旧レプリフォース秘密訓練所『デビルズ・ポット』
「『デビルズ・ポット』・・・“悪魔の鍋”だと?」
ゼロは、燃え滾るマグマを見ながら言う。そんな彼を気にすることなく、レッドは足場を飛び越えながら中央の広い場所へと向かう。
「どうした?今更やる気が失せたのか?」
「・・・・・」
レッドに煽られ、彼は追うように足場を飛び越えていく。
「ここは本当に訓練所なのか?あのジェネラルが作るような場所とは思えないが。」
「あぁ、ここはジジイが最高責任者に正式に就任する前に作られた一歩間違えれば両者とも死ぬ名前の通り『悪魔の鍋』ともいうべき場所だからな。閉鎖するのも当たり前だ。」
「どういうことだ?」
「お前が正式にハンターになったのは俺が去った後だから知る由もないだろな。結成されて間もない頃、レプリフォースはイレギュラーハンターと違って一枚岩じゃなかった。最高司令官を決める際、ジジイ以外にも候補だった士官が何名かいたんだ。奴らは、自分が最高司令官となるべく、裏で様々な手を行っていた。ある奴は、新型戦闘メカニロイドの配備及び強化プランを計画、ある奴は、人間政府にジジイを失脚させるようにコネを回そうとしたり下らねえことばかりだったが一番シャレにならないのがここってわけだ。」
レッドは、ボゴボゴと音を立てる溶岩を見ながら言う。
「コイツは、レプリフォースの士官同士をこの不安定な足場、行動範囲を制限した中でほぼ実戦と変わらぬ戦闘を行わせ、競わせるものなんだが見ての通り、この足場の下はマグマだ。そして、命綱もない・・・・後はわかるな?」
彼が言うのは、おそらく士官同士を戦わせて勝者のみがこの地獄から抜けることが許されるというものなのだろう。しかし、今自分が立っている足場も含めてここは行動範囲が限られている。誤って足を踏み外せばマグマの海へと落ち、二度と這い上がることができない。さらにこの気温を考えると長時間いればボディが持たなくなる。
ジェネラルが最高司令官就任後に閉鎖したことも納得がいく。
「・・・・なるほどな。要はここのルールで決着をつけるというわけか。」
「そうだ。先に俺に致命傷を与えることができればお前の勝ち、アクセルはくれてやるし俺たちも今後の活動を控える。逆に俺が勝った場合はお前を拘束してハンター共にアクセルと引き換えさせてもらう。・・・まあ、ここでの戦闘が初めてなお前さんが俺に勝てるとは思えんがな。」
レッドは、鎌を向けながら煽るように言う。
「言ってくれるな。だが、俺が勝ってもお前の所にいる『センセイ』とかいう奴がアクセルをあきらめるとは考えられんな。」
「ふん。じゃ、さっさと始めるとするか。」
ゼロもセイバーを引き抜き、両者は武器を構えながら対峙する。
「行くぞ!!」
レッドは、先手として鎌から衝撃波を放つ。ゼロは、それを軽く避けてセイバーを振り下ろそうとするが刃が触れた瞬間に、彼の姿は消える。
「残像か!」
「こっちだ!!」
背後に現れたレッドは鎌をゼロに向かって振る。ゼロは姿勢を低くして回避をするが背中を軽く斬られる。
「もう少しで首を斬り落とせると思ったんだがな。」
レッドは、更に鎌を回転させながら追撃を加えようとする。
「斬光輪!」
対するゼロは、車輪上のエネルギー弾でレッドの攻撃を封じ、バスターを撃つ。
「ちっ!」
バスターの攻撃を受けたレッドは軽傷ではあったものの左肩のショルダーアーマーが一部融解する。ゼロは、さらにセイバーで攻撃を行い、両者は鍔迫り合い状態になる。
「こんなくだらない戦いを続けてなんになる!カーネルやジェネラルもお前がこうなることは望んでいなかったはずだ!!」
「二人の代わりに俺に説教か?偉そうに・・・・だから、ハンターは嫌いなんだよ!!」
鍔迫り合いで睨み合いながら二人は激突する。
「アクセルは、取り戻す。例え力づくでもな。」
「子供に殺戮を強いるような組織に俺たちが返すと思っているのか!!そんなに力が欲しいのか!!」
ゼロは、レッドを突き飛ばすとアースクラッシュを放つ。
「アースクラッ・・・ウオッ!?」
だが、アースクラッシュを放った直後床が崩れる。訓練場として作られたとはいえ、すぐ真下がマグマの海。普段の要領で使えばあの海の中に落ちて、体を容赦なく溶かされてしまう。
レッドは、崩れ落ちていく岩を足場として利用しながら別の陸地へと移動する。ゼロも急いで飛び移る。
「お前に俺たちの何が分かる?」
「さあな。だが、アクセルに殺戮を強いた挙句に無意味な戦いを引き起こしたことだけは分かる。」
「言ってくれるな。お前らハンターには無意味だろうが俺にとっては大事な死合いだ。」
二人は、更に決闘を続ける。
???
「うおおおおおおおお!!!」
その頃、エックスの精神世界では、圧倒的な黒エックスに対してドラえもん、クイックマンとシャドーマン。そして、フォルテという異例なメンバーで挑んでいた。
「フッ、欠伸が出るほど甘いわ。」
黒エックスは、フォルテバスターの弾丸を余裕の構えで避けていく。
「フォルテ、無駄にエネルギーを消耗するな!」
「ウルセエェ!!俺に指図するな!!」
シャドーマンの忠告を無視してフォルテは、バスターを連射しながら黒エックスに向かって行く。
「これでもくらえ!コマンドボム!!」
フォルテは、ミサイルを複数放つ。
「無駄だ。」
対する黒エックスは、左手を前に出し軽く突き出す。するとそこから衝撃波が発生し、コマンドボムを跡形もなく爆発させてしまった。
「これならどうだ!!」
フォルテは、がむしゃらに特殊武器を黒エックスにぶつけていく。黒エックスはそんな彼に呆れたのか防御することもなく、攻撃を受けながら彼に近づいて行く。
「あの男、フォルテの攻撃を正面から受けてダメージすら受けていないのか!?」
シャドーマンは、黒エックスの恐るべき耐久力に驚かされる。差はあれど強力な特殊武器を彼は正面から構えも取らずに受け止めているのだ。
「あ、あら・・・・」
ドラえもんも呆気にとられる。黒エックスは、フォルテの目の前に来ると拳を振り上げ、彼の顔にぶつける。
「ブオッ!?」
「・・・命が惜しくば失せろ、ムシケラ。怯えているうぬを倒したところで我には何の価値もない。」
吹き飛ばす間際、黒エックスはその赤い瞳から睨みつける。フォルテは、そのまま建物へと激突し倒れる。
「なんということだ。これではあの白い巨人の時と同じ・・・いや、それ以上ではないのか?」
シャドーマンは、日本刀を構えながら言う。
フォルテがあそこまで動揺するのはこれが始めてだ。
かつて100年前に圧倒的な力でねじ伏せられた白い巨人、破壊者たちに対しても真っ当に向かって行った彼が怯えていたのだ。
黒エックスは、フォルテが倒れたのを確認すると残りの三人の方へと目標を変える。
「貴様らも命が惜しくば消え失せろ。さもなくばその命をもらい受けるぞ。」
「「「・・・・」」」
黒エックスの言葉に対し、三人は無言になる。
(この人・・・今までの相手とは比べ物にならないほど強い。でも、ここで僕たちが引き止めなければのび太君が・・・・二度ものび太君を失わせるもんか!!)
(あのフォルテをダメージを与えられずに沈黙させた闇のエックス・・・普通なら逃げるのが一択。だが、ドクターが逃げない以上俺も引き下がるわけにはいかん。エックスがあの女子たちと共に戻ってくることを信じ、ここで時間を稼ぐ。)
三人は、武器を構えながら近づいて行く。
「挑んでくるか。よかろう、我の目の前に来たことを後悔するがいい!!」
一方、エックスは、ジャイアン達に担がれ、少し離れた廃ビルの中へと身を隠していた。
「大丈夫か?のび太。」
ジャイアンは、エックスを壁に沿って座らせると心配そうに声をかける。エックスは、落ち着き始めたことで今目の前にいるみんなが本物であると気づく。
「みんな・・・・どうして・・・」
「ワイリーのおかげだよ。僕たちもどうして目を覚まさないのか心配だったからね。」
「ワイリーが?」
「アンタの病室に来ていたのよ。攻撃しに来たと思ったから追い返そうと思ったけど『寝たままのエックスを倒したってつまらない』とか言ってね。」
「そうか・・・・・・うぅ!!」
エックスは、頭を押さえて苦しみだす。
「のび太さん?」
「お兄ちゃん?」
静香と玉美が近寄ろうとするとエックスは慌てて手を突き出して拒む。
「お、俺に近づかないでくれ!!」
「えっ?」
「どうしちまったんだよ?」
心配する仲間たちを背にエックスは壁にもたれながら事情を説明する。
「君たちもさっきの戦いを見ていただろう?今の俺は・・・・・あのもう一人の俺とほぼ同じ存在になりつつあるんだ・・・・」
「「えっ!?」」
その一言にスネ夫とジャイアンは口を開けて驚くがエックスの目を見て納得せざるを得ない。今の彼は、いつ暴走してもおかしくない状況だった。
「今でも自分を押さえるのがやっとなんだ・・・・・来てもらって悪いけどドラえもんたちと合流して戻ってくれ。」
「そんな!のび太さんを残して帰るなんてできないわ。」
静香は、エックスの傍に来ると傷の状態を見る。アルティメットアーマーを付けているとはいえ、全身傷だらけの状態であり、ひどい有様だった。
「静香・・・どうなの?」
「すごい傷よ。こんなにボロボロになるまで戦うなんて。」
彼女はマーティからスペアポケットを受け取るとお医者さんカバンを取り出して手当を始めようとする。
「静香ちゃん、止すんだ!もし、俺が暴走したら・・・・」
「その時は、アタシが意地でも取り押さえてあげるわよ。」
そんな彼の元へ応急処置を終えたマーティがやってくる。彼女はエックスのところに行くと彼を寝かして頭を自分の膝に乗せる。
「ま、マーティッ!?」
「玉美は、そっちの手を押さえといて。お兄ちゃん、嫌がって逃げないように。」
「は~い~。」
「ちょっ、ちょっと・・・・」
「静香、動けなくしたから手当始めてちょうだい。」
「えぇ。のび太さん、突然動いたりしないでね。」
彼女たちに取り押さえられ、エックスの治療が開始される。
「何をしているんだ!?俺はいつ暴走してもおかしくないんだ!!」
「そんなの何度も経験しているんだからわかっているわよ!だから、ほっとけないんでしょ!!」
マーティは、今までたまっていた不満をぶつけるように顔を合わせながら怒声を上げる。
「!?」
「アンタ、今までどのくらい寝ていたと思っているのよ!?半年よ!は・ん・と・し!!その間アタシやみんながどれだけ心配していたかわかっているわけ!?毎度毎度言うけど待たされるこっちの身にもなりなさいよ!!アタシなんてお姉さんに泣きついちゃったほど病んでたわよ!!」
「え、えっと・・・・・その・・・・俺にも事情が・・・・」
「それにあの変態ジジイの協力がなかったらどうなっていたことやら・・・・もう・・・」
不満をぶちまけ切ったのかマーティの目から涙がこみ上げ、エックスの顔に落ちる。
「マーティ・・・・」
「二度と目を覚まさないんじゃないかって・・・・・不安で不安で・・・・」
「・・・・・・?」
エックスは、無意識に暴走寸前だった状態から正常に戻りつつあることに気づく。
(さっきまで暴走しかけていたのに落ち着いてきている?何故なんだ?・・・でも、妙だ。久しぶりにみんなと会っただけでなんか安心感が・・・・なぜ・・・・)
戦闘で疲弊していた影響なのか、エックスはそのまま意識を手放した。
旧レプリフォース秘密訓練所『デビルズ・ポット』
「ハア・・・ハア・・・・」
「少し厳しくなってきたな。」
レッドとゼロは、戦いを始めて既に一時間以上は経過していた。
双方ともに傷だらけになっていたがここでの戦い方を熟知しているのかレッドの方が軽傷だった。しかし、傷以前に、長時間この高温の空間で戦っているのはそれ以上の負担が掛かっている。それは冷却機能が熱処理に追い付かなくなり、徐々に体の温度が上昇し、最終的には内部で融解を起こして爆発してしまう危険性が高くなることだ。現に二人の体からは熱処理が追い付かなくなった影響で蒸気が出始めている。ゼロもラーニング技で氷属性のものが使えなくなってきていた。
「体が熱が・・・・・」
「これがここを『悪魔の鍋』と呼ばせるもう一つの理由だ。ここで長時間戦闘を続ければ今の俺たちみたいに体の熱処理が追い付かなくなる。そして、どちらかが臨界点を越えれば自爆するか動けなくなってこのマグマの中へと落ちていく。つまり、どれだけ自分の体の熱を上げずにどうやって短時間で相手を仕留めるかがここから出る必勝法となる。」
レッドは、そう言うと鎌を振り下ろす。すると竜巻が発生し、ゼロを上へと舞い上げた。
「うわぁっ!?」
「感謝するんだな、涼しい風をプレゼントしてやったんだからな!尤も上は頑丈な耐熱素材で作られた天井だがな、当たると痛いぜ。」
ゼロは、そのまま天井へと激突する。レッドは、それを見ると同時に自分の体が既に限界だと知らせる警報が鳴り始める。
「・・・ちっ、これ以上の戦闘は厳しいか。まあ、さっきの攻撃を受けたら流石に奴でもしばらく動けねえだろう。さっさと天井から・・・・・ん!?」
レッドは上の状況を確認しようとした瞬間、頭上に何かが落ちてきた。
「水?」
手を触れて確認してみるとそれはこの灼熱の世界にはないはずの水だった。しかも氷から解けた直後なのかほんのり冷たい。
「まさか!」
レッドは、上を見上げるとそこには天井に張り付いたゼロの姿があった。
「やっぱり、氷弾にならなかったか。」
「貴様、どうやって!」
「アンタに吹き飛ばされたと同時に氷狼牙を発動させて激突を免れたんだ。攻撃は出来なかったがな。」
ゼロは、天井から飛び降りるとセイバーに炎を纏わせてレッドにめがけて落ちていく。
「断地炎!!」
「グオッ!?」
レッドは、咄嗟に防御するが炎を纏った刃は彼の体に突き刺さる。
「グ、グウゥウ・・・・・」
レッドが傷を押さえながら倒れると同時にゼロも限界に来たのか全身から凄まじい勢いで蒸気が噴き出てその場で膝をつく。
「ハアハア・・・・流石に炎のラーニング技を使ったのは無茶だったな・・・クッ。」
ゼロは、何とか起き上がると倒れているレッドの方を見た。
「・・・・ヘッ、どうやら俺の負けのようだな・・・・・とどめを刺しな。」
「・・・・お前を倒したら、アクセルの奴が後悔する。死ぬ気ならアイツに会ってからにしてくれ。」
「とんだ甘ちゃんだな。まさか、レプリフォースを倒した時もそんな情けない対応をしたのか?」
ゼロは、セイバーを戻して倒れているレッドを見下ろす。
「レッド・・・・カーネルはお前のことをずっと気遣っていたんじゃないのか?」
「何?」
「お前は、何故レプリフォース大戦が起きたのか知っているか?」
「さあな、昔の大戦の事なんざ知る気にもならねえ。大方、ジジイが変な奴に付け込まれて致し方なく仕掛けたんじゃねえのか?」
「・・・原因はスカイラグーン落下事件の現場でカーネルが投降に応じなかったことだ。」
「はあ?」
信じられないというような顔をしながらレッドは、傷口を押さえて上半身を起こす。
「どういうことだ?」
「アイツは、アイリス・・・・自分の妹を助けるために現場に駆け付けた。本来なら武器を捨てて俺たちに同行してくれればあの大戦は起こることはなかった。だが、カーネルはそれを拒否した。」
「・・・・・本気で言っているのか?」
彼は、ゼロの言葉を信じていないようだった。
「シグナスからも聞かせてもらった。お前がレプリフォースを抜けるきっかけになった事件のこともな。大戦の引き金となったスカイラグーン落下の時、俺は何故カーネルがあそこまで武器を捨てようとしなかったのかわからなかった。だが、今ならわかる気がする。それは、あの事件をきっかけにお前に負い目を感じていたからじゃないのか?」
ゼロは、真剣なまで言う。彼の話が嘘ではないと理解したのかレッドは、感慨深い顔する。
「・・・・俺とアイツが知り合うようになったのはここでの訓練がきっかけだった。一枚岩でない上にまだ組織としてガタガタの状態だったレプリフォースでは、最高司令官以外にその下で軍を指揮する陸軍指揮官も決まっていなかった。当時の候補として俺たち二人が抜擢され、試合をすることになった。だが、試合が始まってしばらくして事故が起きた。ここから少し離れた活火山と連動してここのマグマの活動が活発になったんだ。試合は直ぐに中止になったが同時に起こった地震でトラブルが多発した。この事故で他に試合を控えていた士官候補数名がマグマの中に落ち、任務に就くことなくその命も散らした。俺もその時、仲間入りしそうになったがそれを助けてくれたのがカーネルだった。」
「カーネルが?」
懐かしむようレッドは語る。
「すぐにでも崩れそうな足場にその真下は灼熱のマグマっていうどう見ても危険な状態の中、手を放せと言った俺が言ったにもかかわらずアイツは放そうとしなかった。『諦めるな』、『我々の命は自分だけのものではない。レプリフォースの未来にも関わるものなんだ。自分から死のうとするのは誰であろうと許さん。』とか言っていやがったよ・・・全く、どこまでも義理堅い奴だぜ。俺が抜けただけでそんなことをしちまうとはな。」
レッドが如何にも自分の知っている彼らしいと笑いながら言う中、ゼロは手錠を出す。
「レッド。お前たちレッドアラートは確かに自分たちの強化のために一般のレプリロイドたちの命を奪った。だが、罪を償うことだってできる。」
「・・・・・」
「今からでも遅くはない。他のメンバーたちと共に投降・・・・」
その直後、ゼロの胸部を何かが射抜いた。
「ガハッ!?」
「ゼロ!?」
ゼロは、力なくその場に倒れる。
「な、なにが・・・・・・・」
『ヌッフッフッフ・・・・・レッドをここまで追い込むとは流石だな、ゼロ。』
聞き覚えのある声が近づいてくる。ゼロは視界がぼやけてきている中、それが何者なのかすぐに理解した。
「お前は・・・・・」
『だがな、レッドをここで退場させるのは私にとって困るのだ。悪いが彼を回収させてもらうぞ。』
声の主はそう言うと負傷したレッドを担いでいく。
「ま、待て・・・・・」
『そう急かすな。貴様の命もいずれは私とドクターのものにするのだからな。既にお前がここでレッドと交戦している情報はイレギュラーハンター共に流している。直に貴様のパートナーのアイリスが迎えに来るだろう。苦しいだろうがしばらくここで待っているがいい。』
「う、うぅ・・・・・・」
ゼロは意識が遠のいていく中、手を伸ばそうとする。しかし、届くことなくその場で完全に意識を失ってしまった。
『フッフフフ・・・・これで都合がよくなった。貴様が動けないとなるとエックスが前線に戻らざるを得んからな。奴が表舞台に戻ってくるのが楽しみだ・・・・・フッフフフ・・・ハーハッハッハッハッハッハッ!!』
声の主は、そのままレッドごと転送装置で離脱する。
その10分後、連絡を聞きつけて現場に駆け付けたアイリスが見たのは傷だらけの状態で倒れているゼロだけだった。
???
「うぅう・・・・・」
ドラえもんは、瓦礫の中から顔を出しどうにか前を見る。それに続くかのようにシャドーマンも瓦礫から出てきた。
「拙者たちが赤子同然に扱われるとはな・・・・お前は大丈夫か?」
「アーマーを付けているおかげで何とか。」
少し離れたところでは、クイックマンが黒エックスと激闘を繰り広げていた。
主要武器であるクイックブーメランが割れた状態で近くに突き刺さり、ボディのあちこちに拳で撃ち込まれた跡が痛々しくついていながらも彼は表情一つ変えることなく、彼は戦闘を継続し続けていた。
「クイック、随分無茶をしているな。奴でもあそこまでダメージを受けている。このままではエックスが戻ってくるまでに全滅してしまうかもしれん。」
そのクイックマンも黒エックスの攻撃を諸に受け、吐血する。
「ブッ。」
「できるようだが、力を付けてきた我には及ばなかったな。」
黒エックスは、彼の首を掴み上げながら言う。
「・・・・・・フッ。」
「むっ?」
既に窮地に陥っているにもかかわらず、クイックマンは笑ったことに黒エックスは違和感を感じる。
「何がおかしい?」
「・・・・・・・」
「何がおかしいのかと聞いている!!」
「・・・俺を倒したぐらいで満足そうにするとは随分視野が狭いと思ってな。」
「どういうことだ?」
クイックマンの言葉に黒エックスは、眉を動かす。
「俺よりも強い奴は他にもいる。それもすぐ近くにな。」
「何?何者だというのだ、そいつは?」
彼が気になるように聞くとクイックマンは、誇らしげに答える。
「エックスだ。」
「奴だと?」
「お前は本当の奴の強さを知らない。奴は、自分より強い相手と戦えば戦うほど伸びる。俺を倒した時のようにな。」
「・・・・・」
黒エックスは、クイックマンから手を放す。
「奴は既に限界の身、我と張り合えるほどの力はないと見ていたが・・・・そこまで貴様が推すというのなら面白い。ならば、その強さを証明させてもらおう。」
彼はそう言うとエックスたちが移動した方へと歩き始める。
「まさか、のび太君たちの方に行くつもりじゃ!」
ドラえもんはダメージが残っているからだにもかかわらず、黒エックスの方へと向かって行く。
「待て!今奴に近づくことは危険が・・・・・」
シャドーマンが止めようとしたがドラえもんは、黒エックスの前に立ちふさがる。
「タヌキが・・・・そこを退け。」
「嫌だ!のび太君のところへは行かせない!!」
「聴覚機能がいかれたか。退けと言っている。」
「のび太君のところへ行くというのなら僕を倒してからにしろ!!」
ドラえもんは、バスターを構えながら言う。
「愚かな・・・・ならば、奴がここに戻ってくるまで我の相手になってもらおう。」
黒エックスは、拳にエネルギーを集約してドラえもんに目がけて放つ。
ゼロ、倒れる。
黒エックスの圧倒的な実力の前にエックスは勝てるのか?
次回の話はいつになるのやら・・・・・・クイックマンが負けるのはやりすぎたかな。