ハンターベース
「ロールちゃん!?本当にロールちゃんなの!?」
エックスが連れてきたロールを見て計画を立てている最中なのにもかかわらず、カリンカは思わず声を上げてしまった。対するロールも嬉しそうだった。
「まさか、本当にカリンカちゃんにまた会えるなんて・・・・・夢みたいだわ。」
最後に会ったのはおよそ100年前。しかもロボットであるロールはともかく人間であるカリンカは当の昔に亡くなっていてもおかしくないため、目の前での再会はまさに奇跡的ともいえる。
「また会えてよかった~!!」
「私も~!!」
その光景にジャイアンとスネ夫も唖然としていた。
「ゲームでは設定しかなかったから本当に仲が良かったのかどうか怪しかったけど、これには驚かされたね。100年越しの再会なんて。」
「ゲームじゃドットでよくわかんないもんな。」
再会に喜んでいるところで申し訳ないとは思いながらもエックスはロールに声をかけることにする。
「感動の再会中に悪いんだけどロール姉さん、姉さんは一体何をしにここへ来たんだ?」
エックスに声を掛けられロールは少し恥ずかしそうに顔を赤くしながら態度を改める。
「ご、ごめんなさいね!本当にまた会えるとは思っていなかったから・・・・・。実は、ライト博士から貴方たちを連れてくるようにって頼まれたの。」
「「ライト博士に?」」
「えぇ。ワイリーがタイムマシンを造って大変なことをしようとしているから私を再起動させて、エックスたちを私のところへ連れてきてくれって。それでここに来たのよ。」
ロールの言葉を聞いてエックスは、ライトが秘かにタイムマシンを建造していたのではないかと考えた。自分は愚かゼロのパワーアップやドラえもんの強化アーマーまで作った彼の事だ、事前にワイリーがこのようなことをすると考慮して対策を打っていてもおかしくはない。そう思うや早速行動をすべきだと判断する。
「ビートブードたちは引き続き作業を続けてくれ。俺は姉さんの案内でライト博士のところへ行ってくる。」
「わかりました。じゃあ、タイムマシンの設計プランに関しては継続しておくので何かあったら連絡してください。ナイトメアの影響がなくなってきているとはいえ油断大敵ですから。」
そう言われるとエックスは、一部の面子と共にロールの案内の元ハンターベースを出る。
「そう言えば気になったけどなんでロールちゃんなの?」
「何が?」
同行しているスネ夫の言葉にロールは答える。
「だって、今の地上は見ての通り危ないでしょ?それに起こすんならロックマンを起こした方が戦力になるし、態々ロールちゃんを危ない地上に出さなくても・・・・・」
「スネ夫、流石にそれは姉さんに失礼だよ。」
「でも、言えるぜ。戦闘力がないロールちゃんを一人で行かせるなんて・・・ライト博士も酷いぜ。せめて、ガッツマンも一緒に起こせばいいじゃねえか。」
二人が言うことは正しく思えるがロールはすぐに否定した。
「そう言うわけにもいかなかったのよ。私も目を覚ましたばかりでよくわからないけど、私も含めてロックたちはライト博士の手でバラバラに封印場所を分けておいたのよ。当時の運搬型ロボットを使ってね。」
「兄さんたちを同じ場所に封印しなかったのか?」
「ワイリーが以前のようにカットマン達を洗脳して使役する危険性を考慮してでの判断だと思うわ。現にワイリーは生きていたし・・・・・・でも、あの8人が貴方たちと一緒に行動していたのは驚きだったわ。」
「ジャイロマン達の事?」
「えぇ。私もあの8人は別に悪いとは思っていないんだけど、ワイリーに繋がっているかもしれないと思うとね・・・・なんか複雑になるというか・・・・・声かけづらいのよ。」
ロールがこう思ってしまうのも無理はない。
ジャイロマン達アルバイターは、元はと言えばワイリーの第五次世界征服計画時にロックマンと対峙し、その後借金返済のためとはいえ、アルバイトを転々として何かしらの形でロックマンを助けたことがある。しかもエックスたちの話を聞く限り、彼らは封印されていた自分たちとは違い100年以上外で活動を続けていたと言われると逞しいというべきかただ単に馬鹿というべきか・・・・・
それはさておき一同はある廃墟の前へと辿り着いた。廃墟の入り口では赤い炊飯器に二本足を付け足したような小さなロボットがちょこんと立っていた。
「あれって・・・・・・もしかしてエディー?」
スネ夫が意外そうに見るとエディーはピョコピョコとそのまま廃墟の中へと入って行ってしまった。
「行っちゃった・・・・・アイテムも落としていないのに。」
「違うわ。私たちが来たのを確認して中へ戻ったのよ。」
ロールの言う通りで廃墟の中を覗くと地下に続く階段の前でエディーが一同が来るのを待っていた。
「ほらね。」
「へえ・・・・・・」
一同は先に行くエディーに続きながら地下の階段を下り始める。
電気は通っていないため当然照明は点かないため、一同は念のために持ってきたライトを点けて進んでいく。
「・・・・・・」
「ん?どうしたのマーティさん。ロールちゃんのことをじろじろ見て。」
ロールをやけにじろじろ見るマーティに対してカリンカは気になって聞く。
「・・・・いや・・・・なんて言うか・・・・彼女、エックスのお姉さんなのよね?」
「そうよ。ロールちゃんはロック君に続いて二番目に作られたロボットだから、事実上エックス君のお姉さんよ。」
「っで、アタシはエックスの奥さん。って、ことは義理の妹になるってわけよね。」
「何が言いたいの?」
「うん・・・・なんか年下に見えちゃうから複雑に感じる。」
「まあ・・・・そこは気にしない方がいいと思うわよ。私も久しぶりとはいえ少し抵抗あったし。これは人間だから言えることなんだけどね。」
しばらく地下の階段を降り続けるとそこには現在は廃線となった地下鉄の駅があった。
「そう言えば、シティー・アーベルには昔地下モノレールが走っていたんだよな・・・・・・最初の反乱で耐震強度に問題が起こって封鎖されたんだっけ?」
「のび太詳しいな。」
「まあ、仕事以外の時は街によく出かけていたからね。ここから乗って市街地の山の方までよく行ったもんだよ。封鎖されてからは地上経由で行くようになったけどね。」
エックスたちが話している間もエディーはトコトコと線路の上を歩いて行く。
「それにしてももう随分歩いているけど一体いつまでかかるんだよ?」
ジャイアンが流石に不審に感じた頃、エディーは線路から外れて壁側の方を見る。
「止まったわよ?」
「一体どうしたんだ?」
エディーは頭部の蓋を開けてマジックハンドのようなものを展開する。原作ゲームでは披露したことが一度もないせいもあってスネ夫とジャイアンは思わずぎょっとした。
「えっ、エディーにこんな機能あったっけ?」
「し、知らねえよぉ・・・・・ライト博士が新しくつけたんじゃねえのか?」
二人がオドオドしている中、エディーは特に気にする様子もなく隠しスイッチを見つけて押す。すると壁が動いて入口ができた。
「こんなところに隠し扉が・・・・・・一体ライト博士はいつの間にこんなところに仕掛けを作っていたんだ?」
「さあ?でも、昔研究所が壊されたことがあったから結構念には念を入れるようになったんじゃないかしらね?まっ、ワイリーほどじゃないとは思うけど。」
((100年前に何があったの?))
一同は隠し扉を通り更に先へと行く。
22世紀 アチモフ城
「う、うぅ・・・・・・・」
ドラえもんたちが最深部を目指している頃、イエローデビルによって吹き飛ばされてしまっていたリングマンは城の壁にどうにかしがみついて事なきを得ていた。彼は落下すればロボットとはいえひとたまりもない。城の壁の出っ張っているところを探しながら上を目指そうとする。
「クッ・・・・・腕が大分痺れてきた・・・・・・」
とはいえ、既に一時間以上は登り続けているが未だに上に辿り着けない。それどころか疲労が蓄積していき、何時落ちてもおかしくない状況に陥っていた。
「情けないことだ・・・・・こんなところで落ちて死んでしまったらエリカのことだから大泣きするぞ。リングもまだ小さいからな・・・」
地上に残してきた家族のことを考えて次の出っ張っているところに手を掛けようとしたが、その瞬間に足をかけていた壁が崩れ、バランスを崩した。
「うわっ!?」
リングマンは咄嗟にリングブーメランを壁に突き刺して落下を防ぐ・・・・・・かと思いきや今度は突き刺した壁が崩れてしまい、再び落下し始める。
「うわぁああああああああああ!?」
絶叫を上げながら上空数千キロはあると思われる場所からリングマンは落ちようとする。
「・・・・・ん?」
だが、落ちる様子はなく下を見て思わず驚く。
「止まった?」
「全く何やってんだよ。首ツッコむなって警告してやったのに。」
リングマンが上を向くとそこには自分の腕をつかんだスカルマンの姿があった。
「す、スカルマン!?」
「嫁と子供のそばにいてやれって言うつもりでワクチンまで渡してやったって言うのに・・・・・・お前は本当にお人好し馬鹿だぜ。」
彼は呆れた顔をしながらリングマンを引っ張り上げ、壁に空いた小さな通路を潜り抜ける。
「ここは?」
「この要塞の武器の搬入口だ。地上で建設していた時に使っていた奴だが空中に浮かぶようになってからは封鎖していたんだ。お前の反応がこっちにあったから来てやったが・・・・・落ちて死んだらあの世で博士とお嬢様が悲しむ前に大笑いするだろうな。」
「あ、あれは仕方なかったんだ!?まさか、イエローデビルシステムがここでも使われているとは予想外だったし・・・・・・って、スカルマン。お前・・・・・・・」
そう言えば今は敵のはずのスカルマン。
にもかかわらず自分を助けてくれた。
リングマンは不思議に思いながらもスカルマンの後ろに付いて行き、倉庫の一つへと連れてこられた。
「随分、武器が取り揃えられているな。」
「ここの博士はあらゆる時代に密造した武器を売り飛ばしているからな。まあ、ここで世界征服しちまえば必要なくなるだろうがな。」
そう言うとスカルマンは頑丈そうな鎖を取り出す。
「それは?」
「試作で作られた脆い鎖だ。一見頑丈で相手がいくら引っ張ろうとびくともしねえ。だが、縛られた本人は容易く引き千切れるイカサマものさ。これで監獄囚人に売りつけて脱走の手助けをしてやるっていうものさ。」
「トンデモナイものだな。」
「まっ、失敗作なんだけどな。とりあえず体に巻いておけ。」
彼に言われるとリングマンは拘束されたかのように自分の身体に鎖を巻く。一見すると確かに頑丈そうに見えるがよく見ると鎖同士のつなぎ目が非常に脆くできており、少し力を入れれば容易く壊すことができる。
「これでどうするんだ?」
「これで俺が侵入者であるお前を捕らえたという形にしてうまく包囲網を潜り抜ける。お前はタイムパトロールの警部としてかなりマークされていたからな。捕まったとなれば周囲も驚くが逆に邪魔者が減ったと思って安心するだろう。そこに大きな隙ができる。」
「なるほど。」
「それから一回メディカルルームに入る。そこで少し細工の準備をした後にドラえもんズが収容されている部屋に乗り込む。その時はお前にも一芝居打ってもらうぞ。」
「わかった。」
「じゃあ行くぞ。」
二人は倉庫から出て広い通路を歩き始めて行った。
アチモフ城 内部
ミニイエローデビルを取り逃がした後、ドラえもんたちは行方が分からなくなったリングマンのことを気にしながらも奥へと進んでいく。
「次は何の仕掛けがあるんだろう?」
途中で襲い掛かってきたロボットたちを倒し終え、四人は扉を潜り抜けると奇妙な装置が7基設置された部屋が広がっていた。
「なんだこれ?」
ドラえもんたちは不思議そうに装置を眺めているとそのうちの一つからドラパンが姿を現した。
「ドラパン!?」
「アイツがか?」
「フッフフッ、イエローデビルを倒すとは流石ドラえもん。ドラえもんズのリーダーだけのことはある。それとそこの赤いロボット・・・ゼロと言ったか。正直驚かされたよ、君たちの実力にはねぇ。」
「誉め言葉のつもりか?今からでも遅くはない。キッドたちを解放し、大人しく投降しろ。そして、今まで犯した罪を償え。」
ゼロはバスターを展開しながらドラパンを見る。
「残念だがそうもいかんのだよ。私にはどうしても彼が必要なのでね。」
「そうか。なら、しばらく動けないようになってもらうぞ!」
ゼロはバスターをドラパンに向けながら発砲する。しかし、バスターの光弾はドラパンの身体をすり抜けてしまった。
「やはりホログラフか。」
「ナッ~~~~ハッハッハッハッハッ!!その通り、今君たちの目の前にいる私はホログラフで映しているものに過ぎん!!そして、君たちを仕留めるための罠でもある!!」
「何っ!?」
「お見せしよう!ホログラフドラえもんズ!!」
「ホログラフドラえもんズ?」
ドラパンが消えると同時に装置が一斉に作動し、四人の目の前に7人のドラえもんが姿を現した。
「お兄ちゃんが7人!?」
『ぴっ!?』
「ホログラフを相手にさせるとは舐められたものだな。」
『それはどうかな?この中の一体は今まで君たちとの戦いの戦闘データをインプットしたドラえもんのコピーが紛れ込んでいる。能力まで再現するのに手間取ったがね。』
「僕のコピー!?」
『では存分に楽しんでくれたまえ。』
ドラパンの声が途絶えるのと同時にホログラフドラえもんズは一斉に装置周辺を動き回り始めて四人を包囲する。
「全員、背を合わせろ!迂闊に動けば被害が大きくなる。ドラえもんは特に気を付けろ、あの中に紛れたら俺たちでも本物かどうかわからなくなっちまうからな。」
四人は背を合わせてバスターで応戦する。しかし、7人中6人がホログラフのため、攻撃がうまく当たらず一斉にバスターで攻撃をしてきた。
「キャッ!?」
そのうちの一発の光弾が肩に当たりアイリスは怯む。
「大丈夫か、アイリス?」
「大丈夫、軽く被弾しただけよ。」
「でも、このままだと持久戦に持ち込まれて僕たちが不利になる一方だよ。」
幸い強化アーマーの能力を完全に再現していないこともあって撃ってくるバスターの威力はドラミのアーマーのバスター並みの出力になっている。しかし、時間が長引けば長引くほど不利になるのは確実だ。
「アースクラッシュを使えば装置ごと破壊することはできるが、そうすればエネルギーの消耗が大きくなる。かといってツンドラストームを使って特殊武器の消耗も避けたいが・・・・・・・」
「そうだ!だったら・・・・・」
ドラえもんは特殊武器を切り替える。
「グランドハンター!」
ドラえもんは、グランドハンターをホログラフドラえもんズの足元に向けて放つ。
「ドラえもんさん、一体何を?」
アイリスは、ホログラフドラえもんズに向かってグランドハンターを数発放つドラえもんが何を考えているのかわからなかった。
だが、放ったグランドハンターの一発が被弾し、一体が転んだ。
「えっ!?」
ドラミは一体何が起きたか理解できなかったがよく考えてみると納得行く。
ホログラフドラえもんズは飽くまでコピードラえもんを覗いてただのホログラフ映像である。
そして、攻撃は飽くまで装置から放たれているものでコピーを除けば映像を動かしているのに過ぎないのだ。
分身を同時に攻撃しなければ本物を割り出せないと考えがちだが、実体のないホログラフは攻撃をすり抜ける。だから、ドラえもんはあえて地面を伝って相手に攻撃するグランドハンターを使ったのだ。
コピードラえもんが倒れた瞬間、今まで動いていたホログラフドラえもんズは一斉に動きを止めてしまった。
「今だ!」
ドラえもんはすかさず特殊武器を変更する。それに合わせてゼロとアイリスはバスターをチャージする。
「チャージダブルサイクロン!!」
「ハードナックル!」
「「ダブルチャージウェーブ!!」」
コピードラえもんは逃げようとしたのも束の間、最初にドラミのハードナックルが顔面に直撃。続いてゼロとアイリスが同時に放ったダブルチャージウェーブが模造品の強化アーマーを砕く。そして、ドラえもんのフルチャージダブルサイクロンより吹き飛ばされ、装置に激突するとともに装置が異常を起こし、大爆発が起こった。
「危なかった・・・・・・」
寸でのところでパワーギアアシッドバリアを三人の前で展開することで守ったドラえもんは、バリアを解いて爆発で消し飛んだ装置を見る。装置は綺麗に消し飛び、コピードラえもんは内部機構を剥き出しの状態で機能を停止していた。バリアを展開していなかったら自分たちも同じ状態になっていたのかもしれないと思うとドラえもんの背筋はゾッとした。
「何とかリングマンを除いて一人も欠けることなくここまで来れたな・・・・・・・」
ゼロは装置が完全に破壊されていることを確認しながらも不審に思っていた。
(ここまで来たがVAVAの奴が姿を現さないのが気になるな・・・・・・あの状態から考えて調整に時間をかけているのか?それとも俺たちの戦いをどこかで見ているというのか?)
「ゼロ?」
じっと黙っているゼロを見てアイリスは声をかける。
「どうした?」
「難しそうな顔をしていたからもしかして、リングマンさんや他のレプリロイドたちのことを考えているんじゃないかと思って。」
誤魔化しが通用しないのは分かっていたがここまで自分の考えていたことを見破られるとゼロは何とも言えないなという表情をした。
「あぁ。VAVAのことでな。アイツのことはイレギュラーハンター時代からある程度は分かっていたつもりだったが、今回のアイツの動きはどうも読めない。まだ戦う時ではないと判断しているのか、あるいは俺たちが消耗しきったところを狙っているかもしれない。」
「でも、後者の方は少し考えにくいんじゃないかしら?」
「何故だ?」
「だって、あの人はゼロとエックスを倒すのが目的なんでしょ?」
「そうだ。以前のアイツならツンドラマンの時に俺たちを倒していた。だが、何故か見逃した。俺が本領を発揮できないと分かっているはずだからあの場でライドアーマーの力で捻じ伏せることも出来たはずなのに。」
「じゃあ、誰かの命令で手が出せなかったとかは?」
「それも有り得ない。アイツはイレギュラーハンター時代からシグマの命令にも従わなかったからな。」
「そうだというのなら・・・・・彼の心境に何か変化でもあったのかしら?」
動きを見せないVAVAに対して不審に感じながらゼロは、アイリスたちと共にさらに奥へと乗り込んでいく。
同時間 アチモフ城 タイムマシンドック
「ゴジ ゴジゴジゴジ!」
「ゴジ!」
単眼ロボットたちがドックの整備をしている中、一艇のタイムマシンがタイムホールから出てきて着艦した。
「フン、奴らが戻って来たか。」
武器の調整をベルカナに任せて以降、メンテナンスを受けて暇を持て余していたVAVAはタイムマシンから出てくる面子の姿を眺めていた。
中からはダイナモ、ブラックゼロ、クワンガー、そして、緊急治療カプセルに入れられたヴァジュリーラの姿が見えた。
「ゴジッ!?」
「ゴジゴジッ!?」
カプセルで治療を受けているヴァジュリーラの姿を見て単眼ロボットたちは動揺する。
「彼は重傷です。急いでメディカルルームへ運びなさい。」
「「ゴ、ゴジゴジッ!!」」
クワンガーの指示で単眼ロボットたちは急いでヴァジュリーラのカプセルを運んで行く。
「エックスにやられたのか?」
運ばれていくヴァジュリーラを見ていたクワンガーにVAVAは声をかけてきた。
「VAVA・・・・もう、動けるほどにまで回復していましたか。流石とでも言うべきですかね。」
「俺のことなどどうでもいいだろう?それでエックスには会ったのか?」
「えぇ。彼は一段と強くなっていましたよ。最新の強化アーマーの性能を差し引いたとしてもおそらくは貴方が最後に戦った時の倍以上は実力が上がっています。」
「そこまで太鼓判を押すか。」
「飽くまでも私の推測の域ですがね。ヴァジュリーラがダブルギアの性能を最大限に引き出しても痛み分けで済むのですからそう見てもおかしくないでしょう。意外だったのは彼のパートナーであるマーメイドタイプですね。」
「エックスの女か。アイツは大したことないだろ?」
「いいえ、そうとも言い切れません。確かに実力はエックスには及びませんがそこらの特A級以上の力は持っていると読んでいます。僅かな時間で部下たちもあの様ですからね。」
クワンガーは自力でメディカルルームへと向かう負傷した単眼ロボットたちの方を見ながら言う。確かに攻撃個所は的確であり、一歩間違えれば動くことができなくなっていたのかもしれない。
「そうか・・・・・・奴は俺が想像していた以上に力を付けているというわけか。」
「おや?意外な反応ですね。てっきり、苛立つかと思いましたが。」
「奴を潰すのは俺だ。シグマでもゼロでもない。だから言ったまでよ。ところでお前の泣き虫弟には会ったのか?」
VAVAは去り際に振り向いて聞く。
「いいえ。ですが、少し離れたところから見ていましたよ。定期的に私の墓の前で報告をしたり、掃除したりしていましたよ。」
「相変わらずのブラコンか。エックスが成長しているのに対して奴は全然変わっていないようだな。」
「そうでしょうかね?私がハンターだった頃はエネルギーボトルしか摂取していなかったのに今じゃ普通にスイカを食べていましたが。」
「言うところそこか?」
呆れたように言うとVAVAは、さっさと部屋の方へと戻って行く。
「貴方も人のことが言えますかね?今の貴方は私たち以上に人間臭くなったと思いますが。」
クワンガーは聞こえない声で呟くのだった。
21XX年 シティ・アーベル 地下
隠し扉を潜ってから30分後。
トコトコと歩き続けていたエディーの足が止まった。
「やっと止まった。」
目の前には大きな扉があり、すぐ近くには三台ほどの認証システムが置かれている。
「認証システム?」
「ワイリーにここを嗅ぎつかれる危険性を考えた上の措置よ。」
エックスの言葉に対してロールは答えると認証システムに手を触れる。
<DRN.002ロール。認証シマシタ。>
「ほら、あなたも触れて。」
「えっ?」
ロールに言われてエックスももう一台のシステムに触れる。
<DRN.XXXエックス。認証シマシタ。>
「後の一台は?」
エックスが言うとロールはマーティの方を見る。
「貴方も一緒にやってちょうだい。」
「えっ?アタシ?」
マーティはオロオロしながらシステムに触れる。
「あたし、ライトナンバーズじゃないから速攻でエラーになりそうな気がするけど。」
「あら?ライト博士は貴方のことを結構気に入ってたわよ。エックスのことを自分以上に大事に想ってくれているって。」
「えっ?」
笑みを浮かべながら言うロールの顔を見ながらマーティは驚く。
「再起動の際にサーバーの中で博士とロックと話したんだけど、その時の二人の顔嬉しそうだったな。博士なんかエックスは最高のお嫁さんをもらったなって。」
「そ、そんなことは・・・・・・・」
<DRN.XXXマーティ。認証シマシタ。>
「えっ、えっ、えっ!?まじでっ!?」
マーティが顔を真っ赤にしている間に認証が完了し、巨大な扉がゆっくりと開いて行く。中は広い地下ドックらしく広い空間になっており、その先に一筋の光が見えた。
「ん?あれって・・・・・・」
スネ夫はその先でバタバタと動いている人影を見る。よく見るとエックスたちと比べてかなりロボットとした外見をしている。
「忙しいダス~忙しいダス~!!目を覚まして早々こんな大仕事やらせるなんてライト博士も厳しいダスよ~!?」
そのロボットは機材を運びながらバタバタと動いている。その姿を見てスネ夫とジャイアンは唖然としていたがエックスには何のことなのかさっぱりだった。
「どうしたんだい?二人とも。あのレプリロイドに何か見覚えがあるのかい?」
「驚いたな・・・・・まさかライトットまで出てくるなんて。PSとSS版のはお遊びだと思っていたけど。」
「ライトット?」
エックスは目の前で騒がしく動いているライトットを見ながら言う。あまりにも騒がしいのでロールは彼の前に行って軽く頭を叩いた。
「ダスッ!?」
「アンタはいつまでバタバタ動いているのよ!」
「「「えっ!?いきなり!?」」」
一同が驚いている中、ライトットは頭を押さえながらロールの方を見る。
「痛いダスよ~!ロールちゃん、来てるなら来てると言ってほしいダス。」
「扉が開いた音で普通気づくでしょうが!」
ロールは的確なツッコミを入れながらもひと呼吸おいてライトットに聞く。
「どこまでできたの?」
「整備自体はそこまで傷んでいないから早く済んだダスよ。それに博士に言われた装置の取り付けも終わったダス。後は資材の詰め込みと防衛用の装備を取り付ければ完了ダス!」
「私が出てそんなに時間経っていないはずだけど・・・・まあ、いいわ。資材と武器の取り付けは地上でやるわ。すぐに動かしてちょうだい。」
「えぇっ!?大丈夫なんダスか!?」
「エックス達も連れてきたから早く地上に出るわよ。」
ロールに言われるとライトットは持っていた資材だけをもっと明かりの方へと戻って行く。
「さあ、行きましょう。」
「う、うん・・・・・・」
エックス達はロールに続いて行くと目の前に巨大な何かを目撃する。
「す、スネ夫・・・これって・・・・・」
「間違いない。移動型研究所、その名もビッグエディーだ!」
目の前にそびえ立っているビッグエディーを見ながらスネ夫は歓喜する。
「まさか、100年経った今もビッグエディーが残っているなんてね。それだけロックマンの時代は・・・・・」
「ビッグエディーとは失礼ダス!これはワシが博士やロールちゃんに頼まれた買い物のお釣りをちょろまかして、コツコツひっそりと作り上げた『Dr.ライトット研究じょ・・・・・」
「そんなことは言わなくていいから早く動かしなさい!」
厳しい指摘をしようとするライトットはロールに叩かれてその場に倒れる。
「ロールちゃん、あんまりダス・・・・・・・」
その後、ライトットはロールに引っ張られてビッグエディーへと運ばれてエックスたちに続いて乗船した。
ビッグエディーは100年前、ライト博士がライトットと共に封印処置を施して地底深くに保管していたのだが今回のワイリーの一件で再起動させ、新造したライト博士製の動力炉などを移植したタイムマシンへの改造が行われていた。
起動したビッグエディーは地面を突き破って上空を飛び、ハンターベースの敷地へと着地する。
その光景を司令室から見ていたパレットからは「空から巨大な炊飯器が飛んできたです!?」とシグナスに報告したという。
ホログラフドラえもんズは当初、ウェポンアーカイブスかガッツタンクにする予定にしていましたがうまくまとまらなかったのでこんな感じにしました。
次回が出せるか心配だな(汗)。
X6編後に展開予定の劇場版編で次のうちどれがいいと思いますか?(飽くまで現在投票の中で二票以上入っているものの中での取り決めです)
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ネジ巻き都市
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雲の王国
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鉄人兵団(現段階ではリメイク版)
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ロボット王国
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このままX7編へ