後日 ハンターベース
「もう、アクセルったら!せっかく作ってあげたのに次の戦闘で壊すなんてどういう神経しているのよ!!」
ライトットのラボの中でパレットは、ふくれっ面になりながらイノブスキーとの戦闘で壊れたGランチャーの修繕を行う。その傍では申し訳なさそうな顔をするアクセルがいる。
「だから、昨日から謝っているじゃないか。」
「謝ればいいって言う問題じゃないでしょ?・・・まあ、初の実戦だから多少は大目に見るけど。」
眼鏡を掛けながら彼女は工具を素早く動かす。
「・・・・そう言えば、気になっていたけどイレギュラーハンターって部隊制なんだよね?」
「そうよ、エックスさんは第17部隊、ゼロさんとアイリスさんは第0部隊、他にも第7部隊とかもあるけど過去の大戦とかで戦死した人やイレギュラーになった人が多くて維持できなくなった部隊は統合されているの。」
「動いているのは僕とゼロたちだけのようだけど普段はなにをやっているの?」
「そうね・・・・元々はイレギュラー討伐や各施設の護衛とかがメインだったけどシグマウィルスの影響で地上が滅茶苦茶になった後はその復興作業をすることが中心になったわ。私が訓練生でここに臨時配属された時もそのぐらいの時期だし。」
「ふうん・・・・・・」
「アクセルも他人事じゃないからね。今回の騒動が終わったらハンター試験が終わった後になるだろうけど多分そう言う作業もすることになるわよ。」
「えっ!?そうなの?」
「当り前じゃない。イレギュラーを倒すことだけがイレギュラーハンターの仕事じゃないんだから。やることがいっぱいあるんだからね!」
パレットにそう言われるとアクセルはグッタリとしてしまう。
自分が想像していた以上にイレギュラーハンターの仕事は甘くない。
レッドアラートにいた時はイレギュラーを討伐することだけがメインでそれ以外は暇を持て余して軽い訓練をしていたくらいだった。それと比べてしまえば面倒に感じるのも無理はない。
「もっとカッコいい仕事だと思ってたんだけどな・・・・・・・」
ハンターベース 来客用の個室
「・・・・・」
一方、同じ頃エックスは与えられた部屋のベットで寝ころんでいた。
「エックス、入るわよ。」
そこへロールが何かを持って部屋に入ってくる。彼女が部屋に入ってくるのに気づくとエックスは体を起こす。
「ロール姉さん。」
「気分はどう?少しは落ち着いた?」
ロールはそう言うと彼の前のテーブルに持ってきたものを並べる。一方は自分も何度も見たことがあるエネルゲン水晶から取り出された凝縮エネルギーが詰まっているエネルギーボトル。そして、もう一方は何故かサンドイッチなどの軽食が置かれていた。
「これは?」
「あぁ、やっぱり向こうじゃボトルでしかエネルギー摂取しない?」
「いや、レプリロイドの中でも一部は食物からエネルギーを摂取できるものはいるけど・・・・まさかだと思うけどこっちの世界の俺はボトルでエネルギーを補充しないのか?」
エックスは、戸惑った様子で聞くとロールは即答する。
「うん・・・・ボトルよりも食べている方が多いわね。貴方の世界にはないと思うけどこっちのハンターベースには普通に食堂があるし。」
「食堂って、他のレプリロイドも人間みたいに食事をとっているのか!?ゼロやエイリアたちも!?」
「そうよ。」
ロールの答えに対してエックスは頭を抱える。
自分もそうだがレプリロイドの一部は人間と同様に食物を摂取してエネルギーに変換する機能が備えられている。しかし、エネルゲン水晶を含める高エネルギー物質に比べるとエネルギー変換量が劣っており、更に世界が荒廃したことで地下都市で暮らしている人間の食糧が不足しかねない事態が続いているためほとんどのものは高エネルギー物質から作ったエネルギーボトルで補給を済ませている。
なのにどうしてこの世界の自分どころか他のレプリロイドたちも食事でエネルギー摂取しているのか?
それが理解できない。
「ここまでくると・・・・この世界の俺って結構俺と違う?」
「そうね・・・・・・基本的なところは同じだけど、こっちのエックスは一言で言えば『人間臭い』って言ったところかしら。」
「人間臭い?」
「うん。昼寝はするわ、食に楽しみとして持つわ、表情豊かで喜怒哀楽が激しいわで他にもいろいろね。結婚もしてるわよ。」
「結婚!?レプリロイドなのに!?」
自分の中でイメージしているこの世界の自分がだんだん得体の知れない物へと変わって困惑していく。
「わからない・・・・この世界の俺は一体何者なんだ?同じ存在のはずなのにここまで大きく違うなんて。」
「それを言われちゃうと私でも返答しようがないわ。でも、貴方が考えているほどそこまですごい存在じゃないと思うわよ。」
「そうかな・・・・」
エックスは部屋のカーテンを開けて窓から外の光景を見る。
そこは破壊された都市の一部が見えながらもそれ以外は綺麗な街並みが見えていた。
「俺のいた世界ではここから見える街は、完全な廃墟だった。ユーラシアコロニーは、ゼロが乗ったシャトルの特攻で何とか地球滅亡を阻止することには成功したけど多くの破片が大気圏で燃え切らずに地上に落下。イレギュラー化したレプリロイドもそうだけど逃げ遅れた人間たちの多くが犠牲になった。その経験のせいで人類は今だに地下都市で生活を送っている。」
その目には、虚しさと悲しさが合わさっている。
「でも、この世界の俺は、完全にとはいかなくても地上で人間が暮らせるまでに復興できるぐらいの被害で抑えることができている。死んだはずの仲間も助けている。彼ができたように俺もその選択肢を探し出せた可能性はあったんだ。嫉妬しているように感じるけど。」
「う~ん、私は目を覚ましてそんなに長くないからそんなに強くは言えないけど。貴方だってその時の最善の選択を取ったんだからそこまで気に病まなくてもいいと思うわよ。あんまり、悩み過ぎるとノイローゼになるし。」
ロールにそう言われるとエックスは、少し納得していなそうな顔をしながらエネルギーボトルにストローを挿して飲み始める。
「俺だって、何回もそう思おうとしてたよ。・・・でも、何度も戦い続けて失うものが増えて行けば悩むようになるよ。」
「・・・・そうだ!この際だからこの後、この世界の貴方の部屋に行ってみない?」
ロールの言葉を聞いてエックスは顔を上げる。
「この世界の俺の部屋に?」
「えぇ、シグナスさんに許可をもらって見せてもらえばいいんじゃないかしら?本人に聞けなくても部屋を調べれば何かしらのヒントは出てくるかもしれないし・・・・あっ、でも一応人の部屋なんだから壊したりはしないようにね。」
エックスは、このロールの言葉を聞いて迷う。
この世界の自分が目を覚ましていない以上何も聞きようがない。でも、部屋を調べれば何かきっかけが見つかるかもしれない。勿論、プライバシーの侵害と言う言葉は知っている。一応ロールがシグナスに許可を取るというのだから問題ではない・・・・はず。
「・・・いいのかな?そんなことして。」
「別に調べるだけだもの。変にいじらなければ怒られないと思うわ。」
「うん・・・・」
「じゃあ、私はシグナスさんに許可もらってくるから。それまでにそれ飲んじゃってね。」
ロールは、それだけ言うと部屋から出て行ってしまった。
「なんて言うか・・・・破天荒だな。とても、俺の姉さんとは考えられない。俺の世界での場合なら・・・・」
エックスはそう言いながらも彼女の言う通り、エネルギーボトルをまた飲むのであった。
しかし、彼は知らない。
100年前、彼の姉も似たような発言をしていたことを・・・。
メディカルルーム
その頃、メディカルルームではゲイトが検出されたデータとにらめっこをしていた。
「ふむ・・・・」
「どうなんだ?」
ゼロは回収してきたイノブスキーのDNAデータを引き渡した後うんともすんとも言わない彼に対してしびれを切らして聞く。
「・・・・結論から言おう。この君が今回回収したデータサンプル、そして、この間のガンガルンのコアを調べた時のデータ。この二体のサンプルには、ある共通点があるんだ。なんだと思う?」
ゲイトの質問に対してゼロは、少し考えてから答える。
「何かシグマウィルスやナイトメアウィルスのようなものが見つかったとかか?」
「いや、残念だけど不正解だ。正解はこのDNAデータの中には彼ら個人のもの以外に複数のレプリロイドのDNAデータが検出されているんだ。それもとんでもない数をね。」
「他のレプリロイドのDNAデータだと?」
意外な言葉にゼロは驚く。
「レッドアラートがイレギュラー以外に一般のレプリロイドも襲っているという話があるそうだがおそらく理由はこれだね。」
「奴らはDNAデータを目当てに襲っていたというのか?」
ゼロの質問に対してゲイトは素直にうなずく。
「あぁ、DNAデータでレプリロイドがパワーアップするという理論自体は、プレイヤーは処分される以前に報告を聞いていたんだ。だが、僕はそれを否定したね。確かにパワーアップは可能だがDNAデータは人間の違法なドーピング、薬物投与みたいなもので副作用が大きいんだ。」
「どういったものなんだ?」
「人間の言う麻薬と同じようなものさ。精神が不安定になり、他のことを考えられなくなる。特に病状が進行すると自我が崩壊してしまう危険性もある。特にこの二つのサンプルもギリギリの段階だったね。一歩遅れれば確実に自我崩壊を起こして本格的に危険なイレギュラーになっていたかもしれない。」
「そうか・・・・」
「幸い人間と違ってレプリロイドは、データを司るコアから余分なデータを消去すればある程度は改善できるからね。先に回収されたガンガルンはしばらく経てば落ち着くだろう。ただ、気になることもある。」
「気になること?」
「この技術は非常に高度な上に作業がデリケートなものなんだ。レプリロイド工学員やDr.ケインのような研究者ならともかく、傭兵の集まりであるレッドアラートにこの技術を使える輩がいるとは思えないね。」
ゲイトが言うのはレプリロイドから取り出したDNAデータを他のレプリロイドに移植するという方法のことだ。これは非常に簡単そうに見えるがレプリロイドのDNAデータを司るコアには一定の容量が決められている。もし、パワーアップのために多量のDNAデータを取り込むのならこの容量を増やすために改造をする必要がある。改造は手足や武装の追加のような簡単なものではないため、実行に移すにはそれなりの技術を持った者が行う必要がある。
「確かにな・・・・連中にそんな奴がいるとは思えない。」
「この辺に関してはアクセルに聞くしかないかもしれないね。後、ガンガルンはまだいいとして他のレッドアラートのメンバーも極めて危険な状態に陥っている可能性がある。こんな時にエックスが動いてくれれば・・・・」
ゲイトは、集中治療室で眠っているエックスを見る。いつも傍に付き添っているマーティは、復興作業のために出かけてしまっているため、今は彼ら二人しか見ていない。
「ゲイト、それは言わない約束だぞ。」
「悪かったね、とにかく他のメンバーと交戦した際もできるだけ強く刺激させないように努めてくれ。もし限界以上にDNAデータを取り込んでいたら最悪な場合その場で暴走して手のつけようがなくなりかねない。」
「わかった。その辺はアイリスとも打ち合わせておく。後、アクセルの方にもできるだけ話をしてもらう。」
「そうしてもらうと助かるよ。僕もこの件についてドップラー博士と対策を話し合っておくよ。」
「あぁ、今は動ける俺たちで何とかしなくちゃいけないからな。」
ゼロは、眠っているエックスの方を一度見てそのまま部屋を後にして行った。
復興作業エリア 旧ハンターベース近く
「よし!17部隊、気合いて行けよ!」
「「「はい!!」」」
市街の復興作業エリアではビートブードの掛け声で17部隊の隊員たちが作業用ライドアーマーやメカニロイドを用いりながら今日も復興作業に励んでいた。
「なぁ~~~ビートブード~~~」
「なんだ、マンドリラー?今日の作業ノルマ、まだ達成していないぞ。休むにはまだ時間・・・・・・」
「あれ~。」
後ろから肩を叩いてきたマンドリラーに注意をしようとする彼だったが指を差された方を見て目を細めた。
「・・・・・」
そこではマーティがしゃがみながら空をボーっと眺めていた。その傍ではラッシュが心配そうに尻尾を振りながらお座りをしている。
「あぁ・・・副隊長か。エックス隊長が倒れてからずっとあんな感じだな。今日だって無理に現場に来なくてよかったのに。」
「あのこと言ったら~?そのさ~別の世界のエッ・・・」
マンドリラーが言いかけた時ビートブードは慌てて彼の口を塞ぐ。
『バカ!言えるわけないだろ!!いくら姿形がそっくりでも別人だぞ!!そんな人に会わせたら副隊長発狂しちまうよ!!』
『そうかな~?案外仲良くできるんじゃない?』
『ならねえよ!』
マンドリラーが言うのは、つい先日ハンターベースに連れてこられた『別世界のエックス』のことだ。シグナスを通じてほとんどのメンバーには情報が行き届いていたがマーティにだけは未だに教えられていなかった。この事に関して隊員たちも流石にまずいのではと言う言葉もあったが夫と同じ姿をしている別人を見て彼女が精神崩壊でもしてしまうのではないかという心配もあって今のところ黙っている。
(幸い副隊長はまだ気づいていないからいいけど・・・・・そのうち言わないとまずいんだよな。でも、言ったところで副隊長のことだから受け入れるどころか偽物呼ばわりして襲っちゃうかも・・・どうしよう。)
ビートブードは、内心不安になりながら彼女の方を見る。そこには自分の知っている上司としての姿はなく、最愛のものを失って途方に暮れている一人の女性レプリロイドとしての姿にしか見えなかった。
「・・・怠い。」
マーティはそう言うとラッシュを撫でながら立ち上がり、ビートブードたちの方へと歩いて行く。ビートブードたちは平静を装う。
「ビートブード。」
「は、はい!なんでしょう!」
彼女の顔色を窺いながら怪しまれていないかとビートブードはひやひやする。
「悪いけど、先に上がってもいい?あまり気分がよくないのよ。」
「そ、そうですか!わかりました!ここは俺が指揮しておきますので副隊長はどうぞ休んでください!!」
「ごめんなさいね、迷惑かけて。」
「いえ、大丈夫です!」
ビートブードの返事を聞くとマーティはグッタリしながらラッシュをラッシュジェットに変形させてその上に乗る。ラッシュは主人を振り落とさないようにハンターベースに向かって飛び去って行った。
「・・・・ハア~~~ビビった~。バレるんじゃないかとびくびくしていたわ~。」
ビートブードはホッと息をしながら尻餅をつく。
「これじゃあ体がもたないな・・・・後で栽培施設でスイカ貰ってこようかな?」
「いいね~今日はみんなでスイカで打ち上げようか~?」
それとは反対にマンドリラーは能天気に答えるのであった。
格納庫 外
「ありがとう、パレット。」
「今度はすぐに壊さないでよ。」
アクセルとパレットは、Gランチャーの修理を終えた後に格納庫の外に出て散歩をしていた。
「ん?パレット、あれは?」
アクセルはハンターベースのエアーポートに見たことがない船が泊まっているを見て指を差す。
「あれ?あれはタイムパトロールの巡査艇よ。」
「タイムパトロール?」
「あっ、そう言えばアクセルにはまだ言っていなかったっけ?タイムパトロールは、イレギュラーハンターと協力関係にあるこことは別世界の組織で定期的に来るのよ。」
ハンターベース 司令室
「お久しぶりです、シグナス総監。」
パレットとアクセルが話している頃、司令室ではシグナスとリングマンが挨拶を交わしていた。
「こちらこそ、せっかくの来訪だというのに申し訳ない。」
「話には聞いている。例の自警団組織『レッドアラート』との交戦とは、大変なことでしょう。エックスの容態は?」
「ゲイトとドップラー博士とで24時間体制で診ていますが今だに意識が戻る様子は・・・」
シグナスの反応を見てリングマンは少し顔を顰める。
「そうですか・・・・実は、今回の視察も含めてご提案したいことがあるのですが。」
「提案?何を?」
部屋のソファーに腰を掛けながら二人は話を始める。
「そちらのエックスのことについてです。こちらの世界で意識が戻らないことを考えてなのですが・・・・今後しばらく私たちの世界で治療を受けてはいかがでしょうか?」
リングマンの言葉を聞いてシグナスは、少しばかり驚いた顔をする。
「えぇ、幸い私のいる22世紀には植物状態の人間を治療する技術などを含めてこちらよりも治療方法は豊富に揃っています。飽くまでも可能性ですがこちらで治療を受けていればエックスの意識が戻るかもしれません。確実だとは言い切れませんが。」
「・・・・確かに私たちの方でこのまま様子を見ていても彼が意識を取り戻すのはわかりません。ですが・・・・」
「勿論、エックスが不在の間はタイムパトロール側から私の兄弟であるスカルマンを派遣する予定です。後、私も微力たるものでしかないかと思いますが協力は惜しみません。」
「・・・・」
「これを言っては何かと思いますがマーティさんには気の毒に感じてしまいましてね。私も妻子を持つ身ですから彼女の気持ちはわかります。一日でも早く目が覚めてくれないかと・・・・・」
話しているリングマンに対してシグナスは、黙って聞いていたがしばらくしてひと段落着くと口を開く。
「リングマン、貴方のお気持ちは大変ありがたいのですが・・・・マーティ自身が納得するかどうか・・・」
「それでしたら彼女も同行させてはいかがでしょうか?」
「よろしいのですか?」
「やはり、大切な人の傍には居たいでしょうからね。住居も私の家の一部屋をお貸ししますので。」
「・・・・・」
シグナスは、少し考える。
こちらの世界の技術ではエックスの治療はあそこまでが限界だ。意識が戻らない以上戦線への復帰も絶望的である。マーティもエックスが倒れたのを機に前戦を離れてしまっている。このまま意識が回復しないのなら少しでも可能性がある22世紀側で治療を受けた方がいい。体の構造がブラックボッスであったゼロを治療した世界でもあるのだ。期待はできる。特にマーティに関しては、『別世界のエックス』の存在を明かしていないため、エックスと共に22世紀側に連れて行けば会わせて混乱させてしまうリスクを減らすことができる。その間復興現場の指揮はビートブードがすることになってしまうが。
「・・・わかりました。彼女本人に伝えた上で返答させてもらいます。」
「そうですか。」
「では、ハンターベース内の視察を・・・・・」
第17精鋭部隊隊長室
「ここがこの世界の俺の部屋なのか。」
エックスは、ロールに連れられてこの世界の自分の部屋へと来ていた。隊長室と言うこともあって部屋は広く、隊長席のすぐ近くには副隊長の席が設置されている。
「・・・・・・」
「貴方もこういう部屋持っているんじゃないの?」
意外そうに部屋を眺めているエックスに対してロールは聞く。
「俺の方のハンターベースでは、もう組織そのものが縮小したこともあって隊員と隊長とか部隊で分けられることがなくなってみんな同じ個室なんだ。だから、俺がこんな感じの部屋にいたのは旧ハンターベース時代ぐらいかな。」
「副隊長とかはいなかったの?」
「いや、いなかったな。候補として考えられていたメンバーも任命される前に戦死したり、イレギュラーとして処分してしまったりしていたから・・・・」
「そ、そう・・・・」
エックスは、早速自分の机を開けてみる。
「復興作業の記録レポートと後はイレギュラー事件に関する報告書、基本的に仕事は俺と同じようにまじめにこなしているんだな・・・」
一つ一つ中身を調べている最中、誰かの足音が近づいてくる。
「誰か来たわ、一応隠れて。」
ロールに言われてエックスは、机の下に隠れる。しばらくすると部屋にマーティが入ってきた。
「あっ、お義姉さん・・・」
ロールは隠れているエックスの存在を気づかれないようマーティの方に行く。
「ちょうど、お掃除しようと思ってきたところなのよ。使っていないということもあるけどやっぱり放置しておくと埃被るもんだから。」
「そ、そうなの。」
「ところでマーティはどうしたの?今日、復興作業のはずだったけど?」
ロールに聞かれてマーティは、あまり元気がない声で返事をする。
「気分がよくないって言ってビートブードたちに頼んで先に上がらせてもらったのよ。っで、帰ってきたところでシグナスに呼び出されて話を聞いてこっちに来たの。」
「シグナスさんに?なんて言われたの?」
エックスは机の角から二人の様子を窺う。そんなエックスの存在も気づかず彼女は、シグナスに言われたことをそのまま話した。
「エックスと一緒にしばらく22世紀側の方に移ったらどうかって。」
「22世紀の方に?」
「うん。エックス・・・・・あの事故以来ずっと目が覚めないでしょ?だから、今日来たリングマンの提案で二人で向こうに行って治療を受けてみたらッて言ってくれたそうなのよ。」
「・・・・・」
「あっちはこっち以上に治療法も多いし、可能性があるならアタシはそっちに賭けてみたい。」
「・・・・それで行くことを決めたのね。」
ロールは、マーティの顔を見ながら言う。彼女は頷くがその顔には罪悪感が感じられた。
「・・・・・アタシの判断にガッカリした?エックスが目を覚ますことを信じ切られずに不安になっているアタシの事を・・・・」
「そんなことはないわよ。私だって、似たような経験は一杯している。ロックが戦いに行くたびにね。戦えない私にとってできることはロックのことを信じてあげることしかできなかったから。でも、私は実際ロックの傍でその戦いを間近に見ていたわけじゃない。マーティはその戦いすら間近で見ているんだもの、不安な気持ちは私以上に強くなるのは当り前よ。」
ロールにそう言われるとマーティは今まで堪えていたのか思わず泣き出してしまう。そんな彼女をロールは、優しく頭を撫でる。
「このままエックスが目を覚まさなかったらどうしよう・・・・・・今までは、どんなに傷ついても・・・すぐに目を覚ましてくれたのに・・・・・あの時アタシがちゃんと確認していれば・・・・・・」
「貴方が悪いんじゃないわ。だから、そう自分を責めないで・・・・」
「ウゥ・・・・エックス・・・・エックス・・・・」
「・・・・・」
彼女が泣いているところをエックスは陰でこっそりと聞いていた。
ここまで泣いている姿を見たのはいつぶりだろうか。
ナイトメア事件でゲイトの死亡が確認された際に影で誰にも見られないように泣いていたエイリアを見た時以来だろうか。
あの時も助けられなかった自分の無力さゆえに胸が張り裂けそうになった。
(・・・・やはり、戦いは悲しみと憎しみを生み出すことしかできない。どの世界でも。でも、どうすればいいというんだ?戦おうが戦わなかろうが結果は同じだと言うのか?)
ロールに連れられて去って行くのを確認するとエックスは、机の下から出てくる。
「・・・俺は・・・・一体どうすればいいんだ。戦っても悲劇を生み、終わってもまた次の戦いが始まる・・・・戦う以外の選択肢は何処にもないのか?俺たちが存在する限り永遠に?」
椅子に座り、彼は再び机の中を調べ始めた。
「ん?」
そこには、シグナスから見せてもらったメカニロイドそっくりの赤い小さなロボットがスースーと寝ていた。
「ドラァ・・・・・」
「なんだこれ?」
寝ているミニドラを見てエックスは困惑する。
ハンターベース エアーポート
夕方になり、ハンターベースの外では、シグナスたちが視察に来ていたリングマン達を見送りしていた。その中には昏睡状態のエックスがマーティに看取られながら一緒に巡査艇の中へと入って行く。
「隊長・・・本当に帰って来てくれるかな?」
乗せられていく二人を見送りながらビートビードは心配そうな顔で言う。
「心配ないさ、アイツのことだ。きっと俺たちの下へ帰って来る。絶対に。」
隣にいるゼロは腕を組みながら確信してるかのように答えた。二人は運ばれるのを確認するとリングマンはシグナスの方へと向き直り、最後の挨拶を交わす。
「スカルマンの派遣は近いうちに行う。エックスの容態に関しては定期的の報告するから、心配しないでください。」
「彼らのことを頼みます。」
お互い敬礼するとリングマンも乗り込み、巡査艇はバーニアを吹かせながら離陸を始める。
「エックス、何処へ行っちゃうの?」
「遠い所、少なくとも私たちが行けない場所へ。」
飛び去って行く巡査艇を見るアクセルの質問に答えながらパレットは二人が無事に帰って来ることを祈る。
巡査艇は、タイムゲートを開くとその中へと入り、姿を消した。
その後、ロールは部屋にエックスを置いてきたことを思い出し、急いで隊長室へと戻ってきた。
「ごめんなさい、エックス!マーティのことを見送っていたからつい・・・・」
「ドラララ!ドラ~ラ!!」
「えっ?」
部屋に入ってロールが最初に見たのは、ミニドラの相手をして困っているエックスの姿だった。
「ロール姉さん、ちょうどいい所に・・・・・何とかしてくれないかな?」
「あっ・・・・う、うん。ちょっと待ってね。」
悪戯をしているミニドラをエックスから引き離すため、ロールはどら焼きを取りに厨房へと走って行った。
正直言ってのび太エックスを22世紀に送るかどうか悩みました。
本作はサブタイトルがあんな感じたけど原作エックスがどのようにして再び立ち向かっていくかを描ければいいかなと考えています。