俺は真剣でダラッと生きたい   作:B-in

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七話

 

 

 

 

 

勝てば官軍、負ければ賊軍。

 

僕達が家に帰り、彼に言われた通りに辞書を引いたモノは否応なしに僕達を打ちのめす様なモノでした。

 

力こそ正義。

 

要約するとそんな意味。

 

清濁併せ呑む

 

彼が言っていた清濁とはこの事なのでしょう。善・悪のわけへだてをせず、来るがままに受け容れること。度量の大きいこと…

 

確かに僕達は将来的にはそのような事をしなければならないのかもしれない。僕はそう思いました。

 

恐らく、準もそうでしょう。僕達と同じ年の彼は当たり前のように言います。ですが、僕達はまずこの様な事を考えた事がありませんでした。

 

僕も準も勉強はしています。それなりに頭が良いという自信もあります。僕は僕で、準は準で尊敬出来る父のようになりたい。その後を継ぎたい。

 

そう思っているのですから。

 

だから、僕は思います。彼は僕達が知らない事を多く知っていて、僕達より先の事を見ていると。

 

彼と友人に成れた事は僕が思っていたよりも良い事だったようです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バスッとミットの中にボールが入る。何時も通り九鬼のボールを受け止める。やっぱこいつ同年代とは思えない球を投げるわ。百夜です。

 

奴に野球チームに入れられて既に一年。えぇ一年です。私も二年生になりました。

 

あの出来事が有って以来、私の学校生活は変わりました。針の筵です。

 

イケメンで優しく気品のある葵冬馬。

 

金持ち力持ちカリスマ持ちの自信持ち、九鬼英雄。

 

えぇ、この両名と友人に成ってしまってからは私のボッチが加速しています。鬱だ。

 

体育の時間、教師の

 

「はーい、二人組み作って~」

 

破滅の呪文です。ラピュタに対するバルスレベルの呪文です。ちくせう

 

何度心のなかで「やめて!!」と叫んだ事か…合同体育の時は九鬼と組むように成っちゃってるから良いんだけどさ…

 

なんだかんだで九鬼に野球チームに入れられた事には感謝している。

まず、家から逃げられる。主に両親とじーさまとルー。何か後者達はそれとなくだけど、両親はあからさまに武術しろ的な事言うんだモノ。

 

野球しても良いから武術もしなさいと有る意味最終手段だろJK

 

まぁ、九鬼に言ってみたら

 

「すれば良いではないか?」

 

「いや、野球するならそれ一本に絞らないといかんだろ?」

 

この会話の後、野球道具などの必要なモノが九鬼から提供されるようになりました。財閥すげぇ、金持ち怖ぇ

 

で、もう一つの理由が。新しい所に友人関係を開拓しようかと…

 

…あぁ、そうさ。既に学校ではもう諦めてんよ!! 九鬼と冬馬と準位だよ!! 友達百人出来るかな? だと…このファッキン共がぁぁ!!

 

一人は嫌です。でも、少なすぎるのはもっと嫌です。

 

最後の理由は、なんだかんだで面白いから。今の所、九鬼の球を捕れるのは俺か六年生のあの人。去年怪我した人。

俺が九鬼の球を捕れるから、基本は俺と九鬼のバッテリー。未だに奴は俺の事を強敵と書いて友と呼ぶんだが…いや、さすがに一年も時間が有ったんだから誤解を解こうとしたよ?

あの時点でなら俺の学校生活にもまだ希望の光が見えた筈ですよ?ですけどね…

 

「そんな事は最早どうでもいいのだ。我は我が対等と思える者に出会えた。成れば友だ。貴様は変わらず我の強敵(とも)なのだ」

 

と、腕組みして言われた。いや、チームでも対照的な二人で通ってるよ?

 

やる気全開、野球大好き九鬼英雄

 

やる気ナッシング、野次と毒を吐きだす無気力装置川神百夜

 

でも、俺の御蔭でリラックスしてる人多いのよ? ゲームとかマンガの貸し借りも結構してるし。

何気に、冬馬と準もけっこうな頻度で見に来てるし冬馬とか時々敵チームの情報とか持ってきてくれるしね。準には突っ込み投げっぱなしにしてるよ?

 

他に変わった事と言えば…秘密の場所を見つけた。うん、ちょっとした広場みたいになってるっちゃぁ成ってる草原何だけど、風通しが良くてねぇ。春に見つけたんだけど。夏は風通しが良くて気持良いのよ。

で、今そこで野草とかの栽培を行ってるの。ほら、本体(アギ・スプリングフィールド)の知識と記憶持ってるからどうすれば良いかも知ってるし。

 

地脈にちょこちょこっと干渉して活力を溢れさせたりとか、種子に外氣を込めてみたりとか実験かねてんだけどさ。

 

残念な事に、小学二年生じゃ買えないモノとかも有って断念してたんだけど。園芸が趣味の一つとして有ると言う事で九鬼に強請ってみたら案外すんなりと…成果として出来たてトマトを冷やして食べたぜ? 案外評判だった。

 

外氣込めて愛情注いで育てたら物凄く甘く成ってくれて…正にボーノでした。

 

その関係で他校だけど友達も出来たし。うん、友達って良いなぁ。結構ぶっ飛んでるんだけど何だか憎めない奴で、最初は俺の畑の作物(子供)を荒らす奴だったから勢い余ってフルボッコしたけど。

 

まぁ、あそこまで褒められたら許すしかなくてですね。なんだか、俺の畑の近くに秘密基地を作るらしいんだが……まぁ、迷惑にならない程度なら良いと許した。

 

その代わりに、畑の水巻をお願いしたんだが…あっ、俺が居ない時だけよ? お互い電話番号教えたし。中々、捕まんないけどな。あのやろぉ…今の時期はサツマイモが美味いのでそろそろ収穫しに行かないといけないのでこの後で行こう。

 

シュッ

 

バスッ

 

「おーい。球威が弱くなってぞぉ」

 

「分っている!! 」

 

シュッ

 

バスッ

 

「落ち切ってないよぉ」

 

「クッ!!」

 

今何をしてるかって? 九鬼のフォークの訓練だよ。ストレートとカーブとチェンジアップで試合はどうとでも成るけど、それだとその次からがねぇ。

 

アイツ、九鬼財閥の長男なのにさ…プロが夢なんだと。んで持ってさ、其処でも俺とバッテリーなんだと。

 

俺には誰にも打ち明けた事の無い悩みがある。

 

とても、馬鹿らしいのかもしれないけど悩みがある。

 

俺はアギ・スプリングフィールドの偽物の器が壊れる瞬間に生まれた。だから、記憶と知識を持っている。

でも、それは余り必要な事じゃないんだ。だって、俺には名前が無い。記憶と知識は他人のモノで、それを持って生まれてしまった。

だからこそ思う。

 

俺は誰で、俺は俺なのか?

 

今の所の生きる目標も行動のパターンも借り物で、何事にも真剣になれない。

馬鹿らしく思ってしまう。故に、俺には本当に夢と言うモノが無い。将来成りたいビジョンが浮かばない。

 

ダラッとしたいのは借り物からの思いで惰性。でも、楽しく生きたいと思うのはたぶん本心。

 

でも、其処から先は何も思い浮かばなくて刹那的に生きてるだけ。次なんて何も分かる訳が無い。

 

先に何も考えられないから、俺は多分こいつに付き合ってるんだと思う。

 

楽しい事はやってるし、面白くない事もやってる。疲れる事もしてるし疲れない事もしている。

 

夢を持っていて、それに全力で挑んでるやつは眩しい。その過程で躓いても諦めない奴は凄いと思ってる。だから、そういう奴は性別関係無く一人の人間として好感が持てる。

 

まぁ、何が言いたいかと言うと。こいつと一緒にプロになるのも面白そうだし、中々に良い将来じゃないかなぁと思ってるんだ。

 

 

 

 

 

 

 

言わせんな、恥ずかしい

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい。そろそろ上がるぞぉ。肩壊しても仕方がねぇしなぁ」

 

「むっ…そうだな。流石は我が女房役!! 我が認めし強敵(とも)だ!!」

 

 

そう言って、帰り支度を始める。あー…余り返りたくねぇなぁ。うちの両親、ルーとかに負けてくんないかなぁ。ルーも釈迦堂さんもじーさんも姉ちゃんも余りそう言った事言わないのになぁ

 

「我が強敵(とも)百夜!! 絶対に我はプロになるぞ!! そしてメジャーも制覇してやる!!」

 

「はいはい、まずはフォークをモノにしようねぇ。あとシンカーも。変化球全部覚えて、球威も凄くなったらお前が引退するまでキャッチャーしてやんよ。」

 

「それなら、僕達はお二人の主治医にでも成りましょうか? そうなれば、うちの病院ももっと大きく成れそうですし」

 

「いやいや、若。マジでそうなったらやばいから。プレッシャーとかヤバイから。っと、コレ、ドリンクな。後、明日はゆっくりと休んで体を労れよ。」

 

なんだかんだで、土日は略この四人でいるなぁ。まぁ、良いか。他の学校の奴ともコミュってるし。芋を収穫したら分けてやるかねぇ。

あの、自称風にでも。

 

 

 

 

 

 

 

 


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