2096年1月2日
雫がUSNAへと向かう日。見送りするべく達也一団が全員集合していた。雫の家族はもう雫と充分話したのか、少し離れた位置で少年少女の青春を見守っている。雫の弟・
「雫!」
家族や周りの視線もお構いなしでほのかは涙を零しつつ雫に熱い抱擁をしていた。雫は宥めるように背中をさすっているが。
「毎日連絡してね!」
「考えておく」
「そこは嘘でも約束してよ!」
「嘘で約束して一日でも連絡しなかったら心配するでしょ、ほのか」
「そこは嘘で約束しても律義に守ってよ!」
ほのかは雫を揺さぶって支離滅裂な要求をしていた。まるで生き別れの兄弟とまた生き別れになるかのようだ。
「来年度には帰ってくるんですし、そこまで大げさにならなくても」
「そうよ、ほのか。あんまり雫を困らせてはいけないわ」
「大丈夫。いつものことだから困ってない」
「雫~」
美月と深雪がどうにかほのかを落ち着かせようとし、雫が平然と無駄に追い打ちする。ほのかがコミカルに滝の涙を流しているように見えた。
「ま、まぁとりあえず。海外留学なんて貴重な経験だし、頑張ってね。雫」
「環境が変わるから体調には気を付けろよ」
「うん、調子崩さないようにそれなりに頑張る」
エリカが話題を変えると共に雫の留学を応援し、レオも体に気遣って忠告する。雫はそれらを素直に受け取った。
「あまり危険なところには近づかないようにね、北山さん」
「土地勘も無い上に、USNAは情報規制が日本より厳しい。ニュースだけじゃなく、噂話なんかも当てにすると良いかもしれない」
「私、そんなに子供じゃない。でもありがとう。しっかり自分の身は自分で守るようにする」
少し過保護に心配がる幹比古と達也に、雫は一瞬眉根を歪めるも、二人の心遣いに感謝した。
「……」
「……」
『……』
最後、まだ何も言っていない俺を雫は真っすぐ見つめる。いや、何か言うべきだと思うのだが、このほとんど言われた状況で何を言うべきか俺には分からなかった。言葉を待つ雫と言葉が浮かばない俺、そして何故かそれも見守る周り。謎の静寂が生まれる。そうして数秒の静寂の後、雫は寂しそうに俯き、しかしすぐに強い決心を灯らせた瞳を俺に向け直す。
「行ってきます」
「ああ、行ってらっしゃい」
結局俺は雫のリードに情けなく従い、たった一言の送迎を贈った。だが、それだけで良かったのかもしれない。贈られた雫は何処か満足げに歩み出した。
こうして雫はUSNAへと飛び立った。
◇◇◇
2096年1月9日
三学期最初の日となった今日。1-Aには休みボケをしているような生徒はおらず、皆が朝のホームルームでも真面目な顔をしていた。勤勉な者たちが集まっているという理由だけではないだろう。何故なら今日は、ある意味で日本魔法科生の代表となる日であるからだ。
「皆様初めまして。私はアメリカから来ました、アンジェリーナ=クドウ=シールズと言います。リーナと呼んでくださいね」
晴れやかな蒼穹の瞳に波打つ黄金の髪の少女、その華やかな笑顔を見ていったい何人が表情を保てたことだろうか。少なくとも森崎は堪えた。
そう、今日は留学生が訪れる日。交換留学生、深雪と別ベクトル・同レベルの美少女。そして、USNA魔法師部隊総隊長・リーナが俺のクラスルームに現れた。
◇◇◇
2096年1月12日
USNAからの交換留学生と四葉直系がすぐ交流を持つかどうか。こっちとしてもあっちとしても答えは否である。相手がスパイなら言うまでもないし、一般人だったとしてもUSNAのスパイが訊き出すかもしれない。四葉の情報が漏れる可能性を考えるなら、こっちが避けるのは当然である。それで、あっちは『アンタッチャブル』と世界中に広まっている一族直系に近づくかと言えば、一般人ならその悪名を嫌って、スパイなら感付かれるのを避けて慎重になるだろう。
まぁ初めに接触を拒んだのは俺の方だが。俺は昼休みを中庭のベンチや風紀委員本部で時間を潰し、放課後も達也一団に同行もせずリーナとの会話の機会を削り続けた。こんな明確に避けていれば、俺が警戒していることは分かるだろう。リーナもそれを理解してか、話しかけてくることはなかった。
そんなこんなで今日は風紀委員本部。風紀事務員なんてないはずの役職を千代田に押し付けられた俺は活動記録をまとめていた。備品の整理も達也が抜けてしまったために俺だけで事務仕事をこなしている。正直に言えば、俺はあまり不満に思っていない。体良く一人で居られる時間を得られるし、頼られるのは嫌いではない。ただ、本来活動記録の制作は委員長の仕事であり、本部の掃除も当番で回すモノであるような気がするだけだ。
そんな一人でいた風紀委員本部に近づく足音を俺の耳が捉える。
「やはりここに居たか、四葉」
「いつもご苦労様、十六夜くん」
「克人さん、真由美さん」
もしものことを想定していたが、克人と真由美が顔を見せたことにより俺は腰を落ち着ける。敵襲の懸念は霧散したが、このセットのおかげで十師族関連の懸念が生まれる。
「話したいことがあるのだけど、忙しいかしら?」
「いえ、今できる仕事は済ませましたので。場所を移しますか?」
「ここで構わん。むしろ、四葉一人なら都合が良い」
「他の人に聞かせたくないお話、ですか」
「正確には、訊きたいこと、ね」
予想していた通り真面目な話のようだ。俺が真剣な顔をすれば、克人と真由美も固い表情で俺の対面にソファへ腰を下ろす。
「留学生のシールズについて、四葉はどの程度知っている?」
「「四葉家は」という質問でしたら、俺には分かりません。留学生に関して、俺までほとんど情報が降りてきていませんので。俺個人なら、皆さんが知り得ているのと同等でしょう。彼女が九島閣下の弟の家系だということくらいです」
「真夜殿から情報を貰ってはいないか」
克人は俺の返答に自己完結して一旦思案する。
「私たちも十六夜くんと同じで、全く事情を知らされていないのよ。ただ、どう考えても怪しいじゃない?防衛大や魔法大にスパイを送るのは分かるのだけど、何故魔法科高校まで?スパイのカモフラージュ?そもそもの話、何故スパイを許しているの?」
真由美は複数の疑問で混乱している。情報の少なさで何を疑うべきかも定まっていないようだ。
「……俺の見解で良ければ話しますが」
「是非とも」「是非に」
俺が出した助け船に混乱していた真由美だけでなく、黙考していた克人まで食いついた。真由美の凄みはまだかわいいが、克人のは怖さまで感じる。元から勿体ぶる気はないが、これでは口を開かざるを得ない。
「あくまで俺が得ている少ない情報からの推測ですので、確定でないことを念頭に置いておいてください」
二人は頷き、言葉の続きを待つ。
「事の発端は、『灼熱のハロウィン』にあると思います」
「『灼熱のハロウィン』と言うと、戦略級魔法が使われた戦闘ね」
真由美はどうやら戦略級魔法が使われたことに思うところがあったようで、その魔法が使われたことを拾い上げてしまった。
「戦略級魔法が戦争で用いられてしまった初めての事例であることは確かに問題ですが、今回問題にすべきところは他にあります」
「非公式戦略級魔法であることか」
「そう、
克人は冷静に俺が取り上げようとした問題を言い当て、俺は正解であることを示しつつ言葉を続ける。
「魔法の詳しい特性及び使用者は十師族すら知り得ていないと仮定します。鎮海軍港への追撃に用いられたので日本軍の所属なのは間違いありません。軍に独自の戦略級魔法師が居て、十師族がその存在を知らなかった。ならば……」
「調査したいと思うのが当然」
「だが、内部分裂を避けるためにそれは不可能」
「なので、外部勢力に探らせるのが得策になるでしょう」
導かれた答えに真由美がはっとして口走り、克人がそれを継いで、俺が最後に締めくくる。真由美は柏手を打ち、克人は何度も首を縦に振ることでそれぞれの得心を表す。これで彼らを「非公式戦略魔法は十師族に所属していない」と誤認させることができただろうか。何処か家がそう偽装していると考えが至っている可能性はあるが、俺にそれを見極める術はない。
「ということは、シールズもスパイか」
「え?魔法科高校への留学生はカモフラージュじゃないの?」
「残念ながら、彼女もスパイの可能性が高いかと」
克人の考慮に真由美は疑惑を述べるが、俺からの提言で瞠目する。
「USNAは非公式戦略魔法師が高校生であることも疑っているようです」
「容疑者は、司波と四葉か」
克人は自身や上級生を差し置いて俺と達也を言い当てる。恐ろしい洞察力だ。俺は是非を答えず曖昧な笑みを返した。
「十六夜くんと達也くんはUSNAに狙われているの?」
「USNAも確証がなければ実力行使はしてこないでしょう。ですが、一応達也に忠告しておきましょうか」
真由美の心配に対して、俺は気休め程度の慰めをする。これで達也がリーナを怪しんでいる理由を「真由美が心配していたから俺が情報を共有した」という体にできるだろう。
「結局、私たちはどう対処すれば良いのかしら」
「静観、ですかね。俺の推測が当たっているかはともかく、十師族現当主が見逃した以上何か思惑があるでしょう。下手に俺たちが手を出すべきではないと思います」
「煩わしいが、それが妥当か」
克人も真由美も腑に落ちない様子ではあるが、しかし手の出し様もないのだ。リーナに関して、二人は不干渉になるだろう。
「とりあえず、ありがとう。助かったわ」
「同じく。助言、感謝する」
「お力になれたようで幸いです」
緊張が完全に解れたわけではないが、全員が平静を装ってこの話し合いは終了となった。
◇◇◇
2096年1月13日
達也一団と接触しないせいもあってか、一段と特筆することもなく時間は過ぎる。放課後まであっという間であり、すぐに風紀委員としての巡回の時間に至った。
いつも通り一旦風紀委員本部へ訪れれば、千代田以外花のないその場にもう一輪咲いていた。まぁリーナなのだが。「そういえばリーナの風紀委員活動見学は誰が済ましたのだろう」と、原作では達也がしていたそれを他人事のように俺は考えていた。達也は早期に生徒会に引き抜かれたため、風紀委員の活動見学には適していない。もしかしたらそのイベントは消滅、ないし他のイベントが起こったのかもしれない。
俺は巡回の準備をしつつ、今この場にリーナが居るから察せられる展開を全く考えていなかった。
「あ、四葉君。ちょっと良い?」
察したのは千代田が俺に声を掛け、振り向けば千代田の隣に居るリーナを視認してからだった。「あ、俺があの役やるのか」と。
「何でしょう。また書類ですか?」
「いつも助かってるけど違うわよ。わざと言ってるでしょ」
一縷の望みにかけてみれば、千代田の反感を買うだけに終わる。
「こちら、シールズさんは同じクラスだから知ってるわよね。彼女が風紀委員の活動を見学したいって。連れてってもらえる?」
「ええ、俺は構いませんが。良いんですか?」
「ああ、うん。まぁ良いんじゃない?危険が少なくて」
強く突っぱねられる正当な理由がない俺は仕方なく了承するが、見学として俺が不適当ではないかと暗に伝える。千代田は訳を知りながらそれを流し、リーナは首を傾げていた。
「分かりました。では、付いて来てください。シールズさん」
「あ、はい。よろしくお願いします?」
まだ疑問符が頭に残る彼女の一礼を見てから、俺は本部の出口を潜った。
「改めて。私はアンジェリーナ=クドウ=シールズ。リーナで良いわ」
「歩きながら失礼。俺は十六夜、四葉十六夜です」
巡回を始めてからすぐにリーナは俺の横について自己紹介をする。俺は歩きながらもリーナの方を一瞥して紹介を返した。
「イザヨイと呼べば良いかしら」
「呼びづらいようなら、適当なニックネームを付けてもらっても構いませんが」
「そう?ファミリネームで呼んだ方が良いか聞いたつもりだったけど、そう言ってくれるのなら何か考えましょうか」
リーナの発音が「イザ/ヨイ」で奇妙なアクセントだったために俺がそう言ったが、どうやら苗字か名前かの話だったらしい。リーナが乗り気なので俺は良しとすることにした。
「「
「一応聞きますが、由来は?」
「日本の翻訳サイトで日本語の「
「……」
Go〇gle翻訳でもしたのか、それともそういうネタサイトを引いたのか。俺は21世紀末でそのネタが通じるのかと不安に思いつつ、何処から訂正すれば良いのか悩んだ。
「どうかしたの?」
「いえ、何でもないです。とりあえず俺には意味が通じますし、変な意味の単語ではありませんからそれで良いかと」
「なら良いんだけど」
最終的に俺はツッコミを放棄したが、リーナは俺の煮え切らない顔を見て歯切れが悪い。
「そういえば、カノンと「危険が少ない」とか話していたけど。どういう意味なの?」
「ああ、それはですね。他の人の巡回でもそう滅多に違反者を検挙することもないのですが、俺の巡回ルートでは違反者どころか争う人も皆無になります。ですから、本当にただ見て回るだけになるんです」
円滑な会話にしようとしたのか、リーナが切り替えた話題に俺は恥ずかしいことを語るように少し苦笑する。俺の諍いを見咎めた回数は委員会内でワーストだ。俺の巡回ルートでは喧嘩も起きない。と言うか、俺が当番の日は放課後が平和になるらしく、先輩方すらその日は何事もなく巡回を終える。確かに非番の日はすぐに帰路に着いたり、当番の日は事前に決められたルートを馬鹿正直に守って巡回したりしているが、いったいどこから俺の当番と巡回ルートが漏れていることやら。
「……何かした?」
「いえ、一学期に違反した剣術部の半数を実力行使で検挙したくらいで、特には……」
怪訝な目を向けるリーナに俺は顔を逸らしながら告げれば、その目が俺を咎めるものに変わる。リーナの中ではそれが原因だと結論付けられたのだろう。実際、それが原因であるなら以前の達也の巡回時もそうなっていたはずだが、そのようなことはなかった。リーナの勘違いに俺への不都合はないので訂正はしない。
「サキーって鬼の副長だったりするのかしら」
「与えられた仕事を果たしているだけです。巡回中でなければ余程のことでもない限り咎めませんよ。巡回中だって、重度の違反以外はその場で注意するだけです。それと、土方歳三が鬼の副長だったというのは後の世の脚色、もしくは下手人を威圧するためのブラフだったなど、諸説があるそうです。実際は温和な性格だったとも語られています。まぁ、これも数ある説の一つですが」
「それなら尚更、サキーは副長らしいと思うわ」
「それは、どういう意味で?」
規律に厳しい印象を否定したつもりだったが、それでもリーナは「土方のようだ」と得意げに語る。リーナがどのように俺を捉えているのか、俺は純粋に疑問に思った。
「サキーは『ヨツバ』の名前をあえて背負って、他を威圧しながら平和を守っているんでしょ?実際に5月には反魔法国際政治団体のテロ行為を止めたり、7月には国際犯罪シンジケートの魔の手から学生たちを守ったり、10月には誰よりも早く他国からの侵攻を察知したり。必要悪を演じて皆の気を引き締め、影では悪と戦う。まるでダークヒーローのようだわ!」
リーナは目を輝かせながら興奮している。日曜朝8時半あたりにやっている番組を熱弁する少女のようだ。そんな純真な言葉のうちに聞き捨てならないモノが含まれているので、俺は決して微笑ましくは見られない。
「良く知っていますね。ブランシュ事件はともかく、ノー・ヘッド・ドラゴンに対してや横浜事変前の俺の行動は、公にはされていないと思うのですが」
「それはもう!私はそんな正義溢れる人が居るんだって感動して……。あっ」
興奮が少し冷めてきたところでリーナは呆ける。そう、今リーナは秘匿情報を知っていると明かしたのである。ただの留学生がそんなことを知っているわけはないのだ。人気のない校舎裏で良かったと俺は心底思う。
「……」
「……護衛役の人に教えてもらったんですか?」
「そう、そうなの!ボディーガードが随分心配性な人で、そんな聞いちゃいけなさそうなことまで話してくれたのよ!」
ばつの悪そうな顔で固まるポンコツ少女を不憫に思って俺は助け船を出したが、それにリーナはあたふたと乗っかる。この少女、本当に大丈夫なんだろうか。
「……サキーも詮索しないの?」
さすがに誤魔化し切れているとは思っていないのか、リーナはしおらしく恥じらいながら問う。
「「も」と言うことは、達也あたりに自滅しましたか?」
「自滅って言わないで!あれもこれも誘導尋問よ!」
どうやら言い当ててしまったらしく、リーナは怒りながら責任を擦り付けた。理不尽である。
「詮索しない理由は。その方が平和だから、ですかね。リーナさんの秘密は、申し訳ないですが大方予想がついています。だからといってそれを言及するのは、俺にとってもリーナさんにとっても不都合でしょう?」
予想がついている(というか原作知識で知っている)ことを、リーナがUSNAの公式戦略魔法師アンジー・シリウスであることを口にすれば、アンジーの所属するスターズは俺を消さなければいけなくなるだろう。そうなれば四葉も現状次期当主候補である俺を守るために動かざるを得ない。どっちかが滅ぶまで行かなくとも、互いの消耗は約束される。不都合極まりない。
「なんだか、サキーの違う一面も見られた気がするわ。サキーって、必要以上に人に近づかないでしょ」
「今の何処で、と訊きたいですが。まぁ、間違っていませんね」
リーナは寂しさと憐みを俺に向ける。リーナの言うことに思い当たる節があるので俺は疑問を述べずに肯定だけした。
「サキーがダークヒーローを装うのは、そうしたかったから?それとも、そうするしかなかったから?」
「……」
俺はリーナの質問に答えられなかった。俺はダークヒーローを装っているつもりはないし、今までの行動は「罪を償うためにそうしたかった」とも、「罪を償うためにそうするしかなかった」とも言えるからだ。どっちにしろ、答えるのは俺の心の内を明かすような結果になる。
「……もし、自身の立場が今と違ったら。自身の今の名前を変えられるとしたら、貴方はどうする?」
「変えない」
「え?」
「俺は四葉だ、『四葉十六夜』だ。この先何があろうと、俺は
リーナの次なる質問に、俺は意図が理解できないまま、ただ断言した。
俺に四葉以外の居場所など存在しない。不可思議な力を持つ俺を受け入れ、表で生きていける素性をくれた四葉以外に俺が生きていける場所はない。では俺を受け入れて戸籍をくれる場所になら移れるのかと言えばそれも否だ。親不孝と無能の罪を償うために俺は生きている。母親として接してくれる真夜を裏切るのは罪を重ねるだけだ。俺を有効に使い、有能な働きをさせてくれるのも真夜の元だけだと俺は確信している。
「……」
「……」
ショックを受けている様子を表すリーナとバッドコミュニケーションをしたかと後悔する俺の間に沈黙が訪れる。
「えーと、校内施設の案内でもしましょうか?巡回のルートだけならサボタージュと千代田委員長に叱られることもないでしょう」
「い、いえ。それは昨日タツヤにしてもらったから充分よ」
「そうですか……」
俺は気まずくなって案内を申し出れば、それは既に達也がやってくれたようで断られてしまった。
その後の巡回に会話はなく、俺の後ろをリーナが付いてくるだけだった。
十六夜の当番日・巡回ルート:他風紀委員がその情報を取引しているとかいないとか。当番日を知ららればその分平和な日が増えて良いのだが。一応外に漏らすのは良くない情報なので表立って広められてはいない。
Sakuya Sachi:G〇ogle翻訳でみんなも「十六夜」を英訳してみよう。筆者から言えることは「東方pr〇jectって有名やな」。
アンジェリーナ=クドウ=シールズ:十六夜に対して、事前に知らされた情報を曲解し、最初は「影で活躍するヒーロー」の印象を持っていた。実際に接触してみて、感じられた謙虚さも相まって憧れが先行していた。しかし、話す内に違和感を覚えて「もしかして、自分と同じで不相応な役を強制されているのでは」と考える。その思いが十六夜の狂気の一端を垣間見る原因となった。
閲覧、感謝します。