ハンターベース ライドチェイサー用転送装置前
ゼロからの通信を受けたアクセルは、格納庫のライドチェイサーを借りて急いで転送装置の方へと急いでいた。転送装置の前では既に二人が待っており、転送装置もいつでも行けるように稼働している。
「遅いぞアクセル。」
ゼロは腕を組みながら遅れてきたアクセルに言う。
「ごめん、僕チェバルしか操縦したことないからまだ慣れていないんだ。」
アクセルは苦笑しながら誤魔化すが乗りなれていないのは事実だった。
ライドチェイサーは、普通のバイク同様に機種によって乗った時の感覚が大きく異なる。シグマの反乱時に配備されていた初期型のものとチェバルは、そこまで大きな差はないもののアディオンやハーネットと言ったものになると別物となる。更に現在ハンターベースで少数配備されているこの最新機は、今まで以上に大型化し、スピードの微調整はしやすくなったが比較的に取り回しがよかったチェバルと比べると難がある。だが、訓練をしているほどの余裕はない。
「お前は俺とアイリスの後を追ってきてくれればいい。無理はするな。」
「うん。」
「おい、転送準備ができたぞ!マシンをカタパルトに接続してくれ!!」
ダグラスに言われると三人はマシンをカタパルトに固定する。
「ねえ、ゼロ。これってどういった奴なの?転送装置にマシンごと乗るってもんじゃないの?」
「コイツは新しいタイプの奴でマシンのスピードを落とすことなく目的地に転送することを目的に開発されたものだ。マシンをカタパルトで固定し、スピードを一定に保つ。そして、転送装置を作動させて目的との間のゲートを生成してスピードを保ったマシンをそのゲートを通じて現地へと送り出すと言ったものだ。」
「そんなことができるの!?」
聞いたことがないシステムにアクセルは動揺する。実は、この技術には別世界である22世紀の技術が一部使われている。原理は極めて『どこでもドア』の前身である『どこでもガス』に近いものでゲートを通るとすぐに目的地に到着することができるのだ。無論、機密事項であるため現地に出てしまえばハンターベース側の許可が下りるまで利用することはできない。
ゲートの先には既に目的地であるセントラルサーキットが見えていた。
「アクセル、行く前に確認するけどレッドアラートの主要メンバーでサーキットとかをメインに行動するレプリロイドは誰かわかる?」
「ほぼ確証だけど多分イノブスキーぐらいしかいないかな?猪型レプリロイドなんだけど体をバイクみたいに変形することができてものすごいスピードを出すことができるレッドアラートきっての熱血漢。」
アイリスの質問に対してアクセルは苦手そうに言う。彼も苦手とするほどの問題児なのだろうか。
「使ってくる武器は分かるか?」
「基本は突進をメインにしているけどホイール系の武器を使ってくることもあるよ。まあ、基本的に暑苦しいから多分使ってこないと思うけど。」
「・・・そうか。」
それだけ確認するとゼロは前に向き直り、マシンのエンジンを吹かす。
「ダグラス、いつでも出せる。」
「おう!射出するから勢いで振り落とされるなよ!!」
ダグラスはそう言うとスイッチを押す。するとマシンはそのままゲートに向かって走り出し、接続されていたカタパルトが解除されるとスピードを落とすことなくゲートを通り抜ける。
「うっ!?」
勢いそのまま飛び出し、アクセルは身を大きく揺さぶられる。
「大丈夫か?」
「うん、平気平気!!」
マシンを安定させ、彼は先に前を走る二人を追い始める。
「ビックリしたな・・・・チェバルとは比較にならないや。」
『アクセル、操縦の方は大丈夫なの?さっきもチェバルしか乗ったことないって言っていたけど?』
通信越しでパレットが心配そうに声をかけてくる。
「えっと・・・・確か、このギアでスピードを切り替えられるんだよね?」
『そう。後、チェバルやアディオンと同様にショットが撃てるようにできているの。ただ、違いとしてはチャージすることで威力が四段階に分かれていて出力を最大にすれば障害物でも吹き飛ばせるわ。ただ、威力が高い分反動で回りも巻き込む危険性があるからその辺は気を付けてね。』
「はいはい。」
アクセルは、返事をしながら操縦を続ける。すると先ほどまで前方を走っていたゼロたちがスピードを緩めて下がり始めた。
「あれ?どうしたの二人とも。」
「面倒なことになった。」
「えっ?」
「ついさっきエイリアから緊急連絡が来たんだけどこの道路のいたるところに時限爆弾が設置されているの。」
「ば、爆弾っ!?」
アイリスの話を聞いてアクセルは、イノブスキーの仕業だとすぐに理解する。彼は確かに熱血漢ではあるが彼の率いる部下たちはならず者集団でレッドすら手を焼かせていた。イノブスキーの命令で設置したと考えれば納得いく。
「周囲に巻き込まれた一般レプリロイドとイレギュラー反応もある。どうやら、そのイノブスキーの仲間だろうな。・・・・アクセル、お前はイレギュラーの撃破に専念してくれ。」
「ゼロたちはどうするの?」
「俺は爆弾を回収しながらお前の後を追う。アイリスは爆弾回収とレスキューを優先だ。」
「はい。」
アイリスは了解すると二人から離れて爆弾の回収へと回る。
「あのさ・・・・僕でいいの?」
「お前の経験からだとイレギュラーを撃破しながら爆弾を回収するのは至難の業だからな。それにショットの撃ち方はパレットから教えてもらっただろ?レスキューを任せたら、あのガキみたいにすねるかもしれないからな。」
「酷いなぁ、僕はガンガルンみたいにはならないからそんなこと言わないでよ。・・・でも、言われたからにはやらせてもらうよ!」
彼は、スピードを上げて先に行く。それを見届けるとゼロもギアを変えて追うように走り抜ける。
アクセルは、周囲の至る所に取り残された一般レプリロイドたちに当たらないよう慎重にイレギュラーを狙って攻撃した。ゼロは爆弾を回収しながらイレギュラーを破壊し、取り損ねた爆弾とレスキューは一番後方にいるアイリスが救出・回収する。
爆弾は回収した瞬間、レスキューと同様に簡易転送装置ハンターベースへ送られ、解体班に回され、停止させられる。
爆発までのタイムリミットは、一刻一刻と迫っていたがアクセルがほとんどのイレギュラーを撃破してくれたこともあって難なく作業が進んだ。
そして、三人の作業がほとんど完了した頃、遥か後方からものすごい爆音を鳴らしながら迫るバイクがあった。
「やれやれ、一難去ったかと思えばまた一難か。」
バイクは瞬く間に三人に追い付き追い抜かしたかと思いきやこちらを向き、器用な走り方を披露する。
「イノブスキー!?」
「アイツがか?」
走りながら睨みつけてくるイノブスキーに対して、アクセルは懐かしさもあってなのか笑いかけながら声をかける。
「やあ、『総長』!元気そうだね、アンタを狩りに来たよ!!」
「アクセル、てめえ!!レッドに拾われた恩を仇で返しやがってよくも俺の目の前に来やがったなぁ!あぁ!!」
イノブスキーの凄まじい怒声を前にアクセルは思わず肩を竦める。
「そんなに鼻息荒くしなくても・・・・それに、これはある意味恩返しだって思ってるしね。」
「ブヒィィィ! なんだとぉゴラッ!!」
「うるさい奴だな。」
あまりの怒声に嫌気がさしたのかゼロは顔を顰める。
「アクセル、思ったんだがコイツはロードアタッカーズの残党か?」
「なっ!?てっ、てめぇ!!あんな雑魚と俺のチームを一緒にしやがる気か!?許せねぇ!!」
「じゃあ、ロードライダーズの方ですか?」
最後のアイリスの一言でイノブスキーの怒りが沸点に達する。そんな中、アクセルは困った顔でゼロの質問に答える。
「ごめん。覚えてないや。だって、レッドも含めてみんなで『暴走族組』としか言われていなかったもん。」
「ブヒィィィ!!!てめぇら!!揃って重ね重ねっっっ!!!上等だぁ、オルァア!付いて来やがれ!タイマン勝負だぁ!!」
イノブスキーは前に向き直り、スピードを上げて3人より遥か先へ行く。それを追いかけるように進むと道路が分かれ、いつの間に作ったのか中心に向かって少し窪んだ円形のフィールドが出来上がっていた。
「・・・コイツ、何時こんなもの作りやがったんだ?」
ライドチェイサーを下りてゼロが呆れて言うのを他所にイノブスキーは鼻息を荒くしながらフィールドの中央を陣取っている。
「てめえら、一人ずつタイマンでブチのめしてやるぜ!最初はどいつからだ!!」
「じゃあ、今回は私が・・・」
「あっ、ちょっと待って。」
行こうとするアイリスをアクセルが止める。
「ここは僕にやらせてもらえないかな?」
「けど・・・」
「『総長』は僕に一番イラついているようだからね。だから、多分僕をご指名だと思うんだ。」
「アクセル・・・・」
「アイリス、ここはアクセルに任せよう。コイツもコイツなりに考えがあるようだからな。」
「・・・わかったわ。」
アイリスからOKをもらうとアクセルはフィールドの中へと入る。
「てめえからかアクセル!上等だ!」
「『総長』、せめて僕の手で止めてあげるよ。」
「ガキが舐めたような口で言うんじゃねえ!!」
アクセルはバレットを抜くとイノブスキーを狙って撃つ。それに対してイノブスキーは持ち前のスピードで難なく回避すると変形してアクセルの急接近する。
「速い!?」
「オラオラ、そんな欠伸が出ちまうような弾が俺に当たるかってんだぁ!!」
イノブスキーはそのままアクセルを跳ね飛ばす。
「うっ!?」
一般のハンターであるのならこの時点で勝負はついている。しかし、アクセルは床に落下すると同時にバレットを構え直して射撃を行う。
「俺にぶつかりながら反撃する元気があるったぁ、知らない内に随分タフになりやがったじゃねえか!」
バレットの弾が数弾命中しながらもイノブスキーは愉快そうに答える。
「だが、俺たちを裏切ったのが運の尽きだ!ここは俺の庭みたいなもんだ、手も足も出ないままくたばってもらうぜアクセル!ムービングホイール!!」
腕の車輪からパーツが外れ、かつてエックスが交戦したホイール・アリゲイツが使用していた『スピンホイール』に近い武器は二つ同時にアクセルを取り囲むようにフィールドを走る。
「イノブスキーがこんな戦い方をするなんて・・・・」
普段の彼からは想像できない戦い方にアクセルは驚く。
「まともに戦えねえ猪はただの豚だってな!!ドンドン行かせてもらうぜ!!」
イノブスキーは再びバイク形態に変形し、ムービングホイールを従わせながらアクセルに猛攻を加える。アクセルも攻撃を避けながら応戦しようとするが相手は一人でありながら攻撃は三手、一回の攻撃を避ければもう一方の攻撃が当たり、その身は傷だらけになっていく。
「さっきまでの威勢はどうした!?オラ!!」
「グッ!」
イノブスキーの体当たりを受け、フィールドを囲う電磁壁に衝突する。全身に電流が流れ、危うく卒倒しそうになる。
「アクセル!」
流石にこれ以上戦闘を続行させるのはまずいと思い、ゼロとアイリスは加勢しようと動き始める。
「そうはさせねえ!野郎ども、かかれ!!」
「「「「チースッ!!」」」」
イノブスキーの命令を受けて、部下たちがチェバルに乗りながら二人を取り囲む。
「ちっ!其処を退け!!」
ゼロは、バスターを展開して登場しているチェバルを破壊しようと試みるが連携がうまく取れているのか中々命中しない。加勢できないゼロたちを他所にイノブスキーはアクセルとの戦闘を再開する。
「さあ、アクセル。もうへばっちまったか?」
「・・・・・・・」
アクセルは、無言で立ち上がる。それを見てイノブスキーは感心する。
「おぉう、まだ動けるようだな。」
「・・・・当然さ、僕はレッドを止めなくちゃいけないからね。」
「レッドを止めるだぁ?てめえ、まだそんな夢みたいなこと言っていやがるのか!」
イノブスキーはアクセルに向かって突進する。アクセルはホバーを使って回避する。
「馬鹿め!二度も三度も同じ手をくらうか!」
彼の背後には自分が放ったムービングホイールの一つが回転しながら迫る。だが、彼はローリングをしてうまく撃ち落とす。
「んっ!?」
「夢みたいなことじゃないさ。僕は絶対にレッドを、レッドアラートを止めて見せる。」
「減らず口を、てめえと俺の実力の差はもうわかっているだろうが!!」
「あぁ・・・・・確かにアンタは強い・・・・・・でも、それはレッドに何かされたからじゃないの?」
「何?」
「僕がレッドにDNAデータを渡した日から何もかもがおかしくなった。みんな急に強くなりだして強くなることばかり考えるようになった。」
「だから、どうしたってんだ!!」
イノブスキーは、猛スピードでアクセルに迫ると変形し直し、回し蹴りで彼を倒す。
「これだけ強くなれたんだ。もっと強くなりたいと思うのは当然だろ!」
「僕は後悔しているよ!どうして、あの時・・・レッドの言う通りに渡しちゃったのかって。渡しさえしなければみんなが・・・・・レッドアラートがこんなにおかしくなることはなかったんだ!!でも・・・・・僕一人じゃもうどうにもならない・・・・」
「それでハンター共に助けを求めて逃げ出したってか?だったらてめえは愚かだぜ。どこに行こうが強くなった俺たちには敵わねえ!!てめえはレッドの所にいるからこそ価値があるんだよ!!」
「そんなことあるもんか!!」
アクセルはバレットからGランチャーに持ち替えて至近距離でエクスプロージョンを放つ。
「ウオッ!?」
「今のレッドが何を考えているのかはわからない!!でも、僕の知っているレッドアラートは、元犯罪者だとか非合法だからと言われても悪い奴にしか手を出さない『本当の悪党じゃない組織』だった!今はその逆だ!!」
「てめえ、言わせておけば!!」
イノブスキーは顔を押さえながらバイク形態に変形するとアクセルの周囲を回りながら攻撃態勢を整える。
「何を言おうが勝っちまえばそいつが正しいんだよ!!弱い奴は誰にも認められねえのがこの世界のルールってもんだ!弱いお前にそれを語る資格はねえ!!」
「わかってるさ!」
アクセルは、ホバーを利用してイノブスキーを誘導し、電磁壁に衝突させる。先ほどのエクスプロージョンで視界が不安定になったこともあり、彼は諸に電磁壁に衝突してしまった。
「ブヒィイイイイイ!?」
「僕は、まだまだ半人前さ!エックスやゼロにも及ばないほどね。でも、これから強くなって見せる!アンタを倒して!誰よりも!!」
アクセルは、体がショートして動きが鈍くなったイノブスキーの急所を狙ってバレットを連射する。
「ブヒャッ!?」
急所を撃ち抜かれたイノブスキーは一旦その場に膝を付いてしまうもののすぐに起き上がり、爆音を吹かし始める。
「なにっ!?」
「グウゥ・・・・・・調子に乗るなよ、クソガキが!!俺は負けちゃいねえ・・・・・・・最後に倒れるのはてめえの方だ!!」
イノブスキーはムービングホイールを射出し、自分も変形してアクセルに飛び掛かる。
「僕は負けない!負けるのはアンタの方だ、イノブスキー!!」
アクセルはバレットを撃ちながら向かって行く。途中でホイールの方は撃ち落とされるがイノブスキーは怯まず、真正面から対峙する。
「消えやがれ、アクセル!!」
「やあああああ!!」
両者はその場で交差する。
イノブスキーが突進をしてきたのに対し、アクセルは思いっきりジャンプをする。そして、彼の上を飛び越えた。
「俺様を踏み台にしただと!?」
飛び越えた瞬間、彼は武器を再度Gランチャーに変更し、ローリングしながらイノブスキーの急所に目掛けて撃ち込む。バレットの時とは違い、ビームの光弾は急所を抉り取った。
アクセルが着地する同時にイノブスキーはスリップしてそのまま転倒する。
「ハア・・・・ハア・・・・ハア・・・・」
アクセルは、息を荒くしながら倒れたイノブスキーの方へと歩いてみる。
「クソガキが・・・・・・やってくれるじゃねえか・・・・・・」
「イノブスキー・・・・・」
イノブスキーは、急所を撃たれたことで致命傷を負っていたが尚も立ち上がり、アクセルの方を見る。先ほどのように睨みつけてはいるものの何か吹っ切れたのか満足そうだった。
「さっき・・・・てめえを弱いと言ったが・・・・・どうやら逆転しちまったようだな・・・・今度は俺が雑魚か・・・・」
「そうじゃないよ、アンタは本当に強かった。パワーアップする以前からね。正気のアンタだったら、正直言って踏み台にした段階で振り落とされていたよ。」
「余計なことを言うもんじゃねえ・・・・・だが、調子に乗んなよ・・・・・・レッドは俺なんかよりも遥かに強いんだからよ・・・・・・なんセ・・・・アイツは・・・・元・・・・」
機能停止しかけているのか声が途切れ始める。
「だから・・・・・俺みたいに・・・・ように・・・・せい・・・・くなるん・・・・・だ・・・」
最後になにを言おうとしたのかアクセルに指を差したところでイノブスキーは完全に沈黙する。同時にゼロたちもイレギュラーたちを蹴散らした。
「アクセル!大丈夫か?」
「うん、僕はもう大丈夫だよ。」
アクセルは、駆けつけたゼロたちに返事をすると機能停止したイノブスキーの方を見る。
「・・・『総長』。アンタの忠告、確かに聞いたよ。今よりも強くならないとレッドを止められないというのも。だから・・・・僕、もっと強くなってみせるよ。他のバウンティーハンターを止めて、必ずね。」
佇んでいるイノブスキーにそれだけ言うとアクセルは負傷した体を引きずるようにゼロたちと共にその場を後にして行った。
「・・・・・しっかし、どうしような~。さっきの戦闘でGランチャー壊れちゃった。パレットに怒られるだろうな~~。」
『あの~~~~~アクセル?悪いけど全部聞こえているから。』
その後、帰還したアクセルはGランチャーを壊したことでパレットに怒られたのはまた別のお話。
最近推薦が書かれていたので嬉しかったのですが参考にならなかったの方が多くて逆にショックを受けました(´;ω;`)。
次回のボスは誰にするか・・・・そろそろドラえもんの参戦も考えよう。