俺は真剣でダラッと生きたい   作:B-in

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五話

 

 

 

 

「今のはカチンと来たわー」

 

 

 

その声は思いの外、周囲の人間の耳に届いた。

 

感の良いモノはドキリとした。

 

ただ聞こえたモノは怖気が走った。

 

その瞬間、その声を聞いたモノは理解した。

 

あぁ、怒ってると。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小学生といえども、クラブに所属し大きい大会にレギュラーで出る事ができる球児の弾は速くそれなりに巧い。

だが、それは小学生にしては…というレベルだ。

例外はある。九鬼英雄はまさにそうだろう。小学生、それも小学一年生が出ていけるレベルでは無い大会で今の所は無失点。

異常の一言に尽きる。

野球と言う球技から目を離して見ればその例外は、例えば釈迦堂、例えばルー、例えば川神鉄心、例えば川神百代。

そして、その四人の動きを見る事が出来て尚且つ川神の血を引く阿呆がいる。

 

川神百夜

 

怠惰が我が人生、でも、楽しい事も大好きだ!! 知りたい事は知りたいし、貪欲である。その半面の怠惰であるのだが…この阿呆の沸点は意外と高い。其処らの事で簡単に怒るしイラついたりするが、本気で怒る事とイラッとすると言う事はほぼ無い。

怒る、憎むと言う事には案外エネルギーがいる。ぶっちゃけ疲れる。だからこの阿呆は直ぐに諦める。

余程の事が無い限りでだ。

 

だが、ある一定の事に対して異常なまでに沸点が低い。

 

無能、低能

 

言うまでも無く。何の能力も無く意気がる奴、実は自分は凄いと思い周囲に迷惑を振りまく奴に、喧嘩を売られる事に対しては異常なまでにプッツンしやすい。普段はそれさえも元から備えている気だるさで抑え込んでしまうが…鬱憤などが溜まっていると

 

カキーン

 

「おぉ!! 良く我に続いた庶民の百夜!!」

 

感情に奔り易くなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やぁ、イライラをランクで表すならイラッ☆って言うぐらい頭に来てる百夜だ。

うん、やっちまおうと思ってるんだ。大丈夫さ。大きな氣を使わなければバレやしないからね。

 

「ちょっと話があるんだけども…井上」

 

「お…おう。」(な、なんかこえぇ)

 

「葵君もいいかな?」

 

「えぇ良いですよ」

 

うんうん。イケメンで良い奴とか…爆発しないかなぁ

 

「後、九鬼ぃ」

 

「どうした庶民の百夜。我はチームの応援をしなくてはならないのだが?」

 

「次の回からだけど…」

 

まぁ、ぶっちゃけて言えば俺の言うとおりに投げろって言うのを伝えただけですけどねぇ。

葵と井上には説得に協力して貰う為にベンチまで下りて来てもらったの。何か、葵と九鬼(弟)は友達みたいだし。

結果、説得できませんでした。

けども、話を聞いていた九鬼(姉)の

 

「うむ。九鬼揚羽が許す!! 英雄、言うとおりしてみよ」

 

の一声と肉体言語(威嚇拳骨)で何とかなった。すげぇ

 

簡単な話、次の回でのうちの攻撃は捨ててるんだ。信用させる為に。九鬼(弟)も一発も掠らせずに三球三振させたら静かになった。

 

当たるも八卦、当たらぬも八卦。それが占い。でもね、勝利の為なら当てさせるのが俺の本気の占いなのだよ。

ここから、このチームの圧倒的勝利で試合を進める。

 

キャッチャーとしてグラウンドに出たら、外氣を使って場の相を乱して自分で整える。バッターが立てば気味悪く笑ってやる。

時々、相を見てそいつが気にしてる部分を詰ってやる。

相手はボロボロだ!!

 

ハッハッハッ!! 今ここで何よりも強いのは俺だ。完膚なきまでにボロボロにしてクレル!!

 

「はい、十五点目ぇ」

 

カキーン。

 

現在十五対0にて我が軍の圧勝中なりぃ

 

ゆっくりとベースを踏みながら周り、士気も下がりに下がって涙目な年上のキャッチャーに嗤いながら言う。

 

「嘗めた事ぬかすと…こうなるんだぜ? おぼっちゃん? カッカッ」

 

 

えっ? 試合の結果? 圧勝だよ。当たり前だろ? 反則してるんだから

 

 

 

 

 

side 九鬼揚羽

 

 

 

己が目を疑うとは正にこの事なのだろう。試合を見ながら敵方に同情してしまう。キャッチャーとの会話は私にも聞こえた。

勝負事なのだ、卑怯とは言わない。寧ろ、心理戦を仕掛ける事には称賛を贈りたい。我もヒュームより武を学んでいるからその大切さは解る。

だが、だが!! 此処まで一方的に勝てるモノなのだろうか? 我が弟のチームに武家の出身のモノ等一人としていない。球児だ、出身等関係なく今試合に出ているのは己が実力でレギュラーに成った球児達なのだ。

それは相手も同じである。

 

「…………」

 

何も言えない。

 

私の隣にいつの間にか控えていたヒュームは何やら頷きながらニヤニヤと笑っていた。

 

「…ヒューム」

 

我の言葉にヒュームは確信を持って言った。

 

「アレは川神だ。成るほど成るほど…鉄心の孫か」

 

川神…そして鉄心。その名は知っている。世界に名を轟かせる武の覇者。武神・川神鉄心。

 

「蛙の子は蛙。ハッハッハッ!! 久しぶりにあのクソ爺に俺が直々に逢いに行くか。揚羽、明日は少しばかり暇を貰うぞ。興味が沸いた。」

 

「えぇい!! 我には何が起こっているのか解らぬ!!」

 

「ソレはお前の未熟だ。嘆かわしい。案外、九鬼の覇道を妨げるのはアレかも知れぬな。」

 

解せぬ!! しかし、面白い!! この九鬼揚羽、全力を持って貴様を知ろう!!

 

 

 

Side out

 

「えっ? なにそれ怖い。」

 

「いや、何を言っているか解らんのは俺だ」

 

いや、なんかその理屈はオカシイって言う電波が…ちょっとヤル気を出したから疲れてんのかなぁ?

 

「得点差?」

 

「…まぁ、それは怖い」

 

「そうですねぇ…一体どうやってるんですか? 川神君。僕には全く理解できません。」

 

「ん? 占い」

 

「えっ?」

 

「えっ?」

 

「だから占い」

 

「「なにそれこわい」」

 

「いや、井上はともかく。葵はキャラが違うだろ」

 

絶対にそういうキャラじゃないよね? お前

 

「あぁ、確かに俺はともかく……って、何で俺は除外されてんだよ!!」

 

いや、お前は俺と同じ三枚目ポジっていうか、突っ込み枠っていうか…ねぇ?

 

「偶にはキャラじゃない事をしてみたくなるんですよ。それと、冬馬で良いですよ。百夜君と呼んでも?」

 

「あっ、俺も準で良いぞ」

 

「んじゃ、冬馬。後、ハゲ」

 

「だから、ハゲてねぇーよ!! 予定もねぇよ!!」

 

いや、四年後位には…もう

 

「なんで、癌をを告知する医者みたいな表情で見るんだよ!! 冗談だろ? 冗談だよね?! ねぇ!!」

 

あっ、顔に出てた

 

「あっ、次の回で終わりですね。百夜君、頑張ってください」

 

「ウェーイ…また、場の相を見る作業が始まるお」

 

 

 

 

 

 

「ちょっとぉ!! 少しぐらい否定してから行ってくれぇぇ!!」

 

 

 

 

 

 

我が軍の圧勝で終わりました。やったね!! なんか試合後に九鬼英雄に絡まれたけど適当にはぐらかして帰ったよ!!

 

まぁ、学校で冬馬のコミュに入れば大丈夫でしょ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我は貴様を対等のモノとして認めるぞ!! 我が強敵(とも)百夜!!」

 

次の日、なんか宣言された。ジョグレスシンカだとか、最初っから完全体とか訳の解らない進化を遂げている九鬼の中の俺の評価に絶望した。

何時の間にか野球チームに入ってる事に成ってるんだぜ? 笑えよ。麻生のおっさん。何気に試合観戦に来てんじゃねぇよ。

 

 

 

 

 

 

 

 


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