2097年9月22日
十六夜が崑崙山脈を目の前にした時と、ほぼ同時刻。
十六夜が自ら失踪するという、裏切りと言っても遜色ない扱いを受けた真夜たちは―――
―――航空母艦の上に居た。
日本海。既に、日本と大亜連の国境を踏み越えている。
言うまでもないが、現状を明確に表そう。
真夜たちは国境も世界情勢も無視して、十六夜を取り戻そうとしているのだ。
―今月15日。謎の男、おそらく東南アジア出身と思われる人物に、私の息子、四葉十六夜は襲撃されました。十六夜はその襲撃により数日昏睡。後に意識を覚醒させましたが、次の襲撃に備えて身を隠したところ、昨日の晩、再度その謎の男から襲撃を受けました。私と、そして十六夜の友人数名が暗に人質に取られている中、それを察していた十六夜は、襲撃犯の男に投降。十六夜は、誘拐されました
まず、真夜の口から世間に公表されたのは、そんな言葉だった。
これだけでももちろん、世間を騒がすに足る。が、もちろん、前述のとおり、これだけに留まらない。
―十六夜の所在は我が家で補足に成功しています。よって、我が四葉家は、十六夜の奪還作戦を決行します。十六夜は現在、大亜細亜連合・青海省へ向けて移動中です。大亜細亜連合の方々、身の潔白を証明したいなら、邪魔をしないでくださいね?
奪還作戦の決行宣言。大亜連としては寝耳に水である。
大亜連の領土に踏み入ろうとする奪還作戦は、真夜の意志によって断行された。
本来、それは起こってはならない事だ。
以前あった四葉真夜の誘拐・奪還は、大戦当時だからこそ、国際的なお咎めは何もなかった。
冷戦と言って差支えない昨今ではあるが、国際的には『平時』という
そんな平時に、強力な魔法師複数が了解なく国境を跨ぐなど、どう足掻いても国際問題だ。最悪、日本という国が国際的な立場を失い得る。
なのに、その行いが、実行できてしまった。
四葉真夜、司波達也、司波深雪、桜井水波、アンジェリーナ=クドウ=シールズ、七草真由美、北山雫、光井ほのか、吉田幹比古、柴田美月、西城レオンハルト、千葉エリカ。
非公式戦略魔法師である達也、公認戦略級魔法師であるリーナ、その同格である深雪。更には『四葉家』現当主である真夜。
十六夜奪還部隊にこの4人が混じっているだけでも、他国どころか自国が止めない訳がない理由があからさまに在る。
なのに、実行できてしまった。
1つ、日本の防衛大臣が原因だ。
―四葉真夜氏による、四葉十六夜氏の奪還作戦。これはあくまで個人的な発言だが。私はそれを認める。大亜細亜連合の首脳陣には、良識ある対応を求めたい
防衛大臣が、真夜の独断専行を認めてしまった。その上で、大亜連に道を開けるよう、要求したのだ。
『個人的な発言』としているが、そんな逃げ道が許される訳もない。
当然、他の大臣も、日本の世論も、その発言を糾弾した。
何故、国際問題となるだろう行動を認めてしまうのかと。
防衛大臣は、開き直ってこう返したのだ。
―なら聞きたいのだが。君たちはあの『四葉』を止められるか?
とても良い笑顔だった。
止められるものなら止めてほしい、頼むから。
そんな、諦観を越えて他力本願となった様子が窺えたのである。
後はもう、周りは『四葉』を止められないので、ただ罵声を吐いて防衛大臣に責任を押し付けるだけの機械となった。
日本は、『四葉』を止められない。
防衛大臣の発言には、実は裏がある。『四葉』を止められないからと投げやりになっただけでは、決してない。
そこには、五輪家、五輪澪の密告があった。
―大臣。彼が私たちを救ってくれた
重要な部分は明確化されていない、そんな一言だけのメッセージ。
でも、大臣は気付けた。
日本どころか世界が騒いでいるこのタイミングで、五輪澪が無理矢理そんな連絡を捻じ込んできたのだ。
そう推測できたからこそ、防衛大臣は上記の発言を、真夜への後押しをしたのだ。
防衛大臣という地位を失ったとしても構わない、そんな恩が十六夜にある故に。
十師族のいくつかは、四葉の行いを愚行として止めようとした。
十師族各家当主が真夜の下へ一斉に通話を掛けたため、期せずして師族緊急会議となったが。
面白い事に、四葉を制止する事が、十師族の総意ではなかった。
―五輪家は、四葉家の奪還作戦を肯定します
―六塚家も同じく、です。四葉十六夜殿、十師族直系が誘拐されたのに即応しないようでは、十師族の、ひいては日本魔法師界の沽券に関わります
四葉家に同調するのが、五輪家と六塚家の2つ。
五輪家の意図は言うまでもなく、十六夜に恩があるためだ。
六塚家は、感情的になっている部分が大きいが、自国魔法師の沽券、というのも論理的ではある。自国民が攫われて何もしないなんて、誘拐を推奨しているようなものではあるからだ。合わせて、ここで苛烈な報復をするのが、今後の誘拐を抑止する見せしめともなる。そういう論理がある。
そして、意外にも、もう1つ、同調する家があった。
―七草家も賛同しよう
七草弘一だ。
その表情は、いつもの微笑みを貼り付けたものではなかった。
固く口を結び、苦悶を噛みしめているようでもあった。
皆が読み取る。
かつて四葉真夜が攫われたような、過去の焼き直しはご免だ。
そんな、かつて無力だった己の後悔。それを晴らす千載一遇の機会を見つけたような面持ちだ、と。
賛成3票。これで奪還作戦・賛成派が四葉含めて4つだが、当然残り6つは反対派だ。
ほとんどが理性的で体制的に反対意見を並べ立て、一条剛毅はもはや怒声を放つ勢いで否定していた。
会議が膠着したところで、鶴の一声。
―で、君たちの誰が真夜を止めるのかね?
いつの間にかに居た、九島烈がそう言い放ったのだ。
彼は実に楽しげだった。
これ以降、師族会議は防衛大臣の方と同じような結末となる。
四葉による奪還作戦は決行される。
とにかく日本の方はそれで済んだ(騒ぎが収まってるとは言えない)が、世界情勢はどうか。
―USNAは、ヨツバの勇気と誇りある行動を称える。家族を想い、行動に移す姿は、まさに日本の姿と言えよう。よって、ヨツバの行いは心ある正当な行為であり、大亜細亜連合は日本が侵略行為に移らない限り、邪魔をすべきでない。邪魔をすれば、国民を想う行動を逆手に取るような、人道にもとる者となるだろう
USNAも、真夜の奪還作戦に肯定的な声明を出した。
意図は、複数。
心ある行動に賛同する、人道のある国家である事のアピール。
四葉十六夜という良心を失った『四葉』が、今後どんどん苛烈になる事を想像してしまった恐怖。
仮にもし日本が侵略行為をしても、こちらには被害がないし、むしろ仮想敵国同士が削り合ってくれるというアクドイ計算。
単純に言って、この奪還作戦がどうなろうと、USNAに短期的な損害はないのだ。四葉十六夜の喪失も、一部(バランス大佐)が抱くだけの、杞憂とすら揶揄されるものであるし。
この声明発表はローリターンだがノーリスク、という話である。
それで、道を何もせずに開けろと、日本とUSNAから言われている大亜連はと言うと。
それどころではなかった。
そもそも四葉十六夜を誘拐した襲撃犯が大亜連に向かっている、そんな事実も大亜連としては急かつ理不尽に殴られた思いなのだ。
それに加えて、である。
新ソ連との国境に、新ソ連の元・戦略級魔法運用部隊、コマンダ『トゥマーン・ボンバ』の面々が集結していると、大亜連は掴んでいた。
―『四葉』が国土を通りたがってる?そんなのに構ってる場合か!新ソ連が戦略級魔法で侵略してくるかもしれないんだぞ!
とある上層部の一言。それは大亜連首脳陣にとって総意と言って間違いなく、故に、意志は決定されたのだ。
つまり、四葉に構っているリソースあるなら、新ソ連への対応に回せ、という話である。
確かに『四葉』は『アンタッチャブル』と恐れられる集団であるが、結局その集団は1つの家系だ。対して新ソ連は国家という集団。
想定される被害はどう見積もっても後者の方が大きく、もって天秤は新ソ連への対応へと傾いた訳だ。
もちろん、四葉の方へも最低限の監視、不審な行動があったら即座に通報する警報程度は付けるが。
こうして、新ソ連との緊迫状態に対する備えと、身の潔白の証明をするため、日本の強力な魔法師が入国する事を許可するという奇跡が起こったのだ。
それで。なんでこのタイミングで新ソ連が国境に戦力を集中させたか、という話であるが。
まずは、こんな情報共有だ。
―イザヨイ・ヨツバっ、彼が
ガリナ・アンドレエヴナが、他のアンドレエヴナたちにそう共有したのである。新ソ連上層部にも盗み聞きされない独自の通信で。
とても悲しい事だが、アンドレエヴナたちの忠誠心は新ソ連に向けられていない。モルモット扱いどころか兵器の部品なのだから、然もありなん。
そして、兵器の部品だった状態から人の尊厳を取り戻してくれた
こうなると、話は簡単だろう。
アンドレエヴナたちは、新ソ連の意志など無視して、十六夜の救出に動こうとした。
―貴様らっ、何のつもりだ!誰の許しを得て―――
―
―貴様らが帰属しているのは我が国、新ソビエト連邦だ!あの、天使紛いを名乗る悪魔ではない!
―では、亡命します。今までお世話になりました
そんな会話が、アンドレエヴナたちと新ソ連首相の間に成されたとか。
厄介なのが、アンドレエヴナたちは個々が戦略級魔法師として
そんな者たちが亡命すると言っている。しかも、亡命先は大方
新ソ連首相は、妥協するしかなかった。
妥協案が、アンドレエヴナたちを大亜連との国境付近に置く事。
真夜たちが大亜連国土を踏めるようにする、いわゆる陽動だ。
―新ソ連を監視するために、君たちはあの悪魔から指令を受けているのだろう……?
新ソ連首相はこうして、
新たな戦略級魔法師を生み出したら、こんな獅子身中の虫など処分してやる。
そんな恨み節を胸中に秘めながら。
各国の
これらは全て、ある意味で十六夜が成してきた行いの結果と言える。
孤独な戦いに臨もうとしていた十六夜本人にとっては、それは皮肉な話かもしれない。
勝手に都合良く整えられていた航海を、真夜たちは征く。
ちなみに、真夜たちが乗っている航空母艦は、防衛大臣が手配した物だ。
この後どうせ責任を全部被って辞職するんだからと、色々と吹っ切れている防衛大臣である。艦自体には一切攻撃手段がなく、戦闘機も載せていない状態ではあるが。
世界各国が不思議なくらい邪魔しない航海。
だが当然、襲撃犯の一派は、妨害の手に出る。
真夜たちを空母で以って大亜連に送り届けるべく、空母の乗組員としてその空母に詰めている国防軍人。管制室にて普段の航海と同様、通信機を操作している通信士が、不審な通信を掴む。
「これは……。四葉真夜殿、おそらく我々、いや、貴女方宛ての通信です」
奪還部隊の代表として管制室に居た真夜に、通信士はそう告げてから、その通信を艦内全域に流す。
〈我々は、『聖女』の旗下に集いし、人類再生を望む一団。今代『英雄』は、我等が崇高なる意志の礎に、人類再生の第一歩になる。それを阻むというならば、我等一団、全力を以って排除する。今ならまだ間に合う。無用な抵抗を止め、再生の時を祈りて待て。繰り返す―――〉
以降、同文が繰り返されている。
それは、四葉十六夜を生贄にして人類に不利益を与えようとしているという自白であり、その行為を妨害しようというなら攻撃するという脅迫でもあった。
「何言っているのか、訳が分からないわね。貴方たちこそ、十六夜を無抵抗で返すなら、まだ許してあげるわ」
真夜は密かに青筋を浮かべながら、そう言い返した。
〈――崇高なる意志の礎に、人類再生の第一歩になる。それを阻むというならば、我等一団、全力を以って―――そちらの意志は分かった。実力で以って排除しよう〉
繰り返されていた無機質な通信に、意志が灯る。
警告は終わり、宣戦布告である。
「レーダーに感あり!」
管制室の観測員は、冷静でありながら緊急事態を如実に伝えてきた。
レーダー画面に映されるのは、大きな影。
空母の前で、その影が跳ねる。
管制室の乗組員にも、真夜にも、その正体が視認できた。
鯨だ。ただし、その肌は金属に似た光沢を放っている。
「総員っ、物に捕まれ!」
艦長がそう叫んだ。
航海を経験する者たちなら分かる事だ。あの跳ねた巨体が着水した時、どれ程波立つ事か。
案の定、巨体は空母のすぐ傍で着水しながら、大きな波を立てた。その波が、空母を揺らす。
数秒、床が揺れ動いた艦内。その後には艦のバランサーが艦を水平に戻す。
しかし、21世紀末の空母に積まれた優秀なバランサーとはいえ、限界はある。というか、大しけ等の自然な荒波は想定されているが、人為的な荒波など想定されていない。
つまり、この鯨の着水を連続で続けられたら、空母は転覆する。
「達也さんを呼んで!」
「もう来てます!そして結論を言うと、俺には対処できない!」
攻撃能力を魔法師に頼らなくてはいけない現状、真夜は達也を呼び寄せようとする。達也は呼ばれるまでもなく管制室に駆け付けたが、彼は対処不可能と告げた。
「何故!」
「個体に見えますが、あれは群体です!1体ずつ消す『
合わせて、ここまで接近されると、『
複数体の『魔物』が大きな鯨を形成するというこの群体『魔物』は、端的に言って達也対策となっていた。
元々の設計思想も、達也対策に近い。この巨体を消し飛ばすとなると、大火力を使わざる得ないが、レーダーを潜り抜けるステルス機能で接近し、大火力が自滅となる形で封じる。
そして、ちまちまと部位破壊で削ってくるならば、破壊された部位を担っていた個体の損失を埋めるように、他の個体が分裂増殖する。
大火力での一撃必殺、部位破壊による削り、それらに対応して生み出された存在が、この『魔物』、『ナンセン・ガッケル』なのだ。
だが、達也1人を抑えただけで、完封できる集団ではない。
「ですが、問題ありません!―――深雪!」
「はい!」
達也の右腕に抱えられていた深雪が、一切の疑いなく、達也の指示を聞く。
「敵にピンは打った。タイミングを予告できる。お前は合図と同時に魔法を発動できるよう、準備だ」
「御意思のままに!」
揺れる足場。されど達也が深雪を抱えて固定。
スポッターは達也、シューターは深雪。
揺るぎない信頼関係が、失敗の可能性を小数点以下の彼方に押しやる。
「3!」
『ナンセン・ガッケル』の跳躍。揺れる水面に煽られる艦。
巨体は視界に映らない。
「2!」
巨体の影が見える。焦りは禁物。
「1!」
巨体が映る。忍耐の時だ。1体凍らせたところで、何の意味もない。
「今だ!」
「っ!」
着水の瞬間。艦は揺れる。されど狂いなく。
『ナンセン・ガッケル』は、瞬間氷結した海水の中に閉じ込められた。
まだ予断を許さない。
氷に閉じ込められた『ナンセン・ガッケル』自体を、深雪は群体の1匹残さず、細胞の一片に至るまで凍結させた。
氷の魔法使いに、海で挑むべからず。
実力を知らぬ空母の乗組員たち、だけでなく、真夜すら息を呑んでいた。
後に、皆安息を得る。
残念ながら、その安息は一呼吸の内に留まってしまうのだが。
「報告!12時方向で、み、水が竜巻のように立ち上っています!距離1,000!」
広範囲・遠方を捉えるカメラの映像を注視していた観測員が、初めて見る事象に対して動揺しながら、しかし正確に報告した。
「アナログな望遠鏡は!」
「こちらです!」
「深雪!」
「はい!」
達也が望遠鏡を求め、乗組員から渡されたそれを、流れるように深雪に渡す。
深雪には意図が分かっている。
対象が水であるなら、深雪の独壇場だ。
肉眼でしっかり視認させれば、深雪は距離を踏み倒して、対象を凍結できる。
肉眼でなければならないのは、魔法師の認識に関する問題だ。
基本、魔法師は自分の目で見ているという認識をしている対象にしか、魔法を行使できない。
デジタルで観測した物に対する魔法の行使は、魔法師にも、その機械にも、綿密な調整が不可欠である。
とかく。深雪は望遠鏡越しではあるが、対象をその目に捉えた。
魔法は行使される。水の竜巻は、凍結される。
だが、水の竜巻は、数回の瞬きの後、水に戻り、また竜巻となった。
「な、どうして!?」
「分からん!魔法じゃない!」
深雪にも達也にも、理由が分からない。
その理由が分かるのは、『魔物』使いだけだろう。
『魔物』の特性だ。単一の物質、つまり溶岩や水を『魔物』化すると、その物質の三態、気体、液体、固体を自由に変更できる。
そう。この水の竜巻はそれ自体が『魔物』、『サーカムポーラー・カーレント』なのである。
達也は試しに、『
「……やはり、ダメか」
達也が予想していた通りだった。
水の竜巻『サーカムポーラー・カーレント』は、分子単位で分解されようと、また再構築される。
エネルギーのレベルまで分解する『
しかし、そうして発生したエネルギーをどうするか。水の竜巻は水量が一万トン単位。その質量から生み出されるエネルギーは、間違いなく自分たちを巻き添えにする。
やはりここでも、達也対策が発揮されている。
考える。今ある手札での対処法。
迫る。空母など容易く呑み込むだろう水の竜巻。
正解を正しく演算する達也の頭脳は、『不可能』ばかりを示してくる。
「水波を呼んでくれ!あの竜巻は俺が吹き飛ばす!その余波を水波に防いで―――」
次善の策。何度も極小『
そんな策を考えていた矢先に、それは起こる。
奇妙な光景だ。
立ち上る水の竜巻が、何かに押しつぶされるように、ただの海面へと均された。
「な、何が……」
「……『
深雪含めた周りの疑問に、達也自身も唖然としながら答えを口にした。
◇
「海で私に挑む愚かを知りなさい」
五輪澪は、マウント・ディスプレイを装着しながら、小銃のような機械を構え、不敵な笑みを浮かべていた。
彼女は、衛星映像越しに魔法照準をする特殊なCAD『サード・アイ』を用いていたのだ。
そうして、日本の国土に在りながら、大亜連の海域に『
『サード・アイ』は独立魔装大隊が制作した軍事兵器だ。国家公認戦略級魔法師である澪とは言え、国防軍の許可なく使用する事は出来ない。
でも、一切の問題はない。国防軍に命令を下せる防衛大臣が、五輪澪をグルなのだから。
どうせ明日にも地位を辞する国防大臣は、もはや気分良く強権を振るっているのであった。
「……なるほど。『魔法』とは違って、継続的に効果を及ぼせるのですね。―――では、根競べと行きましょう」
今もなお立ち上ろうとする水の魔物に対し、澪は断続的に『
『
そこに居るのは、馬鹿げたスタミナを持つ『超人』とハイブリットされた戦略級魔法師である。
日本海はもう、達也たちに牙をむく事はない。
◇
「助かった、の……?」
「五輪澪氏からの援護です。あの水の竜巻は、もう問題ありません」
何故助かったのか分からないと呆ける真夜たちに、達也は己の眼で観測した事実を平静に告げた。
達也たちは助かった、とはならない。
一筋の強烈な光が注がれ、照射地点が白煙を上げる。
「今度は何!」
「光を束ねた熱線っ、レーザーだ!高高度、10キロ上空から照射されてる!」
「ただの光!?空母の表面を焦がす程の!?」
注がれる光の熱線は、敵からの攻撃だった。
達也から事実を告げられても、真夜たちは思わず疑いたくなる。
「叔母上!光を逸らしてください!」
「急に無茶をっ……。ええい、やってやるわよ!」
達也からの指示に、真夜は顔をしかめながらも従った。
ただの光というのが幸いしている。
光の誘導は、光の分布を操る『
空母周辺が薄暗くなったと思えば、注がれる光の熱線が屈折する。
『
つまり、敵の攻撃たる光の熱線は、真夜の魔法で曲げられている。
しかしやはり、連続性で敵の攻撃に魔法は劣る。
真夜の魔法が切れる一瞬、2つに増えた光の熱線が甲板を焦がす。
すぐに真夜は対抗して光を曲げる。が、澪と違って限界がある。
真夜の頬にはすでに、1つ汗が伝っている。
「達也さん!」
「分かってます!」
真夜が根本的な解決を訴えれば、達也は既にその方法を考えついていた。
そもそも、単純な話だ。
達也は甲板に駆け出て、上空を見る。
望遠鏡を覗き、敵を視認する。
まるで、カンブリア紀の水中生物に、幾対の羽、それも水晶の如きそれを繋ぎ合わせたような『魔物』、『キリマンジャロ』。
水晶の如き羽で熱線へと至る程に光を束ねる、飛行性能と攻撃性能に割かれたスペック。
故に、その『魔物』は、達也対策が出来ていない。
その『魔物』は如何に強力とは言え、ただの個体だ。
達也はその『魔物』を確かに捉え、『分解』する。
単一の物質で構成されていない、生物としての
『魔物』が持つ再生能力も、粉微塵にされてしまったら発揮されない。
敵が傑作としていた『魔物』3体は、魔法師によって退けられてしまった。
こうして、鮮烈なまでに表された。
『魔物』使いはもう、時代遅れなのだと。
「……ねぇ、これ。あたしたち要る?」
「エリカたちは単純に、リーナは政治的に、戦力としてカウントしていない」
『……』
お読みいただき、ありがとうございます。
次回の更新は、12月14日の予定です。予定を12月7日に変更します。
また、ファン・アートの方を、もはやいつものメビウス斎藤様から頂きました。(前話投稿時点で貰ってたけど、紹介し忘れていたのはここだけの秘密です)
十六夜くんの心理をイメージした、との事。本性を押し隠す様子、自罰的な様子がよく描かれていると思います。
○メビウス斎藤 様 作 (AIイラスト)『四葉十六夜』
【挿絵表示】
○メビウス斎藤 様 作 (AIイラスト)『四葉十六夜』
【挿絵表示】
ファン・アートをくださった事、この場で改めて感謝申し上げます。本当にありがとうございます。
毎度の如く、ファン・アート一覧の方にも掲載してあります。
他のファン・アートも含め、よろしければご覧ください。
【『魔法科高校の編輯人』ファン・アート一覧】