魔法科高校の編輯人   作:霓霞霖

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第二十一話 荒れる予兆

2095年10月20日

 

 呂剛虎に傷を負わされた俺は、奇しくも平河千秋と同じ国立魔法大学付属立川病院に入院していた。腹に指の太さの穴が四つ空いた程度なのだが個室を割り当てられていた。理由としては四葉だからだろうと当たりをつけてはいるが。

 

 昨日の午後入院から傷の手術が有ったために昨日の面会時間は無くなっていたが、真夜には手術後にマーシャルから貰った録画データと事の詳細について説明したメールを送った。しかし、それでも今日の正午には様子を見に来るそうだ。他の達也一団からも来ていたメールに無事であることを返信した。こっちも見舞いに来るそうだが。

 

「十六夜、入るわよ」

 

 色々と思考に耽っていれば、真夜が病室のドアを開けて現れる。俺の無事そうな顔を見て微笑んだが、俺の腹部の方、患者衣で直接は見えないが、傷の辺りを見て表情を曇らせる。

 

「母さん、ごめん。不覚を取ったよ」

 

 俺はその曇った顔に居てもたっても居られず、口をついて出たのは謝罪だった。

 

「不覚なんて。貴方は学生であるのにも関わらず、大亜(だいあ)連合の企みにいち早く気づいたのよ?それだけではなく、あの人食い虎もそれだけの怪我で退けて見せた。誇ることこそ有っても、責めることは無いわ。でもね、十六夜」

 

 彼女は俺の頬にそっと手を置く。

 

「心配するなというのは、母親として無理なのよ?貴方がもし死んでしまっていたらと考えるだけで、私は辛いのよ?」

 

 彼女の今にも泣きそうな顔こそが、その言葉が嘘でない証明だった。

 

「ごめんなさい、もう少しうまくやれていれば」

 

「どうして貴方は……」

 

 お互い俯いてしまって沈黙が生まれる。が、真夜はいつもの妖艶さにどこか強い意志が籠った顔を上げた。

 

「貴方が手に入れた情報で、七草と十文字に防衛の準備を呼びかけようと思います」

 

 真夜は得た情報から俺がしようとしていたことと事の重大さを理解してくれたのか、危機に対する現実的な対処に乗り出してくれるようだ。俺はそれが彼女の口から聞けただけでも、傷を負った価値があると感じた。四葉が独断専行で動くことを懸念していたが、それもなさそうで安心した。

 

「多分だけど。時期的に見て本命は論文コンペだと思う。国家が動くとしたら、技術を盗むのもあるだろうけど、主目的は次世代の減衰じゃないかな。高校生が主役だから、なおさら警備はそこまで厳重じゃないだろうし」

 

「ええ、同意見よ。十師族全体にもそう伝えます」

 

 俺が原作知識での意見だったが、彼女は今持つ情報からそれを推測していたようだ。真夜は強く頷いてくれた。

 

「ありがとう。迷惑かけてごめんね」

 

「迷惑をかけてるのは貴方じゃないわ。大亜連合よ」

 

 優しく頬を撫でる真夜の手が、どうにもくすぐったかった。

 

「事は急を要するでしょう。私はもう、行くわね」

 

 惜しむように手が離れていく。正しく男児を心配する母親の顔をしていた。俺は心配かけまいと、笑顔を浮かべて真夜を見送った。

 

◇◇◇

 

 暇にかまけて電子書籍を読み耽っていれば時刻も大分経過し、一高でも放課後となって少しした時間。ドアをノックする音と達也の声が聞こえれば、レオとエリカを達也一団がぞろぞろと入ってくる。

 

「怪我は大丈夫か?」

 

「ああ、重傷って程でもないからな。明々後日には退院できる。激しい運動は一週間ほど控えるように言われたが」

 

 20日から一週間。論文コンペまでには全快できることに俺は安堵していたが、雫は少し暗い顔をしている。

 

「一人で、そんな強い人と戦ったの?」

 

「……おそらくは大亜連合の工作員だな。さすがに特殊工作員が動いてるとは思ってなかったから油断しただけだよ」

 

 達也と深雪には全て語っているが、その他には詳細を語ってはいない。二人は俺の誤魔化しに一瞬眉を動かしつつも、それを訂正することはしなかった。

 

「ねぇ、十六夜さん」

 

「……なんだい?」

 

「私たちって、そんなに頼りない?」

 

 雫は無力を悲しむような、そういう悲哀が籠った目を向けていた。達也以外も深雪を含めて似たような表情をしている。

 

「俺は十師族なんだ。俺たちには、他の魔法師たちより危険を負う義務があり、日本を守る使命がある。まだただの学生である君たちを危険に近寄らせたくないんだ」

 

 俺は彼らの目を直視できず、俯いてしまった。彼らは納得できるが腑に落ちないという感じだった。

 

「君を守れなかった僕が言えることじゃないかもしれないけど。もっと僕たちを頼ってくれ。僕としては九校戦で借りを返せたとも思っていない。いや、貸し借りじゃない。友達なら、助けたいと思うのは当然だろう?」

 

「……ありがとう、幹比古さん」

 

 幹比古の真摯な目と「友達」という言葉を俺は受け止めきれず、ただ曖昧に感謝を述べるだけだった。

 

「あ、あの。怪我してる人の病室に長くいるのも悪いですし、そろそろ……」

 

「そうだな、そろそろ出よう」

 

 美月が雰囲気の暗さに配慮してか、歯切れ悪く退出を促そうとすれば、達也がそれを汲み取る。

 

「俺は少し十六夜に話があるから、先に行っててくれ」

 

 何故か達也だけ留まり、暗い雰囲気と達也の発言も相まって皆は素直に退出する。

 

「話って言うのは?」

 

 達也だけが残ったところで俺から話を切り出す。俺から達也に伝えられることは既にメールで説明したと思っていたが、何か懸念があるのかもしれない。

 

「スパイ、マーシャルだったか。そいつを追う時、自己暗示を使ったな」

 

 俺は「自己暗示」が何のことかすぐには分からなかったが、達也が俺固有の精神干渉系を自己暗示だと誤解しているのを思い出し、一つ疑問が解けた。

 

「なんで俺の居場所を特定できたのかと思っていたら、エレメンタル・サイトか」

 

 達也のエレメンタル・サイトは俺の記憶にある限り、対象の個別情報体(エイドス)さえ記憶していればどれほど距離が離れていても追えるはずだ。超長距離となれば現状そこまで追えるかは分からないが、一駅分程度の距離かつよく知る者のエイドスだから追えたのだろう。

 

 俺の発言を肯定するように達也は頷く。となれば、俺の超人じみた移動速度も知覚しているだろうから、それを達也の誤認に合わせて嘘をつく必要がある。

 

「確かに、俺は自己暗示で身体機能の制限を外したな」

 

「そこまでしたということは、呂剛虎が居ることに気づいていたのか」

 

「虎が出るとまでは思っていなかったよ。ただ、マーシャル以外の気配を感じてたんだ。マーシャルが逃げた時、その気配がマーシャルの方へ動いたのを感じてね。マーシャルの仲間とも考えられたけど、もしかしたら今回騒動を起こそうとしてる側の人なんじゃないかと思ったんだ。で、見事大当たりだったってわけだな」

 

 原作知識による俺の奇行を鋭く詮索され、俺は少し焦って饒舌に嘘をついた。

 

「そうか。俺もそこまでは気配を探れなかったが、十六夜のそれは知覚系の領域だな」

 

「まぁ、鋭敏すぎて日常でも視線が辛くなったりするけどね」

 

「そうか……」

 

 騙しきれたようではあるが、何か憐みの目で達也に見られる。この天才を騙すことができたのにはほっとするが、そういう目で見られるのは居たたまれない。

 

「まぁその。こんな忙しい時に見舞いに来てくれてありがとう」

 

「気にするな。それに、幹比古も言っていたがもう少し俺たちを頼れ。俺は四葉の従者でもあるんだ。当主直系を守るのも任務の内だ」

 

「……」

 

 一片も自分の身分を疑わないその達也の顔に、俺はとても申し訳ない思いを抱いた。

 

「深雪を優先するけどな」

 

「……」

 

 ガーディアンなのだからそうなのだろうが。真顔でそんなことを言われた俺は微妙な面持ちになってしまった。

 

◇◇◇

 

2095年10月23日

 

 授業は日曜であるためにないが風紀委員として論文コンペメンバーの警護という活動があるために、俺は午前で退院し午後から一高に来ていた。

 

「俺が居ない間に学内でスパイが出たんですか……」

 

「うん、風紀委員っていうおまけつきで。さらに論文コンペ校内選考次席っていう特典までついてる……」

 

「数え役満ですか……?」

 

 千代田から俺が居ない間に起きた関本(せきもと)(いさお)という男のハッキング未遂事件を聞かされ、お互いに沈鬱に肩を落とす。俺はそれを対処できなかったことに、千代田は増える問題に、だ。

 

「ねぇ、司波君って実はトラブルメイカーだったりしない?」

 

「いえ、中学時代は何もなかったと聞いているんですが。それに、トラブルメイカーというよりは台風の目なのでは」

 

「どっちも迷惑なのは変わりない!」

 

 きっぱりと俺の訂正を切り捨てる千代田。書類仕事を肩代わりしているおかげで、俺との交流に棘は一切ないが。だからって達也に関して俺に相談されてもどうしようもない。

 

「まぁそう言うな、千代田。面倒事は確かに増えてるが、学内は綺麗になっているんだ。率先して膿を出してくれてると考えれば、そう邪険に扱うこともないだろう」

 

 引退しているのに何故か風紀委員会本部に居る摩利は、引退しているからかそう楽観的である。千代田は何か反論したかったようだが、憧れの先輩からの正論にため息を吐くだけに留まった。

 

 そんな時、扉をノックする音が聞こえる。

 

「司波達也です。少しよろしいでしょうか」

 

 噂をすれば影というやつか、その声を聞いた千代田はあからさまにこわばった。

 

「入って……」

 

 用件も聞かずに追い返すのは先程の正論に反論できなかった故にできるわけも無く、千代田は渋々と達也の入室を許可した。

 

「失礼します。千代田風紀委員長、今日は関本勲への面会申請を―――」

 

「ダメ」

 

 嫌な顔を隠さぬ即否定に、さすがの達也も怪訝な表情をする。

 

「こら、花音。さっき達也くんを邪険に扱わないよう言ったばかりじゃないか」

 

「だってどう考えたって面倒なことになるじゃないですか!この短い期間に彼を狙う人が学内から二人も出たんですよ!?彼が起こしてるのか巻き込まれてるのか知りませんが、これ以上仕事を増やされたらたまったものじゃないです!」

 

「気持ちは分からなくもないが、まあ落ち着け」

 

 千代田と摩利の議論に達也は不服そうにしている。俺はどうしたものかと大人しく静観していた。

 

「ちょうど明日、あたしと真由美で関本の様子を見に行く予定なんだ。それに同行させるなら構わないだろう」

 

「まぁ、摩利さんが面倒見てくれるって言うのなら……」

 

 千代田は憧れの先輩と口の立つ後輩に挟まれてはどうしようもないと思ったのか、仕方なくといった風だ。達也も摩利の「それでいいだろう?」という言葉に頷いた、非常に物申したげだったが。

 

「俺も同行して良いですか?」

 

「君がか?」

 

「ええ、達也を狙った動機がどうも気になるので。ただの逆恨みならいいんですが、どうもそう感じられなくてですね」

 

 それっぽい理由をこじつけるが、本当の理由は違う。それは呂剛虎の捕縛についてだ。俺は朧気ながら呂剛虎がどこかで一度捕まることを覚えていた。少なくとも達也がそれに一役買ったはずなのだ。だから達也にはできる限り同行したいと考えている。達也の身も案じるのももちろん、俺の雪辱を、四葉の敗北を少しでも拭うために、俺も呂剛虎の捕縛には協力したかった。

 

「うむ、分かった。君が達也くんのブレーキ役を買って出てくれるのなら、それに越したことはないしな」

 

 許可は得られたものの、担えないブレーキ役を押し付けられた上に達也を出汁に使ってしまった感じで苦笑いを禁じ得ない。達也はもう何も言うまいと達観した様子だった。

 

◇◇◇

 

2095年10月24日

 

 月曜の放課後。俺は達也・真由美・摩利とともに関本が拘留されている八王子特殊鑑別所に向かう。何故かエリカから「抜け駆けだ!」と怒鳴られたり、深雪から「お兄様をよろしくお願いしますね」と目が笑ってない笑顔で送り出されたりした。意味が分からない。

 

 特殊鑑別所に着けば、関本は牢屋というよりビジネスホテルの一室で隣接する監視部屋より監視されていた。

 

「匂いを使った意識操作ですか」

 

 関本の一室に入ったのは摩利一人であり、俺含めた三人は監視部屋から摩利の様子を見ていた。達也は今しがた摩利が使った魔法を言い当てたようで、真由美がそれを肯定する。自白剤を使われたような状態である関本は淡々と摩利の質問に答えていく。関本の回答に「達也の聖遺物(レリック)も奪う予定だった」という発言から、真由美は目を丸くして達也に問いかけたが、達也は「勘違いでしょう」と一蹴した。真由美は追及こそしなかったが、信じているようでもなかった。しかし、追及している暇も無かった。

 

 非常警報が鳴り響く。全員の判断は早く廊下に出る。摩利も関本を寝かせてから出てきたようだ。

 

「侵入者……。十六夜、これは」

 

「おそらく、大亜連合だろうな」

 

 俺と達也の会話に、真由美は内容を理解して気を引き締めたが、摩利は目を見開いていた。真由美はおそらく既に俺が真夜に回してもらった情報を聞き及んでいたのだろう。摩利は前情報が全くないというわけだ。

 

 達也は施設の端末に映し出された避難経路から侵入者の位置を割り出し、真由美がマルチスコープで確認、情報は正しいと判断する。真由美はそのまま現状を知覚していく中、俺は一つの気配がこちらに来ているのを察知した。

 

「気を付けて!敵がすぐ近くにいます!」

 

 三人と気配の間に俺は立つ。気配の方を見れば、見覚えのある男がそこに居ることに気付く。

 

「呂剛虎……」

 

「なっ、呂剛虎だって!?」

 

 摩利は驚愕に声を上げるが、目の前にいる男のただならぬ雰囲気に誤報ではないと判断し臨戦態勢をとる。達也と真由美も警戒している。

 

「十六夜、いけるか」

 

「全快じゃないが、問題ない。摩利さんは真由美さんの守りを」

 

「お前たち、私が前に出るから下がれ」

 

「摩利、内輪揉めしてる場合じゃないわ。それに、一度戦ってる十六夜くんの方がうまく戦えるわよ」

 

「っ、後でいろいろと訊くからな!」

 

 全員が得物を構える。俺も両手でシルバーブレイドを構え、カーボンナノチューブの布を硬化魔法で板状に整える。そうしてから極小範囲でアンキンドルドゥを一瞬使い、達也にこれで自己暗示をしたと誤認してもらう。この状態なら少し超人域で動いても良いだろう。呂もこちらの準備を待っていたのか、こちらの臨戦態勢を確認してから腰を低くし、わずかな前傾姿勢をとる。少しの静寂の後、火蓋を切ったのは真由美のドライ・ブリザード。無数のドライアイスが呂に向かって放たれるが、呂はお構いなしで突っ込んでくる。ドライアイスの半数は当たったはずだが、ダメージを受けた様子はない。彼の周りに感じるサイオン波はどうやら鎧のようなものを生み出しているようだ。

 

 彼はそのまま俺に向かって突っ込んでくる。俺は彼の首に向けて刃先で突く。見越していたのか、呂は首を傾けて避けるが、刃は即座にその首を刈り取るために横振りされる。今度は手が地面に着くほど体勢を低くして避けられる。一筋縄ではいかない。

 

 そこに真由美の第二射が放たれるが、呂は後方に飛んで範囲外に逃れる。第一射より貫通力を高められていたようで、壁や床に傷を残す。当たっていれば彼の鎧を貫けたかもしれない。

 

 呂の着地を狙って短冊形の刃が飛んでいく。摩利の角棒のような得物に繋がれた刃だ。呂は顔を仰け反らせてそれを躱す。視界がこちらから外れた瞬間に、俺は一歩で近づいて刃を振り下ろす。しかし、刃は肉に届くことなく直前で止まる。俺は、呂を覆うサイオンが障壁魔法に切り替わっていることを感じた。伐採技術を用いたとしても障壁魔法は切れない。使うべきは衝車だったが、発動する間もなく呂の姿が消える。

 

 気配が俺を擦り抜けるのを知覚した。狙いは後ろの二人だ。しかし、達也は呂が色を得る瞬間を逃さずグラム・デモリッションを浴びせる。呂の鎧は剥ぎ取られ、真由美はそこを逃さず第三射が放たれる。数を絞り、威力を重視したドライアイスは見事呂を捉える。

 

 大量のサイオンによる酔いとドライアイスによる痛みが呂の動きを止め、そこに摩利が呂の顔に向けて黒い粉末を振るった。粉が呂の頭を覆い、彼は体をグラリとよろめかせる。おそらくあの粉末は炭素であり、その炭素を吸収系魔法で酸化させて二酸化炭素へ。そうして呂が酸素欠乏に陥っているのだろう。

 

 俺はそこに追い打ちをかけるべく裸絞めの要領で首を絞める。元々薄れかかっていた意識では逃れることができず、呂はあえなく意識を手放した。

 

 鑑別所の警備員が現れて倒れ伏す男に目を向けるが、俺たちの制服と真由美の顔を確認して、すぐさま男の方を拘束した。達也はアイコンタクトでここからの退却を提案する。俺含めた三人から否は無かった。

 

「十六夜くんのあれ、やはり剣として使うのが本来の使用方法か」

 

 以前から訊きたかったのだろう、鑑別所のゲートを出たらすぐに摩利が話しかけてきた。

 

「ええ。もしかして千葉家でも似たような物がありましたか?」

 

「ああ、だから最初見た時から疑っていたんだが……。どこで知った?」

 

 どうやら俺が千葉家から情報を盗んだと考えたようで、俺をきつく睨んできた。

 

「俺の思い付きです。俺も剣術がそこそこできるのですが、だからと言って刀を持ち歩くのは心象が悪くなるので。どうにか隠せる剣をと考えた時に思いつきまして」

 

 間違っても原作知識でパクもとい参考にしたとは言えない。

 

「剣に秀でていれば、同じ発想に至る、か……?」

 

 釈然としないようだが、それでもきつい目は緩んだ。

 

「まぁまぁ。それのおかげで助かったところもあるし、そう荒立てる必要もないでしょ?」

 

「いや、千葉家の秘伝が盗まれたなら荒立てるべきなんだが……」

 

「それにしても剣術まであんなに卓越してるなんてすごいわね、十六夜くん。魔法に銃に剣も使えて、全く弱点が無さそうね」

 

 摩利の言葉を無視してわざとらしく話題をそらす。摩利は不満そうだが、それ以上口には出さない。

 

「弱点なんてたくさんありますけどね。おかげで病院送りになったわけですし」

 

「そうだ、それも訊きたかったんだ!君をこの前怪我させたのはあいつだとして、いったいどうして戦ったんだ」

 

 どうやら藪蛇を突いてしまったようで、別の詰問が始まった。

 

「えっとですね。達也を尾行している奴を追い払って、主犯格を探り出そうとその男を追ったら彼に遭いまして」

 

「……達也くんほどじゃないが、君も大概トラブルを引き寄せているな」

 

 俺も達也も物申したかったが、どうせ徒労に終わると口を閉じた。




案外穏便な真夜:十六夜の前では穏便な姿を見せるが果たして……。

無くなった立川病院襲撃イベント:十六夜が立川病院に入院してしまったためにその周辺の警戒度が(四葉によって)上がってしまったために大亜連合は千秋の抹消がほぼ不可能になった。しかし、周公瑾は十六夜入院前に千秋の記憶を消去済み。大亜連合はネズミ捕り優先で十六夜入院前に間に合わず、退院後は関本の方を優先したため、このイベントは無くなった。

一対四で挑む呂剛虎:『鋼気功』は発動済みであり、十六夜はまだ全快ではない。他三人もただの学生と彼は侮った。何度も任務失敗するわけにもいかないと彼に断行を余儀なくもさせたのかもしれない。結果、敗北してしまう。その後は日本軍に身柄を拘束されるわけだが、それは四葉に捕まらなかったという意味では幸福だったかもしれない。

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