戦姫絶唱シンフォギアー想いが貫くその先にー   作:saver

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主人公の声は坂本真綾でお楽しみください。
それとAXZ見終わった後に一期から見直してたら唐突にティン!ときたから書いただけなので、続くかどうかは期待しないでください。

思いつきを数字で語れるものかよ!


第1話「ゲイボルグの少女」

考古学者のパパとママは優しい人だった。

 

パパは厳つい顔と声ををしてたけど、その口で語り聞かせてくれたお伽話や神話が大好きだった。

 

ママは仕事一辺倒で家では失敗ばかりだったけど、いつか食べたフレンチトーストの味は今でも覚えているくらい暖かい味だった。

 

2人はいつも仕事で忙しかったけど、偶に発掘現場へ連れて行ってもらって、発掘物について教えてくれる時に見せるオモチャを買ってもらった子供のようなパパとママが大好きだった。

 

 

ーーだけど13歳の誕生日、手作りのペンダントを貰ったその日、全ては炎の中に消えて行った。

 

 

ある日から、思い出が消えていった。

大事にしていた骨董品も、発掘現場の悪路を越えた四駆も、読み込みすぎてボロボロになった辞典も、3人で座って映画を見たソファーも、テレビも、思い出がどんどん消えていった。

 

お金がないの、とママは言う。

社会が不安定なんだと、パパは言う。

 

EU連合失陥ーー他の国では、そんな風に呼ばれているらしい。

綺麗だった街並みも、優しかった人達も変わってしまった。

 

街は座り込んで俯く人、自棄になって酒を飲む人、喧嘩をする人、ものを盗む人、そんな荒れた人々で埋め尽くされた。

ママと通った本屋さんも、パパと買い物に来たスーパーも、花屋さんも、服屋さんも、何もかもが無くなった。

 

そんなある日、私は13歳の誕生日を迎えた。

ここ最近では考えられないくらい豪華な食事を3人で食べて、2人で作ったのだというペンダントを貰った。

 

私にかける声はいつになく優しくて、向けられる笑顔はいつになく暖かい、大好きな歌をみんなで歌っている時も、その裏に深い悲しみがあるのは分かっていた。

 

私は、それとなく死を察知した。

 

パパが、夕飯の食材と一緒にガソリンをいっぱい持って来たのを知っている。

ママが、仕事仲間に向けた手紙をいっぱい書いていたのを知っている。

食後に飲んだ紅茶に、睡眠薬が入っている事も知っている。

 

パパはいつになく必死になって、エアコンが使えなくなっちゃったからと誤魔化した。ウチには暖炉もストーブも無いのに。

ママは手紙の中身を見せまいと必死になって、ただの定期報告だと偽った。いつもはそんなことしてないくせに。

ママが入れてくれた紅茶はいつも渋くてミルクと砂糖を入れないと飲めないのに、その日はいつになく美味しくて、ちょっぴり薬の味がした。

 

全部知っていたけど、私は受け入れた。

 

パパとママと一緒なら怖くないと思ったから、微睡みの世界に落ちるその直前に「おやすみなさい」ではなく「また会おうね」と言った。

いつか来る幸せを夢見て、天国でまた会おうねと言ったのだ。

私はそれで良かった、これ以上街が、人々が、パパとママが苦しむのを見たくなかったから。

 

誰かが言った、世界はこんな筈じゃなかった事ばっかりだ、と。

本当にその通りだと思う。

 

ーーなぜなら、私は生き残ってしまったのだから。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

ーー2年後

 

「ーーハァッーーハァッーーも、もうーー」

「だめ、早く走って!諦めたら死んじゃいますよ!」

 

日本は東京近郊に存在する都市、国内屈指の音楽学校である私立リディアン音楽院のお膝元でもあり、2年前の大規模なノイズ襲撃事件から復興したばかりの大型複合施設である巨大ドームが見下ろすこの街。

時は夕暮れ時、落ちかけた太陽が辺りを赤く照らしはじめた頃、海沿いの街道を走る幾つかの影があった。

 

「ーーハァッーーあぁっ!」

「大丈夫ーーじゃなさそう……」

 

そのうち二つの影は女性だった。

2人とも全身煤だらけで、1人は溝に躓いて転んでしまい、足を抑えて蹲っている。

もう1人は特徴的な藍色の制服を身に纏った眼鏡の少女だーー名を、久瀬(くぜ)・ヒンデミット・(となえ)という。

 

「私のことはいいから、あなただけでも!」

「そんな寝覚めの悪い事出来ませんよ!」

 

その様子は必死そのもので、まるで何かから逃げているようだった。

 

「ッ、ノイズが!」

「……!」

 

そして二人の女性以外の影、それは認定特異災害(ノイズ)だ。

色鮮やかでファンシーな見た目とは裏腹に、人間のみをピンポイントで狙って襲い、触れた人間を炭素分解してしまう世界共通の敵でありながら出現パターンも、元凶も、その一切が不明。

位相差障壁という特殊防護壁の存在により、既存兵器で有効なダメージを与えるには攻撃の瞬間を狙うか、障壁による減衰率を大幅に超過した大火力攻撃が必要である。

しかし、時間が経てば勝手に消える為、人々はノイズが出現すれば遠くに逃げるか息を潜めて隠れるしか方法がない。

 

「こうなったら、おぶってでも……!」

 

だが、転倒して足を怪我した女性に、もう走ることは叶わない。

平均よりも少し高い身長を有する彼女であっても、成人女性を背負って走る、ましてや疲れなど知らないであろうノイズからの逃走など無理だ。

 

「死んじゃったら、何もかも終わりなんだから!

伝えたかった事も、やりたかった事も……!」

 

それでも少女は諦めない。

走り疲れて乳酸の溜まった足は言う事を聞かなかった。

せめてもと、無駄だと分かっていても、少女は女性の前でノイズに立ち塞がる。

 

「だから、だから……!」

 

少女は諦めない。

少女は、世界は無情だと知っている、どんなに頑張っても報われないものがあると知っている。

 

だからこそ、少女は諦めたくなかった、それ以上に知っているものがあったからだ。

どんなに無情でも、どんなに報われなくても、この心に嘘をついてはならないと。

 

「だから、最後までーー」

 

この心だけは、この信念だけは、貫かなければならないのだと。

 

 

ーー生きるのを諦めないで

 

 

その時、声が重なった気がした。

咄嗟に紡いだのは、いつか叩きつけられた言葉。

 

「ーーえ?」

 

それは、聞き覚えのある暖かい声。

 

それは、両親が死に、迎えてくれた親戚すらも失い、失意に沈む私を包んでくれた、あの声。

大切な親友がくれた、言葉だった。

 

「ーーBalwisyall Nescell gungnir tron(喪失へのカウントダウン)ーー」

 

続いて鳴り響いたのは、己の内に語りかけるような、心の奥底から溢れるような、そんな声ーーいや、これは"歌声"だ。

 

周囲のノイズが一様にして空を見上げる。

そこに居たのは、黄色と黒のスーツに身を包んだ親友の姿だった。

 

「ハァァアアーー」

 

彼女は遥か上空から白い籠手に包まれた拳を振り上げ、眼前に迫ったノイズを粉砕する。

 

「ーーでヤァッッッ!!」

 

続いて上段回し蹴り、後ろ蹴り、正拳突き、肘打ち、優しい彼女からは考えられないようなーーいや、最近何か特訓とか言ってトレーニングをしていたが、まさかこの為に?

 

「ーーフッ」

 

まるでカンフー映画の主人公のようなポーズを取り、ノイズに立ちはだかるその姿。

ウェーブがかった明るい茶髪を靡かせ、凛とした目付きで敵を見据えるその姿。

見間違うはずもない、彼女は私の親友ーー立花響だ。

 

「ひ、ヒビキ……?」

「ごめん唱、今は事情を話してる余裕、ないんだ……でも、必ず説明するから!」

「えっ、ちょ……!」

 

それだけ言って、響は駆け出していく。

 

ーーノイズへの対抗手段は現時点では殆どないのではなかったのか?

 

ーー何故ノイズに触れる事ができるのか?

 

ーーあの姿はなんなのか。

 

唱の頭に疑問が浮かんでは消えていく。

 

しかし、そんな事はどうでも良かった。

 

「ーーエナジーよッッッォォォオオオオオオ!!!!!!!」

「す、すごい……」

 

響は歌っていた、ノイズが弾け飛ぶ音、道路が砕ける音、響の拳や蹴りが空気を裂く音、この世界の音、それら全てがメロディーとなって、一つの音楽を奏でているように感じる。

 

そんな光景に見惚れていたからだろう。

すぐ横に迫る大きなノイズの存在に、ギリギリまで気がつけなかったのは。

 

「唱!」

「ーーッ!」

 

巨人のようなノイズが振りかざした腕を回避する事はできたが、大質量から発生する衝撃波までは回避する事ができなかった。

まるでマンガかアニメのように吹き飛ばされ、コンクリートの壁に叩きつけられる。

 

「ぐっ……痛ぅ……!」

 

腕や足を動かすのはおろか、身体を起こす事ですら苦痛だ。

打撲は当然、骨の一本や二本で済めば良い方だろうと、痛みのあまりに瞑っていた目を開く、するとーー。

 

「……ッッッ!!!」

 

己の胸から鉄骨が“生えている”ーーいや、刺さっているのか。

可愛らしくて気に入っていたリディアンの制服が、己の血で赤黒く染まっていく。

首から下げていたペンダントも千切れてどこかに行ってしまった、どうしよう、あれはパパとママの形見なのにと、場違いなことばかりが頭に浮かぶ。

 

「そんな、唱!ーーこンのォォォオオオオオオ!!!!!!」

 

霞む視界の中で、響がすぐそこまで迫る大きなノイズを殴って押し返した。

 

「唱!唱ぇ!死んじゃダメだよ!」

「ひ、びき……」

「絶対に助けるから!私頑張るから!だからーー生きるのを諦めないで!」

「いき、るーーのを、あ、き、らめーー」

 

そうだ、諦めちゃいけないんだ。

 

私はまだ、死んじゃいけないんだ。

 

そう、朦朧とする意識の中で強く思った瞬間、心に言葉が浮かんだ。

 

「……?」

「唱……?」

 

それは聞いたこともない言葉、でもずっと昔から知っていたような言葉。

 

胸が熱い。

鉄骨が刺さって痛いからじゃない、これは、心が熱いんだ。

 

「……づぅ!ああああああ!!!!!」

「唱……!?」

 

痛みなんか知るものか、出血がなんだ、今はこれが必要なんだ、そう直感して、胸から鉄骨を引き抜く。

出血を防いでいた鉄骨が引き抜かれたことで、ドクドクと血が溢れてくる。

 

このままでは数分と保たずに死んでしまうだろう。

 

ーー紡げ、生きる力を。

 

「ぁーーうーーゴホッゴホッ!」

「喋らないで!動いちゃダメだよ!あぁ、血が、どうすれば……!」

 

傷口の中に入り込んでいたペンダント、パパとママがくれたペンダント、私が生きる為に、信念を貫き通す為に必要なもの。

 

ーー奮え、力を。

 

「……Pe……」

 

ーー貫け、己が心を。

 

「……PeneーーGaeーー」

「ッ、それって!?」

 

ーー詠え、心に響く、信念の歌を。

 

 

「ーーPenetrate Gae Bolg glint torn(信念は閃光となり全てを貫く)ーー」

 

 

「これ……聖詠!?」

 

刹那、身体の内側から大きな力が溢れる。

内から溢れた力の奔流は全身を包み、形を成す。

やがて出来上がったのは、赤っぽい黒のメタリックなスーツだった。

 

……響とお揃いでないのは残念だが、ワガママは言っていられないだろう。

 

「ヒビキ」

「な、なに、唱」

「なんでノイズと戦えるのかとか、なんで戦ってるのとか、いろいろ聞きたいことはある

ホント、わかんない事だらけでどうにかなっちゃいそうだよ」

 

ただでさえそんなに頭は良くないというのに、知恵熱でも出てしまいそうだ。

しかし、そんなことはどうでもいい、重要なことじゃない。

 

「でも、それ以上に分かっていることがあるんだ」

「……それって?」

「私は今、ヒビキと同じ戦う力があるんだと思う

これは、きっと私が運命に立ち向かう為の力、世の中全部の不条理に、私の信念をーー想いを貫き通す為の力、それがある!」

 

気がついた時には手にしていたこの槍。

赤くて、黒くて、なんだか怖いけど、考えじゃなくて本能で感じる。

 

ーーこれは、私の力になってくれる。

 

「……うん、分かった!それじゃあまず、アレをやっつけちゃおう!」

「頼りにしてるよ、響“先輩”!」

「先輩!?なんかくすぐったい!」

 

ーー必ず穿ってみせる この世全ての不条理を

 

歌が溢れる、浮かんでくる。

知らないはずなのに知っているこの歌……歌えば歌うほど、力が溢れる!

 

「ハァッーー!」

 

槍なんて使った事もないし、戦い方なんて以ての外。

だから、漫画や映画で見た槍の使い方を思い出して、見様見真似で、我武者羅に戦う。

 

 

ーー絶対に貫いてみせる 過去に誓った信念を

 

ーー必ずなんてない 絶対なんてない

 

 

「せいっーーハァ!」

 

ーーでも諦められない 諦めちゃいけない

 

ーー報われなくてもいい 蔑まれてもいい

 

しかし、不思議と疲労感はなかった。

こんな大きな槍、ふるった事もないし、そもそもさっきまで疲労困憊だったのに、その疲れが嘘のように吹き飛んで、全身に力が漲ってくる。

 

 

ーーだから放て 私の想い この槍に乗せて

 

 

「っ、またノイズを!」

「あの大きいのを仕留めないと!」

「……ちょっと大きいの、ブン投げてみたいんだけど」

「分かった!私は小さいのを!」

 

 

ーー放て 貫け 闇を 不条理を

 

ーー刺して 穿て この力で

 

 

「ぜいっ!だァ!」

 

ヒビキが吶喊し、小さいノイズを片っ端から消滅させていく。

その隙に、私は槍を構え、投擲の準備をする。

すると、槍がその意思を汲み取ったからのようにジェットエンジンの様なものがせり出してきて火を吹き始めた。

 

「さっきの、痛かったんだからね!」

 

 

ーー嘘だ偽善だと言われても 心で唱えたこの想い

 

ーーそう これだけは絶対

 

 

「嘘じゃッないッーーーー!!!!」

「うぇ?ええええーーー!?」

 

槍投げの要領で前に大きく踏み込み、投げ放つ。

踏み込んだ衝撃でコンクリートは砕け、槍は凄まじい衝撃波を撒き散らしながら大型ノイズに向かっていく。

外れるとは感じなかった、寧ろ必ずあたるという確信めいた感触すらある。

 

「ーーえ」

 

投げた槍は途中で数十に分裂し、その全てがノイズの全身に突き刺さり、絶対に刺さるという確信の通り、貫いた。

 

「……あんなにエゲツないとは思ってなかったけど」

「次は投げる時言ってね!絶対だよ!」

「う、うん」

 

この槍、もしかしてゲイボルグとかって名前じゃなかろうか。

てゆうか、ほぼ無意識で歌ったあの歌でゲイボルグとか言ったような記憶がある。

 

「てゆうか唱凄いよ!ギアを初めて使ったのに!」

「えーと、なんかこう、必死だったからなんとも……あ」

「うぇ?」

「いや、なんか、急にーー」

「え?ええ!?唱!?ちょっとぉ!?」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「一般人に被害発生!直接ノイズに触れたわけではありませんが、胸部から深刻な出血、重傷です!」

「直ちに医療班を向かわせろ、彼女を助けるんだ!藤堯ァ!」

「既に救急機材とスタッフを積んだヘリを向かわせています、到着まであと5分!」

「なんとしてでも間に合わせろ!ヘリが壊れようと知るか!人命最優先だ!」

 

時は少し遡り、リディアン音楽院の地下、特異災害対策機動部二課と呼ばれる秘密機関のオペレーションルームは荒れていた。

主戦力であるベテランの風鳴翼はリハビリを行なっており、実質戦闘可能なのは他ならぬ司令官、風鳴弦十郎によって戦闘訓練中の新人シンフォギア装者、立花響のみ。

彼女が弱いというわけではない、教えている弦十郎も驚く程に飲み込みが早く、スポンジが水を吸っていくように戦術を己が物にしていく立花響はとんでもない逸材である。

 

だが、彼女はまだ戦闘経験が浅いが故に不測の事態に弱い。

不測の事態に強い人間というのもそういるものではないが、ある程度のレベルで落ち着いた対処を取れるか否かという話だ。

 

だが、次の瞬間モニターに映った光景、こればっかりは精鋭の二課も目を疑った。

 

『……づぅ!ああああああ!!!!』

 

被害者である少女が立ち上がり、胸に刺さった鉄パイプを引き抜いたのだ。

少女は深刻化した出血を意にも介さず、血が溢れる口をパクパクと動かして、何かを喋ろうとしている。

正直、異様な光景だった、ゴア表現の多い映画でも見ている気分だった。

それ程に、少女の行動は常軌を逸していたのだ。

 

「……これは!?」

「友里君、どうした!?」

 

そんな光景に絶句していた時、オペレーターの一人である友里葵はフォニックゲイン数値の計器が反応を示していることに気がついた。

 

「重傷の一般人から微弱なフォニックゲイン放出を計測ーーいえ、フォニックゲイン放出量、加速的に増大!」

「フォニックゲイン放出だと?響君のものではないのか!?」

「いえ、ガングニールのものと一致しません!」

 

ハッキリ言って、それは微弱な数値だった。

カラオケや音楽の授業であれば計測される数値、普段ならば無視するであろうそれは、この状況において明らかな異物だったのだ。

 

「ーーッ!?司令、聖遺物反応を検知!アウフヴェッヘン波形計測!照合の結果出ました、これはーー」

 

オペレーターの藤堯朔也は驚愕する。

端末に表示された聖遺物の名称、それはアイルランドに伝わるアルスター伝説を彩る大英雄が使ったとされる槍。

投げれば30の鏃となって 降り注ぎ、突けば30の棘となって敵を死に至らしめる。

敵軍に残らず刺さり、逃さず命中し、稲妻のような速さで一切合切を貫く、それの名はーーGAE BOLG。

 

「聖遺物、ゲイボルグです!」

「ゲイボルグだとォ!?」

「装者、既にアームドギアを展開しています!」

 

聖詠を終え、ギアを纏った姿がモニターに映る。

赤みがかかった黒を基調としたギアは額までをすっぽりと覆い隠すフードの様なヘッドギア、肩から伸びるマントが風に靡いている。

そして目を引くのは2mはあろうかという長く、禍々しくも神々しさすら感じさせるアームドギアだ。

ガングニールがランスならば、ゲイボルグはスピアといったところだろう。

 

まるで死神のようだと思ったが、女の子に対する評価でないことは明らかだと即座に判断して口に出さなかったのは緒川である。

 

そんな間にも、状況は推移する。

 

「装者、傷の再生を確認!」

「適合係数は高レベルを維持!」

「ゲイボルグ装者、響さんと共に戦闘を開始!」

 

おそらくは付け焼き刃、それも映画や漫画の真似だろうと風鳴弦十郎は結論づける。

槍ーーというよりも、その棒術にどうも見覚えがあったのだ。

 

「すごい……初めての戦闘であんなに……」

「付け焼き刃なのは丸わかりだがな、動きに無駄が多過ぎる」

「素人に何求めてんのよ、あれだけ出来れば十分天才って奴じゃないかしら?」

「ああ、素質は十二分……会話を聞く限り、本人もやる気満々と言ったところか、こりゃ前回に引き続いて歓迎会の用意だな」

「用意は戦闘が終わってからにしてくださいよ、まだ終わっちゃいないんですから」

「分かっているさーーだが、もうキメにかかるようだぞ」

 

現場のLive映像には槍を大振りに構えるゲイボルグ装者の姿が映っている。

フォニックゲイン数値を見れば一目瞭然、大技で決めようとしているようだ。

 

チャージが終わったのか、タイミングが見えたのか、装者は大きく踏み込んでアームドギアを投擲しーー無数の鏃へと変貌したアームドギアが大型ノイズを蹂躙した。

 

「大型ノイズ、消滅しました!」

「大型ノイズをたった一撃で!?」

「流石はかのクー・フーリンが使った魔槍ゲイボルグ、威力はお墨付きってところでしょうか」

「しかし、初回起動でこの適合係数……紛失したはずの聖遺物……傷口の再生……まさか響君同様、融合症例だと言うのか!?」

「……」

 

色めき立つ二課の面々を尻目に、櫻井了子ーーフィーネは思案する。

 

ゲイボルグは嘗てアイルランドはコノート近辺の遺跡で発見したが、憎きパヴァリア光明結社との戦闘で紛失してしまった聖遺物だ。

二課にはイチイバルと同時に紛失したと伝えてあったが……まさかこんな形で見つかるとは思わなかった。

 

おそらくは何処からか市場に骨董品として流れたか、それとも何者かによる意図的なばら撒きがあったのか……今となっては分からないが、ゲイボルグの出現は己の計画の妨げになるであろう……だが、時は既に満ち欠けている、今更計画を練り直すことはできない。

ならば、なんとかこちらに引きずり込むか、計画実行の前に無力化する他にない。

 

「あの子のこと、ちょっと調べてみる必要がありそうね」

「ああ、制服からしてリディアンの生徒のようだが……」

「データ出ました、響さんのクラスメイトで名前は久瀬・ヒンデミット・唱、ドイツ出身のハーフで2年前に来日、現在は寮で一人暮らしのようです」

「……彼女もまた、ノイズ災害の被害者だったか」

 

情報によれば、一年前に一緒に生活していた親戚をノイズ災害で失っているようだし、そもそもドイツからの来日も家族が一家心中を図って失敗した結果だとされている。

 

……ギアの展開と共に剥がれた絆創膏から見えるのは右頬の大きな傷痕、隙間から見える地肌にも幾つか痕が見える事から、だいぶ壮絶な経験をしていそうだ、彼女の過去に付け入る隙はいくらでもあるだろう……クリス同様、使えそうだ。

 

「(協力するならばよし、計画を妨げるならば……その時はその時だ)」

「……ああ!装者のギアが解除、昏倒しました!」

「医療班は響君と共に彼女を回収!到着次第メディカルチェックを行う!了子君、準備を!」

「はーいはい、分かってるわよ」

 

取り敢えず、今は櫻井了子としての業務を全うするとしよう。

お楽しみはそれからだ。

 

 

 

 

 




何故私が小説を書こうとすると主人公の過去が重くなるのか……MGNの棗に続いてキズモノ系女子です。

……うん、好きなんだ……キズモノ系女子が……。

続きについては反応を見て続けるかどうかを考えたいと思っています。
仮に続ける場合、イラスト描いてもらってるぶんMGNの方優先なので遅い更新になりますが……。

聖詠である「Penetrate Gae Bolg glint torn」のリズムは
「タタターン・タタ・ターンターン・タタタターン」みたいなかんじで、セリフっぽく直すと
「ペネテェー↑ィト↓、ゲィボォー↑ルゥーグ↓、グリーント↑トローン↓」みたいな感じです。
イチイバルとイガリマの聖詠リズムを足して2で割ったのがイメージとして近いです。

ギアの見た目に関してはFGOのクー・フーリン[オルタ]をマイルドにしてギアにしたようなイメージで書いてます。

最後の方のシーンで歌っている曲ですが、安直に「魔槍・ゲイボルグ」です、作詞は兎も角作曲センスがないのでメロディーは私の頭の中にのみ。
それとシンフォギアの魅力は歌ですが、こういった二次創作だとそれの殆どを表現できない悲しみ……。

続きを書くかどうかは反応と気分次第ですが、感想等お待ちしております。
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