魔法科高校の編輯人   作:霓霞霖

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第六十七話 第一次京都遠征、始動

2096年10月5日

 

 魔法論文コンペの時期を迎えようとしている第一高の講堂。

 そこでは五十里率いるコンペメンバーが発表する理論を実演するために、実験器具を制作していた。

 俺と達也はそんな光景を二階から眺めつつ、論文コンペの警備について打ち合わせている。

 

 打ち合わせの内容は以下の通りだ。

 第一高コンペメンバーの護衛役として、風紀委員以外も有志を募りたい事。

 コンペメンバーの護衛だけでなく、現地の警備も同様に募りたい事。

 話題が逸れて、九校代表警備総責任者はモノリス・コード優勝校から選出する不文律などに触れながら、俺は達也に本題を切り出す。

 

「それで、達也にはメンバー護衛か現地警備に加わってほしいんだが。都合良いか?」

 

「……俺が加わって問題ないのか?」

 

「もちろん。達也の実力に疑問を持つ奴が居れば、その限りではないけど」

 

 俺から加わってほしい旨を伝えると、達也は演技ではあるが、少し嫌がるような態度を取った。

 なので、俺は少し皮肉を込め、問題ないと返答したのだ。

 そうして暗に参加を強制する体を取る。

 

「仕方ない。なら、俺は現地警備に回らせてもらおう」

 

「そう言ってくれると思ってたよ」

 

 今年の論文コンペ開催場所は京都。

 達也たちが追っている周公瑾の逃げ先も京都。

 つまり、現地警備に参加する事によって下見という口実ができ、達也が京都に行く事を不審がられない。

 だから達也にとって都合が良く、俺は参加してくれると確信していたのだ。

 少し嫌がった演技をしたのは、自身が京都に何の用事もないかのように取り繕うためだろう。

 とにかく、これで自然に達也は京都に行ける。

 しかし、少し嫌がった演技をしたから、下見に行くというやる気を見せるのは不自然にならないか。

 なら、俺が下見を願うべきか。

 と、そんな風に思案していた時だ。

 

「じゃあ俺も現地警備に加わるぜ」

 

 さりげなく居合わせていたレオが警備に立候補した。

 

「で、現地の警備って事なら、下見が必要だよな?」

 

 おまけにレオから下見について言及してくれた。

 下心ありきなのが透けていたが、今回はファインプレーだから見逃そう。

 

 その後はレオと同じく居合わせていたエリカが警備への参加を表明しつつ、レオへ「護衛に回って肉壁になれ」と揶揄っていたり、またまた同じく居合わせていた幹比古に「達也と2人きりのデートがしたいのか」と揶揄われたり。

 さらにはエリカが「深雪にデートと勘違いされたらどうする」と真っ青になっていたり、幹比古もつい同調して青くなったところを達也が「人の妹を何だと思っているんだ」と底冷えのする笑みを向けられたり。

 そんな学生のじゃれ合いが展開された。

 俺は、そのじゃれ合いをどこか遠い景色のように傍観するのだった。

 

◇◇◇

 

2096年10月6日

 

「は?達也が襲われたって?」

 

 放課後。達也に生徒会室へ連れていかれた俺は、その生徒会室で聞かされた事に耳を疑った。

 生徒会の面子も、俺と同じく連れてこられた雫、幹比古、レオ、エリカも、似たような反応をしている。

 

 達也はその場で襲われた顛末を語ったが、襲われた背景はぼかしていた。

 論文コンペ関連か一高生徒会狙いかと皆は疑い、結局結論には至れない。

 至れない結論を先送りし、達也は自身が狙われた事を根拠に、自身の友人たちが狙われる可能性を訴えた。

 それにより、達也一団は一人にならならない、集団行動を徹底する方針となったのだ。

 何故か知らないが、俺はその集団行動から外された。

 

「お前を狙ってくれれば、色々と楽ができる」

 

 達也はそんなぞんざいな扱いを隠さず言い放ったのだ。

 そのぞんざいな扱いは、俺がやられるような奴ではないという厚い信頼が込められているのは分かる。

 だが、俺が襲われれば真夜が敵を掃討ないし徹底的に洗い出してくれるという、打算的な意思も分かってしまった。

 そういう信頼は得たくなかったのだが、仕方ない。

 今回は信頼されている確証が得られたと、前向きに考えよう。

 

「十六夜さま!十六夜さまは私がお守りします!」

 

「いや、それは駄目だろう。君を危険には曝せない」

 

 泉美が俺の護衛に買って出てくれたが、俺は丁重にお断りした。

 家がお隣さんだから、帰り道はほぼ一緒なのだ。

 これ以上何処に集団行動を持ち込むのか。

 断っておかねば、俺の自宅の中にまで付いてきそうで怖い。

 

「私の身を案じてくれるなんて……!」

 

 集団行動を拒否したはずなのに、泉美の俺株は今日も勝手にストップ高を振り切れたのだった。

 

 

 

 時刻はまだ放課後。先程から1時間と経っていない。

 しかし、俺は学校に居なかった。

 

「急にすまないな」

 

「それは俺の仕事を押し付けてしまった雫たちに言ってくれ」

 

 達也に連れ出されたのだ。

 現在地はリニア列車の中である。

 

「それで、なんの用なんだ?できれば目的地くらいは教えてほしいんだが」

 

「目的地は生駒(いこま)だ。九島烈とのアポイントが取れた」

 

「周公瑾捜索に閣下の力をお借りする、という話だったか。ギリギリまでアポイントが取れなかったんだな」

 

 烈に協力を要請する事は、以前に達也から聞いていた。

 しかし、面会の日にちは聞いていなかったのだ。

 そのため、俺は当日になるまで面会の時間が作れなかったのだと、推測した。

 

「アポイントは先月29日には取れていた」

 

 残念ながら、その推測は外れていたのだが。

 それにしても、何故日にちが決まった時点で教えてくれなかったのか。

 

「お前と九島烈の接触を、できるだけ誰にも悟られたくなかった。だから、直前まで情報を伏せたんだ」

 

 言葉で説明を要求する前に、達也が説明してくれた。

 この流れなら要求するだろうと、先打ちしたのか。

 俺が読みやすいって訳ではないと、そういう自己弁護をしておく。

 

「四葉と九島が接触すると分かれば、何かしらの妨害をされかねないからか」

 

「お前が出てきたとなれば、相手が躍起になる可能性もある。相手陣営の戦力は削れるだろうが、目立つのは御免だ」

 

 烈との接触を邪魔されたくなかった事、敵が暴れ出すのを防ぎたかった事、隠密を徹底したい事。

 以上3つを考慮し、俺に直前まで伏せる選択をしたようだ。

 確かに、達也は少ない手の中から、烈との協力という有効な札を切ったのだ。

 この札を通せなければ、達也は周公瑾の追跡が難しくなる。

 敵の暴動を防いだのと隠密を徹底しているのは、言葉通りだろう。

 達也は今目立ちたくない。

 四葉関係者という事をここまで隠し通せたのだ。

 ここで露呈すると、今までの努力が水泡に帰す。

 だから、達也は目立ちたくないのだ。

 さんざん活躍しておいてどの口が、という話だが、その活躍は必要に迫られてのモノ。

 一部が四葉家によるモノであるため、四葉直系の俺は何も言えない。

 

「閣下の方には伝えてあるのか?俺が同行するって」

 

「同行者がもう1人居るとしか伝えていない」

 

 情報を伏せた選択については納得したので、相手方に伏せたのかも訊いてみたのだが。やはりと言うべきか、まさかと言うべきか、伏せられていた。

 そこまで伏せないと意味がない、という弁は口にされずとも分かる。

 しかし、とんだサプライズゲストだ。

 もう1人の同行者で四葉直系を連れてくるとは、新手の嫌がらせだろうか。

 烈でなくては腰が抜ける。

 

「まぁ、うん。サプライズゲストとして務めは果たそう」

 

 諦めやら呆れやら、異論を挿む余地はないので、俺は達也に付き従った。

 俺はそうして、京都までのリニア列車を楽しむのだった。

 

 

 

 途中、キャビネットとコミューターに乗り換えて生駒山東山麓へ。

 九島邸はそこにある。

 到着は17時55分。ほぼ予定通り着けたそうだ。

 そして、目の前に広がった洋風建築の豪邸に臆する事なく、達也は呼び鈴を鳴らす。

 インターホンで応対したのは、藤林響子。

 九島烈とは祖父と孫の関係にある彼女なら、九島邸に居るのは違和感ない。

 そんな彼女が玄関まで迎えに行くと申し出た。

 何故かインターホンのカメラから巧妙に俺を隠しつつ、達也はその申し出を快く受け入れる。

 

「いらっしゃい、達也……くん?」

 

 そうして門まで出迎えてくれた藤林は、達也とその連れを順々と視界に入れ、俺のところで固まった。

 俺はこうなる事をなんとなく予期していたので、驚かせてしまった事を謝るように一礼を贈る。

 

「ちょっと!四葉直系を連れてくるなんて聞いてないわよ!」

 

「言っていませんので」

 

 掴みかかる勢いで迫る藤林に、達也は素っ気なく返した。

 達也の言葉はご尤もなのだが、藤林の言い分もご尤もだ。

 

「訳を説明しなさい!」

 

「今回、十六夜だけですが俺に協力してくれました。そのため、十六夜にもこの面会に加えなければならなくなったのですが、九島閣下と十六夜の接触は周りを騒がすと判断し、情報を伏せました」

 

「……」

 

 訳の説明を受けた藤林は凄く物申したそうにしながらも、達也の決断に合理性がある事を認め、口を噤んだ。

 でも唇を噛むくらい必死に口を噤んでいる。

 

「……ふぅ。来てしまったものは仕方ないわね。改めて、いらっしゃい。深雪さん、水波さん。そして、十六夜さん」

 

 一頻り我慢した後に立ち直った藤林は、丁寧に俺たちへ迎えの挨拶を述べた。

 改めたはずなのに達也の名が省かれているのは、改める前に一応言っていたからか、それともせめてもの仕返しなのか。

 眉間に皴の跡が残っているあたり、後者なのだろう。

 虚しい事に、そんな仕返しを達也は一切気にしていないのだが。

 

「すみません、わざわざお付き合いいただいて」

 

「気にしないで。さぁ、遠慮なく入ってちょうだい」

 

 結局何事もなく通常の雰囲気に戻り、藤林は達也と俺たちを九島邸内へと誘う。

 誘われてまず目に収まるのが、人の身長より高い生垣。

 これが進行ルートを制限し、迷路のような入り組んだ道を作っている。

 少し訂正しよう。迷路のような、ではなく、迷路そのものだった。

 

「大げさでしょう?」

 

 俺たちがこの迷路をつぶさに観察していると気付いたようで、藤林は笑みを携えながらこの迷路及び侵入者対策の備えを話題にした。

 そこから、この対策がもう閉鎖されている魔法技能師開発第九研究所での研究が進むと共に、その成果を取り入れて徐々に整えられていったとか、そもそもこの邸宅は大阪を監視するために建てられたとか、大阪をどうして監視し、どうして大阪に建てられていないのかとか、そんな話をしながら迷路を通り過ぎていく。

 

 ようやっと長い道のりを越え、辿り着く応接室。

 その一室にはすでに烈が腰を落ち着けていた。

 俺を視認した瞬間に一瞬腰が浮いたが。

 

「い、十六夜君。君も来ていたのか」

 

 烈の声はちょっと震えていた。

 まぁ恐怖と言うより驚きが尾を引いているだけだろう。烈の目からそういう感情が読み取れない。

 

「あくまで達也の連れですので、あまり不安がらないでください」

 

「いや、不安はないよ。しかし、あんな事をした後だ。しばらくは顔を合わせてくれないだろうと、心配はしていたよ」

 

 お爺さんが孫息子に嫌われてしまったかのような、そんな心配を烈はしていたようだ。

 もうちょっとあのパラサイトの件を深刻に捉えてほしいところだが、老骨に追い打ちはすまい。

 

「それにしても、十六夜君が連れか。そうすると、君が本命という事かな?司波達也君」

 

 烈は空気を引き締め、達也を正面に見据えた。

 そんな烈と視線が合わさった達也は気後れせず、心を落ち着けている。

 

「本日はお時間をいただき、ありがとうございます」

 

 達也はまず、形式的な挨拶から入った。

 棒読みではないが、全く心が籠っていない挨拶に烈はわずかにも苦笑している。

 

「こうして直接顔を合わせるのは、初めてになるのか」

 

 そう。烈と達也は初対面なのだ。

 原作では去年の九校戦で出会うのだが、その原因となるノー・ヘッド・ドラゴンが原因を作る前に俺が対処した。

 よって、その初邂逅フラグは圧し折れ、奇妙にもこの時まで顔を合せなかったのである。

 

「初めましてと、気さくに親睦を深めたいものだが……。もうそれも叶わんだろう。君を一方的に巻き込んだのだ。敵と認識されていないだけ、まだマシだろうな」

 

 烈は疲れたように、座るソファに背を預けていた。

 達也を一方的に害すように利用した烈は、達也との親密な関係構築を諦めているようだ。

 

「当時の私は、あれが最善だと考えていた……。焦っていたのだろうな。過ちであると、気付く事もできなんだ。気付いたのは、古い知人から苦言を述べられ、目をかけた若者から諭された後だった……」

 

 自身の半分も生きていない者たちの前で、烈は懺悔していた。

 そうする彼は酷く煤け、燃え尽きた灰のようである。

 

「許してくれと、言える立場ではない。どの口がと、信じてもらえる立場でもない。だが、せめて謝らせてくれ。司波達也君、すまなかった」

 

 深々と下げた頭が、苦しさに耐えて絞り出された言葉が、何よりも烈の本心を語っていた。

 烈は、本気で謝っているのだ。

 老師や日本魔法師界の権威などという箔を捨て、ただ1人の少年に許しを請うている。

 

「閣下、お顔を上げてください」

 

 達也はその謝罪に然も心打たれたかの如く、優しく手を差し伸べた。

 しかし、顔を上げた烈は察しているだろう。

 本心からの許しは得られていないと。もはや亀裂は修復できないと。

 でも、贖罪だけはしようと、烈は達也の求めに応じたのだ。

 

「無人魔法兵器を開発すべきという閣下のお考えは分かります。あの場で閣下が行った事を許容する事はできません。ですが、閣下のお考えを否定するつもりはありません」

 

「……そう言ってくれると助かる」

 

 達也の思うところを聞き、烈は項垂れた。

 そうしてから、烈は姿勢を正す。

 達也が謝罪を切り上げようとしていたのだ。

 ならば次の話に漕ぎ出さねば、烈の贖罪にはならない。

 

「閣下、1つお聞きして構いませんか?」

 

 達也側から打ち切ったはずなのだが、意外にも達也は少し掘り下げにかかった。

 達也以外が一様に疑心を抱く。

 

「……何かね」

 

「目をかけた若者が閣下を諭したそうですが、結局その若者は閣下をお許しになられたのですか?」

 

 その掘り下げは、俺の対応についてだった。

 達也は「目をかけた若者」が俺であると、当たりを付けていたらしい。

 

「……さて、どうなのだろうな。「隠居しろ爺」と、言われたような気がするが」

 

「言ってませんからね、老師」

 

 ここぞとばかりに茶目っ気を発揮しだした烈に、俺は即行ツッコミを入れた。

 蚊帳の外気味な深雪と水波、藤林はきょとんとしているが、烈と達也は口角を吊り上げている。

 場の空気を和ませるという、ある意味でサプライズゲストの務めを俺は果たした。

 こんな果たし方をするとは思ってもみなかったが。

 

「話を戻そうか。君たちの用向きは、響子より伝わっている」

 

 閑話休題とばかりに、烈は本題を切り出した。

 切り替えが早いが、さらに掘り下げるような話題でもないから流されておこう。

 

「周公瑾の捕縛。これは真夜……、いや、四葉殿より下された任務だね?」

 

「そうです」

 

 達也は烈の問いに即答した。

 包み隠さず、素直に答えたのだ。

 

「……十六夜君からの頼みともできただろうに、何故そうしないのかね?」

 

「十六夜がただの学生に頼る浅慮な人間であると、誤認されたくなかったからです」

 

 その素直さは、俺の名誉を守るためのモノだった。

 意外な動機に、俺は目を見開く。

 

「ほうほう、そうかそうか。四葉の次世代は地盤が固そうだ」

 

 達也の青臭い回答に、烈は生暖かく微笑んでいた。

 その生暖かさが、俺はとてもむず痒い。

 

「次世代の一助となれるなら、私も喜んで手を貸そう。しかし、師族会議の決まりとして、十師族は緊急事態時を除き、協調を禁じられている。だから、私個人が、司波達也君個人に協力しよう」

 

 烈は師族会議の決まりに反さぬよう、その抜け穴を突く提案をした。

 達也があくまで俺の任務にしなかったのは、この抜け穴を考慮した上だったのかもしれない。

 俺の任務であると、四葉の仕事を九島が手伝う事になり、決まりに抵触する。

 達也の任務という事ならば、今のところ達也は四葉ではないので、烈が手伝っても決まりに抵触しない。

 烈も達也も、思慮が深いものだ。

 

「ありがとうございます」

 

 こうして烈が協力を約束してくれた事に、達也は感謝を口にするのだった。最後まで、形式的な態度が抜けぬままに。

 

 

 

 烈との面会を終えた後、俺たち、と言うか達也たちが藤林から食事に誘われた。

 どこか飲食店での食事ではなく、九島邸の食堂で、との誘いである。

 九島邸に複数ある内の1つ、若者たちが交流するための設けられたカジュアルな食堂を藤林は選んでくれたらしい。

 手間をかけてくれたという事で、達也たちと俺は藤林の厚意に甘えたのだ。

 そうして俺たちはその食堂、高級洋風レストランの一室じみた場所に案内され、料理が運ばれてくるまで軽い談笑して過ごしていた。

 その時だ。その一室のドアが叩かれる。

 だが、給仕が料理を持ってきた合図ではない。

 

「入って」

 

 何者のノックであるか、藤林には分かったのだろう。

 彼女がノックの主を呼び寄せた。

 そうすれば、1人の少年がドアを開け、その姿を露にする。

 

「失礼します。あの、おじい様が皆様とご一緒させていただきなさいと……」

 

 麗しい顔に戸惑いを浮かべるのは、九島光宣だった。

 原作内でもトップクラスの美少年として書かれていたが、現実に相対するとその書かれ方が誇張でもなんでもないと実感する。

 まさに美少年なのだ。

 深雪をミロのヴィーナスとするならば、光宣はダビデ像である。

 そういう、自然界に存在すら疑惑を覚えてしまうレベルの美貌だ。

 まぁ、深雪も光宣も調整体であり、天然ものとは言い難いのだが。

 人の手を加えた物だとしても、その容姿には奇跡の介在を感じさせる。

 

 そんな美少年との出会った訳だが、特筆すべきイベントはない。

 原作であったように、水波が赤面で固まったり、司波兄妹が惚気たり、光宣が達也の任務を手伝うと申し出たりと、俺が既視感に襲われるばかりだった。

 強いて特筆するなら――

 

「十六夜さん!今年も去年も、九校戦は凄い活躍でしたね!あのまさに早撃ちのスピード・シューティングに、誰もが目を瞠るような作戦のロアー・アンド・ガンナー!良ければ、早撃ちのコツや『付喪神』の事を教えてくれませんか!」

 

――光宣が俺のファンだった事だろうか。

 

「い、いや、すまないが光宣さん。早撃ちはともかく、『付喪神』は教えられないかなぁ……」

 

 そんなきらめく瞳で迫ってくる光宣に、俺は圧倒されるのだった。




素直に己の非を認める九島烈:十六夜に諭されているがため、また達也と初邂逅であるため、原作より強く贖罪の意識が芽生えていた。そのため、己の行動も過ちだったとして、本心から謝罪している。同時に、簡単に償えないだろうと、達也と十六夜への償いは末永く続けると決心している。

九島光宣:去年と今年の九校戦を中継で見ており、その時の十六夜の活躍を拝見している。同時に、自分を確実に上回る実力が十六夜にあると確信し、今までそんな人物を目にした事がなかったため、十六夜に憧憬の念を抱いている。つまりは新たな十六夜ファンである。

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