南米 遺跡エリア
転送装置で目的地に到着したドラえもんとドラミは、遠くの古代文明の遺跡を眺めながら暴れたロボットの一人であるブロックマンの潜伏する奥地へと向かっていた。遺跡は一見何の変哲もないように見えるが実際はブロックマンの手によってトラップだらけの要塞と化していた。
「きゃっ!?」
崖を飛び越えようとしたときドラミは危うく足を滑らせて落ちそうになる。
「ストライクチェーン!」
ドラえもんはバスターからワイヤーを発射して落ちそうになったドラミを引き上げる。
「ありがとう、お兄ちゃん。」
「こんな時にタケコプターが使えればこんな危ないことしなくてすむのにね・・・・・・」
これから先も危険な足場があると思うとドラえもんはドラミを同行させたのは失敗なのではと感じた。自分の場合はフットパーツのホバリング機能とエアダッシュである程度は飛び越えられるがドラミの場合は秘密道具が使えない丸腰状態のため最悪の場合転落してしまう危険性が高い。それでもドラミは兄の足を引っ張らないようなるべく自力で足場を乗り越えて行った。
「ドラミ・・・・・・一旦休憩しようか?」
ドラミの顔に疲れが見えたこともあってドラえもんは休息をとることを提案する。
「大丈夫、まだ行けるわ。」
「でも、無理しちゃダメだよ。」
「みんながこれ以上暴れ続けたら壊されちゃうもの。それに比べれば・・・・・」
そう言いながらもドラミがふらついたため、ドラえもんは彼女を丁度いいスペースの岩場に座らせて少しながら休憩を取る。
「フウ・・・・・・ところでブロックマンってどんなロボットだったの?」
「負けず嫌いでキッドみたいに気が短い人だったわ。でも、夢は大きくて素敵だと思ったわ・・・・・・・」
ロボット学校時代
ロボット学校 屋内グランド
「はあ~あ~、今日の課題は流石に難しかったな・・・・・・・・」
今日一日の授業を終え、寮へ戻ろうとドラミは後片付けをした後グラウンドを眺めながら歩いていた。
「あら?」
グランドの中央を見ると全身特殊なレンガでできたロボットが空中にブロックを発生させて何かを作っていた。
「よい・・・・・・よっこいしょ!」
ブロックはどんどん積み上がって行き、やがて小さな祭壇が組み上がった。
「よし!この間よりも6秒縮まった!!これならオーディションでも早抜き間違いなしだぜ!!」
ブロックマンはそう言って飛び跳ねながら祭壇を上ろうとする。
ところが・・・・・・・
「・・・・・・あれ?」
彼がジャンプで階段を数段超えた瞬間、ブロックが崩れ祭壇は崩壊し始めた。
「うわあぁぁあああ~!?」
ブロックマンはそのまま瓦礫の中へと埋まってしまった。その光景にドラミは思わず呆気にとられる。
「大変!生き埋めになっちゃった!?」
ドラミは、急いでグラウンドの方へ行く。
「えっと・・・・・こういう時は・・・・・・・」
「いててて・・・・・・・・また、ミスっちまった。」
「えっ?」
急いで道具を出して救助しようと試みたドラミは瓦礫の中から何事もなかったかのように出てきたブロックマンを見て目を丸くする。
「あ~あ~、まだまだ練習が足りねえな・・・・・・ん?なんだ?こんなところに来てオイラになんか用か?」
心配して来てくれたとも知らずにブロックマンは無神経にドラミに言う。
「なんか用って・・・・貴方、あんなのに巻き込まれて大丈夫なの?」
「巻き込まれて・・・・あぁ!今のオーディションのパフォーマンスの練習か!なんの軽い軽い!オイラ、頑丈なのが取り柄だからな!」
ブロックマンは砂埃を掃いながら自信満々に答える。
「でも、医療室に行った方が・・・・」
「ダメダメ!もうすぐオーディションの時期に入るんだ。オーディションでバッチし決めないとNAKAUMEの顔に泥を塗っちまう!!」
NAKAUMEとはロボット製造会社の一つであり、主に土木・建築用の作業ロボットの製作を製造している。ブロックマンはその企業で製作された試作ロボットの一体である。
「そうだけど・・・・・やっぱり無茶はダメよ!ちゃんと診てもらわなきゃ!」
「いやいや、いいって!!」
ドラミに手を引っ張られるとブロックマンは焦りながら逃げようとする。
「ハッハッハッ!注射針が怖くて逃げようとするとは笑いもんだな!!」
「「!?」」
第三者の声が聞こえてドラミを引っ張るのをやめる。声のした方を見るとそこには青いボディに後頭部が赤くとがったロボットが笑いながら立っていた。
「貴方は確かB.B-BOMBカンパニー製のブラストさん。」
「そいつはよ・・・・くっくく・・・・・入ったばかりの時、風邪ウィルス予防接種打ったときに注射があまりにも痛くて・・・・・・プッ、怖くなって保健室にも行けなくなったんだよ!ワッハッハッハッハッハッ!!!」
「笑い事じゃないでしょ!」
大笑いするブラストマンに対してドラミは叫ぶ。一方のブロックマンは別企業のロボット故か対抗心のようなものが点く。
「う、うるせえやい!そんなことよりお前の方はどうなんだよ!?ちゃんとやるネタ考えたのか!」
「ヘッヘヘヘ・・・・・・建築ミスするお前よりも至ってシンプルにしたぜ!バクハツアーティストとしてな。よく、見てろよ。」
彼は手元から小型爆弾「チェインブラスト」を取り出す。
「例えばだ。てめえが散らかしたこの瓦礫を・・・・・・よっと!」
ブラストマンは複数のチェインブラストを巧みに操って瓦礫に投げる。チェインブラストは瓦礫に接着し、グラウンドに穴を開けることなく爆破処理されて行く。
「グラウンドに爆破の跡がない!?」
「プロって言うのはこういうもんだ!もっと派手な爆発を見せてやるぜ!アート・イズ、ビッグバーンッ!!」
ブラストマンは片付けを称して一気にチェインブラストを投げる。チェインブラストは先ほど以上に激しい爆発をしながらもグラウンドを吹き飛ばすことなく瓦礫を消す。しかし、その内の一つがよりによって別方向へと飛んで行った。
「あっ、手が滑った。」
「あの向こうって確か・・・・・・・校長室!?」
チェインブラストはそのまま開いていた校長室の窓に入りその後凄まじい爆発が起こった。
「ゲホッ、ゲホッ・・・・・・・・誰じゃ!部屋の窓から爆弾を投げつけた奴は!!」
「マズッ!?」
ブラストマンは脱兎の如くその場から逃げ出していく。
「あっ!ちょっと!」
「まずいぜ・・・・・このままだとオイラたちまで濡れ衣を着せられちまうぜ!校長に見つかる前にズラかろうぜ!」
「えっ!?」
ブロックマンもドラミの手を引っ張って慌ただしくその場を後にした。
「それでその後、校長先生が鬼の形相で一クラスずつ調べに行ったの。そして、結局連帯責任で三人で謝って何とか許してもらったのよぉ。」
「うわぁ・・・・・・すごいことしちゃったんだね。」
若干渋そうな顔をするドラミの話を聞いてドラえもんは少し冷や汗を掻いていた。
「ブロックさんはそのまま建築関係の仕事に就いて、ブラストさんも今じゃテーマパークとかの爆発演出をやったりしていたの。」
「なんか色々大変だね。」
そんな会話をしている内に二人は最深部へと到達する。中に入るとブロックを生成して自分の像を組み立てているブロックマンの姿があった。
「ん?まさか、こんなところに辿り着ける奴がいるなんてな。」
ブロックマンはドラえもんたちを見るなり、制作を取りやめて飛び降りてくる。
「君がブロックマンか?もうこれ以上悪いことをするのはやめるんだ!」
「悪いことだって?これはオイラの夢さ!」
「夢?」
ブロックマンの言葉にドラえもんはキョトンとする。
「この遺跡は、超昔からあった歴史的建造物だ!だが、長い年月の劣化でこのままだと後一世紀持つか分からねえ。それをオイラがアレンジしてまた数千年残せるようにしてやるのさ!!」
「勝手にアレンジしちゃダメじゃないか!?それに中なんか面影残っていないし!」
「知らねえのか?古代のピラミッドは王の墓を荒らされないように至る所に罠を仕掛けているんだぜ?」
「ここはピラミッドじゃないよ!!」
「ブロックさん、悪いことは言わないわ!こんなことやめてちょうだい!ブロックさんが本当に携わりたかったのはこんなことじゃなかったはずでしょ!?」
「何言って・・・うう!?」
ドラミに言われてブロックマンは頭を押さえる。
「ブロックさん?」
「うぅ・・・・・とにかくオイラの邪魔をするって言うなら、お前たちを圧し潰してブロックしてやるぜ!」
「ダメだ!よくわかんないけどなんかチャモチャ星のマイマインみたいに操られているみたい!?」
ブロックマンが手を翳すと二人の真上にブロックを生成して落下させる。
「ドラミは向こうに隠れてて!」
「えぇ。」
ドラミを逃がすとドラえもんはバスターでブロックの破壊を試みる。しかし、通常のバスターではブロックが壊れる様子はない。
「無駄だぜ!オイラのブロックは劣化の防止に特殊セメントでできているうえに表面は酸化防止で特殊コーティングされているんだ!!」
「エアーシューター!!」
ドラえもんはブロックが命中する寸前でエアーシューターを発射して軌道をずらし回避する。
「あっ!うまく逃げやがった!?」
「手荒だけど妹の同級生を止めるには戦うしかない!ソニックスライサー!!」
ドラえもんはブロックマンに向かって複数のソニックスライサーを発射する。衝撃波の刃は、ブロックマンの身体に当たるものの、ダメージには至っていない様だった。
「痒い痒い!そんな攻撃じゃオイラは傷一つつかないぜ!」
「メタルブレード!!」
続いて危険なほど切れ味が高いメタルブレードを発射、今度は刃が持たず止まってしまった。
「えっ!?」
「へっへへへ~んだ!!大したことねえな!!」
「くっ!・・・・・・ハードナックル!」
だが、鈍い音を立てただけだった。
「無駄無駄!!」
「ジェミニレーザー!!」
「効かねえよ~!!」
「アトミックファイヤー&ラッシングバーナー!!」
表面が燃えているだけで大したことはない。
「これじゃあ、焼き石にもならないぜ~。」
「じゃあ・・・・・・・・・とっておきのクラッシュボム!!」
「ハッハッハッハッ、そんなに攻撃したってむ・・・・・・・」
燃えた状態で付着したクラッシュボムはすさまじい勢いで大爆発する。
「ぐあああああああ!?」
「クラッシュボムは付着後、爆発までのタイムロスが発生するけど燃えているものにぶつける場合はすぐに起爆するんだ。・・・・・・ちょっと、手荒だけどね。」
ドラえもんは少し申し訳なさそうな顔をしながらバスターを構え直すがボロボロになったブロックマンは怒りの形相で起き上がった。
「くそ~!!謝ったって許してやんねえからな!!!」
同時に体が一瞬だけ赤く発光し、手足をボディに収容すると天井に穴を開けて周囲のレンガを吸収しながら飛び上がって行く。
「な、なんだ!?」
ドラえもんは後を追おうとすると何か巨大なものが天井を破壊して現れた。
『グオオオオォオオオオオ!!』
「えっ!?」
それは一瞬レンガ版ハードマンと言ってもおかしくないものだったが頭部は間違いなくブロックマンのものだ。
「そんな!?ブロックさんにあんな機能付いていないはずなのに!?」
ドラミも巨大な姿になったブロックマンに唖然とした。
ロボット学校時代の彼を何度か見たことはあるがブロックを結集させて巨大な姿になるなんて機能は一度も見たことはなかった。
『グウゥオォ!!』
巨大ブロックマンは巨大な拳をドラえもんに向かって振り上げる。
「うっ!ローリングシー・・・・ブッ!?」
ローリングシールドで防御を図ろうとするがドラえもんの顔に拳がめり込む。
「お兄ちゃん!?」
「ブッ・・・・・ブベベ・・・・・・」
『グオオオオオ!!』
巨大ブロックマンはダウンしたドラえもんを掴み上げ握りつぶそうとする。
「ブ、ブロックさん!!」
『グゥ?』
ドラミは慌てて巨大ブロックマンの前に立つ。
「これ以上暴れたらブロックさんも・・・・・って、きゃああ!?」
『グオオォオオオオ!!』
巨大ブロックマンは意識がはっきりしていないのかドラミも容赦なく捕らえた。
『ブオォオオオオ!!!』
「く、苦しい・・・・・・・・」
「や、やめろ・・・・・・・」
ドラえもんは苦し紛れにブロックマンに言うが巨大ブロックマンは容赦なく二人を握りつぶさんとさらに力を込める。
「う、うぅ・・・・・・・!」
意識が朦朧としている中、ドラえもんは巨大ブロックマンの胸部のコアが点滅していることに気がつく。
(そうか・・・・・・改造された強化された力には時間制限があるんだ・・・・・・・・おそらく、あのコアが・・・・・・・・・ダメだ、意識が・・・・・・・)
しかし、どこからともなくバスターのチャージ音が聞こえてきた。
『グオッ?』
巨大ブロックマンは音の聞こえてくる方を振り向いた瞬間、チャージショット二発が胸部のコアを貫いた。
『グオッォオ!?』
胸部のコアを破壊された巨大ブロックマンは体を維持することができなくなり、崩壊する。
「いて!?」
「きゃっ!」
巨大ブロックマンが崩壊したことにより拘束されていたドラえもんとドラミは落ちる。
「一体何が・・・・・・・・」
ゆっくり起き上がるとドラえもんは目を丸くする。
「ゼロさん!?アイリスちゃんも!?」
そこにはバスターを展開したゼロとアイリスの姿があった。ゼロは倒れてるブロックマンに警戒しながらドラえもんの安否を確認する。
「ドラえもん、大丈夫か?」
「う、うん。」
「怪我はない?」
「はい・・・・・」
二人とも無事だと確認した頃、ブロックマンは体から蒸気を吹かせながら起き上がってきた。
「こうなったらやけだ!!」
混乱しているのか四人に向かって無数のブロックを飛ばし始める。
「どうやら、相当負荷がかかって混乱しているようだな。」
ゼロはドラえもんを抱えて飛び上がるとアイリスの方においてブロックマンの所へと戻って行く。
「オラオラ!!」
「お粗末な攻撃だな、そんなんじゃ当たるものも当たらないぞ。」
「早く壊れろ!!このこの!!」
ブロックマンは限界が近いことがわからないままブロックを生成して攻撃する。
ゼロは修復されて機能が戻ったゼロバスターをフルチャージして一斉にブロックを破壊すると、一気にブロックマンの目の前にまで急接近する。
「!?」
「手加減はするがしばらくは動けなくなるぞ、アースクラッシュ!!」
「ガッ!?」
胴体部に威力を押さえられながらもアースクラッシュの直撃を受けてブロックマンはその場に倒れる。
「ブロックさん!」
「大丈夫。ただ、気を失っただけよ。」
心配するドラミに対してアイリスは言う。
「ゼロさん、一体どうしてここに・・・・・・」
「話せば長くなる。ここで話すより安全な場所で話した方がいいだろう。」
四人はブロックマンを回収してその場から撤退する。
21XX年 ハンターベース
「どうだ、エックス。ブレードアーマーの調子は?」
ダグラスはエックスに製作したばかりのブレードアーマーを装着してもらった後、シミュレーションルームで問題がないかどうか確認を行っていた。
『問題ないよ。ただ、バスターの方はもう少しどうにかならないか?プラズマが小さすぎて狙わないとうまく敵に当たらないんだ。』
「そいつは難しい注文だな。セイバーを取り回ししやすいようにするためにエネルギーの収束率を調整しなくちゃならねえんだ。それに少しでもバスターの出力を上げちまったらフットパーツの不具合が生じる危険性がある。」
エックスの注文に対してダグラスはデータとにらめっこしながら言う。
『そうか・・・・・じゃあ、バスターを使うときはフォースかファルコンに切り替えなくちゃならないのか。』
「まあ、取り敢えずそのことに関してはエイリアと相談しておく。一旦上がって休めよ、お前さんが倒れちまったら泣くのはマーティなんだからよ。」
そう言うとダグラスはデータを持ってエイリアの部屋に行く。
取り敢えずブロックマン戦はアレンジを少し加えながらやりました。
ゼロ登場シーンはX1のオープニングステージのオマージュです。