2096年4月28日
「十六夜、調子はどうだ」
「良好だ。1から俺専用に作ったみたいに手に馴染むよ。
俺は達也に調整してもらった2つのCADを構えつつ、その馴染み具合に驚嘆していた。元は風紀委員会本部に転がっていた備品の特化型CADなのだからなおさらだ。
しかも、以前から使っているシルバーアティラリー・アラヤとシルバーアティラリー・ガイヤも改めて調整してもらったが、使い心地は格段に上がっている。自身の手で整備はしていたが、俺には状態維持が限度だ。そこにCADの専門家である達也は改良を加えてくれた。改良と言っても、微妙に変化している俺のサイオン波特性に合わせてくれただけらしい。それで使い心地が良くなっているのだからプロの技。やはり任せるなら専門家だ。
「CAD、4つも使うんだね」
俺に付き添ってCAD整備を観察していた雫が、その奇妙な戦闘スタイルを物珍しく窺っていた。拳銃形特化型CADの4個持ちなんて、確かに早々見るスタイルではない。さらに言えば、右側に2つ分のホルスターを増設したCADダブルショルダーホルスターを装備している。奇妙さには拍車がかかっているだろう。
「ああ、アラヤとガイヤは組み込んである魔法だけじゃ足りないからね。追加で2つ、片方は防御、もう片方は攻撃を想定した魔法をラインナップして組み込んだんだ。もちろん、攻撃用の方には雫からアドバイスしてもらった魔法を、な」
「あんまりできるアドバイスがなかった。優秀すぎるのも考え物」
今回攻撃用に雫からマンツーマンで(CAD調整のために達也が控えてはいたが)とある魔法の練習に付き合ってもらった。付き合ってくれた当の本人は役不足に落胆しているようだ。それこそ手取り足取りする先生役を期待していたのかもしれない。練習中は距離が近かったし。
「十六夜、少し用心のしすぎじゃないか?サイオン弾と空気弾で完封できると思うが」
「それでは意味がないさ。魔法を封じて速攻を決めたんじゃ、ただ魔法の展開速度を競っただけだ」
達也の言う通り、勝つだけだったらここまでする必要はない。一昨日の試合を見た限り、七宝の展開速度は俺に劣っている。なので、やろうと思えば瞬殺も目ではない。だが、それでは彼が己の未熟さに気付けぬままになってしまう。それでは七宝の才能が、向上心が勿体ない。
「だから、真っ向から叩き伏せて、彼の性根を叩き直す」
だから、俺は七宝の『ミリオン・エッジ』を攻略する。
「そうか。お前がそう決めたのなら、俺はもう何も言わない」
達也は俺の意思を汲み取り、俺に言おうとしていただろうあらゆる言葉を飲み込んだ。
「さて、そろそろ時間か」
時間を確認すれば試合の時間が迫っている。遅刻しては様にならない。俺と達也、雫は第二演習室、奇しくも一昨日と同じ試合場に足を向けた。
第二演習室にはすでに七宝の姿がある。立会人である服部も顔を見せていた。他に居る面子、十三束や千代田、深雪は観客。一応、雫も観客扱いである。
おまけに泉美は観客として居るが、香澄は居ない。風紀委員の仕事を優先したようだ。泉美の方は俺の魔法合戦を間近で観戦したいだけだろう。七草の双子の七宝に対する興味は、もう薄れてしまったらしい。
「逃げずに来たみたいだな」
「売り買いの帳簿は付けるようにしてるんだ、喧嘩のもね。代金はしっかり徴収するさ」
気迫漲る七宝に冗談交じりで返せば、彼の気迫はさらに漲った。揶揄われている、もしくは不真面目であると受け取って気に障ったのだろう。獰猛に八重歯を覗かせる。怒声を上げなかったのは、まだ冷静さが残っている証拠か。
「特化型CAD4つ……。噂の『
事前に情報収集していたのか、七宝はCAD複数持ちを嘲笑せず、俺の武装を分析する。頭の回転も正常のようだ。
それにしても、『
「七宝さんの方は『ミリオン・エッジ』の触媒、ちゃんと準備できたみたいだね。昨日一日休んでたくらいだから、間に合うかどうか心配してたよ」
『ミリオン・エッジ』の触媒となるハードカバーの本、それを七宝が携えているので安心した。『ミリオン・エッジ』は遅延術式を組み込んだ本の使い捨て。丹念に術式を組み込んだ本を再利用できない。
サイオン弾などで魔法の発動を阻害されない点と、効果の割に発動が早い点はメリットだが、それにしても準備に時間がかかる。
学校を休む程のものであった事に俺は少なからず驚いていた。
そんな俺の心配を、七宝は眼光が鋭くするだけで何も応えない。
「スポーツマンシップに則って握手を交わす雰囲気でもないし、お互い対戦相手に健闘を祈る質でもないだろう。試合を始めようか」
俺からの試合の催促に七宝は一つ頷く。それで互いの了承となり、それぞれ所定の位置に着いた。達也も審判の準備を済ませている。
「では、始め!」
ゴングが鳴らされるように、達也が開始を宣言した。
俺はまず防御を選択する。防御用のCADのトリガーを右手で引き、最初に展開するのは『干渉装甲』。直接作用の魔法を防ぐための盾だ。
「チッ」
七宝の初手は直接作用の魔法だったのだろう。俺の干渉力を上回れず魔法が不発となった事に、彼は舌打ちする。
続いて俺はもう一度防御用をトリガー。発動するのは『空気甲冑』。こちらは間接的な魔法攻撃を防ぐためのモノ。『エア・ブリット』対策だ。
正直に言うと、ここまでは去年の九校戦で一条将輝が取っていた戦法の猿真似である。一般的な攻め方にわざわざ新しい防御法を考えるのも手間だ。実戦証明も一条がしてくれているし、有効性は語るまでもない。
案の定、七宝の『エア・ブリット』は俺の『空気甲冑』に阻まれる。七宝の顔は苛立ちを表すように険しくなった。
「ほら、小手調べは十分だろう?そろそろ本気を出したらどうだい?」
「……っ!……ああ。お望み通り本気を出してやる!」
試合が長引くのが嫌なのでさっさと『ミリオン・エッジ』を使うように煽れば、七宝はハードカバーに手を伸ばす。挑発に乗ってしまったのもあるが、彼自身小手調べの技では何の成果も得られない事を理解したのかもしれない。
彼はハードカバーの表紙をめくり、本のページを一部引きちぎってばらまいた。ばらまかれたページがさらに細かくなり、紙片を刃としていく。それを都合4度繰り返した。
「なんだ、しっかり分散できるのか」
紙片の刃が全て一塊になるのではなく、4つの群体を形成する。
俺はてっきり一塊にする事しかできないと早とちりしていたが、どうやら複数の群体を作る事も可能だったらしい。香澄と泉美の双子相手にも本気を出していなかったのか。
そんな早とちりを嘲笑うように4つの紙片群が四方から俺を取り囲んだ。『空気甲冑』では防御できないだろう。七宝は勝ちを確信したように不敵な笑みを浮かべてから、取り囲んでいた紙片群で俺を襲わせる。
「甘いな。回避不可能にするなら、四方じゃ足りないだろう?」
「な!?」
俺は塞がれていない上方向へと飛び上がった。一応『マイセルフ・マリオネット』の偽装がしてあるが、七宝はその大跳躍に驚愕する。
彼が驚愕して固まっている内に次の一手。俺は防御用と攻撃用のCADを持ち替え、紙片群に向けてトリガー。放たれる魔法は雫にアドバイスを貰った魔法、『フォノンメーザー』だ。
この『フォノンメーザー』は射角を固定し、発生地点をCADの銃口に設定し、なおかつ射程を3メートルに抑えたモノだ。間違っても七宝への攻撃には使わず、『ミリオン・エッジ』の紙片を焼却するためだけの魔法である。
「くっ!だが、それで攻略したつもりか!」
七宝はすぐに立ち直り、『フォノンメーザー』の有効範囲から紙片群を逃す。一回の『フォノンメーザー』で全て焼却はできなかった。できたのは見立てで一割くらいだろう。
残った紙片群がまた四方に別れ、空中に居る俺を捉えようと蠢く。俺は移動系魔法により自身の体を動かす事で回避した。
「避けたか……。だが、いつまで持つかな」
「無論、全部焼却するまでだよ」
移動した先でまた『フォノンメーザー』を放ち、紙片群を一部焼く。そして、また襲い来る紙片群を避ける。取り逃さぬように紙片をより分散して囲んできても、僅かな隙間を抜けて掻い潜り、紙片を焼く。後は、これを繰り返すだけだ。
徐々に減っていく紙片。反比例するように七宝は焦りを表出させる。
「クソ、クソッ!なんで当たらない!」
どれ程空間を埋めたつもりでも、超人たる俺の空間把握能力が隙間を見逃さない。俺は移動系魔法で空中を踊る。
「こんな、馬鹿みたいな方法でっ」
『フォノンメーザー』こそ高等魔法であるが、七宝家の秘技である『ミリオン・エッジ』とは比べるべくもない。そんな魔法に焼かれ、単純な移動系魔法で避けられる。単純な作戦で攻略されようとしている。
そして今――
「そんな……。馬鹿な……」
――紙片が全て、焼き尽くされた。
七宝は膝を屈する。自慢の魔法が攻略され、その実力差に打ちひしがれていた。
「七宝さん」
「……」
俺は空中からの着地音を響かせ、七宝の顔を上げさせる。
「これで終わりかい?」
「……っ」
茫然自失へ陥っている七宝に、俺は余裕な姿を無慈悲にも見せ付けた。だが、七宝は奥歯を噛み砕かんばかりに歯噛みし、悔しくも無力を自覚しながら、それでも目の奥にある闘志だけは絶やさない。
俺を睨みつける事幾ばくか、彼は目を伏せて床に手を突いた。
「俺の、負けです……」
消え入りそうな小さな声で、七宝は降参を宣言する。敗北を、彼我の実力の差を、彼は認めたくなくても認めたのだった。
「勝者、四葉十六夜」
達也が降参を聞き届け、システムボイスで審判の役目を果たす。
これで試合は終了。四葉十六夜と七宝拓巳の優劣は疑いようも覆しようもなく、ここに刻み込まれた。
「七宝さん、良い戦いだったよ」
俺は七宝に手を差し出す。彼の健闘を俺は掛け値なしで称えたかった。『群体制御』というのがどれ程高等な術式かは知らないが、4つの群体を操れる卓越した技能が、たかだか15歳の少年である彼にはあるのだ。賞賛に値するだろう。
「一つ訊きたい……。アンタは、奥の手を使ったか……?」
床に手を突いたまま、七宝は質問を投げかける。その意図は分かる。彼が自身の家の秘技、自身の切り札を切ったのに、相手が切り札を切っていなかった場合。それはなおさら彼我の実力差を表す事になるだろう。
「四葉家は精神干渉系魔法への適性が高い傾向にある事と、そうでない俺の母が高い殺傷能力を持つ魔法の使い手である事、それらを前提として言わせてもらうが。俺は奥の手を使ってない」
俺の奥の手が危険な精神干渉系か、殺傷能力の高い魔法かであると、そう印象を与えるような言葉を前に置く。「俺の奥の手はルール違反である」と表現するように。そうしてから使っていない事を示した。
「……っ」
「お、おい!七宝!」
七宝は駆けだし、十三束の静止も聞かずに演習室を飛び出る。七宝は俺が本気ではなかったという点のみを抽出してしまったようだ。
「すみません、会頭。僕が連れ戻します」
「いや。俺が行くよ、十三束さん」
「え……?」
十三束は七宝の指導者として負い目を感じているのか、七宝を追おうとした。が、そこを俺が制する。
「四葉、良いのか?」
「七宝さんに話したい事がまだあるので。それで立ち直れるかは、彼次第です」
「……何から何まで、世話をかける」
「元より俺が勝手に始めた事ですので、尻を自身で拭くだけですよ」
服部が貸しと思わぬよう、俺は言葉を尽くした。
これは本当に勝手な話なのだ、俺が七宝へお灸を据えたいがために試合を申し込んだのだから。むしろ勝手を許されているこっちが貸しと思うべきかもしれない。しかし、思惑は一致しているのでノーカウントである。
「それでは、後片付けは任せます」
俺はゆっくりとした足取りで七宝を探す。休憩もなしに再会はさすがに応えるだろう。
走り去る七宝の背を遠目で視認し、後は気配を辿って歩いていけば、人通りの滅多にない空き地で七宝と香澄が何やら話していた。聞こえる限り、悔しさを叫ぶ七宝を香澄が宥めつつ、何故か出血している七宝の手に応急手当をしているようだ。その会話も長くは続かない。誇りを傷つけ合って喧嘩した同士だから、長く話せる間柄では決してない。
そうして香澄が踵を返す先に、あえて俺は自然さを装って歩み出る。盗み聞きをしていないという体裁だ。
「よ、四葉先輩!?ぼ、ボクは無許可で治癒魔法なんて使っていませんよ!?」
「第一声がそれなのか……」
どうやら俺の取り締まりを香澄は恐れているようだ。何やらトラウマを植え付けてしまったか。身に覚えは二件程ある。
「香澄さんじゃなくて、七宝さんの方に用があるんだ」
「俺に、ですか……」
視線を七宝へと向ければ、彼は警戒心を滲ませながらも敬語で受け応える。頭は冷えたらしい。
「一言、贈りに来たんだ。こっちは正真正銘の助言だから、そんなに警戒しなくても良いさ」
「助言……。それはどんな?」
警戒が解けない事に俺は苦笑しつつ、諦めて助言を贈る。
「『飢えなきゃ勝てない。気高く飢えなくては』」
「けだ、かく……?」
目から鱗が落ちたのか、虚を突かれたのか。とにかく、七宝は俺の言葉に目を丸くしていた。
「『スティール・ボール・ラン』っていう、21世紀初頭の漫画に出てくる言葉だ。気が向いたら読んでみると良い。それじゃあ、俺はこれで」
七宝へ贈るべき言葉は全て贈った。これ以上は余分だ。
俺はそれでその場を後にしたのだった。
七宝への対処は終わり、反魔法師運動の対処は真夜がしており、俺はもうやりきったような清々しい気持ちで読書を嗜んでいた。
俺の自宅、その書斎にある蔵書の中から『ジョジョの奇妙な冒名言集Part1~3』『ジョジョの奇妙な名言集Part4~8』を取り出して懐かしみながら読む。
変な話だが、俺は前世で『ジョジョの奇妙な冒険』を買い揃えていなかった。何故だか8部だけを買っていて、途中で買うのを止めたのだ。絵柄が独特すぎて慣れない、というのもあっただろうが。より大きな理由は、読んでいて悲しくなったからだ。
「『信念さえあれば人間に不可能はない。人間は成長するのだ』」
第1部の主人公、ジョナサン・ジョースターの名言。この言葉はある種『ジョジョの奇妙な冒険』を象徴するような言葉だ。大雑把なまとめになるが、つまるところ『ジョジョの奇妙な冒険』とは人の成長を描いた漫画なのである。
「成長できなかった俺は、いったい何なんだろうな……」
成長できなかった俺はその言葉が胸に刺さった。返しのある銛のように刺さったまま抜けず、俺は『ジョジョの奇妙な冒険』が読めなくなった。
今世では全巻揃えたが、残念ながら前世を懐かしむためのコレクションという意味合いしかない。本編はまともに読んでおらず、名言集を時折捲っているだけだ。
「ん?電話、達也からか」
携帯端末の着信音が俺を下らぬ思考の海から引き上げる。
表示された名前に緊張感を得ながら、俺はヴィジホンに端末を繋いだ。
〈十六夜、今は大丈夫か?〉
「ああ、読書していただけだし、真由美さんも家に居ないよ」
達也の面持ちは真剣、という程ではないが引き締まっていた。話題はかなり真面目なモノだろう。俺は盗聴される危険性がない事を返事で示唆しておく。
〈そうか。じゃあ端的に言う。4月27日時点で、七宝琢磨の支援者だった小和村真紀に関係を切るよう脅しておいた。それと、高校生以下に手を出さないようにも〉
「……ちょっと整理させてくれ」
達也からバケツをひっくり返すかのように情報をぶちまけられ、原作知識があるにしても、まずどれを質問すべきか考えなくてはならない。
達也も情報をぶちまけた自覚はあるのか、俺のタイムを了承してくれた。
「えーと、七宝さんが暴走していたのは、小和村真紀が唆していたからだと」
〈おそらくな。少なくとも、俺と深雪に敵愾心を抱いていたのは、小和村が俺たちを七草と懇意にしていると勘違いさせたからのようだ。元からあった七草家への対抗心を煽っていた可能性がある〉
「なるほど……。それで、達也は七宝さんの暴走を止めるために、その支援を断ち切ったと」
〈ああ。ブランシュ事件や論文コンペデータ盗難のような騒動は御免だ。だから、七宝に限らず他へ手を出すのも止めさせた。高校生以下と定めたのは、俺に不利益がなければ構わないからだ。他人の世話まで見るつもりはない〉
「オーケー。とりあえず整理はできた」
達也との一問一答で、最初の情報から再確認しなければいけない部分は再確認した。ここからは派生する疑問の確認だ。
「まずは、そうだな。どうやって探り当てたんだ?」
〈独立魔装大隊の力で探り当てた。大隊は前から俺の周りを監視していたようで、それで七宝琢磨の暴走も察知していた〉
「そうか……」
思えば、原作でも独立魔装大隊の手によって事態を治めていた気がする。達也の周りを監視していた理由は、達也が非公式戦略級魔法師だから、だったか。納得の理由である。戦略兵器を野放しにする馬鹿は居ない。
「いや、でもそれで大隊が力を貸すのか?」
〈あわよくば七宝を引き込みたかったそうだ。独立魔装大隊には十師族によらない国防という理念がある。そのため、十師族に対して疑問を持つ魔法師を常に欲している〉
「ああ、七宝さんは七草への対抗意識が強いようだったからね。狙い目ではあったか」
戦略兵器とはいえ、個人のために大隊が動くのか多少疑わしかったが。何の事はない。彼らも彼らの利益を見据えた行動だったのだ。
「ありがとう、達也。俺も七宝さん個人にはアプローチしていたが、支援者の方には気が回っていなかった。手間をかけさせたね」
〈
「……七宝さん以外に何かあったのか?」
達也の妙な言い回しが引っかかる。まるで七宝に関して以外は手を借りたいと言うようだった。
〈小和村真紀の住居へ訪れた時、ノー・ヘッド・ドラゴンの残党が彼女を襲撃しようとしていた。俺が対処して事なきを得たが、奴らはテレビ局の飛行船を盗み出した挙句、都心でテロを行おうとしていたんだ〉
「ノー・ヘッド・ドラゴンの残党?」
〈ノー・ヘッド・ドラゴンの首領、リチャード=
達也は少し申し訳なさそうにしているが、大隊での活動に関して俺への報告義務なんてないのだ。というか、俺は小和村への対処を全く考えていなかったから、達也が引き受けてくれて感謝しているくらいである。
「遅れたのは別に良いさ。それで、手を借りたい事っていうのはその残党を手引きした奴らの調査かな?」
元が大きな勢力だったとはいえ、残党に都心でテロを密かに行う力は残っているはずがない。手引きした者が確実に存在する。だが、大隊が調べられたのがおそらくノー・ヘッド・ドラゴンの残党まで。そこから先は調査が難航しているのだろう。そうなってきて達也が借りたくなる手というのは、四葉の情報収集能力だ。
俺に報告してきたのは、当主である真夜に請うより、友人である俺に請う方が心的なハードルが低かったからか。
〈頼めるか?〉
「話は通しておくよ。と言っても、通すまでもないだろう。母上がすでに調査している案件だからね」
ノー・ヘッド・ドラゴンの残党という時点で、十中八九周公瑾の手引きである。なら、真夜は反魔法師運動を支援する組織の一員として、周公瑾を追っているだろう。
〈叔母上が調査している……。反魔法師運動関連か〉
達也は数日前に反魔法師の政治家を対処したばかりだったため、答えへ至るのは難しくなかったようだ。
政治家の訪問という情報をもたらしたのも四葉。反魔法師運動に四葉が目を光らせている事は把握できる。
「俺の勘だけど、多分繋がってるんじゃないかな。どういう繋がりをしているのかはさっぱりだけど。という事で、達也が借りと思う事はないさ」
〈恩に着る〉
「いや、着ないように言ったつもりなんだけどな……」
何か無駄に達也が恩を着て、通話は終了となった。
後に真夜へ話を通したが、やはり周公瑾が怪しいという結論を得るのだった。
変化していた十六夜のサイオン波特性:サイオン波特性の変化はほとんどないが、精神的に大きな変化があった場合や精神に心的外傷を抱えた場合、稀に変化する事例がある。達也は前者の事例と判断して疑問を持たなかったが、実際はパラサイトの憑依とその際のリライト能力使用によって変化している。
移動系魔法で空中を踊る回避方法:使われている移動系魔法は慣性の緩和が組み込まれていない、急加速及び急停止する単純なモノ。そのため、体に結構な負担を強いる。さらに、空中をそんな魔法で飛び回っているため三半規管も揺られ、普通なら酔う。十六夜は超人たる強靭な体で耐えているので、平均的な魔法師が真似できる方法ではない。十六夜は「こんな簡単な魔法で『ミリオン・エッジ』は攻略できる」と示すためだけに、この方法を選んだ。ちなみに、『飛行魔法』では速度が足りず、『ミリオン・エッジ』に追いつかれるため、そちらは採用できなかった。
何故だか8部だけを買っていた経緯:『ジョジョ』はオタクの必修科目と考えてはいたが、流行りに乗り遅れている感があり、今更1部から買い揃える気になれなかった。なので、妥協して当時連載が続いていた8部の途中までと名言集は買った。
『ジョジョの奇妙な冒険』とは人の成長を描いた漫画:個人の感想です。
閲覧、感謝します。