俺は真剣でダラッと生きたい   作:B-in

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十一話

 

 

 

 

 

 

 

百夜だよ!! 朝は空気がジメっとしてるね!!

 

寝ないで考えた、夜は寝ずに学校で寝て、序に昨日は夜も寝た。

昨日辺りまで考えてたんだ、あの白子の事。そこで思い至った訳だ。俺からすればあの白子は厄介というか重い。うん、絶対にあの子は重い。だから余り関わりあいたくない。

個人的な意見だけども、冬馬にも準にも関わって欲しく無い。あいつら結構感受性あるからな、変な影響を受けかねん。それは何だか心配だ。

折角の友達、親友と呼べる奴らだ不幸に成って欲しくは無い。あいつ等が厄介な感じになったら距離を取るけども、多分そう成らないだろうと思う。

あいつ等は俺以上に川神百夜を知っていると思う。

まぁ、俺は未だに自分が把握出来てないし然るべき目標とかそう言った指針がないからねぇ。

取りあえず、ダラっと生きて楽しい事もできたら良いなぁぐらいな適当な感じで動いてるからなぁ。もしの時、自分がどう動くのかも良く分らん。

 

でだ、そんな俺があの白子に関わったら絶対にパンクすると思う。いろんな意味で。

だったら、俺以外の連中に関わらせれば良いのだよ。君ぃ

ぶっちゃけ、翔一達に関わらせれば良いと思う。あいつ等も何だかんだでお人よしな所が有るし…若干二名壁が分厚い奴等が居るけども。翔一が居れば大丈夫だと思う。

てか、あいつならどうにかするんだろうなぁと思える。

これが、俺に出来る最大限だ。

 

もう、暫く冬馬達と遊べそうもない。最近、中々遊べねェんだよなぁ。野球の試合も見に来てないみたいだし…何か有ったのだろうか?

 

……良いか。あいつ等年不相応に賢いからどうにかなるべ。それじゃぁ、誘導作戦を始めようかねぇ

 

 

 

 

 

一日目

 

こちら、モモーヤ。白子のクラスの前に居る。今日から今までの統計と合わせて白子の帰宅時間とルートを調べる。

 

「?!」

 

むぅ、流石いじめられっ子。視線に鋭いな。今回のストーキングは難しい任務に成りそうだ。

 

えっ? ダンボール? そんなもんゲーム中だけだろJK。架空と現実を一緒くたにしたらダメだぞ?

 

その日、どこかで虎狼と呼ばれる男がまた潜入に失敗した。

 

 

二日目

 

何? あの白子? 感が鋭いのにも程が有るだろうボケェ!! 畜生!! 何で其処の十字路曲がるんだよ!! 昨日は直進しただろうが!!

 

 

三日目

 

今日は左折ですか…そうですか。いい加減にしろ。

 

 

四日目

 

今日も左折、どうやら気づかれてはいない様子。白子は現在ニャンコと戯れている。

あっ、コラ!! マシュマロをニャンコに差し出すな!!人間の食べ物は猫とかには味がこゆ過ぎるんだぞ?!

野生に戻れなくなったらどうする!!

 

 

五日目

 

今日も尾行中なう

 

 

六日目

 

家まで到着。むぅ、どうやら家には出来るだけ遅い時間に帰るようにしているらしい。

どうやら、親はいないようだ。買い物か?

めちゃくちゃ安心してる様子を見る限り、虐待を受けているようだ。

……計画が成功すれば大和辺りが気づくだろう。それかモロ。

 

 

七日目

 

行動パターンは分った、後は配置の問題か…誘導自体は簡単に出来そうだ。

明日から仕掛ける。後、姉ちゃん将来の夢の作文は黒歴史にして立ち直ろうよ。

 

 

二十日目

 

七月だ。いい加減にしろよマジでこの白子が!! 誘導されろよ!! 誘いに乗れよ!!

そこで、諦めんなよ!! 頑張れ頑張れ出来る出来る!! お前其処で一歩踏み出さないでどうするんだよ!! 頑張れ頑張れ出来る出来るって!! こっちに来いよ!! 一歩進んだら後は勝手に足が進むもんなんだよ!! 頑張れ頑張れ諦めんなって!! 応援してる人も居るんだよ!! そいつの気持ちも考えろよ!! 諦めんなよ!! 出来る出来る出来るって!! だから其処で左に曲がんなぁぁぁぁぁぁぁ!!!!

 

 

二十五日目

 

もうすぐ一カ月…頑張った俺。物凄く頑張った!! 今日、やっとの事で白子に翔一達を目撃させる事に成功した。どうやら、別の学校の人間と言う事は理解している様だ。

ふむ、目に希望の光が見えるな。コレは明日、明後日辺りに折衝するか?

残念ながら明日は試合だ。今日の休み時間に冬馬達に逢いに行ったが何だか凄く暗かった。もう、何て言うか解る人間にしか解らないけど、暗かった。

声を掛けたら一瞬凄い顔してた。何か在ったのだろうか? 聞いても答えてくれなさそうだけど一応聞いてみた。

 

「大丈夫ですよ百夜。僕も準も何時も通りです。ねぇ、準?」

 

「おう、ちょっと昨日猫が轢かれるのを見ちまったから凹んでるだけだ…ごめん、ちょとトイレ」

 

プルプル震えちょる。…アイツ演劇の才能あんな。まぁ、話したくないなら『まだ』聞かないさ。

 

白子の事を含めて俺の周りが大変だ。今年は厄年か?

 

 

二十九日目

 

あの白子めぇ…まだ接触してないのでせう。もうそろそろ切れそうでござる。序に冬馬達もまだ暗いのでムカムカする。

 

九鬼えもんに頼もう。

 

二、三日後には解るとの事、夏休みじゃねぇか。

 

 

 

 

 

 

Side 冬馬

 

 

僕は医者の息子です。政治家の息子が政治家に成る様に、医者の息子も大抵は医者に成る事を親から望まれます。総合病院の院長の子のならば尚更です。

その事に反感を覚える人も多いと思いますが、僕はそれを誇りに思っています。時折、父から教えて貰う医学の事。その時間は僕にとっては夢へ向かう為の第一歩を踏みしめる様な、そんな時間でした。

百夜達と知り合ってからは余計にそう思うようになりました。この時間は僕にとって神聖な時間なんです。

だから、百夜に英雄君の事で助言出来たんですが…取り越し苦労だったみたいです。

僕はいろんな事に興味が有ります。英雄君に言われて百夜を見て居た時、僕は心理カウンセラーの知識を学ぶのも面白いかもと、少々不謹慎な事も考えてしまいました。

僕が百夜に話しかけてから二日、あの後も中々会う時間が取れません。それでも、彼の事を考えるのは大切な友人だからだと思います。

そして、その日…僕は父の部屋へ本を取りに行きました。其処で、普段なら絶対に見ないモノ見てしまいました。

父の机の上から二番目の引き出し。全部の引き出しには鍵が付いていて普段は開かないのですが、運の悪い事にその日はその鍵が掛かって居なかったんです。

今思えば、僕の好奇心がこの嫌な気持ちを発生させた原因なんですねぇ。

今更ですが、僕は頭が良いです。そういった教育を学校とは別の時間で受けて居るのですから当然の結果と言えるでしょう。準もそうです。

だからこそ、僕は解ってしまいました。父の病院の事なら在る程度は知っています。コレも、僕が期待されているからでしょうけど…普通の子供なら知らない事も知っています。

そして、してはいけない事も常識の範囲で知っているつもりです。

 

フフ、あの時ソレを理解した瞬間に一目散に父の部屋から逃げ出した自分を褒めて上げたいと今は思ってます。僕がソレを見てしまったと言う証拠を殆ど残さずに逃げれたのですから。

指紋等を調べられればバレてしまうでしょうが、それは流石に無いでしょう。いっその事、バレてソレの共犯にされる将来が早く成った方が良かったのかも知れません。

まだ、逃げ道が在ったのですから…逃避ですねぇ。フフ…その後、意を決して準にその事を打ち明けました。もしかしたら、同類が道連れが欲しかったのかもしれません。

準も、自宅を探した結果発見してしまったようです。

僕も、準も自分の希望観測に縋れるほど絶望出来ませんでした。度合いで言えば何の覚悟も無くソレを発見してしまった僕の方がショックは大きかったのかもしれませんが…準は何処かでそう言う事を覚悟していたのかもしれません。僕がワンクッション置いたのも有るでしょうけど。

 

僕は以前百夜に言われた通りに、自分が在る意味で潔癖症である事を自覚しています。そしてソレでは生き辛い事も理解しています。それでも変えられない、父の様な素晴らしい人間に成る為には…と、自分なりに覚悟を決めて頑張って来たつもりです。

だから…許せない。

 

あぁ、そうです。そうだったんです。僕は許せないんだ。

このもやもやとした感情、嘘だと思う気持ち、何かの間違いと思いたい思考。その根底に在るのは………喪失感。

信じて居た者に裏切られた。目指していた者は前提から間違っていた。失望した。絶望した。

 

「僕の今までの時間は何だったんでしょう」

 

塾からの帰り道、僕はそう口に出していました。隣りには準しかいません。

 

「さぁな…無駄ではないと、俺は思うぞ。若」

 

「そう、思える準は強いですねぇ」

 

お互いの顔を見らずにどのような表情をしているかが解る。それぐらい深い付き合いです。こんな時、彼なら…百夜ならどうするのでしょうか?

 

「…百夜なら」

 

僕が言いかけた言葉に準は言います。

 

「そいつが大切なら助けるだろアイツなら。そうでないなら…あっ、股間がキュッってなった。」

 

「十倍返しとかするんでしょうね。彼なら」

 

彼の話しをする時は笑顔に成れます。百夜は在る意味で僕の憧れです。

僕には出来ない生き方をしている。彼は卑怯と呼ばれる事も平気でします。でも、僕は彼を嫌いに成った事は有りません。解りませんが彼は僕にとってそういう存在の様です。

 

「…若、アイツに相談してみるのも」

 

「駄目ですよ、準。彼だけは百夜だけは巻き込みたく在りません。」

 

僕の思い上がりでは無く、百夜は僕達の事を身内として扱っています。血の繋がりも家の繋がりも有りません。彼が多くの人が集う道場の息子だからかもしれませんね。

だから…百夜は巻き込みたくないんです。彼のルール道理に行けば、彼は僕達の為に力を貸してくれる。いろんな事をほっぽって、最低限の事しかないで、全力で助けにきてくれる。そんな予感がします。

 

「…だな、アイツなら凹む以前に『だったら縁切っちゃいなよ』ぐらい普通に言いそうだな」

 

「ソレが出来ないくらいには愛情が在るのが親子の欠点かもしれませんねぇ。」

 

ソレが出来ないからこそ、この胸の内に黒いもやもやが溜まっていく。殺したいとは思わない。でも止めて欲しいとは思う。そうです、止めて貰いましょう。いいえ、そう言った事が出来なくしましょう。

今はまだ無理ですが、もっと大きくなって…ぶち壊して上げましょう。あの病院を、ソレを許容する大人達を、率先して行う人達を、この醜い欲望だらけの……

 

(っと。危ないですね。終末思想並みに危ない考えです。内部告発するには…せめて高校に成って、政界や財界にコネの在る人物とも親しく成らないと…)

 

そうでもしないと、逃げ道を防げませんしね。

 

僕がそう考えて居ると、視界の端に白い女の子が移りました。

 

「準、あの子は…もしかして…」

 

「ん? 四組の子か? 転校したと思い込んでたが…」

 

その少女の顔は何処か嬉しそうでした。何か良い事でも在ったのでしょうか?

それならば、良いのですが…

 

「嬉しそうな顔してんなぁ…案外、百夜が言ったみたいに親とかが気づいたのかもな。」

 

「ですねぇ。あぁ、百夜と言えば、この間の試合を見に行けませんでしたね。明日から夏休みですし…コレからは夏のリーグですね」

 

「まぁ、あのコンビなら圧勝だろ? 最強バッテリーな上に百夜に至ってはバントの鬼だ」

 

走るの疲れるぅとか言って良く送りますしねぇ。

 

「さらに言えば倦厭されない限り確実に打つ上にホームランも打ちますもんねぇ」

 

「対戦相手からすれば悪魔みたいな奴だな。百夜は」

 

「敵からしたら大魔王ですよ。百夜は」

 

そんな評価な僕達の大切な友人は、八月になる一週間前に海外に行くそうです。英雄君に誘われたらしいですが……彼なら変なコネを作ってくるかも知れません。

そう言う話しを聞くのも僕の楽しみの一つです。

 

 

 

 

Side out

 

 

 

少女は希望を見つけた。土手で走りまわる同じ年頃の男子達。その中にはヒョッロっとした色白の男子もいるし、日に焼けた肌の大柄な男子も居る。

笑顔を振りまく女子も一人いれば、なんか変な笑い方をしている男子にバンダナを巻いた男子も居る。

自分通う学校の子じゃない。

 

希望だ。願いだ。望みだ。

 

友達に成ってくれるかもしれない。自分の手を握ってくれるかもしれない。自分と笑いあってくれるかもしれない。

 

マシュマロ…そうだ、マシュマロを持って行こう。つい最近見つけた彼等は連日この付近で遊んでいる。明日も居るかも知れない。

家にいるより断然良い。家には母が居る。濁った眼で私を睨む人がいる。お酒の臭いと生臭い臭いをさせるあの人が……

家に居ない方が…帰らない方が絶対に良い。

明日は、早めに家を出よう。そして、あの子達と友達に成って…遅くまで遊んで…

 

そんな事を考えながら、少女は静かに家に入った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんな、満員なんだ」

 

「えっ…マシュマロ上げるよ?」

 

「うっさいなぁ、もう一杯なんだよ」

 

 

 

 

 

子供とは無邪気である。そして…子供のグループとは閉鎖的であり、大きな変化を求める事を嫌う性質があるものだ。

 

 

 

 

 

 




学校とは社会の縮図であり、どんな場所でも人は優劣を決めたがり、優秀すぎるもを排斥し、弱すぎるモノを見下して、漸く安心する。

それが普通の人である。

貴方は普通の人ですか? それとも、数に対抗できる非凡な人ですか?

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