最終更新日を見てみますと……昨年の九月二十八日。ほぼ七カ月更新していませんでした!!
……それで、許してもらえるかわからないので、吹っ切れて今回の話。
今回は、題名を見ていただければいいのですが、二人の対立が決定的になる回、です。それぞれ、悪い奴ではないのですが、暴走気味なので。意見が合わなかったら、こうなるみたいです。
それと、この話の清涼剤。重い感じの雰囲気を払拭するような笑い要素も混ぜておきました。山石悠の笑いのセンスが試されているみたいです。
それでは、お楽しみいただければ幸いです。
三日町 某所
「はあ、暇だ……」
帳市の西、上弦区と呼ばれる地区に入る三日町を歩く少年。彼の名は睦月巧。少し友人の少ない普通の少年だ。そんな彼は、いま猛烈に暇だった。今は平日の午前中。普通なら学校があるのだが、三日前にあった怪物騒ぎのせいで休校になっていた。
「なんか、面白い事ねえかな……」
暇なら、友人宅に行けばいいのだろうが、彼は友人たちの家を知らない。だから、彼は街をさまよっているのだ。そんな、街をさまよっていた巧を空腹が襲った。彼は朝食も食べないで外に出た。今の時間はもう昼だ。育ち盛りの高校生には厳しい物がある。
「め、飯…………ん?」
巧は何かのにおいをかぎ取った。香ばしい香りがする。焼き料理だろうか? しばらくするとソースのにおいも漂ってきた。巧はあたりを見回す。すると、そこには一つの屋台があった。巧はその屋台に向かう。
「ヘイ、らっしゃい!! タコ焼き屋『タコやねん』やでぇ~。タコ焼き!! それは魔法の料理!! ソースと青海苔、鰹節のかかった丸い球を割ると!! ……そこにはアツアツの烏賊がっ!!」
「タコ焼きにイカなんて入っとるかいなっ!!」
「タコやで!! タコ!!」
「……うっ、意識したら余計に……」
……何やら騒がしく漫才を繰り広げる店員達。巧はそれを聞き流して六個入りのタコ焼き数個分の代金を置いた。
「……た、タコ焼きくれ……」
「ヘイ、らっしゃ……って、兄ちゃん大丈夫かいな!!」
「は、腹減った……」
意識していないと、気がつかないことがある。それは空腹もしかりだ。巧はとっくに空腹の限界を超えていた。気がついた時には手遅れだったのだ。そして、それに加えてたこ焼きのにおい。……生殺し以外の何物でもない。
「おい、大丈夫か!! ……ギーやん!! あっちゃん!! タコ焼き六、四つや!!」
「「了解!!」」
三人は巧が相当空腹だと知った。店員の一人の叫びを合図にタコ焼きを作る。生地を型に流す。しばらく焼いたそこに、タコを入れていく。そして……回す!!
「おりゃああ!! 焼きの魔術師と呼ばれた俺の実力を見ろぉぉ!!!!」
「誰も呼んどらんわっ!!」
店員の一人がボケながらも、タコをものすごい勢いで焼いていく。しかし、巧のヒットポイントは今にもつきそうだ。タコ焼きを焼いていた店員はパックにタコ焼きを入れて別の店員に渡した。
「フッ。かつて、人は俺をこう呼んだ。トッピングの貴公子と」
「それも呼んどらんわっ!!」
タコ焼きを渡された青年もボケながらトッピングかけていく。ソースを塗って、鰹節に青海苔だ。完成したタコ焼きからは香ばしい香りが立ち込め、唾液を呼びだす。
「タコ焼き六個入りお待ちぃ!!」
「飯ィィィィ!!!!」
巧はいつものクールな性格(根暗ともいう)を払拭するような勢いでタコ焼きを食べる。
「ガツガツ……ハフッ、ハフッ!!」
「兄ちゃん。腹減っとっても、冷まして食わな熱いで……」
「ハフッ、だひじょうふ」
巧は熱かったタコ焼きを口にしたため、はふはふ言いながら食べている。店員は呆れたようにそう言った。巧は大丈夫といいつつ、合計二十四個のタコ焼きを完食した。
「うまかった。これ、なかなかレベルが高いな……」
「兄ちゃん。嬉しいこと言ってくれるなぁー」
「まあ、うまかったからな」
巧は素直にそう思っていた。店員は変な者たちばかりだが、タコ焼きの味はかなりのものだった。巧は口のあたりを拭いながら店員達にお礼を言う。
「ありがとな。うまかった」
「いいって、いいって。それが仕事やから」
「そうやそうや。それがジョブやから」
「全然、全然。それが役目やから」
「……お前達、芸人か?」
巧は思わずそう訊いてしまった。そう、訊いて『しまった』だ。店員達はここぞとばかりに喋り出した。
「違うで。でもな、俺たちは……笑いを取らなあかんのや!!」
「笑イング、ゲット!!」
「フライングやろっ!!」
三人は話をしながら
「…………」
「…………」
「……おらんな」
三人の屋台の前……巧がいたはずのところには、誰もいなかった。
朧町 某所
「うまかったな……」
三日町の北東に位置する朧町。そこには、先ほどまでタコ焼きを食べていた巧の姿があった。
「あそこに行けば、また食えるかな……」
巧は満足そうな表情をして歩いていた。財布の中身は少しさみしくなってしまったが、この際、気にすることではないと判断した。そんな巧は、あのタコ焼きの味を思い出しつつ歩く。だが、あの漫才については完全に忘れていた。
「どこに行こうかね……」
当てもなくさまよってる巧はふと、目の前にあたりを見回している綺麗な女性を見つけた。
「……何してんだ?」
女性は何かを探しているかのような動きを見せた。そして、しばらくすると近くの池の傍の木に隠れた。しかし、巧のいる位置からはなんとかその姿を確認することができていた。
「…………」
巧はひたすら、女性に注目する。はたから見れば、間違いなく怪しい。現に、今も近くを歩いている人達が巧を変な目で見ている。だが、巧はそんな事をお構いなしにしていると、女性はいきなりその姿を変貌させた。
「なっ……!?」
そこにいたのは、人ではない何かの姿をした女性だった。水色を基調としており、水の精霊に見える姿。それは、すぐに池の中に飛び込んでいった。それを見た巧はあることを思い出さずには居られなかった。それは、この間起こった怪物騒ぎだ。
「あの蜘蛛野郎の仲間か……!!」
巧は人目につかない場所に移動して、ベルトを出す。怪物騒ぎが起こってから、常につけることに決めた巧は今もそのベルトをつけていた。巧は一枚のカードを取り出して、胸の前に構えた。教科書は読んだ。カードの効果については、分からないこともあるが、それぞれの効果の予想もついている。
「いきなり襲ってきやがって。絶対にぶっ飛ばす」
巧はあの時のことを思い出してイライラし始めた。結局倒しはしたが、その前の、弱気になって逃げている時のことはやはりイライラとする。だから、巧はこのカードを選んだ。怒ることは罪だそうだ。“憤怒”という罪を力にする巧はイライラを込めて、カードをカードリーダーに入れた。
「変身!!」
「
“
「発現……“
そう唱えると、巧の手には音を立てて炎が現れる。巧はそれを見た後、それを消して再び唱える。
「発現……“
今度はバチッ、という音を立てて電気が巧の手を走る。巧はそれを池に向かって放った。
「
巧は予想していた。この姿の効果はエネルギーを作りだすものだと。詳しいことは分からないが、炎や電気を作りだした。そこから出てくる答えは、そういうものだった。そんな、巧の予想があっているのかは分からない。しかし、とりあえず巧の放った電撃は池に届いた。
「きゃああああ!!!!」
そんな悲鳴が上がる。池の水面に池に住んでいたと思われる生き物が浮く。巧は急いで近くによって本命を倒したのか確認する。
「どうだ!!」
何の反応もない。池の水は比較的きれいで底も見えるが、あの女性型の怪物を見つけられなかった。巧は諦めようと顔をあげると、そこには池のそばで、巧をふるえながら見つめるそれがいた。巧の口が三日月を描いた。
「見つけた」
「っ!!」
人ではない何かの姿から、人の姿に変わった彼女は走りだした。靴はランニングシューズだったので、走りやすそうだった。だが、電撃を喰らったせいでその足取りはおぼつかない。
「待て!!」
「はあっ、はあっ……!!」
巧と女性は追いかけっこを続ける。女性は疲れてはいたが、人ではないからかそれなりのスピードで逃げている。しばらく走っていると、女性が公園の広場に出た。そこには、一人の少年がいた。女性はその少年にすがりつく。巧の方も、少し遅れて広場に出た。
「た、助けて!!」
「……どういうことだい、睦月君」
「そいつは、あの怪物の仲間だ。潰しとく必要がある」
そこにいた少年は薫だった。薫は女性を追いかけていた人物、巧に話を聞く。巧は当たり前だ、と後に続きそうな様子でそういった。薫はそれを見て顔をしかめた。
「この人は、どう見ても人だけど?」
「怪物の姿にもなるんだ。俺は、この目で見たんだ」
「助けて……!!」
薫は巧の話を聞いて女性の方を見る。女性はふるえながら薫にしがみつく。その目には涙も浮かんでおり、薫にはこの女性が怪物の仲間だとは思えなかった。
「睦月君、君の見間違いじゃないかい? 今なら、彼女が赦せば見逃すけど?」
「そんな演技に騙されるのか? そいつは化物だ、間違いない」
「…………交渉、決裂だね」
薫はベルトをあらわにした。女性はそれを見て、薫から離れたが、薫は彼女の頭をなでていった。
「僕はあなたの味方です。あなたを襲う悪を、僕は正義の味方として助ける」
「
取り出したカードをカードリーダーに入れた。そして、その音声が流れると、薫の方の姿も変わった。薫は白に黒いラインの入った体で、巧を指した。
「君は本当に僕と戦うのか?」
「変身しといて何を言うかと思ったら……。これだからエリート様は!!」
巧はお腹を抱えて笑う。そして、ひとしきり笑うと、カードを取り出してにやりと笑った。
「
巧のベルトからその音声が流れた。すると、巧の姿も変化していく。それは、薫と対比しているかのような黒い体だった。巧は首を回して構えた。
「分からずやなエリート様は、一回どころか、二三回ぶん殴ってやるよ! それにどうせ戦う運命なんだからな!」
「僕の敵はみんな悪だ!! 悪はすべて滅ぼす!!」
両者が飛び出す。巧が先制攻撃を放つ。薫はまっすぐ放たれたこぶしを躱して、蹴りを放つ。しかし、巧は薫の足に手を当てて支点にし、そこを中心にバク宙をした。
「何っ!!」
「得意科目は体育なんでね!!」
綺麗な着地を決めた巧はすぐに薫の方を見た。薫は蹴りに使った足を振っている。人一人を足一本で支えていたのだ。その負担はかなりのものだろう。
「片方は軽いのに、もう片方が重いなんて面倒だね」
「ハハッ! そりゃ確かに面倒だ!」
巧は薫の様子を見て笑った。だが、警戒心はまったく抜けていなかった。薫はキッ、と巧を睨むとすぐに巧の方に走っていく。
「はあっ!!」
蹴りはもうだめだ。だからこそ放たれた拳。巧はそれを受け止めて頭突きをする。しかし、薫はそれをうまく避け、ダメもとで蹴りを放った。
「ガハッ!!」
「はあっ!」
巧が地面を転がった。どうやら、うまくいったようだ。薫はすぐにカードを取り出す。
「悪は滅びの
「っ、ざけんな……」
薫は申し訳なさそうにそう言うが、その表情はあくまで冷酷だった。巧は、悪態しかつけない現状に苛立ちつつも対策を練る。
「“
「はあああああああっ!!」
声を上げながら薫が駆けだした。そして、のろのろと立ち上がった巧を腕でたたくと、膝蹴りをはなとうとして足を振り上げる。
「おらあああああ!!」
巧が、衝撃で飛びそうになる意識を押さえて、薫の腹部に拳を叩き込んだ。対して力も籠っていなかったが、必殺技の途中での攻撃は、なかなか痛かったようだった。そのせいで、必殺技はキャンセルされる。
「く、クソッ……」
「ま、待て!!」
呻きながら、逃げようとする巧に、薫は必死に手を伸ばした。しかし、足の件もあり体が動かない。血胸区、巧はその場を立ち去って行ってしまった。薫は、悔しそうに変身を解除した。
「……逃げられた」
悪を逃がしてはいけなかった。しかし、すぐに思考を切り替えて助けた女性を探す。案の定、そこにはその女性がいた。
「大丈夫、ですか?」
声をかけるが返事はない。女性は、ふるえながら薫のことを見つめていた。そして、すぐに、薫に背を向けてその場を逃げだした。
どうでしたか? 戦闘、短めだったかもしれませんね。
今回でてきたタコ焼き屋。アギトでいう、翔一のギャグや氷川さんの暴走みたいなものと思っていただければと思います。
これから、まだまだいろんなことが分かってきます。まだ、基本的なことすらも出てきていないのですから。
次回以降、そういうところを進めていきたいなー、と漠然と思っている次第です。
それでは、今日はこのへんで。次回の題名を決めていないのですが、次回も見ていただければ幸いです。
See you next time!