21XX年 ハンターベース
パレットに呼ばれたジャイアンたちは司令室へと集まった。
中では既にレイヤーに呼び出されたエックスたちが待機しており、復興作業に行っているメンバーを除いて来ていた。
「・・・・全員集まったようだな。」
シグナスはメンバーが全員来たことでパソコンを操作しているエイリアの方を見る。その表情はどちらかと言えば複雑だった。
「エイリア、みんなに解析した結果を伝えてくれ。」
「え、えぇ・・・・・」
エイリアは、パソコンのモニターを操作しながら説明を始める。
「もう、既にナイトメアが人工的に作られたウィルスというのはわかるわよね?エックスたちが回収してきてくれたナイトメアソウルを解析して完全ではないけどその本性の一部が分かったの。ナイトメアはレプリロイドのDNAデータや思考プログラムなどのメモリーデータを書き換えて狂わせ、場合によってはその強力な力で外見自体を変えてしまうこともあるようね。でも、ここまではシグマウィルスも含めるイレギュラー化とほぼ変わらないわ。」
エイリアはモニターでナイトメアのデータとシグマウィルスのデータを映す。確かに変化自体はそこまでの差はない。
「おい、スネ夫。俺にはよくわかんねえけどどうなんだ?」
「出木杉君じゃないんだから・・・・まあ、僕にもこういう専門的なのはわからないけど確かに症状はほとんど変わらないね。」
「でも、そうだとしたらナイトメアはこれまでのイレギュラー化と一体何が違うって言うんですか?」
静香の質問に対してエイリアは険しい表情で話を続ける。
「えぇ・・・・静香さんの言う通り、ナイトメアウィルスの本当の恐ろしさはこれからよ。憑りつかれたことによってイレギュラー同様に暴れ出したように見えるナイトメア現象・・・・・・実はあるコードを入力すれば自由に操ることが出来るようになるの。」
「「えっ!?」」
エイリアの答えにスネ夫とジャイアンは口を大きく開ける。
「つまり・・・・ナイトメアの本当の狙いは、レプリロイド滅亡ではなく支配することだったのよ・・・・・」
「し、支配ですって!?」
「なんてそんな恐ろしいことを・・・・・・」
静香とマーティもナイトメアの真の性質を聞いて動揺するが彼女の話は終わらない。
「それともう一つ。憑りつかれたレプリロイドがシステムを書き換えられる時・・・・その負担に耐え切れずに死んでしまうことがあるの。普通のウィルスならここで本体が死ぬと同時に消滅するわ。でも、とても強力なエネルギーを持つナイトメアは、本体であるレプリロイドが死亡した後でも単体で生き延びることができるの。ただ、あまりにもエネルギーが強力過ぎて、特別なワクチンプログラムなしでも直接ダメージを与えることができる。この点に関してはシグマウィルスと比べたら駆除することは、簡単かもしれないわね・・・・」
エイリアは暗い表情で話を終える。するとしばらく黙って話を聞いていたエックスはようやく口を開いた。
「でも、わからない。今回の黒幕であるゲイトは、どうしてかつて自分が作り出したレプリロイドたちを姿を変え、再生させてまでこんな恐ろしいものを作り出したんだ?」
「そうとも、のび太の言う通りだぜ。その気になればあのハイなんとかで力づくで支配することなんて朝飯前のはずだ!」
「確かに言われてみれば・・・・・のび太の攻撃でもビクともしないんなら可能だよ。どうして、こんな態々遠回りなことをするんだろ?」
「・・・・・これは私がゲイトと同じレプリロイド研究チームにいた頃の話なんだけど。」
エイリアは静かに語り始めた。
ゲイトと自分はかつてよく研究のことで話していた仲だった。彼は少し難のある性格ではあったものの研究への熱意は本物であり、レプリロイド開発の未来について論じ合った際は自分に熱く語っていた。その姿は少なくともエイリアはゲイトを羨望の目で見ていた。
「彼の造ったレプリロイドは全て優秀だったわ。彼以外では解析出来ない程の高度なプログラムが使われて、その働きは想像を超える成果を収めたの。でも、その性能の高さは危険だと考えられ始めたのよ。そんな中、課題を無視して危険な行動を取るようなレプリロイドも出て来て、彼の評価は下がっていってしまった。それでもゲイトは自分の実力を認めてもらうため、更に高性能なレプリロイドを造り始めたの。勿論、上司の命令を無視してね。」
エイリアは当時のことを思い出すかのように言う。
「そしてある日、事故と見せかけて彼の造ったレプリロイドは処分されてしまったの。上司の命令だったわ。私もその中の何体かを・・・・」
「そんなに危ない人たちだったんですか?のび太さんたちが保護してきてくれた人たちはそこまで危険に見えないけど・・・・・」
「そうだよ。みんな責任感強いし・・・・・考えすぎだったんじゃないの?」
いまいち納得できずにスネ夫が言うとエイリアは頭を抱えながら答えた。
「・・・・・いいえ、そんなことはなかったの。ただ、彼の作り出すプログラムが高等過ぎたのよ。解析出来ない部分が多くて使用するのが難しかったの。」
「たったそれだけのことで?俺だって、未だに解析できていない部分が多いのに・・・・」
レプリロイドの基礎となったエックスは未だに解析できていない部分が多い。
それは100年近くにも及ぶロボット暗黒時代で、かつてロボット工学の父と呼ばれていたDr.ライトの培った技術のほとんどが失われてしまっていたからだ。
エックスの発見者であり、レプリロイドの生みの親であるケインは愚かドップラーでさえ、彼の全貌を知るには至っていない。故にエックスは未だに多くの謎が残されているのだ。
その言葉を聞いてエイリアは一時的に無言となるがゆっくりと口を開いた。
「・・・・・言いにくいんだけど・・・・・彼は最強のレプリロイドと呼ばれるエックス・・・・そして、ここにはいないゼロ、貴方たち二人を目指していたの。」
「のび太とゼロを?」
「えぇ、究極のレプリロイドが簡単に解析できるようなものでは・・・・まだ、『偽物』だって。だから、彼が作ったプログラムは誰にも解析出来ない程に高度なものになっていったの・・・・私なんかより遥かに優秀だったのに。」
エイリアは震える手を止め、必死にこらえ始めた。
「・・・・・課題をそつなくこなした私の方が昇進。ゲイトは誰にも認められることはなかった・・・・それから彼は孤立していき、こう言い残して去っていったの・・・・・」
21XX年 レプリロイド研究所
「フウ・・・・・」
その日もいつものように上司に書類を渡して部屋に戻る途中だった。その途中で荷物をまとめて去ろうとしていたゲイトの姿を見たの。
「ゲイト?どうしたの、そんな荷物まとめて?」
「やあ、エイリア。丁度書類の提出が済んだところかい?」
「えぇ・・・・って、人の話を逸らさないでちょうだい。どうして荷物なんかまとめて・・・・」
「出て行くのさ。」
「えっ?」
その言葉の意味を最初は理解できなかった。
「出て行くって・・・・・」
「言葉の通りさ。ここで僕がやりたいことはもうなくなった。だから、ここにいる必要もない。だから、出て行くんだ。じゃあね。」
そう言うとゲイトは、荷物を持って私の脇を通り過ぎようとした。その様子を見て私は慌てて彼を止めようとしたわ。
「ちょ、ちょっと待ってちょうだい!?きゅ、急にそんな!?」
「この場所に僕は必要ないんだ。君もうまくやっていくことだね。」
「もしかしてヴォルファングの件?あれは・・・・・」
掘り返したくなかったけど私が思わず言いかけようとしたとき、ゲイトは足を止めた。
「別に君を責めているわけじゃないさ。君は君なりに彼を助けようとしてくれたんだからね。僕が許せないのは上層部の連中さ。」
「ゲイト・・・・・」
その時の顔は今でも憶えているわ。
屈辱、嫉妬、恨み。
その感情が合わさったかのように歯ぎしりをしていたゲイトの顔を。
「僕は・・・・・僕は自分のすべきことを為そうとしただけなんだ・・・・・だが、上層部の考えはあまりにも保守的でなんの向上心もない下等な考え方だ・・・・」
「それは言い過ぎよ!」
「いや!彼らは何も理解していない!リスクを背負うのを恐れて自分たちでは手に負えないものを何でも危険呼ばわりする!頭の固い連中は僕の研究を危険なものとしか見ていないんだ!!」
「そ、それは・・・・・・」
「ハア・・・ハア・・・・少し言い過ぎたね。悪かったよ。・・・でもね、エイリア。僕はこのままじゃ絶対に終わらない・・・・・必ず・・・・・・必ず・・・・・連中を見返してみせる。自分の実力がなんなのかも理解出来ない下等なレプリロイドを全て支配してやるんだ・・・・・僕が認める高性能のレプリロイドだけで理想国家を・・・・・必ず実現させてやるんだ!!!」
そう言って彼は私の前から去って行った。
以降、ゲイトを見た者は誰もいなかった。
同僚たちの中ではまだどこかで自分の研究を続けているとか、変人扱いされてイレギュラーとして処分されたとか言われていたけど、本当のことは誰も知らない・・・・・・・
「自分の認める高性能のレプリロイドだけで理想国家を創る・・・・・・それが彼の野望なのよ。」
エイリアの話を聞いてエックスたちは思わず黙った。その中で一人、カリンカだけは口を開いた。
「まるでワイリーみたい。」
「えっ?」
彼女の一言で顔を伏せていたエイリアは思わず顔を上げた。
「お父様から聞いた話だから詳しく知っているわけじゃないけど・・・・ワイリーも若い時、研究することが過激すぎて周囲から孤立していったそうなの。その一方でライト博士がどんどん周囲の信頼を勝ち取って行って・・・・・それが更に彼を追い詰めて、最終的にロボットによる世界征服計画へと繋がったって・・・・」
「そうなの・・・・・・・だとすればゲイトはワイリーと同じ境遇だといえるかもしれないわね。ナイトメアはまさに彼の実力を理解できなかった者たちへの復讐・・・・彼自身の『憎しみの心』そのものなのよ。」
「そうと決まったらさっさと止めようぜ!」
「もうこれ以上、レプリロイドの犠牲を出すわけにはいかないもんね。」
「あぁ、今は人とレプリロイドと地球の未来がかかった本当に大事な時なんだ。」
エックスは感慨深い顔で言う。
思えば最初のシグマの反乱から始まり、レプリフォース大戦、コロニー落下未遂事件と度重なる戦乱で地球は荒廃し、人類は生活の場を奪われている。それに比例してレプリロイドの数も減少し、その中でも必死に生きようと動き続けている。
これ以上のレプリロイドを失うことは人類と地球そのものが危うくなると言っても過言ではない。
ゲイトを止める。
それが自分たちがやらなければならないことなのだ。
その様子を見ながらシグナスも納得しているようで改めて全員を見る。
「・・・これで決まったようだな。エイリア、ナイトメアのデータを基にゲイトの潜伏場所を割り出すことができるか?」
「やってみるわ。早く彼の野望を止めないと・・・・・・」
『その必要はない。何故なら、僕自身が君たちを直々に招待するのだからね・・・・』
「「!?」」
聞き覚えのない声が聞こえて一同は思わず身構える。
「何だ今のは!?」
シグナスに言われてエイリアは、キーボートを動かす。
「外部からの不正アクセス!これは・・・・・・・」
『そう、僕がやったんだよ。』
同時に巨大なモニターに紫のボディに白衣を纏ったレプリロイド ゲイトの姿が映し出された。
「ゲイト!?」
「「えっ!?コイツが!?」」
モニターに映されたゲイトは特に怒りを露わにしている様子はないがそれがかえって不気味に感じさせる。
『流石だね、イレギュラーハンター エックスとその仲間たち。僕の生み出したレプリロイドたちを倒しただけではなく僕の立てた計画まで突き止めるとは。』
「・・・・・お前がゲイトか?」
エックスはこの状況の中でも落ち着いたように聞いているがその拳は震えていた。もし、この場に本人がいたら一発殴っていたのかもしれない。
『いかにもその通りだよ。レプリロイドの新たな統率者、レプリロイドだけの理想国家を目指す者・・・・・それが僕さ。そのために下等なレプリロイドを消しているところだよ。』
「下等なレプリロイドだと?お前、自分が何をしようとしているのかわかっているのか!?」
「ゲイト!今の地球はレプリロイドの力がなければ復興することができないのよ!お願いだからこれ以上ナイトメアを使うのは止めて!!」
エイリアが必死に言うのを他所にゲイトは不敵な笑みを浮かべる。
『やめる?君たちは今の世界の状況を分かっていないようだね。今ならレプリロイドを支配することもたやすいことなんだ・・・・・・僕の理想、レプリロイドによる新時代を創る絶好のチャンスなんだ!!もう誰にも何も言わせない。やっと・・・・・“僕の理想”を実現出来るんだ!!』
「ゲイト・・・・・」
「理想だと?わかっていないのは貴様だ!何がレプリロイドによる新時代だ!!貴様のやっていることはシグマと同じ、イレギュラーのやることだ!!」
自分の言葉がもう届かないことにショックを受けているエイリアのそばでシグナスはゲイトを睨みつけながら叫ぶ。
『フン、頭の固い軍人じゃ僕の理想など分かりっこないさ。時代がようやく僕に追い付こうとしているんだ・・・・・誰にも邪魔はさせない。尤も自慢の調査員たちはみんな倒されてしまったけどね。』
「・・・・・」
『エックス、君の実力を特別に認めてあげよう。僕の研究所に招待するよ。今から送る座標が僕の居場所さ。たとえ死ぬと分かっていても君なら来てくれるだろう?待っているよ・・・・・フフフッ・・・・・ハッハッハッハッハッ!!』
笑いだすと同時にゲイトの姿は消えた。パネルには招待するかのようにマップが表示されていた。
「・・・・・・」
「あ、あのエイリア先輩・・・・・・」
黙り込んでしまったエイリアにパレットが声をかけようとするがシグナスに止められる。
「今は落ち着くまで待つしかない。レイヤー、エイリアに代わってエックスたちのオペレートを頼む。」
「了解しました。」
「パレット、君も補助に回ってくれ。」
「は、はい!わかりました!」
そう言うとパレットはレイヤーと共に部屋を後にしていった。
「ダグラス、エックスのアーマーの修復は?」
「ブレードの修理は終わっている。それにミディの方からデータ解析が終わってシャドーアーマーも最後の仕上げを残してほとんど終わっている。後は、フォースとアルティメットアーマーの最終メンテナンスだ。」
「ドップラー博士、すみませんがダグラスと一緒にエックスのアーマーの最終点検に回ってください。」
「わかった。」
「ミディ、君はできるだけ通信が維持できるようコンピューターの調整を頼む。」
「はい!」
ダグラス達三人も部屋から去っていく。
「エックス、マーティ。おそらくゲイトは最後の戦いに備えて総力を挙げてくるはずだ。今のうちにメンテナンスカプセルで・・・・・」
「メンテナンスなら私がやるわ。」
カプセルと言おうとした時、カリンカが口をはさんだ。
「カリンカ、君は・・・・・」
「昔、お父様の研究に付き添ってきたから整備も含めて一通りのことはできます。」
「そうか。なら、お願いしよう。」
「はい。」
「よぉおし~!!それじゃあ俺たちも・・・・」
グゥウウゥ・・・・・・・
ジャイアンが言いかけた直後、彼の腹が大きく鳴った。
「・・・・・腹ごしらえでもするか。」
「ジャイアンったら・・・・・せっかくの見せ場なのに・・・・」
「うるせぇ!腹が減ったんだからしょうがないだろ!!」
「ハッ、ハハハハハハッ・・・・・」
エックスたちも部屋を出て行くとシグナスは落ち込んでしまったエイリアを見る。
「エイリア、私が言うのもなんだが・・・・・ゲイトを止めるにはもう力づくで止めるしか他はないだろう。」
「・・・・・・」
「私も元はレプリフォース出身の身だ。亡くなったジェネラル将軍も今の私のようにこう決めざるを得なかったかもしれない。・・・・・だが、最後まで諦めないことが大事だ。」
そう言うと彼は彼女のすぐそばにIDカードを置いて部屋から出て行った。
「最後まで・・・・・」
エイリアは顔を上げてIDカードを手に取る。
22世紀 アチモフ城
「よぉし、こんなものだろう。」
その頃、ドラパンは城の中央ホールに黄金像に変えたドラリーニョを他のドラえもんズたち同様に並べていた。残り空いている個所は二か所。つまり、ドラえもんとドラメッドのことを指していた。
「これで残りはドラえもんとドラメッドを残すのみ・・・・そうすればミミミも・・・・」
「ドラパンさん。」
「ん?」
すぐ後ろにいるミミミの方を見ると彼女は心配そうな顔をしていた。
「どうしたミミミ?」
「・・・もうこんなことはやめて。」
「・・・・・・心配するな。別にコイツ等をずっとこのままにするつもりじゃないんだ。すべてが終わったら元に戻すつもりだ。」
ドラパンは、並べられたドラえもんズを見ながら言う。
「それに私はこのドラえもんズのことがなんだか気に入ったんだ。信じたもののために命がけになる馬鹿な奴ら・・・・しかし、そんな奴らの絆がこれほどにまで強い力を引き出すなんて・・・・大した連中だよ。」
感慨深く言っている中、転送装置で戻ってきたスカルマンが二人の前に来た。
「外の庭が派手に破壊されてたかと持っていたら・・・・案の定、やっちまったようだな。」
「スカルマン、今までどこに行ってたんだ?ミミミのことを頼んどいたのに。」
めんどくさそうなしぐさをしているスカルマンに対してドラパンが聞く。
「・・・・・久しぶりの兄弟に会いに行っただけだ。」
「兄弟?アンタに兄弟がいたのか。」
「まあな、相変わらず真面目過ぎる馬鹿だが・・・それよりもこっちの奴もそろそろこっちに乗り込んできそうだな。」
スカルマンはモニターを見ながら言う。そこには昼食を終え、ブラストマンの潜伏先へ向かおうとしているドラえもんたちの姿があった。
「あぁ。おそらくブラストマンでも彼を抑えることはできないだろう。っとなるとやはりこの城で決着を付けなければなるまい・・・・・」
「ドラパンさん・・・・」
ドラパンのことを心配そうに見ているミミミであったがスカルマンに連れられ、その場から離れる。ドラパンはそろそろ覚悟を決めなければならなかった。
タイムパトロール本部
「・・・・・」
スカルマンと会ってきたリングマンはモヤモヤしたまま本部へと戻ってきた。
「あっ、リングマンさん。」
部屋に入るとメンテナンスを終えたアーマーを装着しているドラえもんと自分のバスターを調整してもらっているゼロたちの姿があった。
「何処へ行ってたんだ?ずいぶん遅かったが・・・・」
「いや、少し用事があってな・・・・今ちょうど戻ってきたところなんだ。」
リングマンはスカルマンに会ったことを言おうかと思ったが彼の忠告もあって言えなかった。
「・・・・(言うべきなのか?ドラえもんの所持している親友テレカが連中の狙いだということを・・・・だが、話したところで彼らの行動に変わりはない。だが、このままいけば・・・・)」
「どうしたんですか?顔色が悪いようですけど。」
ドラミは心配するように声をかける。
「大丈夫だ。何でもない。」
「でも・・・」
「ドラミ、今はブラストマンを止めることが先決だ。これで黒幕が出てきてくれればいいんだが・・・・・・」
ゼロはバスターの調整をしてもらい、身支度を整えた。
「リングマン、俺たちは残りの暴走したロボットを止めに行く。アンタも何かあったらすぐに知らせてくれ。」
「あ、あぁ・・・・・」
ゼロたちはそのまま部屋から出て行く。
「リング警部、本当に大丈夫かね?」
「なんでもありません・・・・・ただ・・・・」
「ただ?」
「・・・・・・いえ、別に気になさらないでください。彼らがまた戻ってきたときに話します。」
そう言うとリングマンは椅子に座り、スカルマンから受け取った端末を机の上に置く。
「・・・・・」
(おまえらだけで生き残れ、奴の方にはお前たちに手を出さないよう俺から言っておく。)
脳裏にスカルマンが言っていた言葉を思い出す。
「・・・・私たちを生き残らせようとしてくれるのはわかる。・・・・だが、お前はどうなんだ?お前だって家族なんだぞ?」
リングマンは端末を手に取りながら一人呟いた。
ハンターベース 留置場
ここはハンターベースの留置場。ここにはイレギュラー認定されたレプリロイドが収監されている。エックスたちによって回収されたヤンマーク、ヴォルファング含める元ナイトメア調査員たちは一時的な拘束としてここの牢屋に入れられていた。このとき、ヤンマークはマイマインのカウンセリングを受けていた。
「だから、どうしてもゲイト様を助けてほしいんです。お願いです、どうかシグナス司令官にお願いできないでしょうか?」
「う~ん~、シグナス司令官なら何とかしてくれるかもしれないけど・・・・・」
彼の頼みにマイマインは困った顔をして言う。
「マイマイン殿、私からも頼む。ゲイト様はあのような方だが我々の生みの親なのだ。どうか・・・・助けてもらうよう懇願してもらえないだろうか?」
治療を終えたばかりのタートロイドは安静を言い渡された体を何とか動かしてマイマインに言う。
「でも・・・・」
「マイマイン、ちょっといいかしら?」
「ん?」
マイマインは後ろに振り向くとそこにはIDカードを持ったエイリアが立っていた。
「あれ?エイリアさん、どうしてここに?エックス隊長たち、さっき出撃したはずですけど?」
「オペレートならレイヤーとパレットが代わりにしてくれているわ。」
「そうなんですか・・・・っで、何の用事で?」
マイマインが首をかしげながら聞くとエイリアは、ヤンマークの牢の電子ロックにIDカードを差し込む。すると部屋のロックが解除された。
「えっ?」
「あの・・・・これは・・・・・」
「いいから外に出てちょうだい。」
エイリアの声にヤンマークは戸惑いながらも牢の外に出る。続いてヴォルファングとタートロイドの牢のロックも解除させられた。
「エイリア・・・・これはどういうことなんだ?」
「ゲイトを止めたいの。力を貸してもらえないかしら?」
「なんと!」
エイリアの言葉にその場にいた四人は思わず驚いた。
「エックスたちがこのままいけばゲイトは例え死んでも彼と戦うわ。それだけはなんとかしたいの。」
「え、え、エイリアさん・・・・・・そ、それは・・・・シグナス司令官にちゃんと許可もらっているんですよね?」
「・・・・・・・」
「エイリアさん?」
マイマインの質問に対してエイリアは無言だった。
彼は、これが彼女自身の独断なのだと理解した。
「だが・・・・・今の我々は手負いだ。とてもだがゲイト様を説得できるほどの力はないぞ?」
「そもそも私たちはここに保護された段階でゲイト様からにしては裏切り者同然。おそらく話すら聞いてくれないだろう。」
「それでも・・・・・それでも・・・何もしないで諦めるのは嫌なの!!」
やや消極的に言うタートロイドとヴォルファングに対してエイリアは思わず叫んでしまった。
「エイリア・・・・さん?」
「私は・・・・・私はゲイトに何もしてあげられなかった・・・・少しでも彼の話を聞いて何かできることをしてあげていれば・・・・・貴方たちが無残に処分されることも彼がこんなこともすることはなかった・・・・彼をサポートしてあげていれば、彼が周囲から孤立することなく、認められていたのかもしれなかったの・・・・・それを・・・・・う、うぅ・・・・・」
今まで後悔してきたことが沸き上がってきたのかエイリアは思わず泣き始めてしまった。それを見て三人は彼女が今まで後悔し続けて生きて来たのかと瞬時に理解できた。
「あの時・・・・ゲイトが去るとき・・・・憎しみに染まっていた彼を私は止めることができなかった。止めようとする勇気がなかったのよ。周りからは気にするなと言われてもむしろ逆に自分を責めるようになって・・・・・・」
「エイリア・・・・別に貴方が悔いることではない。全てはゲイト様自らが選んだ道・・・・どうにかできるものではなかったのだ。」
ヴォルファングは膝を付いて泣き始めた彼女を落ち着かせようと言う。
「今の彼を作ってしまったのは私なの・・・・・だから、本当に取り返しがつかなくなる前に止めたい・・・・今度は逃げたくないの・・・・・」
「「「・・・・・・」」」
三人はしばらく黙るものの互いに顔を合わせて決心したのかマイマインの方を見る。
「マイマイン殿、すまぬが開いている大型車両はこのハンターベースにあるか?」
「えぇ・・・・・一応輸送用のホバートレーラーがありますけど。」
「我らに貸してはくれぬか?」
「えっ?」
その言葉にエイリアは顔を上げる。
「・・・・そのまんまではないかもしれないけど・・・・・ゲイト様が調査員用に設けた隠し通路があったはずです。そこを通ればゲイト様の元へ・・・」
「本当なの?」
「だが、それには調査員の認証コードが必要になる。残念だがコードを持たぬエイリア殿には通り抜けることができん。だが・・・・・」
タートロイドは甲羅に手を突っ込み、小さな端末を取り出す。
「私の回路を持って行けば行けるはずだ。持って行くといい。」
「タートロイド・・・・・」
「残念だが今の私ではゲイト様を止めるどころかここを出て研究所に行くこともままならないだろう。だが、それを貴殿に託すことはできる。」
タートロイドはそう言うとエイリアに端末を手渡した。
「ヤンマーク、ヴォルファング、行けぬ私の代わりに彼女を守ってゲイト様の元へ連れて行ってくれ。」
「・・・・わかりましたよ、タートロイド。」
「必ずエイリアをゲイト様へ会わせよう。」
その光景を見てマイマインは気まずく感じたがこの際仕方ないと思い、三人を部屋から出して倉庫へと案内し、共にゲイトの秘密研究所を目指してトレーラーを走らせることにした。
「後で博士と司令官に怒られるだろうな・・・・・まあ、乗りかけた船だからしょうがないか。」
そう言いながら彼はエックスたちよりも遅れてハンターベースを出発する。
次回はおそらくブラストマン戦
X6編後に展開予定の劇場版編で次のうちどれがいいと思いますか?(飽くまで現在投票の中で二票以上入っているものの中での取り決めです)
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ネジ巻き都市
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雲の王国
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鉄人兵団(現段階ではリメイク版)
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ロボット王国
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