ハンターベース 屋上
「・・・・・」
ハンターベースに帰還したエックスは、治療を終えると一人屋上へとへとやってきて夕陽を眺めていた。
「こんなところにいたか。」
「!」
一人黄昏ていると後ろから声をかけられて振り向く。そこには缶コーヒーを持ったリングマンが来ていた。
「貴方は・・・・・リングマン。」
「まだ、万全ではないだろ。部屋で休んでいた方がいいんじゃないのか。」
「・・・・」
「まあ、戻りたくない気持ちはよくわかる。」
彼は、ベンチに座りながらコーヒーを飲み始める。
「君もどうだ?」
「は・・・・はい。」
エックスは、お言葉に甘えて隣に座る。リングマンは、彼の様子を見ながら何かを悟っているのかゆっくりと話し始めた。
「君は・・・・自分で戦うことを恐れているようだな。」
「・・・あぁ。」
「何故だ?」
「戦いは犠牲しか生まない。ただ何度も何度も同じ過ちを繰り返すだけ・・・・・何故レプリロイド同士が傷つけ合わなければいけないんだ?」
エックスは、肩を落としながら嘆くように言う。
「・・・・その答えは私にもわからないな。ただ、それは受け入れなければならないものかもしれない。」
「受け入れる?」
「レプリロイドは、人間に極めて近い存在だ。その元である人間もまた我々以上に醜い部分が存在する。嫌だと感じてもそれらを受け入れなければならない。」
「だが、戦ったところで何になるんだ?犠牲が出るだけで・・・・・」
「なら、エックス。君は、人間を憎んだことがあるか?」
「!?」
彼の言葉にエックスは、一体何を言っているのかわからなくなった。
レプリロイドは、人間のパートナーとしてケインが自分を解析して出たデータを基に生み出した存在だ。イレギュラーのように人間に害を加える輩は存在しているが正常な自分に対し、人間を憎んだことはあるかなど普通なら聞かない。
「なんでそんなことを聞くんだ?俺たちレプリロイドは人間のパートナーとして作られたんだぞ?なんで人間を憎むなんてことを・・・・」
「・・・・100年前。私には、昔6人の兄弟がいた。」
エックスの問いに対してリングマンは、自分の昔話を交えながら答える。
「我々兄弟も君の言うように人間社会の役に立つよう設計されて世に送り出された。がっ、ある男のために、博士の一人娘であるお嬢様を人質に取られ、私は兄弟たちと共にその男の世界征服の手先として動かざるを得なかった。」
「・・・それでどうしたんだ?」
「止められた。君のように戦った一人のロボットの活躍によってな。結果、お嬢様は無事に救出され、私も兄弟も元の職場へ復帰することになった・・・・・だが。」
「?」
深刻な顔になったリングマンを見てエックスは、嫌な予感がした。
「男は、その後も何度も世界征服計画を実行し続けた。君がシグマと戦い続けたようにそのロボットも何度も奴の野望を阻止した。しかし、その行為が世間のロボットに対する評価を大きく変えることになったんだ。」
「評価?」
「我々のように人工知能を持ち、動くロボットの存在だ。人間たちは、度重なる戦いで我々を危険だと強く意識し始めた。そして、徐々に迫害するようになり、終いには『魔女狩り』ならぬ『ロボット狩り』をするまでになったんだ。」
「そんな理由だけで?ひどすぎるじゃないか!!何故、今まで人間のために動いてきた彼らが!!」
エックスは、衝撃の事実を聞いて驚かずにはいられなかった。
「それだけ人間は、ロボットに恐怖を憶えるようになったんだ。そして、自分たち以上の力を持つ彼らが男が作ったロボットたちのようにいずれ牙を向けてくるかもしれないと恐れるようになっていく。彼らは、自分たちの命令のみ聞く思考回路を持たない、ロボットを狩るためのロボットの軍隊を作るようになった。」
「・・・・みんな、殺されたのか?」
彼の言葉を聞きながらエックスは、怯えるように聞く。
「実際、どれだけのロボットが彼らに破壊されたかはわからない。まだ、ロボットを信じる者たちに匿われたのか、あるいはこの世界を捨てて新天地を求めたのか、それとも自らその命を絶ったのか。」
リングマンは、空になった缶コーヒーを無意識に握り潰す。
「当然、私たち兄弟にはその猛威が振り下ろされた。私たちは、故郷に急いで戻り、博士の指定した潜伏先へと移動していた。そして・・・・・奴らの手にかかって・・・・・・みんな、殺された。」
「・・・・・・」
「唯一生き残った私は、兄弟を殺された怒りと憎しみで彼らに抵抗し、重傷を負い、記憶を失って今暮らしているこことは別の世界に流れ着いた。記憶が戻った時は、憎しみと後悔のあまりに犯罪者とはいえ、人間に暴行を加えたこともある。」
リングマンの話を聞いてエックスは、黙り込んでしまった。
今まで信じていた人間という存在が彼の話一つで自分たちを道具として使い、何かあれば危険因子として処分する恐ろしい存在へと変わってしまった。思い出せば、自分が倒したイレギュラーの中にも危険だからという理由で処分を罰せられた者が何人もいる。
「呆れただろう?守るはずの人間に暴力をふるったことがある私に。君たちの世界から見れば私は極めて危険なイレギュラーとして処分されてもしょうがないかもしれないな。」
「・・・・・俺には、わからないよ。」
ため息をつきながら昔の話をするリングマンに対し、エックスは肩をすくめる。
「亡くなったケイン博士は、俺たちレプリロイドと人間の共存を願って惜しむことなく最後まで協力してくれた。だから、人間や仲間であるレプリロイドたちを守ることが俺に与えられた役割なんだと信じて戦い続けてきた。・・・・なのに、他の人間たちは俺たちに何をしてくれたんだ?自分たちにとっては不都合になるという理由でイレギュラーでもなかったレプリロイドを処分して、イレギュラーは俺たち破壊するよう命令するだけ。今は荒廃した地上から月に逃れるためにその開発用のレプリロイドを作らせる始末だ!!」
思い出せば、思い出すほど辛い思いが込み上がってくる。
人間たちは、自分たちに何もしてくれなかった。彼らは、非力という立場を利用していつも安全な場所にいるだけだった。
都合だけでレプリロイドの有無を左右する人間という存在に彼は、これまでにない強い怒りとそれをどうすることもできない自分に対する悔しさを感じずにいられなかった。
「俺がここまで戦ってきた意味はあるのか!?なんのために戦ってきたんだ!?全部・・・そういう人間たちのために戦ってきたのか?そのために仲間であるレプリロイドたちに手をかけてきたのか!?」
「・・・・・」
「俺は・・・一体どうすればいいんだ・・・・何もかもが怖い。裏切られるのも失うのも。」
エックスは、頭を抱えて言う。
何を信じればいいのか、これから先どうしていけばいいのか。
何も考えられなかった。
そんな彼の様子を見てリングマンは、かつての自分の姿を重なったように感じながらも口を開いた。
「そう。それが普通なんだよ、エックス。」
「・・・・えっ?」
彼の言葉を聞いてエックスは、彼の顔を見る。
「我々ロボットやレプリロイドは、人間に近い存在として作られ、考えるように作られながらも人間を本当に共存する存在に値するかどうかを知っているわけじゃない。人間たちもそうだ。本当にレプリロイドが自分たちと共に生きるパートナーとしてみているのか、それは誰にもわからない。恐らく、そちらのケイン氏も。有機生命体である彼らと無機物である我々機械が共存していくためには互いのことを知らなくてはならない。強さも、弱さも、美しさも、醜さも。それを知ろうとしなければ君はこれから先も答えを見つけ出すことはできないだろう。」
「貴方は、見つけることができたのか?」
「私は・・・・今でも兄弟を奪った世界への憎しみが消えたわけじゃない。でも、受け入れてくれる人たちと出会った。そして、愛する家族を持ち、共に生き続けることで人間と機械が共存できる可能性があることを知った。だから私は、この世界もそうなることを信じられるようになれた。博士たちが望んでいた世界を。」
リングマンは、コートから二枚の写真を取り出してエックスに見せた。
一枚目はオイルの汚れなどで汚くなってしまっているが彼が生みの親である博士、兄弟たちと共に写っている写真。もう一枚は、新しいもので彼の妻子と思われるロボットと二人の兄弟、そして、一枚目に写っていた少女と同一人物だと思われる女性が一緒に写っていた。
「これが貴方の家族なのか?」
エックスは、彼から写真を受け取る。
「私のすぐ隣に座っているのが妻だ。向こうでは看護婦でな、最初に流れ着いた時に治療を担当してくれたのが彼女だったんだ。」
「・・・・みんな、いい顔をしている。」
自分の世界でこんな笑顔はあったのだろうか。
エックスは、羨ましそうにその写真を眺める。
「エックス、確かにこの世に争いが無くなることはないのかもしれない。それだけに君のように苦悩する者も現れる。そして、何度も裏切られ、傷つき、守れないものがあるかもしれない。」
「・・・・・」
「だが、今君が持っている優しさだけは失ってはならない。かつて、君の兄ともいえるロックマンは戦いの中でも優しさを持ち続けた。レプリロイドと人間が共存することができる理想の世界、それを望むのなら尚更な。それを失えば・・・・かつての私のように後悔し、苦しみ続けることになる。」
「リングマン・・・・」
リングマンは、ベンチから腰を上げて腕時計を見る。
「ムッ?そろそろ、テレビ電話しないとエリカが心配してコール鳴らし続けるころだな。急いで部屋に戻らねば。」
「?」
「あっ、こっちのことだ。今日は、もう部屋に戻って休むんだ。君だって、きっと誰かに心配されているだろうからな。では、お休み。」
そう言うと彼は、さっさと屋上から去って行った。
「・・・優しさか。」
エックスもまた自分の部屋へと戻って行ったのだった。
???
ドラえもんたちは、街の方へ着くとそこには激しい戦いによって破壊された廃墟が目の前に広がっていた。
「ひどい、こんなに荒らされている。」
「これ、まさかのび太がやったのか?」
ジャイアン達が戸惑っている中、ワイリーはカプセルから降りて破壊された箇所を小まめに調べ始める。
「ふむ・・・・この破壊痕、間違いなく特殊武器で破壊されたものじゃのう。」
「じゃあ、エックスがさっきまでここで戦っていたってわけ?」
「おそらくな。」
不安に感じるマーティに対してワイリーは、持ってきた万能タイプのバイザーをかけて調べる。
(この破壊痕に僅かに残されている熱源反応・・・・バスターの物ではないな。ライトの奴が覚えさせた気を遣う技かのう。)
「おい、ジジイ!一体いつになったら俺の相手は見つかるんだ!俺は、ピクニックしに来たんじゃないんだぞ!!」
苛立ってきたのかフォルテが彼に突っかかり始める。
「短気だな。」
「あれでも、少しは我慢できるようになった方だ。100年前はロックマンを見つけるなり、すぐに喧嘩を売りに行ったのだからな。」
「あれでかよ。」
シャドーマンの返事に対して一同が渋い顔をしたその直後、少し離れたところから爆発音が聞こえた。
「うん!?」
ワイリーは、急いでカプセルに戻り移動を再開する。ドラえもんたちも急いで彼の後を追う。
「何か見つかったんですか?」
「警戒しろ!奴らはもうすぐ近くにおるぞ!!」
彼らの行く先では既にクイックマンがその様子を伺っているところだった。
「あっ、クイックマン。」
「流石と言うべきだな。フォルテならすぐに割って入るがドクターが到着されるまで待機していたか。」
「あ゛ぁ゛!?」
反応するフォルテを無視して、一同は彼が待機していた廃ビルの上に降り立つ。
「クイックマン、状況はどうなっておる。」
「・・・・」
クイックマンは黙ってビルの下の方に指を差す。そこでは、二人のエックスが激闘を繰り広げていた。
「「の、のび太が二人いる!?」」
「い、一体どっちが本物ののび太君なんだ!?」
ジャイアンとスネ夫、ドラえもんは、思わず困惑するがマーティは直ぐにどっちなのか判別できた。
「あっちのアーマーの方が私たちの知っているエックスよ。」
「えっ?」
マーティが指を差したのは、漆黒のアルティメットアーマーを身につけたエックスだった。サードアーマーを身につけた方に比べると赤黒いオーラがやや弱めで目も完全に赤くなっておらず、点滅していた。
「・・・・・極めて重症じゃな。」
「えっ?」
「あっちのエックスの様子を見てみろ。闘争心に満ちた目をしながらも戦い方に落ち着きがある。それに対してワシらのよく知っているエックスの方はどうだ?闘争心に支配され、不安定になっておる。」
ワイリーの言うようにアルティメットアーマーのエックスの方はいつものエックスらしからぬ強引な戦い方をしているように見える。
「ハア・・・ハア・・・・」
「余裕がなくなって来たな、うぬの力はそれが限界か?」
「黙れ!!」
エックスは、黒エックスに対してパンチのラッシュを繰り出す。対する黒エックスは顔色一つ変えずにそのパンチを一発一発平手で受け止める。
「~~!!!」
「何故、理性を保とうとする。それがうぬの力に反発して引き出しきれていないことに気づかないのか?」
「くぅううう!!」
エックスは、チャージグランドファイアで周囲を吹き飛ばす。黒エックスは、バグホールで相殺する。
「チャージグランドダッシュ!!」
「スピニンブレード。」
巨大な岩を ヨーヨー状の巨大な円盤状カッターで容易く切断すると黒エックスは、クロスチャージショットを放つ。
「ローリングシールド!!」
チャージショットを防御するためにエックスは、バリアを張るがバリアブルエアダッシュで急接近した彼の膝打ちを腹部に受ける。
「グッ!?」
「生温い、いつまで理性にしがみ付くつもりだ?」
黒エックスは、腹部を押さえて縮こまるエックスをかかと落としで廃ビルに激突させる。衝突すると同時に衝撃に耐えきれなくなった廃ビルは崩壊し、崩れて瓦礫の山へとなる。
「理性を捨て、本能に身を委ねろ!そうしなければ我と同じ境地に立つことは出来ん!!それとも、怖気ついたか!!」
黒エックスがゆったりと地上に着地する。エックスは、瓦礫の山をギガクラッシュのような衝撃波で吹き飛ばして姿を現す。
「ハア・・・・」
目の点滅が激しくなり、赤黒かったオーラが彼の理性が消えていることを表しているのか禍々しく、上から見ているドラえもんたちが分かるほどの殺気を発し始める。
「ウゥ・・・ウウゥウウ!!」
「いい目をするようになってきた。もう一押しで我と同等になる。」
その様子を見て黒エックスは、笑みを浮かべる。
「ハアアアアア!!」
エックスは、周囲の物をフォースアーマーのノヴァストライクの態勢で破壊しながら黒エックスに突っ込んでいく。黒エックスは、構えてそれぞれの腕に闘気を集約させる。
「ノヴァストライク!!」
「ぬうん!!」
黒エックスは、命中する寸前で空中に逃れると集約させた闘気を一斉に放つ。
「天魔豪斬空!!」
彼の両腕から放たれた無数の気弾がエックスに向かって降り注ぎ、避ける間もなくその場を吹き飛ばした。
「うわあああああああああああ!!!」
爆発は周囲にも影響を及ぼし、ドラえもんたちが立っているビルも勢いよく崩れ始めた。
「いかん!全員離れるんじゃ!!」
ワイリーの咄嗟の判断で全員が空中に逃れる。全ての気弾を撃ち終えた黒エックスは、瓦礫の散乱とした場所に着地する。
「これでくたばればそれまで。うぬの意地を我に見せつけてみよ。」
ドラえもんたちは、エックスが埋まってしまった場所を見ながら黒エックスが自分たちの想像以上の化け物であることに動揺を隠せずにいた。
「・・・」
一方のフォルテもその光景を上から眺めていた。
(なんなんだあの化け物は!?いくらエックスがあのロックマンと同じ甘い奴だとは言えここまで圧倒出来るものか?それにあのエックスも俺が相手をした時とは全くの別物だった・・・!)
フォルテは、無意識に自分の右腕が震えていることに気づく。
「な、なんだこれは!?」
彼は、左腕で押さえて震えを止めようとするが収まる様子はない。
「怯えているのか?この俺が!?そんなことがあってたまるか!!」
自分が黒エックスに対して恐怖を感じていると認めないフォルテだったがワイリーの傍で待機しているシャドーマンも武者震いが収まらずにいた。
(両者ともなんという殺意・・・これがエックスが押さえ込んでいたものだというのか?いくら我々が総手で挑んだとしても果たして止めることができるのか?)
「の、のび太の奴大丈夫なのか!?」
ジャイアンは、エックスが埋もれた場所を見ながら言う。だが、そんな不安の矢先エックスは、気合で瓦礫を吹き飛ばして再び姿を見せた。
[・・・・ウゥ。」
力を無暗に使い続けた反動かエックスは、膝をつく。黒エックスはゆっくり歩み寄ると腕を組みながら彼を見下ろす。
「もう、終わりか?」
「・・・・・・」
動こうにも体が言うことを聞かない。彼の脳裏では理性と闘争本能が入り混じり、一歩でも間違えれば自我が崩壊してしまう寸前だった。
(い・・・・今のままじゃ、コイツには勝てない。でも、俺が今の自分を完全に捨ててしまえば後戻りできなくなる。例えこの戦いで勝ったとしても・・・・)
「・・・・返事もできぬほど疲弊したか。ならば、この勝負。我の勝ちとさせてもらおう。」
黒エックスは、チャージをすることなくチャージトルネードファングを展開し、右腕を上げる。
「次は我と同じように奈落の底で眠るがいい!!」
「くっ!」
ドリルは勢いよく振り下ろされる。
サイバーフィールド
時を同じくしてライトは、一人電脳空間の中を移動していた。
『別の世界のエックスは、転送装置によってこの世界に来たという。ならば、この膨大に広がり続けているこのサイバー空間に何かしらの影響が出ているはずじゃ。』
彼は、エックスがこの世界に飛ばされた影響がこのサイバー空間にも出ていると考えていた。単に転送装置の誤作動なら別ポイントに転送されるか、転送されずに爆発に巻き込まれるはずだ。ならば、何者かが転送装置に細工をして意図的にこちらの世界に来るように仕向けた可能性もないわけではない。そう思い、彼はゼロたちと別れてからひたすら電脳空間を移動し続けていた。
(転送装置のデータバンクには何の異常も見られなかった。バグではないとなると・・・・・!)
ライトは、目の前の現象を見て思わず足を止める。
そこにはガラスでも割ったかのように空間の裂け目があった。
『こ、これは・・・・もしや』
『一種の時空の裂け目、いわゆる二つの世界を繋げるいわゆるトンネルのようなものだ。』
『!』
後ろからの声にライトは、振り向く。
『貴方は・・・・・』
そこには自分と全く同じ容姿の老人がいた。彼は、その老人が別世界の自分だと直感した。
『初めましてと言うべきですな、この世界の私よ。』
『まさかだと思っていたがエックスだけではなく貴方自身までこの世界に来ていたとは・・・・』
『その件に関しては申し訳ない。私もまさかこのような事態を招いてしまうとは予想外だった・・・・』
自分と比べて別世界のライトは何故か表情を暗くしていた。
『では、そちらのエックスをこの世界に飛ばしたのは貴方自身ではないのですな?』
『えぇ、だが間接な原因は私自身にあるんじゃ。』
『ん?それはどういうことで?』
別世界のライトは、その場で語りだす。
それは、彼の世界においてエックスが前線を外れて間もなかった時期のことだった。
ナイトメア事件の解決後ではあったものの万が一に備えて新たな強化アーマーを設計していた時のこと、彼は偶然にも電脳空間で不審な裂け目を発見する。そこはどうやら自分たちとほぼ同じ歴史を歩んでいる平行世界のようで本来ならすぐに修正して消すべきところをライトは、ほんの出来心で入ってしまった。
その世界の歴史を見ると唖然とした。自分の世界とは比べ物にならないくらいレプリロイドと人間の共存が進んでおり、エックスにはたくさんの仲間がいた。
こんな可能性もあったのかと思う一方、自分の世界では孤独に悩まされ続けているエックスに何もしてやることができない己に無力さを感じていた直後に今回の事件が起きてしまった。
彼は、急いでエックスを戻そうと考えていたが連れ戻したところであの世界に居場所があるのだろうか。このままにしておいた方が幸せなのではないだろうか。
『私は実に愚かだった。エックスを悩む機能で苦しませるだけではなく、いつ終わるかもわからない戦いの中へ一人にしてしまった。いくら強化アーマーを与えても、あの子の心を晴らすことはできない。故に私は彼をまたあの戦いの中へ送ってしまうのかと思うと恐ろしく感じずにはいられない。』
頭を抱えながら悲しそうに言う彼に対してライトは、ゆっくりと口を開いた。
『そんなことはない。貴方は、いつだって最善を尽くしてきた。』
『だが、私は、彼を孤立させてしまった。』
『それはわしとて同じです。確かにどちらの世界でも争いが絶えない。守れないものもある。ですが、それは貴方でもエックスのせいでもない。共に守ろうとした者たちがいたからこそここまで来たのです。』
『もう一人の私・・・・』
彼に言われた別世界のライトは、顔を上げる。
『貴方の世界にも必ず、わしらが望んだ人間と機械が共存し合える平和な世界が来る。だから、諦めずにそちらのエックスのことを支えてほしい。』
『・・・・・ん?』
その時、裂け目の先で何かが光った。
『今のは?』
『何か起こったらしい。一旦、戻らなければ。』
別世界のライトは、急いで裂け目の中へと入って行く。
『・・・・この世界の私よ、勝手なことを言って申し訳ないがしばらくエックスのことを頼めないだろうか?』
『貴方のエックスも今、この世界で自分の答えを見つけようとしている。何かあったら、できる限りのサポートはしよう。』
『感謝する。』
別世界のライトはそう言うと裂け目の中へと消えていった。
『これで原因は分かった。だが、後は向こうのエックスがどうやって答えを見つけ出すのかが重要じゃ。・・・・それにこちらのエックスも。』
???
「エックスーッ!!」
「ぬっ!?」
黒エックスが上から聞こえてきた声を聞き、ドリルを上に向ける。
「い・・・今のは・・・」
エックスは、朦朧とした意識の中で上を見上げる。そこにはここには居ない筈のマーティが槍を回転させながらこちらに向かって下りてきていた。
「マ・・・・ティ?」
「ハアアア!!」
マーティは、勢いよく槍を黒エックスに振り下ろす。
「笑止!」
黒エックスは、槍を容易にドリルで受け止めるとそのまま着地した彼女に追撃を加える。
「竜巻斬空脚!」
「グッ!」
左腕でガードしたもののマーティは、回し蹴りを受けてビルの壁へと激突する。
「あの女、馬鹿かよ!」
「・・・・」
「お、おい!てめえ!?」
無謀ともいえる彼女の攻撃をフォルテは罵倒するが、クイックマンはブーメランを持つと追うかのように下りて行った。
「拙者たちも続くぞ。」
「ちょっ!?」
続いてシャドーマンも降りて行く。
「急いでのび太を助けに行くぞ!」
「「「「おう!」」」」
更にドラえもんたちまで。
「・・・・」
「なんじゃ、フォルテ?お前、この期に及んであの黒いエックスが怖くなったのか?」
「何ッ!?」
ワイリーに見抜かれ、彼は動揺する。
「まさか、お前が恐怖を感じるとはのう。今までただ単に暴れまわる戦闘馬鹿だと思っておったが意外なところがまともだったんだのう。」
「どういう意味だジジイ!!」
フォルテは、これ以上言われたくないのか彼に掴み掛る。だが、その余裕の表情は崩れなかった。
「何、正直驚いただけじゃ。ルーラーズの時でさえ、ツッコんでいったというのにそれよりもランクが劣るエックスの裏人格に怖気づくとはな。」
「俺が怖気づいただと?ふざけるな!!」
「なら、アイツを倒してみろ。あのエックスは、ゼロの右腕を容易に吹き飛ばした奴じゃ。倒すことができればお前はゼロを越えた証明になるじゃろう。」
「・・・・・」
フォルテは、改めて下を見る。下ではクイックマンとシャドーマン、ドラえもんの三人が黒エックスに挑んでいる。その後方では、先ほどビルに激突したマーティがボロボロになりながらもジャイアン達にエックスと共に安全そうな場所へと移動して行っている。
「・・・・」
「クゥウン・・・・」
隣のゴスペルは、今までにないぐらい体を震わせている。それだけ相手が化け物だということが本能的に理解できるのだろう。これではスーパーフォルテに合体しても本領を発揮することはできない。
「・・・・」
「どうした?合体できなければ勝てんと思い始めたのか?情けないのう~これじゃあ、ロックマンどころかエックスにもゼロにも勝てんな~。」
「・・・・ふざけんじゃねえぞ。」
「ん?」
ワイリーに恐怖心や復讐心を煽るような言動を繰り返され、フォルテはバスターを展開しながら彼を睨みつけた。
「俺は・・・俺は最強の存在だ!最強の俺が怯えるはずなんかねえ!今に見てろよ、このクソジジイ!!」
フォルテは、そう言うと飛び降りて行った。ゴスペルは、勝てないと分かっていながらも続こうとするがワイリーに制止される。
「追わんでよい。お前は、ここでワシと一緒に戦いの行く末を見守るぞい。」
「クウゥン・・」
(あそこまで挑発させたが恐らく今のフォルテでは分が悪すぎる。あの黒いエックスの殺意はそれだけ凄まじいもの。このワシですら、恐怖のあまりにこの場から逃げ出したいほどじゃわい。だが、ここで逃げてはワシのプライドが許さん。)
黒エックスは、三人に囲まれながらも特に焦る様子はなく、むしろ勝負を邪魔されたことに怒りをあらわにしていた。
「我らの勝負を邪魔するとは何たる侮辱!誰であろうとも容赦せぬぞ!!」
「・・・・」
「悪いが貴様にエックスを倒されるわけにはいかんのだ。」
「これ以上のび太君に手を出させないぞ!!」
三人は、警戒しながら黒エックスと対峙するがそこへ遅れてフォルテが着地をしてきた。
「フォルテ、やっと来たか。」
「・・・・・」
「ん?」
「なんか様子が変だけど。」
フォルテは、黒エックスを見ながらブツブツと呟く。
「誰の援護も必要ねえ・・・・ゴスペルも・・・・合体する必要もねえ・・・・てめえなんか・・・てめえなんか怖くねえ!!」
彼は、バスターを構えながら叫ぶ。
「野郎、ぶっ殺してやぁぁる!!!」
フォルテが怯えるほどじゃ仕方ねえな。