やはり俺の青春ラブコメにウサギがいるのは間違っている。   作:獲る知己

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皆様お待たせしました。諸事情により更新できませんしたが、ようやく帰ってこれました。
これからもよろしくお願いします。






彼は最強と出会う。

 先生と別れてそのまま帰宅と行きたいが、残念ながら今日から俺はマイホームには帰れない。

 べつに勘当されたわけではい。それはもっと将来的に起こるイベントだ。起こることが決定してるのかよ。

 

 IS学園は世界中からISを学ぶ生徒が集まる学校でほとんどが日本人だが、少ない数の外人がいるのも事実だ。そのため公平と協調性を高めるために全寮制となっている。

 で、これは当たり前の事だが、俺みたいなイレギュラーさえいなければ生徒はすべて女。もちろんその寮も女子寮だ。

 そう女子寮だ。大切な事だから2回言っておく。

 

 平均的な男子高校生は女子という名の付く密室にやたら夢を抱く。女子更衣室しかり女子寮しかりな。でも、だからといってそこに侵入すれば変態で犯罪者だし覗きなんてする度胸がある奴はめったにいない。でも禁止されてるからこそいらぬ想像を膨らませるのも事実だ。

 

 それを踏まえて考えてほしい。公然的に女子寮に入る事を許された男子高校生はどうすればいい?

 

 ヤッホーと手を上げ喜ぶ?堂々と寮に入っていく?誰にも見つからないようにこっそり侵入する?

 

 正解は、寮の前にただ立っている。

 ……うん、いやだって女子寮だぜ。友達いない歴=彼女いない歴=人生のぼっちな俺が断りもなく、たとえ断っていたとしても女子寮に入っていくなんて難易度が高すぎる。

 そんじょそこらのリア充だって狼狽えるレベルだよ。

 

 それが許されるのはイケメン、運動部、性格のいい3拍子揃ったリア充の王様リア王かラノベ主人公くらいなものだ。

 ちなみにラノベ主人公は、その後女子の部屋に踏み込み着替えやふろ上がりに出くわすまでがセット。

 

 結局かれこれ1時間くらい寮の前にいるが未だに踏み出す勇気はない。これはあれか、最悪野宿を念頭に入れておいた方がいいかもしれない。

 

「おい不審者、何をしてる」

 

「ふふ、不審者じゃないでしゅ!?」

 

 寝袋とテントどちらを用意するかと悩んでいると後ろから女性に声をかけられた。反射で答えてしまったためものすごく噛んだ。

 そんな俺を見た女性の目がいたたまれない。やめてそんな目で見ないで!

 

「その反応はどう見ても不審者にしかみえないぞ」

 

 女性は呆れたようにこちらを見下すように腕を組む。

 見た目20代前半くらいで黒いスーツ姿からしてたぶん教師だと思われる。

 平塚先生とは対照的にスカートタイプのスーツで、ツリ目の印象が強く性格がきつそうだ。

 

「……不審者ではないです。一応この学園の生徒です」

 

 教師に不審者とされ逮捕される事態は避けたい。主に俺の学校生活と人生のために。

 なので、しっかりと言い直し念のため生徒手帳を見せる。

 

「そんな事はわかっている。この学園の教師でお前たちを知らない者はいない」

 

 その言葉で緊張がほぐれ肩が下がった。

 やっべー職質された経験は結構あるけど今回は本当に危なかった。だって、女子寮をずっと見てる男とかほぼほぼ犯罪者だもん。自分の事だけど。

 

 一息つき、よくよく目の前の先生を見てみるとどこかで見た事があるような気がした。

 こんな性格のきつそうな美人と1度会えば忘れないと思うが、記憶違いでもない。なんだろうか?

 

「私は1年1組の担任をしてる織斑千冬だ」

 

 首をかしげる俺の様子の俺に先生は簡単な自己紹介をしてくれる。その名前を聞いた時にテレビのニュース番組が頭をよぎる。

 

 第1回IS世界大会モンド・グロッソ優勝者 日本代表選手、織斑千冬。

 

 数年前に行われたISの世界大会。そこで優勝した選手の名前だ。

 日本では女武将と呼ばれていたが、開催地の北欧では神話に出てくる戦乙女の名前に肖り『ブリュンヒルデ』と呼ばれていた。

 確か、連覇を期待された2回大会の準決勝で原因不明の欠場をした後、現役を引退したと聞いていたがIS学園にいたとは初めて知った。

 

 頭の中の動揺が表に出て唖然と有名人を見ていると、先生はため息をついた。

 

「……はぁーうちの馬鹿者だけかと思ったら最近の奴は自己紹介1つまともにできんのか」

 

 そこで思い出したが、俺はまだ自分の事をこの人に行ってなかった。

 でも、生徒手帳を出した時に名前くらい目に入ったと思うし、何より。

 

「いや、俺の事知ってるって言ってませんでした?」

 

 先生は言っていた。お前たちを知らない教師はいないと。それも当たり前だ。女しか動かせないISを動かし、強制的に連れて来られたが男性操縦者というイレギュラーまたの名前を厄介者の事を知らない先生はいないだろう。

 お互いがお互いを知っているなら自己紹介の意味があるとは思えない。

 

「その馬鹿者が誰か知りませんが、相手が自分の事を知ってるなら省略しても問題ないでしょ。無駄を省くことは、今の情報化社会に求められる事だと思います」

 

 思っていることを理屈に乗せて先生に便宜する。

 

「例え相手が自分の事を知っていても初対面ならまず自己紹介するのが普通だ」

 

 仕様美やマナー的な問題か。

 例え無駄でもそれをやる。それが大人の世界の常識で、俺のような社会に出てない子供にはわからない悪習だ。

 例えば名刺交換がそういう例だろう。ここまで情報化社会が進んだなら紙媒体の名刺より端末にデータとして名刺を入れていたほうが凄いエコだと思う。

 

「ですが最近は個人情報をしっかりと守らないとすぐ流出しますよ」

 

「それはそうだが…自己紹介くらい問題ないだろ。むしろ、学校生活を進めるためにも大切な事だ。友達を作るにしても大切な事だ」

 

 はいでたー。教師特有のそんな事じゃ友達できないぞ!攻撃。

 子供にとって友達という存在がいかに大事かという事を分かってる教師が一番に人質にとる常套句だ。

 この一言で大体の奴らは反抗する気力を失う。

 しかし、残念な事に目の前にいるのは友達を作れる気配がない真正のぼっち。そう俺だ!……威張れることではないな。

 

「クラスメイトなんていう信用性が皆無の他人の集まりこそ警戒するべきだと思いますよ。その場のノリと勢いでどんな悪事も正当化するのが得意ですから」

 

 イジメの画像や動画をネットやツイッターで流す奴とか前はいたし。最近は画像や動画を加工し身バレが起きないようにしてから投稿するので尚に質が悪い。

 何よりただの他人より少し近いくらいの他人が一番怖いのだ。

 

「……もういい。お前はなんだ、人間不信かなにかか?」

 

「ただのぼっちです」

 

 怪訝な表情の先生の問いにそう答えると、なんだか先生は疲れたように肩を落とした。

 逆にさっきまで肩を落としてた俺は胸を張る。これぞ勝者と敗者の図。でもたぶん俺の方が負けてると思う。社会的に。

 

「ところでさっきから何をしてる。もうすぐ門限だ自室にいけ」

 

 ふと先生が腕時計を見ながらそう言ってくる。そういえばそうだった。

 野良猫を追い払うようにしっしと手を振る先生をしり目に一歩も動けない。未だに女子寮に入っていく勇気は出ない。

 

「あーまぁはい……」

 

 なので曖昧な返事で視線を明後日の方に移すが、ジーと先生は俺の方を見ている。

 

「そういえば、さっきから寮にいる生徒から絶えず苦情…というより通報が後を絶たない」

 

 動く気配のない俺に先生は唐突に話題を振る。それも随分と物騒な。

 

「通報ですか?」

 

「なんでも寮の前に、女子に未練を残したモテない男の幽霊が現れたらしい」

 

 幽霊と聞いて俺の妖怪アンテナ(アホ毛)が反応する。いや、いろいろ間違ってる。それにその幽霊ってもしかして。

 

「夕暮れ時に女子寮の前に何をするでもなく佇んで恨めしそうな顔をしているらしい。特徴は猫背で死んだ魚のような目をしているとかなんとか……」

 

 さっきとは違った意味合いでジーとこちらを見る先生。冷や汗が背中を伝い、どうにか視線を外す俺。

 そんなやり取りがしばらく続いたが先に折れたのは俺の方だった。

 

「なんか……すいません」

 

「とりあえずついてこい。これ以上ここに居られても学校の7不思議が新しく生まれるだけだ。部屋まで連行する」

 

 はっきり連行っていっちゃたよこの人。せめて護衛とまではいかなくても護送くらいは言ってほしかった。

 

「私は1組の担任以外にもこの寮の寮長もしてる。問題行動を起こせば私が力ずくで黙らせるのでそのつもりでいろ。それとこんなアホらしい騒ぎを2度も起こすようだとそれも処罰の対象なので心得るように」

 

「……はい」

 

 有無を言わさない鋭い眼光に肯定以外の選択肢はなかった。

 

 

 

―――――――――――――――――

 

 

 築10年もしていない寮は見た目も中身もとにかく綺麗で豪華だ。インテリアに拘った機能性を重視したシックなデザインとか、専門的な事はわからんが高いホテルとほぼ同じだろう。

 すげえ金掛かってそう。

 

「寮には大浴場もあるが、まだ男子生徒の使用は許可されてない。室内にはユニットバスがあるのでそこで済ませるように。それと、門限は絶対厳守。門限外の外出も禁止なので時間には気を付けろ」

 

 織斑先生の後をついて寮の中を進む最中、施設の説明と規則の説明を軽くされる。自宅と比べると自由はないが、まぁ当たり前の内容だ。

 IS学園の女子寮と想像するとなんか不当な扱いをされることも覚悟していたが、それなりに配慮されてるらしい。

 

「ほかに何か質問があれば聞いておけ。規則に関する説明は生徒手帳に記載されてるからそこを見ろ。今思いつかないなら後日同室の者から聞くように」

 

「はい。そういえば俺の同室って先輩だって聞いたんですが…」

 

 この1点さえ配慮されていれば俺は最大級の評価をIS学園にしたのに本当に残念だ。女子と同室とか夢が膨らむなー。悪夢がな。

 

「ああ、楯無だな。2年の学年首席で生徒会長を務める生徒だ」

 

 楯無という変わった苗字だと思ったが、比企谷が言うなよと自己ツッコミを入れる。というか聞いてた話よりエリートじゃね?

 なんかもう想像だけで金髪巻き毛か黒髪長髪のお嬢様系エリートを想像してしまう。

 どっちにしろ俺と仲良くする気はなさそうだ。

 

「よく俺…というか男と同室なんて了承しましたね」

 

「……まぁ本人も積極的にとは言わないが、快く引き受けてくれた」

 

 中々含みのある言い方だ。これ絶対快く引く受けてないパターンじゃん。その証拠にさっきまで目を合わして話してた織斑先生と目が合わない。

 

「普段おどけた言動をするが、根は真面目だし成績もよく教師からの覚えもいい。彼女なら間違いは起こらない、はずだ」

 

 なんかフォローしようとしてるのか歯切れの悪い会話をする先生だが、全然フォローになってない。

 クラスの人気者が誰もやりたくない仕事を本当は嫌だが笑顔で引き受けるイメージが沸々とわいてくる。心なしか先生も不安がよぎる表情だ。

 悪い事なんて1つもしてないのに罪悪感で胸が苦しい。

 これはあれだな、犠牲になった盾無さんのためにもできるだけコミュニケーションを取らずひっそりと生活しよう。

 そこにいるのに分からない。席に座っていても忘れられる。ステルスヒッキーの独壇場っす!

 

「実力も申し分ない。殺害予告なんてアホな事をする連中に万が一にも後れを取ることは無い。心配することは無い」

 

 不戦の契りならぬ不干渉の契りを心に決めた俺の耳に聞き捨てならぬ言葉が届いた。

 

「……え、殺害予告って何ですか?」

 

「ん?担任から聞いてないのか」

 

 冗談かなんかだと思った、というか思いたかったけど織斑先生の「しまった!?」みたいな反応でそれが否定された。

 まさか、平塚先生の言ってた爆弾云々の話か、詳しく言えない一応の対策の話か。

 

「一応防犯上とか安全のためとか言われましたが……」

 

 自分でも顔が引きつっているのが分かる。

 

「…まぁいいか。殺害予告と言ってもそのほとんどは幼稚な悪戯の類だ」

 

 話を聞くと、宛先不明の手紙やネットへの書き込みなど足が付きにくい嫌がらせのような物が数件あるらしい。

 まるでアイドルかなんかだな。アイ活とかプロデューサーさんとかやるのかな。誰得だよ。武内P押には人気でそうだけど。だから、誰得だよ。

 こんな血なまぐさいアイドル活動死んでも嫌だよ。むしろ死ぬから嫌だよ。

 

「99%質の悪いイタズラだ。そもそもIS学園の警備を突破するなんて国の特殊部隊でもない限り不可能だしな。が、頭の固い上の連中は残りの可能性を危惧して急遽お前たちの寮生活を押し切った。念には念を入れて部屋を別れさせたりと指示付きでな」

 

 とても迷惑そうな顔の織斑先生は、何を思い出したのか知らんが若干イラついてる様子だ。事件は会議室で起きてるんじゃない現場は大変なんだよ!とか今にも言い出しそう。

 

「もう1人は私がすぐに対応できるよう寮長室から近い場所に、比企谷は離れた場所なのでいざという時後手に回るので、学園内でも随一の実力を持つ生徒と同室に決まったわけだ」

 

「いざという時ですか…」

 

「さっきも言ったがそんな心配しないでも大丈夫だ。どうせ何も起こらん。起こすとすればお前が節度を守らない行動に出た時だ」

 

 最後の最後に私の手を煩わせるなと釘を刺された。

 心配しないでもそんな時はない。

 

 この説明を聞き改めて自分の置かれた状況の危うさを実感したが、それと同時に同室になる少女の事で抱く罪悪感が薄れた。

 要するに、盾無さんは学園から頼まれた任務で俺と同室になったという事だ。そういう事ならお互い必要以上の関わりを持たずに平穏無事な生活を送れるかもしれない。

 

「ついたぞ」

 

 気づけば先生はある部屋の前で立ち止まる。

 先生に促され扉の前に立つ。このままノックをして扉を開ければ恐らく中にはくだんの盾無さんがいる。

 そこでふと思う。平均的な男子高校生は女子という名の付く密室にやたら夢を抱くと――

 

「……さっさと入れ」

 

「ええ、まぁ、その……はい」

 

 いつまでもドアノブを回さない俺に苛立った先生が促すが、それでも手は動かない。

 すいませんヘタレました。だって寮の部屋とはいえ女の子の部屋に入るのって男には凄い勇気が必要なんですよ。まじで。

 寮の前にいた時よりもさらに時間を費やしようやくノックができるレベルだ。

 

「わかった。今回限り、特別に入室まで同行してやる」

 

 業を煮やした先生が俺を押しのけ扉を開く。なんとも情けないがここはご厚意に甘えよう。

 逆にこれを逃したら織斑先生のご厚意を受けることはないだろうし。押しのけた先生の目はこれ以上迷惑かけんなとありありと訴えかけてる。

 

「はーいおかえりなさい。ご飯にする、お風呂にする、それとも、わ、た―――」

 

「何をしてる楯無」

 

 俺は扉の影に追いやられ部屋の中を見れないが、なぜだかどこぞで聞いたようなセリフが明るい声に乗せて流れてきた。

 逆に織斑先生の声は氷点下並みに冷えていた。

 

「え!?なんで織斑先生が――」

 

 声の途中で扉を閉めた織斑先生がこちらに顔を向けた。その表情は出会って初めて見る無表情だった。イラついた顔より断然怖い。

 

「おい比企谷。少しそこで待ってろ」

 

 あまりの迫力にだまって何度もうなずく。

 そんな俺の様子に満足がいったのか、静かに扉を開け中に入っていく織斑先生。

 

「ちょ、まっ、にゃあああああああああああああああああああああああ!?」

 

 数分後甲高い悲鳴が寮の中に木霊した。




部屋での出来事。

千冬「盾無なんだその恰好は?」

楯無「ち、違うんです!誤解なんです。ほ、ほらエプロンの下はちゃんと水着が――」

千冬「そういう問題じゃない!節度を守る立場のお前が何をしている!!」

 青色の頭をわしづかみにし、力を籠める。千冬のアイアンクロウ。

盾無「ちょ、まっ、にゃああああああああああああああああああああ!?」
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