魔法科高校の編輯人   作:霖霧露

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第八十六話 幕間~四北(よつきた)婚約締結会談~

2097年1月2日

 

 驚愕の発表が行われた慶春会はすでに昨日の事。その驚愕から覚め、四葉家全体も平常運行となっている今日。

 

「……」

 

 その驚愕の発表をした本人たる真夜だけが、平常ではなかった。四葉本家内の一室にて、俺と同室しながら非常に真剣な表情を浮かべている。

 

「あの……、大丈夫?母さん」

 

「……大丈夫な訳ないでしょう。これから、十六夜が見初めた相手と話すのだから」

 

 真夜が何を真剣になっているかと言えば、真夜が丁度言葉にした通りだ。

 今日、約束通り俺の婚約について話を進めるため、まずは雫と話し合う事になったのである。もちろん、雫にはちゃんとその事を午前中に伝え、夜に改めて電話をかけるという事で、あっちにも準備してもらっている。

 

「まぁ、うん。悪い子じゃないから、そんな気張らなくても大丈夫だよ?」

 

「……なおさら、気張らなくてはいけなくなったわ」

 

 俺は緊張を解そうとした訳なのだが、逆効果だった。真夜の眉間に深い皴ができてしまう。これはもうどうしようもないと、俺は思わず苦笑した。

 そんな時、俺の携帯端末が震える。メールが届いたのだ。そしてその内容は、雫側の準備が済んだという連絡だった。

 

「母さん、相手を長く待たせるのは体裁が悪い。もう繋いでしまうよ?」

 

「……ええ」

 

 どうしようもなく気張っている真夜をそのままに、俺はヴィジホンで雫のナンバーを呼び出す。

 スリーコールもしないうちに、雫と、そして彼女の父である潮が画面に映し出された。

 

〈やぁやぁご機嫌麗しゅう、十六夜君の母君。私は十六夜君に婚約を申し込んでいる雫の父君、北山潮という者だ。『北方潮』の方が、通りが良いかな?〉

 

〈……お父さん〉

 

 しかも、出だしから茶目っ気を交えた挨拶を噛ます潮。これには雫も呆れ、真夜も面食らっていた。

 しかし、抜け目ないのが真夜の呼び方、『十六夜君の母君』。この場は子供同士の婚約を交渉する場で、四葉家に物申す場ではない事を示している。

 

〈……ごほん。初めまして、四葉真夜様。私は北山雫。十六夜さんと学び舎を共にし、十六夜さんに恋慕を抱き、十六夜さんに添い遂げる覚悟をした者です〉

 

 雫の方は雫の方で、最初から自身の確固たる意思を言葉にした。真夜はちょっと放心している。

 

「母さん、母さん。大丈夫かい?」

 

「あ……ええ、大丈夫よ。……申し訳ありません、返事が遅れました。わたくしは四葉真夜。十六夜の母です。本日はよろしくお願いいたしますわ?」

 

 俺が声をかければ真夜は気を取り直し、ただ少しマニュアル的な挨拶を返した。まだ立ち直りきれていないようだ。

 

〈ええ。本日は我が娘と十六夜君の婚約に許可をいただけるという事で〉

 

「ええ。……じゃないわよ!許可なんて出していないわ!」

 

 立ち直りきれていないところで潮が言質を取りに来たが、間一髪。真夜はマニュアル態度を脱ぎ捨て、同時に礼儀も放り捨てたが、思考力は回復する。

 

〈ほう?貴女はこの婚約に異論があると?〉

 

「むしろ、ないと思っているの?十六夜は私の大切な家族。そんな人を何処の馬の骨とも知れない小娘なんかに上げられないわ」

 

〈『何処の馬の骨』、ですか……〉

 

 罠を仕掛けられた真夜はその不機嫌さを隠さずに、嫌悪とさえ言えそうなくらい突き返した。ただ、潮は娘が馬鹿にされているようなものであるのに、不敵な笑みを浮かべる。

 

〈まるで有名な魔法師をお求めのようだが、果たして貴女方四葉家は、本当にその手の血を迎えたいのですか?〉

 

「……何が言いたいのかしら」

 

〈とんと聞かないのです、四葉家にナンバーズが迎え入れられたという話が〉

 

 その笑みは、新たな罠への誘導が成功した、歓喜のそれだったのかもしれない。

 

〈さすがに四葉の分家筋まで探る事はできませんが、直系との婚姻は広く魔法師界へ開示されるモノ。その開示された四葉家の婚姻に、百家どころかその傍系が選ばれたという過去はない。つまりは、貴女方は百家ではない、しかし素質のある魔法師、さらには他家の息がかかっていない者を迎え入れたいのでは?〉

 

 潮は、四葉家について深く分析していたようだ。四葉家にはどういう者が迎え入れられるのか、得られた少ない情報で、しかしてその深い洞察力で、その傾向を見抜いていた。

 実際、四葉に百家関係者が迎え入れられた事はない。分家筋にも、だ。良い例が達也の父親、司波龍郎だろう。彼は百家関係者でないどころか、有力な魔法師でもなかった。ただサイオン保有量が規格外だったというだけで、四葉に引き込まれたのである。

 

「……続きをどうぞ?」

 

〈では、遠慮なく。……貴女方がそういう魔法師を求めているというならば、我が娘はまさしく適任でしょう。なにせ、何処の分家でもなければ何処の家からも干渉を受けていない、素質ある魔法師なのですから〉

 

 四葉の婚姻に関して見抜かれた真夜は、下手に口を開かず、潮の弁論に耳を傾けた。その耳に告げられたのが、雫は四葉へ嫁ぐのに最適な人物であるという事。

 確かに、北山家はそもそも魔法師の家ではなく、魔法師の血をそこに注いだ雫の母、北山紅音は何処の分家でもない。全く魔法師と関係がなかった家に、全く歴史のない魔法師が嫁ぎ、そうして生まれたのが雫なのである。

 そういう意味で、潮の弁論はまさに正論だった。

 

「……素質があると、何を以て証明する気?」

 

〈学校の成績、九校戦の戦績程度では首を縦に振れないと承知しております。でも、雫はお眼鏡に適う素質があると証明できます。それこそ、十六夜君が証言してくれるでしょう〉

 

 まだ突っぱねる材料を探している真夜。彼女は素質の証明を要求したが、潮はなんの動揺も懸念もなく、その要求に応えようとした。結果、俺へ急に話が振られる訳だが、どんな証言をすれば良いのかは、そう難しくない。

 

「十六夜、その証言って?」

 

「母さん。にわかには信じられないと思うけど、彼女は『キャスト・ジャミング』が使えるんだ。達也のモドキじゃなくて、深雪の魔法も封じてしまえる本物が」

 

「えっ」

 

 俺が雫の有能さ・有用性をその短い文章だけで伝えれば、真夜は人前であるのも忘れて唖然とした。やはり、にわかには信じられなかったようだ。

 

「その、十六夜?それは、アンティナイトも使っていないの?」

 

「使っていない。彼女の魔法演算領域と、後付け足すならCADの2つで行使されるものだ」

 

「そんな事が……」

 

 真夜は俺へ詮索しても、未だ信じられないと考えこむ。

 

「俺の証言が信じられないというなら、それこそ実演してもらうしかないんだけど……」

 

「い、いいえ!十六夜の言葉が信じられないという事ではないのよ?でも、その……。魔法式が見つかってなお、行使できた魔法師はいなかったから……」

 

 俺は俺の信頼を担保にし、無理にでも信じてもらおうとする。そうすると、真夜は俺への信頼が揺るぎないものであると取り繕った。いつもより激しく身振り手振りから、真夜の動揺が感じ取れてしまうが。

 

「とりあえず。彼女が『キャスト・ジャミング』を行使できるという前提で行きましょう。彼女の素質は、それで充分に証明されるでしょう。でも、素質があるから迎え入れるという訳ではないわ」

 

 真夜は動揺を隠すように、話を婚約へと戻す。しかし、その口ぶりは屁理屈をこねる頑固者のようであった。

 

〈ふむ、素質だけでは駄目ですか。とすると、四葉家に忠誠を誓ったところで意味がないでしょう。我が社を持ち出してでも、四葉家に貢献する準備はしていたのですが〉

 

 強情な真夜に対し、娘をプレゼンするだけでなく自身の身分も賭けて嫁がせる気だった事を、潮は仄めかす。

 

「……貴方、本気?四葉の悪名は知っているでしょう?」

 

〈もちろんです。歯に衣着せぬなら、良い噂は聞きませんな〉

 

「そんな四葉に、貴方は支援するの?娘の恋を成就させるためだけに?」

 

〈当然です。私は己の恋を成就させるがために、当時多くのナンバーズから縁談を申し込まれていた紅音と婚姻を結びました。そのナンバーズたちからは、さぞ嫌われた事でしょう。今さらその嫌悪感を煽る事に、何の抵抗感を覚えるというのです?〉

 

 悪評を受けてでも、潮はかつて己の道を突き進んだ。有力な家から睨まれ、疎まれるかもしれなくても、彼は望んでその道を行ったのだ。その己は、彼の芯は、まだ彼の中にあるのだろう。

 

〈それに、喜ばしい事ではありませんか。真に恋愛などと言えるモノがもはやほとんどない魔法師界隈にて、我が娘は己の恋を成就させ得る可能性がある。なら、その可能性が如何に低かろうが、私は賭けますとも。例え、我が身を犠牲にしてでも。それが、己を通した己に、恥じぬ行いなのです〉

 

 当時の自分と同じように、娘も己の道を進める可能性がある。ならば、全力で応援、いや、全身全霊で協力してしまえる。それが、この北山潮という男なのかもしれない。

 

「真に恋愛と言えるモノ、ね……。では、その子の恋は本当に恋と言えるモノなの?」

 

 潮はあれ程清々しく己を語ったのに、真夜はまだごねる。しかも、哲学的な問答にまで持ち込む始末だ。

 

〈言えます〉

 

 そんな稚拙な問答など切り伏せるが如き気迫が、画面越しの雫から放たれる。

 

「へ、へぇ……。それは、どうして?」

 

〈初めは確かに同情心でした、その寂しい背中を救いたいと。続く思いも、憧れでした。助けてくれたその手を握り返したいと。でも今は、彼の隣に立ちたいと強く願い、足掻きました。その足掻きの1つが、『キャスト・ジャミング』の習得です〉

 

 気圧される真夜に畳みかける雫。始まりをぼかさず、道中を偽らず、誠心誠意なまでに己の心情を雫は明かす。

 

〈そして、私はまだ足掻いています。彼の心を知りたいと、真に彼の事を理解したいと〉

 

「……!……そう」

 

 雫の語りから何を見抜いたのか、真夜は一瞬目を見開いたのち、すぐにその目を鋭く研ぎ澄ませた。

 

「……少し、大人げなかった事を謝ります。潮さんが真に娘を思い、雫さんが真に十六夜を思ってくれている事は分かりました。貴方方が実に誠実である事も、よく分かりました」

 

 真夜は目を伏せ、自身の行いを反省する。それと同時に、そんな自分に対しても潮たちは実に真面目で冷静に対応していた事を、真夜は省みたようだ。

 

「だから、貴方方は信頼のおける人物として、私も素直に明かします」

 

 真夜は潮たちを真っすぐ見つめ直し、何かを明かす覚悟をした。そうして引き締まった空気の中、俺も潮も雫も気を引き締めて、彼女の明かす事実を待つ。

 

「私は、十六夜を取られたくないの!」

 

 引き締まっていたはずの空気は、そんな真夜の親バカ発言でぶち壊された。俺も雫も固まるほかない。ただ、潮だけは違った。

 

〈く……あははははははは!〉

 

「な、何がおかしいの!?」

 

〈失礼いたしました。まさか真夜様が、私と同じ悩みを抱えるお方とは予想もしていませんでしたので……。ええ、そうでしょう。大事な我が子です。取られたくないと思うのは至極尤もです〉

 

 しかも、まさかの共感だった。我が子を取られたくないという親バカ大人が、まさかこうして出会ってしまったのである。

 

「そうでしょう!?十六夜は私の大切な人なのよ!?奪われたくないと思っても仕方ないじゃない!」

 

〈そうでしょうとも、そうでしょうとも。私も雫を取られたくないと思ったので、十六夜君の事は慎重に吟味させていただきました。だからこそ、十六夜君になら託せると安心できたのですが〉

 

「私はまだ雫さんの事を吟味できてないわ!不公平じゃない!」

 

〈全く以ってその通り。非情なビジネスの中で生きるあまり、その事を失念しておりました〉

 

 あまつさえ、何故か同調し合い始めている。

 

〈私も少し気を急き過ぎました。貴女側にも、我が娘を吟味する時間が必要だ。ですが……〉

 

「で、『ですが』……?」

 

 潮は真夜に譲歩の姿勢を見せつつ、逆説の接続詞で言葉を区切って、真夜の気を引きながら不安を煽る。

 

〈良いのですか?あまり悠長に吟味していては、その間に悪い虫が付いてしまうかもしれませんよ。なにせ、十六夜君は非常に魅力的な男児ですから〉

 

「わ、悪い虫……。そうよね……。十六夜に集る虫が出ないはずがないわ……」

 

 潮の術中に真夜は嵌まる。傍から見ると夫人の心細さに付け込んでいる詐欺師なのだが、俺にとって都合の良い方に騙しているので見過ごす。

 

「十六夜に悪い虫が付かないようにするには、どうすれば良いのかしら……」

 

〈だからこそ、ここで婚約者です。我が娘を十六夜君の婚約者としておけば、他の女性は近寄り難い〉

 

「雫さんを、婚約者に……。でも、それだと十六夜が雫さんと婚約する事に……」

 

〈ご安心ください。あくまでも、婚約です。結婚を確約するモノではございません。あくまで、悪い虫が付かないよう、そういう体裁を作るだけです〉

 

「あくまで、婚約……。絶対に結婚するという事では、ない……?」

 

「いや、ちょっと待って。母さん。『結婚を約束する』と書いて『婚約』だからね?」

 

「……はっ!」

 

 混乱してきて判断能力が欠けていた真夜。さすがにこの状態で言質を取ったら、後で両家の関係が悪くなる。なので、俺はさすがにこの事だけは訂正した。

 

「でも母さん。雫は悪い人ではないよ。他の女性が言い寄ってこないように、雫を婚約者とするのは、俺は良いと思う。それにほら、警戒、というか吟味すべき女性が雫だけ済むのは、労力的に有り難いんじゃないかな?」

 

「……それも、そうかもしれないわね。……大勢を警戒する必要はなく、十六夜が認めた1人を吟味すれば良い」

 

 訂正だけではせっかくの潮の術中を崩してしまうので、代わりに利益的な部分を論述しておく。真夜はその利益に着眼し、自身で評価した。

 

「……でも、結局それって十六夜を他所の娘に渡す事になるのでは?」

 

 ただ、やはり十師族の一当主と言うべきか、利益に目がくらんで損害的な部分を真夜は見落としたりしない。

 

〈では、こうしては如何でしょう。十六夜君の婚約者候補として、雫の名前を世間に公表するのです。これで、結婚を約束する訳でもなく、しかしすでに見初めた相手がいる事で他を牽制できます〉

 

「婚約者、候補……。そうね、それなら……」

 

 損害要素を薄め、利益だけを得ようとする潮の案。これに、真夜は深く頷いた。

 

「分かりました。貴方方は信頼できる人たちで、雫さんは十六夜が認めた相手です。婚約者候補となる事については、私も許しましょう」

 

 真夜は婚約者候補の案を採用する。紆余曲折あった議論だったが、実りある結果をもたらせたのだ。

 

〈ありがとうございます。今後、四葉直系の婚約者候補として、恥ずかしくない振る舞いに努めてまいります〉

 

「ええ。私も、貴女の事を吟味し、しっかり十六夜に相応しいかを判断するわ」

 

 雫と真夜はそんな友好の言葉を交わし、この話し合いを締める。

 と、思っていた。

 

「なので、最初の吟味として、2人だけでお話ししましょう?雫さん?」

 

 意味深長な深い笑みを携えた真夜によって、最初の試練が雫に降りかかるのだった。

 残念ながら、俺はその試練を傍観する事もできず、別室で雫の健闘を祈るしかなかった。

 

 

 

 別室で待機する事幾ばくか。1時間も経ってないはずなのに、不思議と長く感じた時間。俺が待機している部屋の扉が叩かれた。

 

「十六夜、終わったわ」

 

 聞こえてきたのが真夜の声。しかも雫との対談終了を告げるモノだったそれ。俺は気が急いて、招き入れるのではなく、扉に駆け寄った。そうして開けて覗いた真夜の顔は不安が取り払われたような、満足感すら携えているようなものだったのだ。

 

「悪くなかったみたいだね」

 

「貴方が見初めた相手だから、そんな酷い相手でないと最初から予想していました。でも、予想以上だったわ。もちろん、良い意味で」

 

 俺が安堵感を漏らすように確認すれば、真夜からは肯定がちゃんと返ってきた。それも、雫を高く評価する言葉を添えて。

 

「彼女、雫さんはしっかり十六夜自体を見つめている事が受け取れました。『四葉』という表層に囚われず、貴方の深層を捉えている、捉えようとしているわね。その上で、貴方の抱える負担を一緒に抱える覚悟もしていました」

 

 真夜は雫の印象を思い返すように、とうとうと俺へ聞かせる。

 

「貴方じゃなければ、文句なしで婚約者と認めていたのだけれども……」

 

「俺じゃなければ?というか、そこまで高評価しておいてまだ認めないの?」

 

 てっきり婚約締結まで持ち込めたのかと期待していたが、真夜はまだ抵抗していたらしい。

 

「だって、彼女が誠実で真摯な行動を取っていたとしても、その行動が貴方を傷つけてしまうかもしれないわ。だから、まだ貴方に相応しい相手かは、判断ができない」

 

「いやそんな、俺がとっても繊細な男みたいな……」

 

 真夜は雫が俺を傷付けないか懸念しているようだ。何がどうして、俺が雫に傷付けられるとしているのか。

 

「……」

 

「……何?」

 

「いえ、なんでもないわ」

 

 真夜は俺に憐れみと懐疑を混ぜた視線が贈られたが、所以を聞くには至らない。彼女は曖昧な笑みでぼやかしてしまった。

 

「とりあえず。潮さんの案通り、雫さんを十六夜の婚約者候補として公表します」

 

 四葉真夜の正式声明による、雫の婚約者候補公表。色々煮え切らない部分はあれど、プラスの成果は得られる。

 

「そういえば、深雪と達也についての公表は?」

 

 公表という事で思い出したのが、深雪と達也の件。深雪が四葉家次期当主である事、達也が深雪の婚約者である事、それに付随して達也が真夜の息子である事。原作では公表されてすぐに他家が慌ただしくなるはずだが、今のところそんな音沙汰はない。

 

「そっちについても、十六夜の婚約者候補と一緒に公表します」

 

「……他家は大変そうだな」

 

 四葉家の後継に関する情報が一気に、ダムが決壊したかの如く流れてくるのだ。俺は思わず、原作以上に慌てふためくだろう他家に同情してしまう。

 

「四葉家の情報、それも最重要と言って良い情報を労せず得られるのだから、むしろ喜んでほしいものです」

 

「……ま、そうかもね」

 

 真夜の考えにも微妙に正当性があるので、俺は肯定も否定もしきる事ができないのだった。




四葉家次期当主の公表:原作では1月2日にされた四葉家次期当主の公表だが、十六夜の婚約騒動があったため、本作において公表の日程がずれている。つまり、北山親子は十六夜が次期当主から降りている事を知らない。知っていたとして、彼らの態度が変わったとは思えないが。

真夜と雫のみの対談:第八十七話にて公開予定。

「いやそんな、俺がとっても繊細な男みたいな……」:自己嫌悪で自殺した人間が言う言葉ではない。

 閲覧、感謝します。

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