ハンターベース エアポート
エックスがミニドラの後を追って警戒エリアに入る少し前、ハンターベースに再びタイムパトロールの巡査艇がエアポートに停泊していた。
「・・・・・まさか、またこっちの世界の地を踏むことになるとはな。」
巡査艇から出てきたスカルマンは、空を見上げながら言う。自分がこの世界で活動していたのはワイリーの第四次世界征服計画、そして、彼の気まぐれで再起動したとき以来だ。彼はリングマンと共にハンターベースへと入り、指令室へと赴く。ちょうど指令室では、次の現場に向かおうとするゼロたちの姿もあった。
「スカルマン!」
「よぉ、ゼロ。久しぶりだな、アチモフのじいさんとやり合ったとき以来だな。アイリスのお嬢さんも元気そうだな。」
スカルマンは、揚々と声をかけてくる。
「ゼロ、この人は?」
「スカルマンだ。前の戦いで共闘した関係でな。ハンターではないが実力は特A級ハンターに匹敵する奴だ。スカルマン、紹介する。こいつはアクセル・・・」
「おう、リングマンから聞いたぜ。今問題のレッドアラートから逃げてきたハンター志望のヒヨッコだってな。」
「ひ、ヒヨッコ!?」
スカルマンの発言にアクセルは思わず目を見開く。
「なんだ?なんか間違ったこと言ったか?」
「ヒヨッコってなにさ、ヒヨッコって!?僕はこれでもイレギュラーを何度も倒したことがあるんだよ!それをいきなり来た奴にどうしてヒヨッコってよばれなくちゃならないのさ!?」
アクセルがこう言ってしまうのも流石に仕方ない。現にレッドアラートにいたころはレッドの命令で動いていたとはいえ、何人ものイレギュラーをこの手で倒してきたのだ。それにこちらに来てからもゼロたちの協力があったとはいえ、バウンティハンターを倒している。それを突然来たスカルマンに『ヒヨッコ』と呼ばれてしまえば起こってしまうのも当然である。
「おい、スカルマン。いくら何でも言いすぎじゃないのか?」
一緒に戦っていたこともあってゼロは今の言葉を取り消すように彼に言う。
「見たまんまの感想を言ったまでだ。コイツは確かに実力はありそうだが調子に乗っているところが多くみえる。こういう奴はちゃんと教育しないと早死にするかもしれないぜ?」
スカルマンは、アクセルを見ながら言う。
「そんなに言わなくたっていいじゃないか!」
「アクセル、落ち着いて!」
頭にきたアクセルは彼に飛び掛かろうとするが寸でのところでパレットに止められる。
「離してよ!」
「スカルマン、我々の協力に来てくれたのはいいが来て早々協力者である彼を挑発するようなことはやめてはもらえないか?」
シグナスは、彼に注意をする。
「・・・悪いなシグナス総監。俺も遊びすぎたようだぜ。」
スカルマンは、パレットに取り押さえられているアクセルを見ながら下がった。アクセルは納得がいかないもののある程度落ち着きを取り戻してゼロたちの方へと戻る。
「・・・・話が少し逸れてしまったが本題に戻そう。これより、我々イレギュラーハンターは、リングマンたちタイムパトロールの協力のもと、レッドアラートのバウンティハンター討伐を開始する。主要メンバーの8人のうち既に3人は倒したとはいえ、レッドアラートの本拠地が分からない以上何が起こるかはわからない。」
「ん?おい、ちょっと待てよ。基地はそこのヒヨッコが逃げてきた場所じゃないのか?」
シグナスの言葉にスカルマンは、疑問をぶつける。
「彼が逃げ出す少し前に拠点の移動計画が立てられていたんだ。どうやら極秘裏に用意していた空中要塞らしく、移動している可能性もあって居場所がまだ特定できていないんだ。」
シグナスに代わってリングマンが答える。
実は、アクセルが脱走するのを決断させたのはレッドアラートのアジトの移動計画が秘かに進められていたことにある。他のメンバーは何も教えてくれなかったが彼は薄々と近いうちに拠点を変えることに関しては気づいていた。そして、決定打となったのがレッドが席を外しているのを見てこっそりと見た要塞のデータ。詳しい情報は見ることはできなかったが空中に浮かぶ要塞であるのはすぐにわかり、拠点を移動しないうちに脱走することを決めた。
後に旧アジトへホーネックが部下を引き入りながら調査に向かったが既にもの抜けの殻になっていた。
その話を聞いてスカルマンは、腕を組みながら納得する。
「なるほどな。んで、残りのメンバーをとっちめてアジトの場所を吐かせようってわけか。」
「ゲイトの計算ではおそらくほとんどのメンバーがDNAデータの過剰摂取で暴走寸前の危険性がある。できれば彼らを保護することを優先したいがやむを得ない場合は・・・・・」
シグナスが重要なことを言おうとした直後、指令室のドアが開いてロールが慌ただしく入ってきた。
「ロール?どうした、そんなに慌てて。」
息を荒くしているロールに対してシグナスは言う。
「し、シグナス総監!え、エックスが警戒エリアに入ってしまいました!」
「何?」
「ミニドラを連れて外に出ていたんですけど追いかけているうちに警戒エリアに行ってしまって・・・・エックスが連れ戻そうと・・・・・」
ロールが顔を真っ青にしながら言う。その話を聞き、シグナスは直ぐに対策を行おうと動く。
「エイリア、エックスの反応を確認してくれ。」
「えぇ。」
エイリアは直ぐにエックスとミニドラの反応を割り出す。
「このルートだとラジオタワーか。」
「だったら、僕が連れ戻しに行ってくるよ!」
アクセルは、早速とばかりに名乗り出る。今のエックスはバスターの展開すら危うい。丸腰のままではイレギュラーに襲われた場合対応のしようがない。
それにこれがうまくいけば自分のことをヒヨッコ扱いしているスカルマンに対して実力を見せつけることができる。そう思い、彼はエックスの救助に行こうと考えた。
ところがその思惑はリングマンの一言によって外れてしまう。
「いや、ここは私が行こう。実力はこの中では低いとはいえ、彼ら二人を連れ戻すことぐらいはできる。」
「えっ?」
「確かにアクセルを単独で行かせた場合戦力が分散するな・・・・頼めるか?リングマン。」
「あぁ。これでもタイムパトロールの刑事だ。責任を持って全うさせてもらう。」
そう言うとリングマンは急いでその場を離れる。アクセルはせっかくのチャンスが潰えたとがっかりするがそこへさらに追い打ちをかけられる。
「エックスのことは彼に任せて我々は本来の仕事に戻ろう。ゼロとアイリスはサイバースペースへダイブしてくれ。」
「わかった。レイヤー、すぐにダイブする準備を。」
「了解しました。」
「そして、アクセルとスカルマンにはバトルシップへ向かってもらう。」
「えっ?」
シグナスの言葉を聞いてアクセルはギョッとしながらスカルマンを見る。
「ということだ。よろしく頼むぜ、ヒヨッコ君。」
「そんな~~~!!」
ラジオタワー
「ミニドラ!どこへ行ったんだ!?」
警戒エリアに乗り込んだエックスは、ミニドラを探しながらラジオタワーの中を進んでいた。道中で近くで残骸となっていたイレギュラーからほぼ無傷のショットガンとシールドを手に入れることができたため、バスターが使えない状態でも戦うことはできる。
ショットガンは、ロングライフル形式で改造されたもので実弾ならば関係なく装填して撃つことができる万能タイプ。シールドも100年前のスナイパージョーを思わせるような特殊合金でできたものでレーザーでも数発連続で受けても防ぐことができる。
撃つことに躊躇いを感じながらもエックスは、メカニロイドを破壊しながらラジオタワーを昇り続ける。
「早く連れ戻さないと・・・・」
ラジオタワーの螺旋通路を昇っていると巨大なヤドカリ型メカニロイドが姿を現し、エックスを標的に定めてミサイルを撃ち始める。
「クッ!」
エックスはシールドで攻撃を防ぐが一弾ならまだしも複数のミサイルを受け止めると流石に腕に痺れを覚える。すぐにショットガンを発砲するがメカニロイドは急所である目を強固な装甲でできている殻の中に隠して凌ぐ。
「通常弾じゃ効かない!?」
エックスは咄嗟にバスターを展開しようと腕を前に突き出す。
「・・・・・やっぱりだめなのか。」
腕はバスターに変形せず、震えるだけだった。相手はメカニロイドだ。今までの自分なら撃つことができたはずなのに。中間地点にたどり着くとメカニロイドは殻に付いている翅を展開して回転攻撃を仕掛ける。
「うわっ!?」
エックスはしゃがみながら攻撃を何とか避けるが実弾が通じない上にバスターが使えない現状では打撃を与えることは不可能である。
「何か・・・・何か手は・・・」
エックスは、ここに来るまでに回収してきた弾丸を確認しながら対策を考える。いくら装甲が固いとはいえ、実弾の火力が侮れないことは過去のVAVAとの戦いで知っている。そして、回収した弾の中に貫通タイプのものがあることに気が付く。
「これだ!」
彼は急いでショットガンに装填し、メカニロイドが顔を出すタイミングを見図る。すると攻撃を中断して、メカニロイドが顔を出した。
「今だ!!」
エックスは引き金を引く。貫通弾は銃口から勢いよく飛び出し、メカニロイドの目を貫通する。急所を貫かれたメカニロイドは内部で誘爆を起こし始め、燃えながら下へと落下していった。
「はぁあ・・・・・」
エックスは恐る恐る下を見下ろす。下ではバラバラになったメカニロイドの残骸が痛々しく転がっている。
「・・・・・」
複雑な感情を押し殺し、エックスは更に上へと向かって行く。
頂上に着くとそこにはミニドラの姿があった。
「ミニドラ!?」
エックスは、駆け寄ろうとするがそのすぐ近くには玉葱のような体形のレプリロイドが苦しそうに立っていた。
「ドラ?ドララ?」
ついさっきまで遊び相手でもしてもらっていたのかミニドラを不思議そうに見る。エックスが来たことに気づいたのかレプリロイドは彼の方を見る。
「エックス・・・ダスな?」
「お前は一体・・・・・」
彼は、トルネード・デボニオン。
レッドアラートに所属しているバウンティハンターの一人であるが彼はそこまで積極的な方ではなく穏便派よりだ。
「た、頼みがあるダス・・・・オラ達を・・・・レッドを止めてほしいダス・・・・」
「レッドを!?どういうことなんだ!?」
デボニオンの急な頼みにエックスは、困惑する。
「センセイの・・・か、改造を受けて・・・・オラ達は・・・・」
「センセイ?改造っていったい・・・・」
「ウゥ!!」
デボニオンは頭を押さえながら苦しむ。
DNAデータの過剰摂取による暴走だということをエックスは知らない。
「お、お願いダス・・・・・オラにはもう時間がないダス・・・・・自分でなくなる前に・・・止めてほしいダス!!」
デボニオンは、回転しながらエックスに襲い掛かる。
「うっ、やるしかないのか!?」
エックスは、ショットガンを構えてできるだけ急所を外すようにして撃つ。弾丸はデボニオンに向けて飛んでいくが回転することで彼の周囲に発生する雷により防がれてしまう。
「弾がはじかれている!?」
「助けてくれダス!!このままだと本当におかしくなりそうダス!!」
デボニオンは、回転しながらエックスに体当たりをする。エックスは咄嗟にシールドでガードするが吹き飛ばされ、シールドを落としてしまう。
「しまった!シールドが!?」
これでは攻撃を防ぎようがない。一方のミニドラは今の攻撃が面白いと思ったのか頭を下にして回りながら真似をする。
「ドララララ!ドラララ!!」
エックスは、ショットガンの弾を変えてデボニオンへの攻撃を続ける。しかし、彼の体に纏わりついている皮型のアーマーにより、弾を無駄に消耗するだけだった。
やがて弾が切れ、エックスは攻撃手段を失う。
「弾切れか!」
「グルグルグルグルグル~!!!」
「グアッ!!」
暴走寸前で意識を失いかけているのかデボニオンの攻撃をまともに受けてエックスは倒れてしまう。
「う、うぅ・・・・」
震えた手を握りしめながら彼は再度バスターを展開するしぐさを行う。それでも変形しない。
「どうしてなんだ・・・・」
彼は震えている右腕を押さえながら嘆く。
「相手が苦しんでいるのに・・・・・暴走してしまう恐怖を感じているのに・・・・・なんで何もできないんだ・・・・」
「グルグルグルグルグルグル、ギャハハハ~!!!」
デボニオンは雷を起こしながら今度はミニドラの方へと向かって行く。
「ドラ?」
「み、ミニドラが!?」
エックスは、急いでミニドラの方へと駆けて行く。ミニドラは危険が迫っているとは気づかず、飛び跳ねながらデボニオンの方を見る。
「ドラララ!ドラララ!」
「グルグルグルグルグルグル~!!」
「ミニドラ―!!」
エックスは、ミニドラをキャッチしてデボニオンから離れる。しかし、同時に発生していた雷が命中し、体がショートしてしまう。
「グアァ・・・・」
エックスは、痺れた体で何とかミニドラを下ろし、その場で倒れてしまう。
「ドラァ・・・・ドラララ?」
「み、ミニドラ・・・に、逃げるんだ・・・・・」
既にデボニオンがまた二人に迫ってきている。エックスはせめてミニドラは逃げるようにと彼を押す。
「ドラ?」
「早く・・・・逃げるんだ・・・・」
ミニドラは不思議そうにエックスの手を取る。そして、やっとデボニオンが自分たちに向かってきていることに気づく。
「早く・・・・せめて・・・・君だけでも・・・・」
この世界の自分の仲間をここで失わせるわけにはいかない。そう思いながら彼は逃げるように言うがミニドラは彼の前に出てお腹についている四次元ポケットに手を突っ込んだ。
「ドラドラ・・・・・」
「何をしているんだ!早く・・・・」
「ドラ・・・ドラララ!」
ミニドラはポケットの中から彼の体の大きさからして少し大き過ぎるピストルを取り出す。
「ジージー!!」
「そんな武器で戦うのは無理だ!」
エックスは言っている間にミニドラはピストルを構えながらデボニオンに照準を定める。
「ドララ・・・ドラララ!ドラ・・・・」
「ミニドラ!」
「グルグルグルグルグルグルグルグルギャハァ~!!!」
デボニオンがもうすぐそこまで迫る。エックスはもうだめだと目を閉じようとするがその瞬間、ミニドラがピストルの引き金を引いた。
ドゴーン!!
「ダス~~~~!?」
「・・・・・えっ?」
目の前で起こったことにエックスは、あんぐりと口を開く。すぐそこにまで迫っていたデボニオンは爆炎と共に勢いよく上空に吹き飛ばされ、ミニドラはその反動で後ろにひっくり返っている。
原因は撃ったピストルの威力だ。
これは『ジャンボガン』のミニドラサイズのものでオリジナルは戦車を容易に吹き飛ばす破壊力を誇っており、レプリロイドに対して使えば確実に部品一つ残さずに消し飛ばすことができる。
幸いミニサイズだったこともあり、デボニオンは破壊されることなくそのまま飛ばされた後勢いよく落下。その衝撃で伸びてしまった。
「ダス・・・お星さまキラキラ・・・・」
「・・・・・・」
「ドラララ!!」
エックスは、笑いながら自分に抱き着いてくるミニドラを見ながらただ、気を失っているデボニオンを眺めていた。
「・・・・この子は一体なんなんだ・・・・」
「お~い!エックス、いるか!?」
そこへようやく彼の回収に来たリングマンが現場に到着した。リングマンは急いで倒れているエックスの方へと駆けより、応急治療を行おうとする。
「大丈夫か?」
「あ・・・・貴方は?」
目の前で起こったことが信じられないため、エックスは混乱しながらリングマンに聞く。
「私は、リングマン。君たちを助けに来た。」
「リングマン?」
「まあ、ロールの知り合いだと思ってくれればいい。」
リングマンは、後ろで伸びているデボニオンを見る。
「これは君がやったのか?」
「い、いや・・・・・その・・・・・」
エックスは困った顔をしながらミニドラの方を見る。近くにミニジャンボガンが落ちていることもあってリングマンも理由が何となく理解できた。
「なるほど。ミニドラが道具を出してやってくれたのか。」
「は、はい・・・・」
「ミニサイズだったのが幸いだな。通常サイズだったらこのバウンティハンターは、今頃部品の一つも残すことなく消えていたぞ。」
「えっ!?」
エックスは改めてミニドラを見る。ミニドラは特に気にする様子なくエックスとじゃれ合っている。
「・・・・もしかして、ミニドラって・・・・とても危ない存在なんじゃ・・・・」
「あぁ・・・・話はハンターベースに戻ってからしよう。今は、君と彼の治療が先だ。」
リングマンは、デボニオンに簡易転送装置を取り付けてハンターベースへ送るとエイリアに通信を入れてエックスたちを連れて帰還するのであった。
ミニドラの使い方を誤ると大変なことになるっていうのはドラミちゃんの映画で言っていたことを参考に実践してみました。
デボニオン、本当に運がよかったね。ネズミを見たドラえもんだったら本当に何も残らなかった(;^_^A