俺は真剣でダラッと生きたい   作:B-in

11 / 36
十話

 

 

 

この世には目には見えない…ごめんチャイ。地獄先生じゃないんだ。

本体ならリアルで出来そうだけど俺は無理。百夜です。現在朝の六時半、普段より大分早い時間ですよ奥さん。何が言いたいのかと言うとですね

現在、ここ最近の日課になっております白子の家の前に居ます。

元々が魔法関係の式だったものを変えて使用して居るのでその経過を見るのと補強と調節を兼ねて、イロイロとしています。

 

簡単に言うと結界を使ってるんです。実際に初めて見つけた時のあの驚きは嫌な意味で忘れられない。ものすっごくドロッとした氣が充満していたので軽く引きました。

俗に言う『陰氣』と言う奴ですね。まぁ、何気にこの世に充満している何処にでも有るモノなので悪いモノとは言い切れないヤツ何だけども…

良くある学校の怪談やら、トンネルの怪談やらの原因でもあるし、廃坑やら、廃れた病院、学校やらに集まり易い。溜まりすぎると悪い影響が有るけども、全く無いと恐ろしい事になる。

それの逆なのが『陽氣』、繁盛してる店とか、活気のある場所や道場、神社、寺、とか山とか綺麗な川とかに集まり易い。これも前者同様なモノで…両方とも色々と厄介なのよ。外氣を扱う身の上としては。

 

どっちも自然界に普通に有るモノで人間なんかはどっちも持ってるし無意識に発散してる。

分り易く言うと善人陽氣悪人陰気ってな感じで覚えればテストも百点だね。

そんな感じ。欲望とか渦巻いていると後者が多量に発生する。多量と言っても実際には微量だけども、積りに積もればえらい事になる。普通は自浄作用があるから消えるんだけどね。打ち消しあって。その筈なんだけども…

 

「おぉう。また増えてる…どうなってんのこの家の住人。」

 

うん。増加の仕方が凄い。凄い勢いで増えるんじゃなくて確実に増えてる辺りが凄いと思う。ドロドロだね。

 

「…肉欲、不満、重圧、罪悪感に憎しみ、怒りに虚無感ねぇ……いやはや、薬もやってるかもねぇ、序にSEXやりまくりってか? 救えないねぇ」

 

……あの白子大丈夫だろうか? なんかこう、見に来るたびに罪悪感が酷い…俺も当てられてるのか? でもなぁ、経過も気になるしなぁ。結界だけど呪いって言うかそう言う側面も持たせてるから毎日見ないといみないしなぁ。

流石に長期間に渡って人の運勢にちょっかい掛けるのはキツイか? でも今の所はOKだし…どうしたもんか?

 

「はぁ…帰ろう。」

 

今日の朝食は何かなぁ

 

 

 

Side 冬馬

 

 

おはようございます。葵冬馬です。

 

僕には友人と呼べる存在が二人います。幼馴染の準と川神百夜の二人です。英雄君とも親しいのは親しいですが、まだ友人と呼べる段階では無いと思います。

友人と言うのは共通点が似てる所があるのが普通なのですが、そう言う意味で違う人間と友人に成ったのは理由があります。

川神百夜、僕とは違う…僕達とは違うタイプの人間です。彼が所属している野球チームでも無気力発生装置と呼ばれるくらいは情熱が無い人間です。

以前、なぜ野球を続けるのかを聞いた事が有ります。

 

「まぁ、九鬼なんて言う財閥の人間と親しくなっときゃ将来安心出来そうだしな。それに、アイツは何か味が有って面白いしアイツの夢にくっついて行くのもアレだ。楽しそうだ」

 

打算だらけの様で、自分の欲求というか自分に素直な答えが返ってきました。

 

僕には友達が多い。周りが友達と思っているだけですし、友人とは違います。親から言われたから、容姿が良いから、頭が良いからそんな理由で近づいて来た人間です。

僕にはソレがとても醜く見えてしまいす。

そんな僕の心の底を見抜いたのか、彼は以前僕にこう言いました

 

「だったらよ、そげなこと言わんと清濁呑み込んで腹に収めろよ。綺麗、汚ない関係無しに結果ださにゃ罷り通らないんだかさぁ、潔癖主義は巧く生きられないっーの」

 

(確かに…本当にそうですね)

 

本当にそうだ。僕の周りの人間にそういう明確な思いは無い。無意識の領域でしかない。それが、醜く見えてしまう。本当に生き辛いです。

 

そんな事を考えながら僕は過ごしている。彼と友人に成ってから変わった事が確かにある。コレは良い変化なのだと僕は思っています。友達が増えました。彼の通う野球チームの人達なんですけどね。

彼と英雄君が所属する野球チームは本当に実力主義のチームです。子供のチームなのですから年上が強いのが当たり前なんですが、彼等はその中に混ざり結果レギュラーの位置にいます。

チーム最強のバッテリーとしてです。僕はその評価を受けるまでを準と共に見てきました。最初は彼の事だから真面目に練習はしないんだろうと思いましたが、意外と真面目にやっている事に驚きました。

それでも、ヤル気が無い様に見えてしまうのが不思議です。本人に聞いてみた事も有りますが何時も通りに

 

「練習はメンドイ、試合は疲れる。でも楽しいからやる事はやるさね。スタメンになっちゃたし、責任は果たしますよぉ」

 

彼のルールが適用された様です。こういった所を知っていると彼の生き方も凄いと思います。やるからには最後まで、それで英雄君の夢に着いて行くのも楽しそうと言う彼は僕から見ても輝いて見えました。

それでも、僕は彼自身の夢と言うモノを聞いた事が有りません。その話に成ると不思議と会話が脱線してします。

 

(避けて居るんでしょうねぇ)

 

考えなくても解る事だったので、僕はそれ以降その話を振らない様にしています。気にしても仕方が無いですしね。

他に変わった事と言えば英雄君と今まで以上に会話する様に成ったことでしょう。

彼は自分の事を王と評しています。僕もソレが正しい評価だと思っています。彼のカリスマ性はそう思わせるだけのモノがありますし、九鬼と言う家柄もありますしね。

何よりも、人を見る目があります。少し前に彼と話をしていた時の事です。彼が白子と言った子を探していた時のことです。丁度その彼の落して上げる話をしていたんですが、彼は笑いながらいいました。

 

「流石は我が強敵(とも)よ!!」

 

僕には何が流石なのかは良く解りませんが、彼に対しては英雄君と同じでやっぱりと思います。

 

「しかし、我が強敵(とも)は友人には甘いな」

 

「そうですか? 僕には何時も通りの彼に見えましたが?」

 

「我が強敵(とも)は甘いぞ? 実際に我が強敵は貴公等に気を使っているし心配しているし悩みも抱えている様だ。」

 

悩み? 彼が悩み?

 

「ふむ、理解出来ぬようだな。成らば我が王として道を示そう!! ただ、傍で見ているが良い!! 我が強敵の友人ならば気づける筈だ!! ハハハハハハ!!」

 

「そう…ですか」

 

それから、二週間ほどして今日やっと気づけました。何時もと違う彼に。

 

「百夜、悩み事ですか?」

 

だから僕は声を掛けました。クラスが違うと昼休み位しか時間が無いのが辛い所ですねぇ。

 

 

 

 

 

 

 

Side out

 

 

 

どうやら、かなり悩んでいたらしい。百夜です。

 

「僕で良ければ相談に乗りますよ?」

 

おぅふ…YOUだからはなせないヨー。

 

誤魔化すか? いや、ぼかして意見を聞くか? そうしよう。何かアレだ、自分に明確なモノがないから行動に自信が持てないし不安だ。

本体は本当に幸せ者だなぁ。明確な目的が有ったんだもの。俺はそれを借りて、行動パターンを真似てるだけだからなぁ。

 

「んー、この学校以外での友達がいじめられてるみたいなんだよねぇ」

 

「珍しいですね? 百夜なら助けに行くんじゃないんですか?」

 

「そうなんだけども…向こうにもこっちにもメンツが在ってねぇ。このまま放置しても大丈夫っぽいんだけども…なんか罪悪感とかそんなのが在ってね。どうにももやもやするのよ」

 

「助ければ良いんじゃないんですか? 百夜らしく行動すれば良いんじゃないんですか?」

 

それで、責任持てそうに無いから困るんだよあの白子は

 

「責任持てそうにないんだよなぁ、今回のはさぁ」

 

「…重いですねぇ」

 

「重いのよ。他にも迷惑行きそうだし、後も怖いし…それに」

 

「それに?」

 

「いんや、何でもないわ。やっぱ人に話すと楽になるねぇ。サンキュ冬馬」

 

「いいえ、友人ですから」

 

友人ですから…ねぇ。ハハ、確かに。でもよぉ。

 

俺らしいってどういう事なのかねぇ。

 

 

 

もやもやを誤魔化す為に畑へ直行。最近に成ってちょこちょこと雑草抜きしてる子が居るので、やる事が少ない。

ほら、今日も居た。

 

「がんばるねぇ」

 

「あっ、百ちゃん!! 頑張るよ!! だって、百ちゃんのお野菜美味しいもん!!」

 

ハッハッハッ、こやつめ。

 

うん。純粋に褒められるとガチで嬉しいわ。この子は本当に裏表がない子だから…ちょっと将来が心配に成って来たなぁ

 

「まぁねぇ。愛情と栄養に手間暇かけてりゃ野菜も答えてくれるさ。それを手伝ってくれる良い子にはマシュマロを上げよう」

 

「わーい!!」

 

満面の笑み。…なんだろう。見てて何だか心が痛い。

 

「なぁ、一子ちゃんよぉ」

 

「何? 百ちゃん?」

 

あー…やっぱ引きずってるなぁ

 

「中々友達が出来ない子に友達を作ってやるのってどうすれば良いのかねぇ」

 

ふぇ? っと首を傾げる。犬かお前は。いや…犬っ子なんだろうけどさぁ

 

「そんなの簡単じゃん。百ちゃんが紹介してあげれば良いんだよ」

 

「…諸事情により、俺はその子に近づきたくないんだわ」

 

「????…しょじじょう?」

 

ごめん。この子頭の弱い子だった。

 

「いや、考えなくて良いや。答えてくれた良い子には、もう一つマシュマロを上げよう。」

 

「わーい!!」

 

「わーい!!」

 

「だけど、風来坊、てめぇは駄目だ」

 

つーか、何時から居た。

 

「何だよぉ!! ずりぃぞワン子だけ!!」

 

「ヘーンダ!! 私は良い子だから貰えるんだもんね!!」

 

「百夜~俺にもくれよー」

 

「俺にもくれー」

 

「クックックッ、俺も貰ってやろう」

 

はい、ボイスレコーダに黒歴史一言入りました!!

 

「…繋ぎ鬼で勝ったらな!! 鬼はガクトだ。逃げろー!!」

 

取りあえず、マシュマロの残量が心もとないので逃げる。

 

「ちょっ、また俺かよ!!」

 

「逃げるぞ!! 皆!!」

 

「「「おう!!」」」

 

友達を紹介ねぇ…もう少し考えてみるか…

 

その日は翔一達と日が暮れるまで遊んだ。家に帰ると、姉ちゃんと釈迦堂のおっさんが危ない目をして修行してた。ちょっと引いた。

 

 

 

 

 

Side 百代

 

最近、弟の様子がおかしい。何だか落ち込んでいる様な気がする。

朝も早いし、したくない筈の早朝ランニングも行っている。これはおかしい。

何か在ったのだろうか? こんな時、同じ学校で無い事が残念に思う。というか、なんで同じ学校じゃないんだ!!

 

「オラ百代!! 気が入ってねぇぞ!!」

 

「はい!!」

 

もう!! 弟の所為で怒られちゃったじゃないか!!

 

弟は川神院では余り好かれていない。鍛錬の態度が問題だったり、武術に対する姿勢の問題だったりする。

両親も弟には武術をして欲しい様だったが、弟は断っていた。弟曰く

 

「痛いのきらい」

 

だそうだ。それなら仕方が無い。その分、私が強くなって弟を護ってやれば良い。

戦うのも面白いし、強い人と戦うのは心が躍る。一瞬前まで出来なかった事が、知らなかった事が出来る様になる瞬間。

相手を打倒した時の充実感。堪らない。物凄く満たされる。弟をぎゅうぎゅうしてる時とは別の満足感がする。

 

「釈迦堂さん!!」

 

「何だ!!」

 

戦いながらでもこの人の拳の冴え、蹴りの鋭さは変わらない。強い。とても強い。

 

「弟が最近落ち込んでいる様に見えるんですが、何か知りませんか?」

 

戦う悦びを私に教えてくれる人は、弟とも仲が良い。

 

「………さぁな」

 

そう言って、釈迦堂さんは拳を止めて「今日の鍛錬は終わり」と言った。

むぅ…ちょっと物足りない。

 

「百代、あまり詮索してやるな。男の子にはバラしたくない秘密なんてのは結構在るもんだ。」

 

「でも!!」

 

「まぁまぁ、そういきり立つなって。おじさんが言えるのはそうだなぁ……いつもより少しだけ優しくしてやれば良いんじゃねぇの? お前さんは強いんだ、それくらいの包容力が在ってもいいだろう?」

 

弟に優しいのは当たり前だ!! 私はお姉ちゃんだからな!!

 

「はい!!」

 

よし、今日はお風呂で体を洗ってやろう!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぅおぅ、元気が良いねぇ。まぁ、俺やアイツを否定しねぇのはアイツくらいだからなぁ。少しは気に掛けるのが当たり前か?」

 

俺も、優しくなったもんだわ。

 

いや、結局は自分の為か? ハハ、そうかもなぁ…

 

なぁ、百夜よぉ。お前の前で、大好きなお姉ちゃんやお友達をぶっ潰したら…お前はどうするよ? 同じ臭いがするぜ、お前。

 

心の内側によぉ。目的もなく当たり散らしてる奴が眠ってるだろ?

 

「ハハ……感情の揺れが鍵か? まぁ、そんな事はできねぇなぁ。」

 

爺が居る限りは無理だわ。

 

 

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。