やはり俺の青春ラブコメにウサギがいるのは間違っている。   作:獲る知己

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今年もお願いします。




「絶望的に君は綺麗で」ってどんだけ綺麗なんだろうか?

 絶望的に~。

 こんな切り出し口の会話は結構ある。しかし、そのどれも本当に絶望したと言える状況な事は極めてまれだ。例えば「あの髪型絶望的に似合ってないよね!」とか、散髪した次の日にクラスの女子がクスクス話された時とか俺が、どこぞの糸色さん家の望君なら3カメまで使って大々的に絶望したと叫んでる。

 ただ、所詮そんな程度ともいえる。

 本当の絶望を知った人間はむしろ、絶望したなどと言葉に発する必要もないだろう。

 巨人に壁を破壊され母親を食べられた少年も、絶望的な状況で口にしたのは駆逐してやるだったし。

 要するに現代社会で絶望的に~というやつの大体は余裕があるという事だ。

 

「……絶望的にわからん」

 

 では問題です。顔面蒼白で教科書を眺めてる目の濁った俺の呟きに余裕はあるでしょうか?

 はい、ないです。正解。もう本当にヤバい。まじで絶望的だ。

 

 IS学園2日目は、通常授業を行ったがその内容はあまりにもレベルが高かった。通常の授業でも進学校の特進クラス並みに難しいのに、専門用語のパレードがレッツパーリィーしてるIS関係の授業は何を言ってるのかすら分からない。

 

 もし、クラスの風景をオフィスビルにでも変えれば、意識高い系が集まった会社の会議だとしても通用する。

 そんな高度な授業を、虫食い状況の知識を詰め込んだだけのほぼ裏口入学の俺に分かれと言っても土台無理な話なのだ。

 

 ちなみにほぼ裏口入学とは、男性操縦者のIS学園入学はすでに決定事項だが、形式上形だけでもテストを受けさせられた。

 平均的な高校入試の試験に+してISに乗り教師と模擬線形式で戦い、ものの見事に敗北した。

 詳細な結果は提示されていないが、恐らくテストで0点でも名前さえ書いていれば合格したであろう試験をほぼ裏口と言わずして何という。

 

 そんなわけで、正規の入試をクリアしここにいる周りの連中と俺ではその基礎学力に大きな差が生まれるのも致し方ない事だ。

 だからと言ってそこで仕方ないと割り切れるほど図太い神経を持ち合わせていない俺は、周りがさも当然の如く授業を理解していたことにショックを受けているのである。

 

「このクラスのクラス代表を決めるぞ」

 

 項垂れてる俺を他所に、帰りのホームルームで平塚先生は事務的にそういった。

 

「クラス代表ってなんですか?」

 

 名前を憶えていないがクラスメイトAが先生に質問する。

 

「名前の通りこのクラスの代表で主な仕事は学級委員のようなものだ」

 

 先生の説明に対するクラスの反応は冷ややかだ。まぁ、学級委員なんて先生にはパシリ扱いされクラスではうざいだうるさいだの言われる損な役回りだ。誰も自分からクラスの奴隷なんかになりたいとは思うまい。

 

「それに加えクラス代表はクラス事の試合に優先的に出場できる」

 

 ざわりと教室が色めき立つ。

 ISは国家が厳重に管理しており、一部の例外以外は私的な使用を禁止されている。そのためIS学園でも授業以外でISの使用は数日目から届け出をしないといけない。

 が、試合に出るという事はその分他の連中より多くISを使うことができるという事だ。操縦者志望の奴なら、多少のリスクを払っても大きなリターンがあるだろう。

 

「一番早い行事だと、クラス代表戦だな。1年のクラス代表がトーナメントを行う新全試合だ。毎年優勝したクラスには豪華特典が付くぞ」

 

 豪華特典と聞き好意的なざわつきは増す。単純だがご褒美があれば人間誰だってやる気は増す。

 俺の場合、負けた時の残念だったねという周囲の遠回しな非難の声を想像しやりたくないと強く思うけど。

 

「クラス代表戦だって!私やってみようかな~」

 

「うんうん何事も挑戦だしね~」

 

「だね!ほんとそれ!」

 

 あちらこちらでされる会話に、この分だと俺が押し付けられることは無いだろうと安心する。

 心に余裕が生まれたことで周囲をより観察する。

 すでにいくつかのグループが形成され、さらにそのグループに順位が生まれる。しかし、まだ盤石ではないようで2,3個あるグループがカースト最上位を目指ししのぎを削り合ってるようだ。 

 

「せんせー特典ってなんですか?」

 

「ん?確か去年はデザートただ券1年分とかだったな。今年も同じか、それなりに期待しててもいいぞ」

 

「「「キャア――――――!」」」

 

 先ほどぶりのクラスメイトAの質問。2,3個あるグループの中心人物のようで彼女の周りでは多くの女子が騒いでる。

 

「クラス代表は委員長の仕事もあるんだからそれも忘れるなよ」

 

「はーい!」

 

 クラス内のカースト争いは、Aのグループがやや優勢のようだ。さっきから発言してるのは彼女の周りの連中だけだし。他は、コソコソと仲間内でしか聞こえない程度の声だ。

 

 まぁ、クラス代表になるつもりもないしクラスカースト万年最底辺の俺には関係ない話か。 

 そんな中、俺と同じ、いや全く別なんだろうが一応ここは同じと表現するが、この話に我関せず全くの無関心な奴が俺の隣にいる。

 

 騒がしい周りとまるで格別されたような静寂。いっそ絵画の中とでもいった方が正しいような雰囲気をかもしだす人物。

 黒くしなやかな髪は日本人特有のものだと分かるが、彼女は日本人離れした美少女だ。

 麗人にして隣人。

 

 そんな彼女は白を基調とした制服に動かない表情で手元の本を見ている。

 

「……」

 

「…何かしら?そんなに見られると不快なのだけど」

 

 !

 どうやら、俺が見すぎていたようで視線に気が付いた彼女に苦言を呈された。

 

「ああ…悪い。あんたは盛り上がらないんだなと思って」

 

「貴方にあんた呼ばわりされるいわれはないわ」

 

 方のいい眉を曲げる彼女に完全に失敗したと思った。

 端から初対面の女子とうまく会話する技術なんて持ち合わせていないが、これは酷い。

 しかし、言い訳をするなら名前の知らない相手をどう呼べばいいのかわからないのだ。

 

「……生憎とそちらさんの名前を知らないんでね。不快だったら謝るよ」

 

「昨日の自己紹介の時に言ったはずだけど残念ね。貴方の頭は」

 

「…倒置法を悪口に使うのやめてくれません?」

 

 頭の中で言い訳してすいませんでしたと土下座する。そういえば昨日したね自己紹介。俺は全く覚えていないけど。

 完全に非が俺にあるのでなんとなく敬語を使う。

 

「雪ノ下雪乃よ」

 

 めんどくさそうにそう名乗る雪ノ下。

 その視線には2度手間させるなこの無能が!と不機嫌さ増しましだ。

 

「あ、ああ、俺は――」

 

「知っているわ。悪い意味で有名だから」

 

 名乗られたら名乗るのが礼儀と俺も自己紹介しようとしたら雪ノ下にさえぎられた。

 というか悪い意味ってなんだよ。俺の有名な話なんてクラスの女子に告って翌日にはなぜかクラス中が知ってるみたいな事しかないぞ。

 悪い意味であってるな。たぶん雪ノ下が言いたいのはこれじゃないだろうけど。

 

「悪い意味も何もそこまで目立つことをした覚えはないが」

 

「本気で言っているのなら正気を疑うわ。2人目の男性操縦者さん」

 

 ああそれか。

 確かに、女にしか使えないはずのISを動かした俺は悪い意味で有名なんだな。

 特に女性人権団体や、女尊男卑の奴とかには。

 

「貴方達の事は全クラスの人間が知ってるはずよ。下手をすれば全世界の人間も男性操縦者の事くらい知ってるんじゃないかしら?」

 

「普通にいい迷惑だな」

 

 流石にないと思うが雪ノ下のいう事も完全に否定する事が出来ない。オンリーワンがナンバーワンのぼっちがいきなりワールドクラスの知名度になるとかどうすればいいのかわからん。

 もう迷惑以外の何者でもないだろう。俺も迷惑だし、俺の事を取り扱わなきゃいけない政府も迷惑だし、右往左往してる世間の人も迷惑してる事だろう。

 自分の事だが、誰も得する奴がいないな。

 

「自分で何もしてないのに名前だけが知れ渡るなんて質の悪い嫌がらせだろ」

 

「意外ね。男の子は承認欲求が強いのかと思ったけれど」

 

 本当に意外と思っているのかすまし顔の雪ノ下からは伺えない。

 

「で、雪ノ下は周りみたいに騒がないのか。女子ってデザートとか好きだろ」

 

 この話は俺の精神的に辛いので話題を変えた。

 

「くだらないわ。食べ物1つでここまで高揚できる彼女たちが不思議ね。そもそも食べたいなら買えばいいじゃない」

 

「マリーアントワネットの生まれ変わりかよ」

 

 いや、言ってることは正しいよ。でもね、学生の身としては金銭的に少しでも得ができるならそれに越したことは無い。

 そこまで話して、雪ノ下はもしかしてかなりいいとこのお嬢様じゃないだろうかと予想した。話し方や座ってるだけなのに品が出てるところとか、ちょっとズレた金銭感覚とかそれっぽい。

 

「そういう貴方も随分ときもちわるいじゃない」

 

「…もしかしてだが、気落ちしてるって言いたいのか?間違ってるぞ。それじゃあ、ただの悪口だ」

 

「あら、間違いなんてあるのかしら?」

 

 コテンと首をかしげる雪ノ下に不覚にも可愛いと思ってしまったが、言ってる事は全然可愛くない。

 

「ただの悪口かよ…」

 

 なぜ俺は、昨日今日であったばかりの美少女に言葉攻めをくらっているのか。

 俺にそういった性癖があればはぁはぁ言ってるだろうが、いたってノーマルの俺は「はぁ…」ため息が出るばかりだ。

 

「将来的な事を考えて操縦者になりたいならクラス代表はいい経験なんだろうけど、俺の場合今後の身の振り方が分からないんでな」

 

「あら、でも試合に勝てばクラスの人気者になれてちやほやされるわよ」

 

 どことなく馬鹿にしたように言う雪ノ下にイラっとする。

 

「俺がちやほやされる人間に見えるか?」

 

「見えないわね」

 

 自分で言っておいてだが、即答で肯定されるのもムカつくな。

 実際問題、クラス代表になっても俺が勝つ可能性は低いだろう。なんせ周りは俺より入念に準備をして入試をクリアしたエリート達なんだから。

 男という理由だけでここにいる俺とは根底が違いすぎる。

 

「そもそも、んなのなりたくねえよ。むしろこれ以上悪目立ちすれば違う意味で人気者にされるだろ」

 

 パシリとか虐めの標的なんてなりたくないし。

 

「…意外だわ。普通以下の男子高校生なら女性へのアピールのために躍起になると思ったのだけど」

 

 今度は本気で意外に思ったのか雪ノ下の切れ長の瞳は大きく開く。

 そんな表情の変化を意外と思ったがそれよりも。

 

「いまさらりと劣等扱いしなかったか」

 

「ごめんなさい。言い過ぎたわ。普通未満というのが正しい表現ね」

 

「よく言いすぎったてことか?」

 

 なんでこいつはナチュラルに人を罵倒するのだろうか。あれか、ルイズ的なツンデレか。今のところ一切デレはないけど。ツンツンしすぎてそろそろ俺のハートが張り裂けそうなんだけど。

 ここはあれだ、完全に人を下に見てる雪ノ下にもの申さなければいけない。

 ペットを飼うときもそうだが、一度順位付けされるととことん下に見られるしな。家の飼い猫のカマクラなんて俺が歩こうとした方向にわざわざ来て踏ん反りかえてるし。完全に下に見られてるな俺。

 

「…俺はな自分で言うのもなんだが、そこそこ優秀なんだぞ?入学テストの文系科目は学年3位!顔だっていいほうだ!友達と彼女がいない以外は基本高スペックなんだぞ!」

 

 どうだと言わんばかりに胸を張る俺をしり目に、雪ノ下はため息をつき可哀そうな物を見る目で俺を見た。

 

「最後にとんでもない欠点が垣間見えたのだけど。そんな事を自信満々に言えるなんてある意味凄いわ。変な人。もはや気持ち悪くさえあるわ」

 

「うるせえ。お前に言われたくねえよ変な女」

 

 すると雪ノ下は髪をなびかせると勝者の微笑みで俺に言ってくる。

 

「それで、実技以外のテストすべてで学年1位の私に何を言いたいのかしら?3位風情の貴方が?」

 

「ふ、ふん!人の価値はテストの点だけで測れるものじゃないんだぞ」

 

「貴方から話を振っておいてその言い草。恥ずかしくないの?」

 

 的確に急所を突いてくる雪ノ下。なんなのこいつ暗殺者かなんかなの?後ろに立つと殴ってきたり、ヌルフフとか変な笑い声しちゃうの。

 しかし舐めるなよ。すでに舐められまくってるけど、こんなことで音を上げるほど俺はチョロくない!

 

「はっ!生憎とこの程度で羞恥を感じるほど軟な環境で育ってないんでな」

 

「そうね。貴方に羞恥心があるのならそもそも人前に姿を現せないはずだものね」

 

 ごめんなさいね。と本気ですまなさそうにする雪ノ下。

 

「いやいやいや、自分で言うのもなんだが顔は整ってる方だろ。妹とからも常々『お兄ちゃんずっとしゃべらなければいいのに……』と言われるほどだ。むしろ顔だけはいいと言っていい」

 

 俺と妹のハートフルな日常会話を教えてやる。すると雪ノ下は頭が痛いのか眉間を押さえた。

 

「羞恥心どころか喜怒哀楽を感じる感性すら乏しいのね。それともその目の腐敗が脳まで腐らしているのかしら。妹さんも貴方がお兄さんでさぞ大変だろうに」

 

「見てもいない人の妹を勝手に心配すんな。元気でやってるよ……たぶん」

 

「そこは自信を持ちなさいよ。それとも貴方がいないから元気なのかしら」

 

 呆れた顔でアメリカ人のようなジェスチャーをする雪ノ下。

 このアマなんてこと言いやがる。本人がいないところで俺達の兄妹仲を引き裂こうとするなんて。

 

「違えよ…。違うよね?」

 

「……会ったこともないのに貴方の妹さんの事が分かるわけないでしょ。頭大丈夫、じゃないようね。顔も悪いわ」

 

「顔色だろ悪いのは。そろそろ俺の両親に謝れよ」

 

 眉を下げシュンとする雪ノ下。おっと、少し言い過ぎたか。そういえば妹にもよく俺の言葉は加減を知らないから気を付けろと言われた。

 

「ごめんなさい。酷な事を言ってしまったわ。つらいのはきっとご両親でしょうに」

 

 少し反省したのが馬鹿らしくなるほど動じてねえなこいつ。

 

「よしわかった。俺が悪かった。俺の顔が悪かった」

 

 そしてついに諦めた。

 このまま言い合いを続けても分が悪い。

 でも決して負けたわけじゃない。戦略的撤退だ。だからその勝ち誇った顔をやめろ。

 

「おーい、そこの2人。そろそろ教室しめるからさっさと出ろ」

 

 扉から顔を出す平塚先生に気づき辺りを見回せば俺と雪ノ下以外誰もいない。いつの間に。

 

 ガタリと椅子を引く音が聞こえ隣を見ればすでに、荷物を整えた雪ノ下が鞄片手に立っていた。いつの間に。

 そしてそのまま、平塚先生に会釈をするとさっさと教室を後にした。その時チラリと俺の方を見たが、見ただけでさよなら、お疲れの一言もなく颯爽と帰っていった。

 

 挨拶の1つもないなと独りポツンと、取り残された俺が思っていると平塚先生が不機嫌な顔で仁王立ちしていた。

 やばい早く俺も出ないと。

 急いで帰り支度をする俺は今日の事を振り返り盛大なため息をつく。学園生活2日目で、早くも授業についていけず打ちのめされ、今日初めて話した顔だけは可愛い女子に散々罵倒を浴びせられた厄日だ。

 精神的にかなりのダメージを受けた。

 

 女子との会話ってもっと心弾むものじゃないのかよ。これじゃあ独りで壁に話しかけた方がまだましだ。口答えしないし、なんでも素直に聞いてくれるし。

 

 この先に盛大な不安を覚え、教室を後にする俺の背中には残業明けのサラリーマンレベルの哀愁が漂っていた。

 

「はぁ…ほんと絶望的に疲れた」

 

 誰だよ絶望的って言うやつが余裕があるとか言ったやつ。あ、俺か。

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