護、衞、艦ノ話   作:あゝ無情……

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いつもどうりに駄文です。ちょっと少なめ?


7話

東シナ海・海上

 

 

 

タンカー4隻・RO-RO船4隻・石炭輸送船2隻と護衛の艦娘、川内・神通・那珂・春雨・秋雲・巻雲の輸送艦隊はトラック泊地に向けて東シナ海を南下していた。

 

「な〜神通〜」

「なんですか姉さん?」

「暇なんだけど〜」

「はぁ、任務に集中してください。結構大きいんですからこの艦隊」

「え〜それよりもさ〜夜戦したい夜戦〜」

「暇なら那珂ちゃんが歌おうか!? 」

「いや、結構です」

「ガーン!!那珂ちゃんショック!! 」

「那珂ちゃんも任務に集中して…全く」ハァァァ…

 

右手で目を抑えつつ、盛大にため息をつく。マイペースな姉と、アイドルな妹を持つ神通。毎日お疲れ様です。

 

「なんで私この艦隊に組み込まれたんだろ…」

「それは秋雲さんにも分からないな〜。余ったからじゃない? 」

「コラっ!秋雲!可哀想なこと言わない!! 」

「そう言ったって、私達も余りじゃんか」

「そ、それは…否定できないけど……」

 

ごにょごにょと言い淀む巻雲。確かに、彼女達が所属する鎮守府は現在大規模作戦に参加しており、ほとんどの主力艦が出払っているのだ。川内、神通、那珂も入居中で参加出来なかったため、こういった輸送任務についている。

 

「それにしても、なんにもないと反対に怖いなぁ…」

「何も起きないことはいい事なんだけどね…」

 

秋雲の呟きに反応する川内。ちなみに陣形は、前方にRO-RO船、石炭輸送船、タンカーで、護衛の艦娘は艦隊右前方を川内、左前方を神通、右側面を秋雲、左側面を巻雲、後方を那珂と春雨が守っている。

 

静かな東シナ海の海原を、白波を立てながらもゆっくりと輸送艦隊は進んでいく。

 

「ひーまー!! 」

「姉さん!!もう! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブォォォォォォォォ……

 

Eー1トレーサー。っぽい深海棲艦機が機体上部についたレーダーで大規模な艦隊を捕える。すぐさま母艦にデータを送信、Eー1トレーサーの母艦は隷下艦のノックス級フリゲート艦とペリー級フリゲート艦合わせて4隻を分離させ、攻撃を仕掛けるよう命令する。

航空機で攻撃しない理由は、単に燃料弾薬ボーキサイトをバカ食いするためだ。

 

命令を受けた4隻は、速力を上げて艦隊から離脱。Eー1トレーサーが監視する艦隊に接近する。

ノックス級とペリー級が搭載するハープーンは射程約120km。艦隊の規模を考えて彼我100kmまで接近する。

 

 

 

 

 

 

 

 

少し時間がたち、敵艦隊を搭載するHー2シースプライトが捕捉する。

情報を貰い、ペリー級はノックス級に全ハープーンを撃つよう指示する。ノックス級はハープーンを斉射するために各艦ごとアスロック・ランチャーとハープーン発射管を指向、射撃体制をとる。ペリー級は反撃を受けた時に備えてMk.13にSMー1を装填する。

 

射撃体制完了の報告を受けたペリー級は、すぐさま射撃命令を出す。

 

ズドドドドドドドドッ!!

シュゥゥゥゥゥ…ドシュッ!!ドシュッ!!ドシュッ!!ドシュッ!!

 

発射管とアスロック・ランチャーから発射された16発のハープーンは、指定された方向へと飛翔する。

 

ゴォォォォォォオオ!!!

 

海面スレスレを飛び続ける16発の対艦ミサイル。対艦ミサイル本体はハープーンそのものだが、色が明らかに違う。真っ黒な塗装に表面に走る赤い幾何学的模様、通った後には赤い軌跡が残る。

最初に気がついたのは川内。向かって右側から突っ込んでくる。と、言ってもシースキミングで飛翔するハープーンは目視しずらい。

 

「な、なんだあれ!? 」

「こっちに向かってくる!! 」

「撃て撃て!!近ずけるな!! 」

 

ドンドン、と高角砲を撃ちまくるが、見えない上に目標が早すぎるため、間に合わない。

 

ゴァァァァァァァォァア!!!!

 

目標を目前にポップアップした対艦ミサイル群は、それぞれの輸送艦と艦娘に突っ込んでいく。

 

「間に合いません!!命中します!! 」

 

「「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!??」」」」」

 

 

 

 

 

 

ミサイルが全弾命中したことを確認したトレーサーとシースプライトは、機首を180度旋回させ、トレーサーは哨戒に、シースプライトは母艦であるノックスとペリー級へと帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

被害

 

沈没:タンカー・石炭輸送船。

 

大破・航行不能:RO-RO船・秋雲・巻雲・春雨

 

中破:川内・神通・那珂

 

死傷者・行方不明者:多数

 

生存者:艦娘6名、RO-RO船・石炭輸送船・タンカー船員合わせて13名

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜しらね達がトラック泊地にたどり着いて4日目〜

 

 

「「『正体不明高速飛翔体による輸送艦隊壊滅事案』? 」」

「これ思いっきしハープーンやね? 」

「桜花っぽいけど…コクピットは見えないな…」

「じゃあエグゾセ? 」

「有り得んだろ。こっちじゃ持ってる国すくねぇし」

「てか対艦ミサイルどんだけ撃たれたんだよ、艤装がボロッボロだぞ? 」

 

1時間ほど前、暇を与えられトラック泊地をブラブラしていたら、提督に呼び出され、執務室に入るや否この資料を渡される。

そこにはこちらに向かっていた輸送艦隊が壊滅した、しかも壊滅した理由が深海棲艦の新兵器によるものだという。護衛についていた艦娘からの証言と、撮られたブレッブレの写真を見て、対艦ミサイルによる攻撃だということが分かる。

 

「やはり、『対艦ミサイル』なのか? 」

「そうみたいですね…しかも『ハープーン』だと思われます」

「『ハープーン』、君らが使っているやつか」

「はい」

 

ハープーン対艦ミサイルを持っている国は数多い。エグゾセもそうだが、世界的に見てもこれが元になって発展、改良した対艦ミサイルは多い。

 

「はたかぜ、これに対抗する手段は? 」

「俺達みたいに、分間40発撃てる砲+VT信管付き対空砲弾、高性能なレーダ&処理システム、分間3500発の弾幕をはれる機関砲、射程10km以上の誘導弾があればなんとか」

「…ほ、他にはないのか? 」

 

今のところ、唯一対艦ミサイルに対抗できるのはしらねとはたかぜのみ。そのため、多数の輸送艦隊を護衛することは出来ないし、今後しらね達のような艦が出てくる(ドロップする)可能性は無いに等しい。イコール物資が届かなくなる、届きにくくなるということだ。それは、ここ『トラック泊地』の防御力が低下、最悪の場合深海棲艦に突破される可能性が高くなることを示す。

提督の額に脂汗がたらりと垂れる。

 

「あー、あと『チャフディスフェンサー』があればもっと効果的ですね」

「ちゃふでぃすふぇ…なんだそれは? 」

 

提督は新しくはたかぜから出た言葉に興味を持つ。

 

「俺たち護衛艦の最後の砦、CIWSと同じようなレベルで重要な役割を持つやつですよ」

「まあ、いわゆる『欺瞞紙』って言うやつです」

「欺瞞紙…あのアルミの束か? 」

 

チャフディスフェンサー、現代におけるミサイル回避に使われるアルミ箔やプラスチックのことを指す。

ミサイルは大まかに、テリア対空ミサイルやホーク対空ミサイルなど『セミアクティブ・レーダー・ホーミング方式(SARH)』と、ハープーンやAMRAAM、SSMー1Bなど『アクティブ・レーダー・ホーミング方式(ARH)』に分かれる。

SARHならば、母機や火器管制システムなどのイルミネーターにより誘導されるので、ECMなどの攻撃に強く、高い命中精度を期待できるが、常にレーダーが目標を補足しておかなければならず、戦闘機などの場合は発射後の機動に制限がかかり、また誘導数はイルミネーターの数に依存するため、飽和攻撃を受けると対処出来ない欠点がある。

ARHはミサイル自身で探索、捕捉、攻撃を行うことが出来る。そのため、多数発射することが出来、複数目標に対して対処できるようになった。ただ、ARHはミサイルにレーダーなどの精密機器を搭載しなければらならないため、大型化する傾向にある。また、ミサイルがレーダーを自ら出して探索する為、ECMに対して弱い。そのため、ある程度の技術がなければ開発は不可能だが、現在はほとんどの国がARHを採用、発展させECM下においても正常に作動するような工夫をされている。(日本では88式、12式地対艦、90式、17式艦対艦など)

ちなみに、SMー2などは『慣性/指令誘導方式』、SARHとARHを合体させた誘導方式を使うため、イージスシステムによる同時多数目標攻撃能力を持つ事ができるようになった。

よーするに、ARH方式のハープーンは『アルミ箔』で避けられるのだ。

 

「なるほど、それを撒けばハープーンは避けられそうだな」

「と、思いがちですが、ハープーンは時速約1040kmで飛んでくるので、タイミングがズレたらおじゃんです」

「……」イガキリキリ

「おいこらはたかぜ、提督が死にかけてるじゃねーか」

「俺のせいじゃねーよ、撃ったやつがわりーんだよ」

 

大丈夫ですか提督!?と慌てて胃薬を持ってくる大淀。もはやこの光景が定着しつつあるのは気のせいではないだろう。

 

「提督は置いといて、このハープーン誰が撃ったと思う? 」

「うーん、俺的には『ペリー級フリゲート艦』か『ノックス級フリゲート艦』っポイ気がする」

「……理由は? 」

「ここにさ、『回転翼機らしき航空機が水平線上を飛んでいた』って書いてあるんだけどさ、これらしーんだわ」

 

といって、はたかぜがしらねに見せたのは米海軍が採用していた対潜ヘリコプター、『Hー2シースプライト』だった。

 

「おいおいマジかよ」

「さすがに俺らだけで相手するにゃちと数が多いな」

「想定で、ペリーが2隻、ノックスが4隻いたら…」

「ハープーンの数がえぐいな。ノックスだけでも32発飛んでくるぞ」

「対して僕のESSMが40発、はたかぜのSMー1が40発」

「ギリギリだな。ま、ペリーも8発しか積んでないだろ。流石にMk.13全部をハープーンにするわけが無い」

「…もしもだぞ?ペリーがフルで積んでたら、2隻で80発、4隻で32発」

「……アカン」

 

最悪の想定に体が震える2人。もしそうならば対処することは出来ない。

 

「もし交戦するなら、先制攻撃だな」

「激しく同意」

「しらね、ロクマル最大何機積める? 」

「ん〜露天駐機すれば4機いけるぞ」

「2機編成のローテで哨戒しながら索敵だな」

「よし、それで行こう」

 

勝手に作戦を立てていく2人。その頃の提督は大淀に介抱されていた。

 

「しっかし、相手の航空機はヘリだけか?早期警戒機とかいるんじゃ? 」

 

「ソウキケイカイキ…ナンダネソレハ? 」

「提督っ!?」

 

「その可能性もあるな。はたかぜ、ECMは? 」

 

「イーシーエム?ウッアタマガッ…」

「か、カタコトになってる…!!提督!しっかり!! 」

 

「ある程度は誤魔化せるけど、多分すぐバレるぞ?何しろそこだけ電波が混線してんだからな」

「チッ、ECMはあまり使わない方がいいか。海図は? 」

「この資料から察するに、島影はなさそうだな。絶好の索敵区域だ」

「はたかぜ、レーダで警戒機を見つけたらECMをかけろ」

「りょーかい。それが打開策だな」

 

「うぅ…胃が痛い……」

「提督、しっかり!しらね達が今作戦会議中です! 」

 

なんとか提督を励ますも結構胃に来ているのか、青を通りこして顔の色が白くなっていた。

 

「……oh」

「こらぁ、あかんヤツや」

「提督っ!?提督ぅぅう!!?? 」

 

ガクガクガックンガックンガタガタゴキン

 

大淀が提督を揺さぶるが、もう既に逝ってしまっているようだ。

 

「大淀さん…取り敢えず御開にしません?提督、このままだと死んじゃうかもしれないんで」

「そ、そうですね…」

「あ、ここの片付けは俺らがやっとくんで、大淀さんは提督をよろしくお願いします!! 」

「わ、分かりました。よろしくお願いしますね」

 

はたかぜにここは任せて先に行けぇ!!と言わんばかりに亡骸(提督)と大淀を執務室から出し、提督の私室へ行くように仕向ける。

その間にしらねがカップやら資料やらを片ずける。

 

「とりま、待機ってことで」

「了、じゃ解散します〜食堂行ってこよ〜」

「おいこら置いていくなはたかぜ!ボクも行く! 」

「HAHAHA!蒸気タービンの貴様が追いつけると思うなよ! 」

「……はたかぜぬっコロス!! 」

 

 

HAHAHA!!、とドップラー効果を起こしつつ逃げるはたかぜを追いかけるために執務室から飛びたして行くしらね。

 

 

本日も、鎮守府は平和です。(提督以外)

 

 

 

 

ちな食堂

 

「貴方達…うるさいですよ」

「「すみませんでした…」」

「いいですか?ここは食堂なんですよ?暴れたりするとこじゃないんです。良いですか?だから━━━」

 

ドタバタ走りながら来たため、鳳翔さんに怒られる2人がいたとか。(赤い暴食娘談)

 

 

 




深海棲艦側新鋭艦

 
フリゲート・駆逐艦級


ノックス級フリゲート艦

外見:ハ級駆逐艦。体は鋭角的で体色はグレー。口内に対潜魚雷発射管、右側にアスロック・ランチャー、左側にRIM-7ランチャーを模した兵装が付いている。5インチ砲については頭部に装備され、その後ろにハープーン発射管が2連装ずつ装備されている。

航空機を運用しているため、艦尾に平らな部分がある。


武装


5インチ砲

アスロック・ランチャー

ハープーン対艦ミサイル

RIM-7シースパロー

対潜魚雷

Hー2シースプライト

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