、とりあえずパラサイト憑依者の監視を続けてくれ」

 

 結局仮説は崩せず、俺はただ違和感の原因を欲して指示を出した。最終結論は、相手の出方を見なければ出せそうにない。

 

「シリウスはどうしましょう。今回の憑依者はほとんどがスターズですから、憑依者が暴れた場合、高い確率で巻き込まれると思いますが」

 

「こちらが手を出すまでもない事を期待したいし、手助けしようがないんだが……。そうだな。俺の方から母上とバランス大佐に報告しておけば、どうにかしてくれるだろう」

 

「……万が一ですが。シリウスが自国に居られなくなったら?」

 

「……そんな事あるか?……いや、そうか。そういうルートか」

 

 周妃の懸念を伝えられて、俺は得心が行った。

 こういう感じでリーナは達也たちと合流するのか、と。

 そう得心が行ったからこそ、俺は周妃に頼む。

 

「出来ればで構わないが、リーナを国外に逃がす準備をしておいてくれ」

 

「逃亡先は日本、ですね」

 

「そういう事」

 

 俺と周妃は、不敵な笑みを浮かべ合った。持つべき部下は優秀なのに限る。こいつは正確には部下ではないけど。部下ムーブが板に付きすぎている気がするけど。

 

「準備は問題なく行えますが。周循を遣わす許可がいただきたく」

 

「国外逃亡させるなら、亡命幇助担当の周循が適任か……。しかしそうすると、USNAにまで(ティエン)の組織が露呈するな……」

 

 今にでも騒動が起きそうな状態だ。専門家を送って早く亡命幇助の準備を整えたい、そんな周妃の意見は理解できる。

 でも、『(ティエン)』という存在を、俺はまだ広めたくはない。1万近くの人員がある組織を運営しているとはいえ、その組織は新興組織だし、ぶっちゃけ『魔物』技術欲しさに集まった烏合の衆だ。腐っても大国のUSNAと張り合えるはずもなく、敵視されかねない事は間違ってもやりたくない。

 

大人(ターレン)。これは組織の力を、(ティエン)老板娘(ラオバンニャン)の影響力を示す好機かと。亡命を成功させられれば、組織の求心力も高まります」

 

 迷う俺に、周妃は具申してきた。こいつにとっては組織の拡大が孫呉再興に繋がるのだから、乗り気なのは当然なのだが。

 情報網の拡大は、俺にとっても利益がある。今後、世界を相手にするかもしれない事を考えれば、情報収集能力は高ければ高い程良い。

 それに、今以上に組織が成長すれば、各国への影響力すら得られるかもしれない。まぁ、影響力と言っても、望めるのはそれこそジードがやっていたような事くらいまでか。反魔法国際政治団体『ブランシュ』の支部を各国に置くように、俺が思考誘導できる集団を各国にばらまく、と言ったような。

 

「……仕方ないか、リーナは助けたいし。……、了解だ。周循に動いてもらおう」

 

 とかく、俺はまず主目的、リーナの亡命を主眼に置き、その成功を高める事だけ考えて腹を決めた。

 リーナという、敵とすれば厄介な戦力がこちらに引き込めるかもしれないのだ。最悪、亡命幇助失敗でリーナが死んでも、俺からしたら潜在的脅威が減るだけ。失敗があまりリスクにならないなら、ベットする価値はある。

 

大人(ターレン)。許可いただき、感謝します。周循の命に代えましても、必ずややり遂げて見せましょう」

 

「いや、命には代えるな。周循とリーナ、そのどちらかが死ななければならなくなった場合、リーナは見捨てて良い」

 

「……大人(ターレン)?」

 

 俺が周循とリーナを天秤にかけたら、周妃が呆けるように目を見開いた。

 いつも微笑みを絶やさない、絶やしたとしても演技であるこいつが、本気で呆けている。

 

「……何かおかしな事言ったか?リーナは引き込めれば、確かに戦力として最高の味方だ。でも、味方になるかどうかは未確定。日本で少し匿った後、普通にUSNAに帰るなんてのは有り得る話だ。それで恩は売れても、味方ではない」

 

 四葉の食客になる。あるいは、ないと思うが日本に帰化する。それが、俺の定義するリーナの味方化だ。正直、そうなる可能性を俺は低く見積もっている。

 原作ではもしかしたら、ここで多大な恩を売って、後で大亜連とかと日本の正面衝突時に味方してくれるよう脅す、という流れなのかもしれない。

 でもそれは、結局恩の貸し借りであって、完全に味方になった訳ではない。『国家に真の友人はいない』とは、誰の言葉だったか。

 

「それに対して、周。お前は、少なくともまだ俺を切り捨てる段階ではない。お前にとって、まだ利用価値はあるはずだ。その利用価値がある限り、お前は俺に協力する」

 

 俺と周の間に国防という要素はなく、どちらも各々の大願成就を目指す、ビジネスパートナーだ。利用価値がある限り、相手を進んで助ける事も、ままある。周はかなりの頻度で、というかほぼいつも手を貸してくれるし。まぁこれも、俺が『超人』や『魔物』の研究に必要だからだろうが。

 『魔物』の方は(ファン)千夜(シェンイェ)のおかげもあって、使い手を順調に増やせている。ただ、『超人』の方はあまり上手く行っておらず、感覚的に目覚めた者ばかりで、その数は2桁台に乗ったばかりだ。

 そう。『超人』の方は、俺が『再起術(ヅァイチィシゥ)』で強制的にそう書き換えねば、全然増やせない。

 と言っても、その方法で『超人』にした手駒はまだ1人(千葉寿和、澪、防衛大臣の娘は手駒ではないのでカウントしていない)、ジロー・マーシャルしかいないのだが。周がなかなかさせてくれないのだ。

 

 とかく。俺にとっての周も、周にとっての俺も、まだ役に立つ駒なのだ。役に立つかも分からない駒とは、味方になるか分からないリーナとは、比べられない価値がある。

 

「……」

 

 そんな俺の考えを聞いて、周妃は凄く微妙な顔になっていた。強いて表現するなら、「マジかコイツ」という感じの顔である。

 

「……何だよ」

 

「いえ、まぁ……。どのような人生を歩んできたら、そんな鈍感になれるのかと」

 

「俺が鈍感?」

 

 何をどう受け取って微妙な顔をしているのかと思えば、まさかの評価に俺は面食らった。

 

「『鈍感』以外で評するなら、『朴念仁』でしょうか」

 

「何を言いたいのかは分かったが、何を言ってるのかはまるで分からん」

 

 他人からの恋慕に鈍いと言っている事は分かったが、何故そういう結論になったのか。理解できないし釈然としない。

 

「私はこんなに愛しているのに、全然分かってくれないからですよ。私はそれこそ、抱かれても良いくらいなのに。……良ければどうですか?一晩」

 

「誰が中身男なんて抱くんだよ。それに、お前は俺の遺伝子目当てだろ」

 

 メイド服の胸元を開けて間近に迫ってくる周妃を、俺は物理的に押し退けた。

 いくら誘惑されたって、中身が男と知れているのだから、気持ち悪さしか感じない。

 

「心外ですね。女とし生きた経験はそこそこありますよ?」

 

「俺はお前を女として見てきた連中に同情するよ」

 

 こいつの事だ、絶対に己の女体を利用してきている。そうして、中身が男と知らずに抱いてしまった奴らは、きっと多い事だろう。

 『知らぬが仏』とはこの事である。せめて祈ってやるべき事は、そのまま男と知らずに死ねている事か。抱いた後に中身が男であると知った、なんて事があったら、俺はそいつを想って泣ける自信がある。

 

「ふふっ……」

 

「……今どうして笑ったん?」

 

 本当に微笑ましいモノを見たような周妃に、俺は不気味さすら覚えていた。今、何処が笑えたのだろうか、と。

 

「失礼をお許しください、大人(ターレン)。しかし、私は嬉しいのです。最近、貴方はよく素顔を見せてくれるようになりました」

 

「人のツッコむ姿を『素顔』と言うか、お前は」

 

「等身大と、言い換えても良いですよ?本当の貴方はきっと、友人と馬鹿をやって笑い合うような、そんな純朴な人だ」

 

 周妃のその穏やかな微笑は、まるで母のようだった。

 我が子の幸せを願うような、母の顔だった。

 それは、俺にとって、酷く罪悪感を覚えさせる。

 報いる事の出来なかった母を、思い出してしまうから。

 

「……そんな生き方が、許されるはずがない」

 

 だから俺は、俺の罪悪感が口から絞りだされた。

 そうだ、許されるはずがない。親不孝者だった俺が、そんな幸せに生きて良いはずがない。報いを受けなければならない。罪を償わねばならない。

 そうしなければ、俺は俺を許せない。

 

「……失礼しました、大人(ターレン)。戯れが過ぎました」

 

 謝る周妃は、酷く悲しげだった。大切な人を、不意に傷付けてしまったような。

 

「……ああ。……仕事に戻れ。俺も、真夜に連絡を入れなくちゃいけない」

 

 そんな周妃にどう応対すれば良いのか悩んだ末、俺はただ、周妃を追い出す。

 周妃は何も言わず、一礼してから書斎を退室する。

 

 静かになった部屋で、俺は眉間を抑える。

 

(最近、感情が制御できなくなっているような……)

 

 素顔がよく出る、と言うか、感情的になりやすくなった事を、俺は自覚していた。

 

(……いや、振り回される事が多くなっただけだ)

 

 少し思い返す、感情的になった事。

 レイモンドに怒鳴ったのは、あれはあいつが俺の地雷すぎただけだ。しかも、自分でも気付いていない地雷だった。

 『自分でも気付いていない地雷』に関しては、前もあった気がする。真由美をすっぱりフってやった方が良いと、摩利に助言された時だったか。

 

(……嫌われるのは、地雷になるレベルで嫌、なんだよな。前者は親に嫌われる観点で、後者は知人に嫌われる観点で)

 

 自己分析は終えている部分だ。

 俺は、人に嫌われたくない。

 

「……改善のしようがないな」

 

 死んでも治らなかった馬鹿な部分だ。どうしようもないと、それについては諦める。

 

(澪や周妃に振り回されて素でツッコんでしまうのは、完全に条件反射なんだが。2年前はどうだったかな……。振り回してくる奴が居なかったのもあるが、そういう事をする精神的な余裕がなかった気がする)

 

 『魔法科高校の劣等生』が始まるという2年前。原作には過去編もあるから、何処を物語の始まりとするかは意見が分かれるだろうが。少なくとも、原作で描かれた最初のシーンは、司波兄妹が第一高に入学するシーンだ。転生者である俺は、その場面に立ち会った瞬間が物語の始まりであると、強く感じられた。知っている面倒事が押し寄せてくる事に頭が痛くもあったし。

 そう。知っている面倒事、降りかかる既知の未来に対処せねばと、先の事で頭がいっぱいだったのだ。

 おかげで、俺はずっと気負う事が出来たのだろう。『四葉十六夜』を演じ続けねばならないと、脅迫観念を持っていられたのだろう。

 だが、最近はそんな状況が変わってきているような気がする。

 

(ティエン)の役も演じなくちゃいけなくなった。そのせいで、『四葉十六夜』の仮面が外れる時が出てきたのか。いや、思えば。周公瑾に俺がパラサイト憑依者だとバレた時も、俺は『四葉十六夜』じゃなかった気がする)

 

 大分前から『四葉十六夜』ではない時があったが、それが増えてきた。『四葉十六夜』でなくても、周りに受け入れられる時が増えてきたのだ。

 それはつまり―――

 

(―――違う。甘えるな。『●●(お前)』は認めてもらえない)

 

 緩んでいた気を、俺は引き締めた。

 やり遂げると誓ったのだ。罪を償うと決めたのだ。

 『●●(本性)』が露呈してはならない。

 もうすぐでゴールなのだ。『魔法科高校の劣等生』は、司波達也の高校3年間を描く物語のはずなのだ。

 ここまで来て、ここで躓いたら、今までの努力が水の泡となる。

 

(……『もうすぐでゴール』、それもあるか)

 

 ゴールが近い事の喜び。もうすぐゴールだと舞い上がっている部分が、俺の中にあるのだろう。ようやく終わるという気の緩み。やっと終われるという、希望。

 そして、絶対に勝ち逃げできるという安心感。

 

(間違っても俺は、高校生編以降は付き合えない)

 

 仮にもし、『魔法科高校の劣等生』に続編が出るとしても、そこに自分は絶対居ない。

 

(『アウロラ』が、寿命が足りない)

 

 『リライト能力』を使いすぎた。使う場面は限定してきたつもりだが、そういう場面に限って使う寿命の量が多かった。

 だから、もう残り少ない。

 

(『ポイント・オブ・ノーリターン』、ごくわずかの残量を認識する、というところまでは行ってないが。まぁ、どう足掻いても大学生編なんて乗り切れないだろう)

 

 今の残量でも、20歳まで生きられたら御の字。

 俺は、そんな予感がしている。

 だから、どうなろうが勝ち逃げだ。

 原作主人公の大事な3年間を支え切って、母親役に子供たちの尊さを説き切って、晩節を汚す事無くエンディング。

 これ程素晴らしいハッピーエンドがあるだろうか。

 それ以上のエンディングが、俺に望めるとは思えない。それ以上のエンディングを俺が臨めるなんて、思わない。

 

(しかし。俺が死んだ後の真夜、雫、真由美だよなぁ……。絶対ヤバいだろ)

 

 その上記3人には大きな心の傷を残す。それくらいは俺でも予想できる。

 

(いっそ抱くか?全員。子供でも仕込めば、て、それは下世話すぎるか。……やっぱり、下手に手を出さず、一時の思い出程度に留めて貰うのが最善か)

 

 引きずらせないように、何も残さない。何だったら、俺の私物を全部始末するか、とまで考える。周にでも頼んでおこう、俺が死んだら俺の私物を全部燃やせと。

 

(さてと。終活はここで区切ろう。しなくちゃいけない仕事がある)

 

 USNAがまたパラサイトを呼び出した事を、真夜に伝えなければならない。

 しかし、そこで思い至る。

 

(電話で伝えようものなら、レイモンドに捕捉されるな……)

 

 電子ネットワークの情報をリアルタイムで覗き見るツール、フリズスキャルヴ。それが邪魔になる。

 フリズスキャルヴのオペレーターであるレイモンドに、今しようとしていた電話を盗聴されたら、レイモンドたちパラサイト憑依者は今すぐに動き出すだろう。こっちの対策準備時間がなくなる、という事だ。

 しかし、知られたくない一心で文通などしていれば、それこそタイムアウト、レイモンドたちが先に動き出す。

 

(周循がリーナ亡命幇助の準備が済んだところで共有。それが最善か?)

 

 最善策を考える。優先順位を考える。

 亡命幇助において、優先すべきは未然に防ぐ事ではない。リーナをこちらに引き込む事だ。言ってしまえば、リーナを亡命させられるのであれば、USNAでどれ程パラサイトが暴れようが、こっちは知ったこっちゃないのである。

 むしろ、パラサイト憑依者を暴れさせた方がこちらは得まである。リーナのUSNAに対する不信感が煽れるかもしれないからだ。

 

(USNAに伝えるのは遅くなって良いな。じゃあとりあえず、真夜にだけ手紙でも出すか)

 

 郵送役を四葉家に寄越すよう連絡を入れる事も考えつつ、俺は文書を書こうと、スタンドアローンにしてある端末を立ち上げようとする。

 そこで、携帯端末が震える。表示されている名前は、『四葉真夜』だった。

 

 俺は立ち上げる端末を、ヴィジホン端末に切り替える。

 そうして映し出されるのが、真夜、そしてヴァージニア・バランスだ。

 

「母上、ミス・バランス。何か重大事件ですか?」

 

 パラサイト再出現をその両者が知るのは、早すぎると思った。

 それ以外の重要情報である可能性が高い。

 それも、ヴァージニア・バランスが俺に共有するレベルのモノ。

 

〈率直に情報共有しよう、ミスター・ヨツバ。エドワード・クラークが行方をくらませた〉

 

 バランスから伝えられた望外の吉報に、俺は笑みを禁じえなかった。




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 次回の更新は、9月8日の予定です。
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