セントラルハイウェイ 危険地帯『レイ・トラップ』
爆破任務用レプリロイドが至る所に控え、最後には堅固な扉が侵入者を阻み、並みのレプリロイドでは生きて帰ってはこれないと言われている関門『レイ・トラップ』。
転送装置の誤作動で飛ばされたエックスは、この地帯に転送された。
「うぅ・・・・ここは?」
周囲を確認するとどうやらセントラルハイウェイの近くのようだ。
「ここは・・・・・危険地帯である『レイ・トラップ』か。誤作動で結構面倒な場所へ飛ばされたんだな。」
エックスは、周囲を確認しながら歩き始める。幸い安全地帯からそう遠くないため、自分でも気を付ければ普通に通り抜けることができる。
「ダグラス・・・・・安全なところに転送するって言っていたのに・・・仕方ないな。」
幸いここのイレギュラーは、ゼロがほとんど倒したはずだ。なら、早くこの地帯から抜け出して通信を行い、ハンターベースに戻るのがベストだと思い、彼は急いでこの地帯から抜けようとした時だった。
「痛っ!?」
「うわっ!?」
偶然にも死角から飛び出してきた何かにぶつかりエックスは、その場で尻餅をついて転んでしまった。
「アイタタ・・・・・ゴメン、大丈夫?」
「痛・・・・誰だ?ここは危険地帯・・・・・・!?」
手を差し出してきた相手を見てエックスは唖然とする。
「お前はアクセル!?」
「えっ?」
相手は、先ほどゼロと一緒に出撃したはずのアクセルだった。ゼロと一緒にレッドアラートのバウンティハンターを討伐しに行ったはずの彼がどうしてまたここに来ているのかエックスにはさっぱりだった。
「お前、どうしてここにいる!?ゼロはどうしたんだ!?」
「何のこと?」
「とぼけるな!お前がレッドアラートから逃げ出したせいでこんなことになったんじゃないか!!」
エックスの言うことに対してアクセルは口を開けて驚く。
「あの・・・・・・なんで僕が逃げ出したこと知ってるの?そもそもアンタ・・・・・・エックスだよね。あの有名な。」
「どうしてこんなところへ来ているんだ!?君はゼロと一緒に・・・・・」
「ちょ、ちょっと待ってよ!?僕はレッドアラートを脱走したのは事実だけどそもそも僕は、エックスと会うの初めてだよ!?それにゼロともまだ会っていないし!!」
「なんだと?ゼロに連れられてハンターベースに来たじゃないか!」
「違うよ!?僕が脱走したの少し前だよ!?しかもここを通っている最中にどうやってハンターベースまで行くのさ!?テレポートとかできるわけじゃあるまいし!!」
「・・・・本気で言っているのか?」
アクセルの必死の言葉にエックスは、とても嘘をついているようには見えなかった。本当に彼が先ほどまで自分が見たあのレプリロイドなのだろうか?
「本当だって!!でも、エックス。最近姿を見せていないって聞いていたけどいつ復帰したの?」
「・・・・・・」
「エックス?」
「いや・・・・何でもない。」
「あっ、そうだ!早くここから出ないと!!」
アクセルは、エックスに手を取りその場から離れようとする。
「お、おい!?何を・・・・・」
「レッドが僕のことをみすみす見逃すはずがないんだ!早くここから離れないと追手が来るよ!!」
「追手ッて・・・・・それはもうゼロと君が・・・・!?」
エックスはさっきまで自分たちが立っていた場所に何か巨大なものが着地していた。
「あぁ・・・・・・やっぱりこうなるよね・・・・早く逃げよう!!」
アクセルは、エックスの手を引っ張ってその場から走って逃げる。
別の場所において
「こちら、ゼロ。アイリスと共に現場に到着した。」
夜間の暴動の発生を聞き、ゼロとアイリスがハイウェイの方へと赴いていた。
『こちらでも確認しました。どうやら、暴動の原因と思われるのはこの先にいると思われる巨大メカニロイドのようです。識別を確認してみましたがどうやら新型だと思われます。』
「そうか。レイヤー、他に被害報告は?」
『はい、目標は現在も進行中。幸い周囲にレプリロイドの反応は・・・・・・これは!?』
通信先のレイヤーの声が突然荒げた。
「どうした?」
『あ、はい・・・・・・信じられないのですが・・・・』
「何がだ?」
『目標の先で移動している反応が二つ、一つは不明ですがもう一つの方が・・・・・・・』
何か言うのを躊躇っているのかレイヤーの報告がよく聞こえない。
「レイヤー、ハッキリと言ってくれ。もう一つの反応は何なんだ?」
『もう一つの反応は・・・・・・』
「あちゃ・・・・・・・行き止まりだ。」
アクセルとエックスは敵の攻撃を回避しながら逃亡を続けたが破壊されたハイウェイの下に落ちたことで逃げ場を失ってしまう。後ろを振り向くとそこには自分たちを追ってきた巨大メカニロイド メガ・スコルピオが迫っていた。
「こうなったら、ここでやるしかないようだね。」
アクセルはそう言うと専用の装備である二丁拳銃『アクセルバレット』を展開し、応戦態勢に入る。
「エックス、ブランクはあるけどイレギュラーハントの腕前は大丈夫だよね?」
「えっ?」
アクセルの声を掛けられてエックスはギョッとする。メガ・スコルピオは両サイドの鋏を鳴らしながら二人に掴みかかろうとする。
「分かれよう!」
アクセルの咄嗟の叫びで二人は攻撃を避ける。続いて彼はバレットでスコルピオの装甲の薄い場所を狙って銃撃を始める。ボディには特殊合金を使っているのかバレットの光弾は弾かれる。
「やっぱ装甲が厚いか・・・・それなら!!」
アクセルは今度は脚部の関節を狙って撃ち始める。特殊合金が使われているとはいえ、脚部の駆動系はやはり脆い部分が存在しており、数弾同じ場所へ当てると片足が吹き飛んだ。
「やったね!」
スコルピオは、バランスを崩すものの残りの三本足で体勢を立て直し、尾からテールショットを放つ。
「何処を狙って・・・・・あっ、ちょっとエックス!」
アクセルは、スコルピオが標的をエックスに切り替えたと気づき避けるように注意を促す。ところがエックスは、何を考えているのか避けようとしない。
「何やってんのさ!早くしないと・・・・!まさか、後遺症で動けなくなっちゃたんじゃ・・・・・」
一方のエックスの方も状況を分かっていた。だが、どういうことなのか体が反応しない、戦うことを拒んでいるのだ。それ故に状況を理解していながらもバスターを展開するどころか、逃げることすらままならない。
(どうして動けないんだ!?今は戦わなければいけない状況だということは分かっているのに。相手はただのメカニロイド、なのに何故・・・・・恐れているのか?俺は。戦うことを・・・)
テールショットはそのままエックスへと命中しようとする。
「エックス!!」
ガンッ!!
ところがその直前何かがはじくような音がした。
「・・・・・・!」
顔を伏せていたエックスが顔を上げるとそこにはセイバーを持ったゼロがいた。
「ゼロ!?」
「どうやら、とんでもない事態になっているようだな。」
ゼロは、エックスの安否を確認するとスコルピオの方へ向き直り、バスターを展開する。その姿にエックスは自分の目を疑う。
(ゼロがバスターを!?そんなはずは!?)
自分が知っているゼロは、バスターを捨てたはずだった。かつて、ドップラーの反乱の戦いの際に動力炉を負傷した際にバスターの機能が著しく低下し、ナイトメア事件まで突貫で何とか使える状態のものを使用していたが事件解決後、もう以前のような機能は回復しないと判断し、ICチップを自らの手で処分してしまったのだ。そのため、今の彼はバスターを使えないはず。
「一体何が・・・・・」
エックスは自分の記憶と一致しない目の前の現状に頭を押さえてその場でよろけてしまうが遅れて駆けつけてきたアイリスが支えた。
「あ、アイリス!?何故、君が・・・・・」
「話は後。ここはゼロに任せましょう。」
そう言われるとエックスは、ゼロの方に視線を戻す。ゼロは、バスターを撃ちながらアクセルと打ち合わせをしていた。
「おい、お前!お前が今回の事件の関係者か?」
「えっと・・・・まあ、そんな感じかな。」
「折角復興したところをこんな風にしやがって・・・・後で説明してもらうからな。援護を頼む。」
「わかった!」
ゼロに言われるとアクセルはホバリングをしながらスコルピオの真上に飛び、バレットを連射する。スコルピオは鋏でアクセルを捕らえようと両腕を伸ばす。
「よし!」
その隙にゼロはダッシュでいっきに懐に回り込み、セイバーを構える。
「疾風牙!!」
疾風牙で残りの三本足を溶断、支える足を失ったスコルピオはバランスを崩し、そのまま倒れる。
「これで終わりだ!!」
ゼロはバスターをチャージし、エネルギーを両腕に回す。
「ダブルチャージウェーブ!!」
殺傷力の高い光弾二発は、両鋏を破壊し、遅れて放たれた斬撃波が胴体を容易く両断する。その姿を見てエックスは混乱が増すばかりだった。
「どういうことだ・・・・・あの技はもう使えないはずなのに・・・・・」
「えっ?」
エックスの反応にアイリスは、不思議そうに見る。
一方、スコルピオが破壊されたことでアクセルは、着地してゼロの方へ行く。
「助かったよ、あのメカニロイド結構装甲が頑丈で厄介だったからさ。それよりも流石噂通りの腕前・・・・・・えっ?」
ゼロの実力を見て歓喜していたアクセルだったがゼロは、返事をすることもなく彼の両腕に手錠を填めた。
「あの・・・・これは・・・・」
「こんな騒動を起こして『ご苦労さん』とでも言ってもらえると思っているのか?お前は、今回の騒動の関係者としてハンターベースまで連行だ。」
「そんな~~!!」
ショックを受けるアクセルを他所にゼロは、続いてエックスの方を行く。エックスは、不審に感じているのか自分のことをやけにじろじろと見ている。
「ゼロ、これは一体どういうことなんだ?」
「ん?」
「なんでバスターがまた使えるようになっているんだ?」
「バスター?」
「とぼけないでくれ。ナイトメア事件の後、ICチップを処分して使えなくなったはずじゃないか。」
「処分した?」
身に覚えのないことにゼロは、不思議そうに首をかしげる。
「第一、なんでオペレーターのアイリスがこんな前線に来ているんだ!?彼女は非戦闘員なんだぞ!!そんな彼女をこんな危険な・・・・・」
「ちょっと待って。非戦闘員って・・・・私もイレギュラーハンターよ?」
「えっ?」
かみ合わない会話に三人は、少し戸惑う。
しばらくして、何か思いついたのかゼロは、エックスに手錠をかけた。
「なっ!?何のつもりなんだゼロ!?」
「もしかしたらだが・・・・・すまないがお前も一緒に来てもらうぞ、エックス。確かめなくちゃいけないことがあるからな。」
レプリフォース本部
「すまないな、シグナス。政府の命令とはいえ、こんな忙しい時期に会議で招集することになってしまうとはな。」
レプリフォース本部の通路にてフクロウルは、シグナスと移動しながら話をしていた。
「仕方ないことです。非合法でイレギュラーを狩る『レッドアラート』への今後の対応・・・正式に認めるべきかどうかを決めなくてはならないのは事実なのですから。」
「あぁ、その通りだ。見ての通り、復興が進んでいるとはいえ今だにイレギュラーは発生し続けている。レプリフォース、イレギュラーハンターの手が回らないところで被害が出ている以上、彼らの存在は吉となると凶となるか。慎重にならなければならん。特に『レッド』に関してはな。」
「・・・・やはり、あの男が。」
「うむ、だが信じがたい情報も回っている。そのレッドアラートが裏で関係のない一般のレプリロイドを襲っているという噂だ。奴の経歴を考えれば確かに容易いことだろう。しかし・・・・そこまで落ちぶれているとは思えん。」
「・・・・」
やがて入口に辿り着くと車が待っており、シグナスはそのまま乗り込む。
「いずれ結論を出さなければならないでしょう。今は沈黙をしているとはいえ『Dr.ワイリー』、『シグマ』動かないと限りません。」
「無論だ。私もできれば誤った判断はしたくない。それこそレプリフォース大戦の二の舞になりかねん。慎重に事を進めねば。」
そう言うとシグナスは、車を走らせハンターベースへと帰投していく。
(今後のことも考えれば『レッドアラート』の活動を正式に認めるのが妥当だろう。だが、影の噂が真実だとすれば彼の言う通りになりえる。少なからず確証を得るには調査をしなければなるまい。しかし、エックスなしでどこまでできるか・・・・・)
「総監、ハンターベースから通信です。」
「エイリアたちからか?」
「いえ、パトロールから戻ったゼロ隊長からです。」
「ゼロからだと?」
運転手の報告を聞くと彼は通信を繋げた。
「私だ。ゼロ、何が・・・・・・・それは本当か?確かに可能性はなくもないが・・・・・わかった。そちらに戻り次第彼に会おう。うん・・・・お前以外に下手に会わせない方がいいだろう。アクセルの件についてはお前に任せる。レッドアラートとはいずれ向き合わなくてはいかないからな。」
そう言うと彼は通信を切った。
「どういった要件なのですか?」
「緊急の要件だ。すまないが急いでくれ。」
「わかりました。」
「・・・どうやら、またひと嵐来そうだ。」
ハンターベース 尋問室
「それじゃあ、もう一度確認しますよ。」
ゼロに連行されたアクセルはハンターベースの尋問室で質問を受けていた。質問の相手はマイマインである。
「名前は、アクセル。所属は元レッドアラート。」
「んで、今回の騒動の原因は『組織からの脱走』ね。そして、ここに来た目的は『イレギュラーハンターになりたいから』と言うので間違いないですね。」
「うん、そうだよ。」
「う~~ん~~~」
マイマインは、書類を書き終えると真面目な顔で改めてアクセルを見る。
「じゃあ、改めて聞くけどなんで脱走したの?」
「耐えられなかったんだ。」
「耐えられない?上司のパワハラとか同僚のいじめとかで?」
「違うよ!レッドが・・・・・レッドアラート自体がおかしくなっちゃったんだ!!」
「おかしくなった?」
「うん!昔は本当に悪い奴にしか手を出さなかったのに、今は関係のないはずのレプリロイドまで処分するただの殺し屋集団に変わっちゃったんだ!!レッドの命令で動いてはいたけど・・・・・・・もう、耐えられなかったんだ!!」
「ほうほう・・・・・それで今日、脱走してきたと。」
「・・・・・うん。」
思わず手錠のついた両手を机の上に叩きつけてしまったアクセルだったが熱くなっていたこともあって冷静になったのか肩を落として落ち込む。
「ふう・・・・レッドアラートの怪しい噂はこっちでもチラホラ聞いていたけど、これはシグナス総監に報告しないとダメみたいだな。でも、脱走してきたとなると向こうのボス、きっと君のこと連れ戻そうとすると思うよ?」
「僕は帰らない!」
「落ち着いて落ち着いて。熱くなるのは分かるけど・・・・・・」
「調子はどうだ?」
話の最中にゼロは部屋に入ってきた。
「あっ、ゼロさん。」
「何かわかったのか?」
「はい。彼から聞いた話はどうやらレッドアラートが裏で一般のレプリロイドを襲っているというのは事実のようです。」
「そうか。」
マイマインの報告を聞くとゼロは彼にかけていた手錠を外す。
「えっ?」
「いいんですか?」
「あぁ。どの道レッドアラートはコイツを取り戻しに動く。多分正面衝突は避けられないだろうな。」
ゼロは、そのままアクセルを部屋の外へと連れ出して行く。
「お前のことは、シグナスに話を通しておいた。ハンターになるかはまだ決めかねんがお前がその気なら構わないが・・・・・もう後戻りはできないぞ?」
「戻れないのはもう覚悟しているよ!!でも、感激だな!僕、ゼロとエックスに憧れていたんだ!!一緒に戦えるようになるなんて・・・・・って、そう言えばエックスは?ブランクのせいかうまく動けていなかったけど?」
「・・・・・」
「もしかして喧嘩でもしたの?」
「・・・・・」
「ゼロ?」
急に黙ったゼロをアクセルは気になるように見る。
「・・・・・そんなに会いたいか?」
「えっ?う、うん・・・・・」
「なら、ついてこい。」
進路を変え二人はある場所へと向かって行く。
アクセルが部屋から出る頃、エックスは、隣の部屋で軟禁されていた。
(なんで俺がこんなことに・・・・・)
自分が何をしたのかと考えていると部屋にシグナスが入ってきた。
「シグナス!」
「・・・・・・」
エックスは、部屋に入ってきたシグナスに向かってなぜ自分が拘束されているのかを聞き出そうとする。
「シグナス、これは一体何の真似なんだ!?何故、俺を・・・・」
「・・・エックス、悪いとは思うがこちらも確かめなければならないことがある。そのためにお前を一時的に拘束させてもらっていた。」
「確かめる?何を?」
シグナスは、彼の手錠を外すと席の向かい側に座る。
「座ってくれ。」
「あ、あぁ・・・」
エックスはそのまま席に座る。シグナスは、真剣な目で彼の顔を見る。
主人公が逮捕されるってソニアド2のソニックと仮面ライダー剣のケンジャキくらいだと思う。