???「本当に申し訳ない。」
ハンターベース
エックスが再びバスターを使えるようになった翌朝。
今まで眠っていたゼロがようやく意識を取り戻した。彼は目を覚ますなり、泣きながら抱きしめてくるアイリスや説教をするホーネックとアルバイターたちに困惑するものの心配をかけさせていたことを察し、すぐに現場に復帰したいという感情を押さえながら部屋で安静になっていた。
彼の部屋では、相変わらずアイリスが付きっきりでホーネックは現場へと戻って行った。
「そうか。俺が回収された時には既にレッドの姿はなかったか。」
彼女にその後の状況を聞きながらゼロは、複雑な顔をする。
「でも、ゼロがこうして無事に戻ってこれただけでも良かったわ。後少し遅かったら危ない状態になっていたのよ。」
果物用ナイフでリンゴを剥きながらアイリスは、頬を膨らませて言う。
「すまなかった。だが、レッドがあの場に来ていたは本当に半信半疑だったんだ。他の奴が来たという可能性もあったからな。」
「本当に心配したのよ。ゼロが助からなかったらどうしようって・・・・胸が不安でいっぱいになっていたんだから。」
リンゴを剥き終えるとアイリスは、不安な顔をしてゼロの手を握る。
「・・・悪かった。もうこんな無茶はしない。だから、そんな顔しないでくれ。」
ゼロは、彼女をそっと抱きしめながら言う。体が震えていることから本気で心配していたことが伝わる。
「約束よ。今度こんな事したら、私しばらく休職してドラえもんさんたちの世界の方に行っちゃうんだから。」
「そいつは勘弁してくれ。お前がいなくなったらまたホーネックの奴が殺意マシマシの眼差しで睨んでくるようになるからな。」
冗談を交えながら話を終えると二人は、剥いたリンゴを食べ始める。
「やあ、ゼロ。調子はどう?」
そこへアクセルが見舞いも兼ねてかやって来た。
「アクセルか。どうやらみんなに心配かけたようだな。」
「本当だよ。でも、思っていた以上に元気そうで何よりだよ。」
「まあ、悪運が強いのは今に始まったことじゃないからな。」
「色々聞いているよ。エックスの目の前で自爆したり、アイリスと一緒に別世界に飛ばされたりしたって。ある意味色々経験し過ぎて不死身になったんじゃないかって疑うよ。」
アクセルは、冗談を交えながら言う。
「ハハハ・・・っで、こんな冗談だけを言いに来たわけじゃないんだろ?」
「うん、これからエックスと一緒にコンビナートに行くんだ。」
エックスが一緒に行くという言葉を聞き、ゼロは少々驚く。
「エックスも?大丈夫なのか?」
「色々悩んでいたようだけど、昨日の訓練でようやくバスターが使えるようになったんだ!それに相手は誰だと思う?データだけどゼロたちがよく知っているこっちのエックスなんだよ。」
アクセルは、子供のような笑顔を見せながら話すが彼は、内心戸惑いながらもようやく壁を乗り越えられたのだと安堵する自分がいた。
あの世界のエックスは、自分の知っているエックス以上に傷つき、戦うことすら拒むほど心労していた。それが自分が見ないうちに再び戦う決意を固めたのだ。
「・・・んなわけでこれから出発するね。こっちにはスカルマンたちが残るそうだからゼロは無理しちゃダメだよ。」
「お前に言われるとはな。」
「じゃっ!」
そう言うとアクセルは、部屋から出て行った。
「・・・・フッ、この有様じゃ近いうちに出番が無くなるかもしれないな。」
彼の様子を見たゼロは、自分の醜態を含めて皮肉を込めてなのか思わず鼻で笑う。
「そんなこと言っちゃって・・・・・ゼロだってまだまだ現役でしょう。」
「それはそうだがアイツの姿を見るとまだハンターになったばかりの頃のエックスを思い出すんだ。ほんの一、二年、いや、つい最近の出来事だと思っていたのにもう随分時間が経ったんだってな。」
ゼロは、感慨深い表情で言う。
思えば自分がハンターとしてここで働くようになってから色んな出来事があった。
記憶がないイレギュラーとしての時代。
エックスとコンビを組んでシグマの反乱から戦い続けてきた日々。
友であるカーネルとの衝突と別れ。
生みの親であるワイリーとの対立。
アイリスと出会い、惹かれ合って、結婚して夫婦になるなど最初の頃の自分が想像できただろうか。
昔のままだったら職場でいつもしかめっ面で書類提出を求めてくるホーネックは、イレギュラーとして処分してしまったのかもしれない。
それだけ今の自分が恵まれているのだ。
「昔、俺は自分が何のために戦っているのか分からないでいた。“イレギュラーだから処分する”。ここに来たばかりのアクセルのように。・・・・・だが、みんなと会えてその答えは見つかったような気がする。“自分がいるこの場所を守るために戦い続けてきたんだ”ってな。」
「ゼロ・・・・」
「まだまだ先になるかもしれんがイレギュラーがいなくなって戦いが終わったらどうしような?俺はどうすればいいか考えられない。アイリスならどうする?」
ゼロは、そう言いながら彼女の方を見る。アイリスは、少し悩んだようだが少し顔を赤くして答え始める。
「そうね・・・・・私は・・・・ゼロと一緒に小さなレストランでも開こうかな?」
「レストラン?」
「うん。平和になったらそこでみんなで集まって楽しむの。もちろん、他のお客さんたちもね。それと・・・今は無理だけど私とゼロの子供を作ってそこで家族みんなで暮らしたいわ。」
「子供・・・・か。」
レプリロイドで子供と言えば、リングマンの娘であるリングのことを思い出す。
「ジジイがこの話を聞いたら喜んで作りそうだな・・・・戦闘用かもしれんが。だが、レストランに関しては俺は無理だぞ。料理の知識に関しては皆無だからな。」
「大丈夫よ、私が教えてあげるから。なら、休みとって定期的に料理教室に二人で通う?私、いいところ見つけちゃったんだ。」
「まさか、あっちの世界の方じゃないよな?」
「えっ?なんでそんなこと気にするの?」
不思議そうに聞くアイリスに対してゼロは、耳元で小声で言う。
「俺が料理しているところジジイに見られるかもしれないからな。」
ハンターベース 研究ラボ(原作エックスの世界)
一部の者を除いて静かになった深夜のハンターベース。
しかし、研究ラボは薄暗い明かりが見えていた。中ではキーボードを打ち込む音が聞こえていた。
「・・・・・・・・」
中では、データファイルが山積みになっており、その奥ではメディカルルームで休んでいるはずのエイリアがPCに表示されているデータを参照にしながら、何かを作っているようだった。
「これで・・・・・ダメだわ。これだとこっちのパーツの性能が落ちてしまう。でも、全部のパーツを一から組み立てている時間はないだろうし・・・・」
彼女は、頭を抱えながら言う。
「今までのエックスのアーマーのデータを参考にしてみたけど・・・やっぱり、私だとここが限界なのかしら?でも、今回はオリジナルが完成している。これを分解して組み込めば・・・・何馬鹿なこと考えているのかしら私。」
そんなことを言っている束の間、ラボのドアが開くとがする。休んでいなくてはいけない身だったこともあり彼女は慌てて機材をしまおうと慌てる。
「ちょ、ちょ、ちょっ、ちょっと誤解よ!?私、別に無理しているわけじゃ・・・・きゃっ!?」
慌てたことが災いして山積みになっていたファイルがバランスを崩してエイリアに向かって降り注ぐ。彼女はあっという間にファイルに埋もれてしまった。
「こんな時間に明かりがついてて消し忘れかと思って入っただけなのに何騒いでんだ?」
「だ・・・・・ダグラス・・・」
顔を出して入って来た相手を確認するとダグラスが呆れた顔で立っていた。彼は、ファイルに埋もれている彼女を引っ張り上げて助けた。
「・・・・こんな夜中にどうしてここに?」
「こんな夜中にだって?昼間、お前さんが無茶してシミュレーションルームを派手にぶっ壊してくれたおかげで徹夜作業で修理してるんだよ!?ゼロが無理やり止めたせいで制御装置も直さないといけないしよ、これだと連日徹夜しても終わらないぜ!!」
昼間のことを思い出し、エイリアは申し訳ない顔をする。
「ご・・・・・ごめんなさい・・・・」
「ったくよ・・・・・最近無理し過ぎだ。自分の体を改造するわ、無理な訓練はするわ、今度は休まなくちゃいけない時に動いているわでお前さんらしくないぜ。」
「・・・・」
「・・・・まあ、エックスが行方不明になる原因を作った俺が言えることじゃねえんだけどな。悪い。」
エックスが行方不明になっていることを一番気にしている彼女に対して流石に言い過ぎたと思い、ダグラスは謝罪する。
「・・・・いいえ、いいのよ。無理しているのは事実なんだし。それに私たちがどれだけエックスとゼロに依存していたのか・・・・・・」
エイリアは自分の手を見ながら言う。
「自分でイレギュラーを撃ってみて彼がどれだけ自分を押し殺して引き金を引いていたのか分かった気がするの。『仕事だから』とか『命令だから』と口ではいくらでも言えるけどそんな簡単なことじゃない。今まで言ってきた私が言うのはおかしいかもしれないけど。それに今まで戦ってきたエックスならこう思ったんじゃないかしら?『次に撃たれるのは自分じゃないか?』って。確かに今はイレギュラーを撃つ側として動いている。でも、自分もいつかイレギュラーになってしまうかもしれない。イレギュラーとして銃を向けられた時どう感じるのか・・・・」
彼女の顔色を窺いながらダグラスは黙って話を聞く。
彼女は過去にイレギュラーではなかったレプリロイドを上層部の命令とはいえ処分してしまった経験がある。そのせいでハンターベースに配属された当初はドライな性格へとなっていた。
ナイトメア事件の時、ある程度過去との決別は出来たものの今度はかつての自分の行為をエックスにも行わせてしまい、ただでさえ傷つきやすい彼を追い込んでしまったと後悔していた。
今回の戦闘用ボディへの改造なども彼女なりにこれ以上彼を戦線に立たせる負担を減らそうと思ったからかもしれない。
だが、彼が言い放った言葉は意外だった。
「・・・・・エイリア。お前、自分のことを過小評価し過ぎじゃねえか?」
「えっ?」
「確かに今までの事件を解決してきたのはエックスとゼロだ。それは紛れもねえ事実だ。でもよ、それを支えたのは一体誰だ?亡くなったケイン氏や俺たちだろう。俺はメカニックで戦闘向きじゃねえようにお前だってオペレーターだ。けど、自分たちの役割を果たして二人をサポートしてきたじゃねえか。」
「そうだけど・・・・」
「まっ、エイリアの場合は専門的な用語が多すぎてアイリスと比べて通信が長くなっちまうのが欠点だったけどな。でも、そのオペレートのおかげでミッションで失敗するってことはなかったし。二人とも帰って来ただろう。最前線の次に現場に近いところでサポートしてきたお前がそんなこと言っちまったら後方でしか作業していない俺なんか仕事辞めてニートレプリロイドになっているぞ?」
彼女の肩を叩きながらダグラスは、苦笑する。
「ダグラス・・・」
「さてと、俺はそろそろ作業に戻ろうかな。早く直さねえとアクセルに文句言われちまうよ。あぁ、忙しい忙しい。」
ダグラスは、そう言いながら部屋を出て行く。
「・・・・自分に自信を持てよ。そんなお前じゃ、エックスが戻ってきたとき心配されるぜ?見なかったことにしておくから後少ししたらちゃんと休めよ。」
彼は、振り向かずに最後に一言言うとドアを閉めた。エイリアはしばらく、その場で固まってしまうが崩れたファイルの山を片付けると再び作業を再開する。
「・・・・・そうよね。エックスは今までどんな戦いでも潜り抜けて来たもの。絶対に帰ってくる。・・・・だから、私も彼の戻る場所を守らなくちゃ。」
彼女は、再びキーボードを打ち込み始めた。
コンビナート
「チャージショット!!」
灼熱の溶岩が煮え滾っているコンビナートの中をエックスとアクセルは、移動しながら攻撃を仕掛けてくるメカニロイドを破壊していく。止まることなく攻撃しながら前に進んでいくエックスの姿を見てアクセルは、少しばかり驚いていた。
「エ、エックスって随分前線から離れていたんだよね?」
「あぁ、俺自身も戦いたくなかったからな。ナイトメア事件の解決後のイレギュラー討伐で負傷して以来後方支援に回るようになったんだ。」
「それにしてはなんか強すぎない?とてもブランクが長い実力には見えないんだけど・・・・」
「相手がメカニロイドだからということもあるけどね。けど、長い間戦い続けると体に戦う習慣が勝手に染み付いてくるんだ。嫌でもね。だから、引き金を引けば嫌でもあの相手の体を撃ち抜く感触を思い出してしまう・・・」
「・・・・」
「あっ・・・・アクセルには余計な一言だったかな?」
無言になってしまったアクセルを見てエックスは、心配そうに声をかける。
「ううん。エックスの言うことは別に間違っていないと思うよ。僕だって、この手でレッドを倒してしまうのかもしれない。レッドは、記憶がなかった僕に名前と生きるための術を教えて、今の僕を作るきっかけをくれたんだ。」
アクセルは足を止め、思い出すかのように話す。
「他のメンバーもそうだったけど癖が強いだけでそんな悪い奴らじゃなかったんだ。なのに・・・・僕がDNAデータをレッドに渡してからみんなおかしくなっちゃって・・・・」
「アクセル・・・・・」
「僕は、こっちに逃げてくるまで考えたことなかったけど・・・・今は正直言ってイレギュラーハンターって、そんなに格好いい仕事じゃないんだね。自分の仲間が突然イレギュラー化したら倒さなくちゃいけないし。」
「・・・・・」
「今は、ここにいるバウンティハンターを止めよう!残りのメンバーから見る限りここにいるのはハイエナ―ドのはずだ。炎の攻撃が得意なことと同時に全く同じ戦闘力を持つ分身を使うことができるから気を付けないと。」
アクセルは、仕切り直して移動を再開する。
22世紀 ロボット病院
一方、ロボット病院ではエックスの病室近くが騒然とした状況になっていた。どういうわけかドラえもんたちが入室してすぐにDr.ワイリーの率いるワイリーナンバーズが病室内を占拠してしまったのだ。病院側は直ぐにタイムパトロールに連絡するが彼らは他の患者や関係者には手を出さず、ただエックスが寝かされている病室内はサーズ、窓の外はセブンス、部屋の前はセカンズが待機していた。
「あの~~~そろそろ、患者さんの診察をしたいんだよね~!入らせてほしいんだよね~!アッハハハ~!!」
ドクターロボットは、周囲のタイムパトロール隊員の後ろに隠れながら言う。
「「「・・・・・」」」
「だから・・・・その・・・・中に入れさせてもらえないかな~~~って・・・・ダメ?」
「心配しなくても中の患者はドクターが見てくれている。貴様のようなド三流に見られなくても時間が経てば我々もここから退く。」
「ド、ド三流!?すごいショックだねー!!ショボン。」
メタルマンに一言言われ、ドクターロボットはしょんぼりしながら診察室の方へと戻って行く。
それに入れ替わるように今度がキッドが彼らの前にやって来た。
「おい、お前ら一体何しに来たかわからねえがまさか変なこと企んでいないだろうな?」
「変なこと?確かにドクターは懲りずに悪事によく働くが今回は別の件だ。中にいる奴らに手は出さん。」
「それにしては部屋から誰の声も聞こえないのはおかくしねえか?」
「今回の治療は、そこらの医者じゃどうにもできないからな。だから、協力してもらっている。」
「・・・・・万が一のことがあったら承知しねえぞ。」
そう言うと彼は警備の方へと下がっていく。それを確認するとメタルマンは、他のセカンズに警備を任せて中へと入る。
「どうだ、様子は?」
中に入るとシャドーマンを除くサーズのメンバーがワイリーのマインド・ダイブ・マシンにコードを接続させて状況を確認していた。
「今のところ、フォルテが持ち直してくれたおかげで時間は稼げている。」
マグネットマンは、緊張した表情で報告する。
「だが・・・・どれぐらい持つかはわからん。クイックとシャドーがやられるなんて計算外だったからな。こんなことならシェードをシグマのところに行かせない方がよかったんじゃないのか?」
続くようにニードルマンが言う。
「やはり、俺たちも加勢しに行った方が・・・・・」
「馬鹿言うなハード!あの二人でも敵わなかったバケモンだぞ!?俺たちが行ったところで怪我人が増えるだけじゃねえか!」
加勢に行くべきだというハードマンに対してジェミニマンがツッコミを入れる。
モニターでは黒エックスの猛威っぷりが嫌というほどわかる。
「・・・まさか、エックスの中にこんな恐ろしい人格が宿っていたとはな。確かにシェードを加えなかったのは失敗だったかもしれん。後は、エックスが復帰してうまく倒してくれればいいんだが・・・」
メタルマンたち一同は、不安を抱えながらフォルテの戦闘を見るのであった。
21XX年 コンビナート
先を急いでいたエックスとアクセルは、途中でカプセルを発見しライト博士と会っていた。
『君が別の世界のエックスか。話はゼロと君の世界のわしから聞いているよ。』
「俺の世界のライト博士と会ったんですか?」
『ウム。彼も君が戦うことを悩んでいるのに何もしてやれないということで悔やんでおったよ。』
「・・・・そうですか。俺のせいで。」
『いや、わしも彼のことを言えんよ。現にエックスに何もしてやれずにこの有様なのだからな。』
ライト博士は、暗い表情で言う。
「・・・博士のせいじゃありませんよ。それに俺は、自分の世界の博士にも感謝しています。今までの戦いも強化アーマーをもらっていなかったら事件も解決できなかったかもしれない。ただ、終わりが見えない戦いに嫌気が差し、圧し掛かってくるプレッシャーに俺自身が押し潰されそうになっていたんです。そして、耐えられなくなった俺は、自分の役割から逃げ出した。」
『エックス・・・』
「この世界の俺は、俺以上に傷つくこともあったのかもしれないし、弱音を吐くこともあったのかもしれない。・・・・でも、逃げなかった。自分の信じる仲間が帰る場所を守るために・・傷つきながら、くじけそうになりながらも戦い続けた。」
エックスは、自分の手を見ながら複雑な心境で言う。
「その中には俺が助けることができなかったレプリロイドたちもいた。イーグリード、ビートブード、ゲイト・・・・ドップラー博士や他に倒されたイレギュラーたちも。正直言って俺は無力だったんじゃないかって思うほど驚かされて、羨ましくもあった。・・・・けど、それは彼一人のおかげじゃない。その周囲のみんなの助けもあったんだって知ることができた。」
『・・・・』
「俺は、戦いにばかり目が行くようになって忘れていたんだ。周りのみんながサポートしてくれていたことを。そして、過去の事ばかり考えていた。もっと力があれば助けられたかもしれないって・・・・でも、先に進むためにはその過去を越えなければならない。俺は、それすら放棄しようとしていたんです。自分の心の弱さに・・・」
エックスは、拳を強く握ると改めて真剣な眼差しでライトの方を見る。
「・・・・けど、この世界に来て大事なことを思い出すことができました。戦うことを決意した時の想い、俺が一人じゃないってことを。今はまだ帰ることができないけど・・・支えてくれた仲間、そして、『守るべきもの』を守るために俺はもう一度戦います。」
『・・・・そうか。』
その様子を見てライトは、どこか安心しているように感じられた。
『今の君なら向こうの世界に戻っても大丈夫じゃろう。エックス、ここではグライドアーマーの残りのパーツを託そう。ボディパーツはかつてのセカンドアーマー同様の機構を採用し、ギガクラッシュの他にグライド飛行中にダメージを受けても落下する危険性はなくなる。アームパーツは、これまでのような特殊なショットはないがチャージショットの射程距離が長くなり、高いホーミング性能を持ったエネルギー弾を伴って発射出来るようにしてある。』
エックスは、早速カプセルに入る。すると欠けていた腕と胴体にパーツが装着され、グライドアーマーが完成する。
「ありがとうございます。」
『ワシは、君を元の世界に帰れるように準備をしておく。すまないが・・・しばらくの間この世界を頼む。』
「はい。この世界の俺が戻ってくるまで必ず。」
そう言うとカプセルは蓋を閉じる。
二人は最深部へと到着するとそこには、ハイエナ型レプリロイドが血走った目で喘いでいた。
「ハイエナード!でも・・・様子が変だ。」
本来の彼を知っているアクセルは、戸惑いながらも彼に近づく。
「ウゥ・・・ウゥ・・・・苦しい・・・・」
その様子は人間で言う薬物中毒者のように見えた。
呼吸には気管が詰まったような音が聞こえ、とても正気に見えない表情がどことなく不気味に感じさせられる。
「この様子は・・・・まさか、限界以上のDNAデータを取り込んでしまっているのか!?」
その異常さにエックスが言うとハイエナードは二人の方へ振り向く。
「・・・お前達か?お前達が俺を苦しめているのか?・・・・・分かったぞ!お前達を八つ裂きにすれば苦しくなくなるっ!!そうだ!そうだろ!!?そうに違いない!!」
最早末期症状で既に暴走の一歩手前だ。
「・・・・」
「・・・エックス、あれじゃもう助けられないよ。残念だけど・・・・」
無言でハイエナードを見るエックスに対し、アクセルは言う。エックスは黙って頷いた。
「あぁ。できれば連行だけで済ませたかった・・・・。」
エックスは、バスターを展開する。
「・・・・・ごめん。」
その目は悲しく見えたが強い覚悟が宿っているようだった。
「燃えろぉ――――――!!」
ハイエナードは早速三体に分身し、二体が火炎玉を投げながら二人に飛び掛かってくる。二人は、銃撃を浴びせるが消えるだけだった。
「分身か。」
「気を付けて!数は多くないけどハイエナードは直ぐに新しい分身を作れるんだ!」
アクセルが言った直後、ハイエナードは再び分身する。二体は同じようにこちらに向かってくるが本体と思われる残りの一体は、資運搬用の巨大ガゼル型メカニロイドの上に飛び乗る。
「ここは僕が引き受けるよ!エックスは、あっちの本体をお願い!!」
「わかった!」
分身の方をアクセルに任せ、エックスはハイエナードを追ってメカニロイドの上に昇る。上にたどり着くと既にハイエナードは新たに二体の分身を追加し、追って来たエックスを包囲する。
「もう次の分身を・・・・」
「「「コノヤロ――!!」」」
「うわっ!?」
三体同時のタックルを受けてエックスは、溶岩の方へ落ちそうになる。
「エックス!」
「「「ヒャッホー!!」」」
「げっ!?」
吹き飛ばされた彼を心配するアクセルだったが目の前の分身たちの攻撃でそれどころではない。
「ハイエナードの分身能力が明らかに強化されている・・・・このままだとどっちも・・・・」
エックスは、グライド飛行で滑空して、メカニロイドの上に戻る。
「「「燃えろぉ―――――!!」」」
ハイエナードは、分身たちと共に火炎弾を投げてくる。
「・・・・・ガイアシールド!!」
だが、エックスは目の前に盾を発生して攻撃を防ぐ。
「「「グルルル・・・・」」」
焦点を失い、虚ろな表情をしているハイエナードを見る彼の顔は悲しく見える。
「・・・・わかるよ。怖いんだろ?徐々に自分が自分じゃなくなって行くのが、どんどん壊れて行くのが・・・・・」
それはまるで幼い子供に対して語り掛ける親のように見えた。彼は、攻撃を受け止めながらも近づいて語り続ける。
「・・・そして、君は苦しみながらここまで戦ってきた。抗いながら。」
ガイアシールドが砕け、攻撃がエックスに命中する。
「くっ、スナイプミサイル!!」
アクセルは、ミサイルで分身を一掃すると遅れてメカニロイドの上に飛び乗る。
「エックス、ハイエナードは・・・・・」
アクセルは、目の前の様子を見て驚く。
ハイエナードが攻撃をやめていたのだ。
彼の目の前には攻撃をまともに受け、顔面から血のようにエネルギーを流すエックスの姿が見える。
「ウ、ウゥッ・・・・・」
「疲れただろう?俺にはこれぐらいの事しかできないけど・・・・・もう、終わりにしよう。」
その顔は何故かどことなく優しかった。彼は、バスターを展開し、チャージを開始する。
「グ、グ、グッ、グォオオオオオオオ―――――!!」
動きを止めていたハイエナードは、自分の死を直感したのか再びエックスに飛び掛かろうとする。
「ヤバい!エックス!!」
アクセルは、バレットを構えようとするが次の瞬間、エックスのバスターから光が発せられる。
「チャージスプラッシュレーザー。」
無数の水玉状の弾がまるでシャボン玉のように飛んでハイエナードを包んでいく。
「グ、グ、グッ!?」
ハイエナードは、泡に包まれ一瞬苦しそうな顔をするが徐々に苦しみから解放されたかのように表情が穏やかになって行く。
「ハイエナードの様子が変わった?」
体にダメージが入っている様子はない。ハイエナードは力なく、膝をつきそのまま倒れる。
「・・・・・ごめん。」
エックスは、動かなくなったハイエナードの顔にそっと触れる。彼は、これ以上苦しませずに倒したのだ。
「エックス・・・・」
アクセルは、戸惑いながらも機能停止したハイエナードを見る。
「・・・・すまない、アクセル。」
「えっ?」
「暴走していたとはいえ、俺は君の仲間を助けられなかった。」
「そ、そんなことはないよ!?」
謝罪してきたエックスに対してアクセルは、驚きながらも返答する。
「確かに助けられなかったのは事実だけど、エックスは傷つけることなくハイエナードを楽にしてくれたよ。僕がやっていたら彼を余計に苦しめていたかもしれない。むしろ感謝しているよ。」
「アクセル。」
「見なよ、ハイエナードの顔をさ。すごく気持ちよさそうな顔をしているよ。僕やゼロじゃとてもだけど真似できないよ。」
「・・・・そうか。」
二人がそんな会話をしている時、通信が入る。
「ん?ハンターベースから?こちら、エックス。」
『エックス!高度1万kmに所属不明の飛行空母がハンターベースに向かってきていることを確認したわ!!』
通信相手は、エイリアで慌ただしく内容を報告する。
「なんだって?レッドアラートのアジトか?」
『いいえ、他にも複数の小型攻撃艇を連れているから恐らく違うと思うわ。』
「休んでいる暇はなさそうだね。」
報告を聞いてアクセルは両手を組みながら言う。
「わかった。エイリア、急いでハンターベースに転送してくれ。」
『そちらに第7空挺隊が駆け付けるわ。後数分で見えるはずだから彼らと合流して飛行空母の撃退をしてちょうだい!』
エイリアがそう言うとちょうど二人の真上にデスログマーが飛行してきた。
21XX年 ハンターベース 研究ラボ(原作エックスの世界)
「ここをこうすれば・・・・・・よし!」
エイリアは、勢いよくキーボードを叩く。
「ついに出来たわ!後は、このデータを基に製作すれば・・・・」
彼女は、早速できたメモリーチップを持って部屋を出ようとする。だが、部屋のドアを開けた瞬間ゼロとアイリスがロープを持って待ち構えていた。
「あら?ゼロ?アイリスも・・・・」
エイリアは、何事かと聞こうとしたが二人はロープで素早く彼女を拘束してしまう。
「えっ?」
「メディカルルームで寝ていないと思って来てみたらまさか徹夜してラボに籠っていたとはな。」
ゼロは、呆れながら通信を入れる。
「シグナス、やっぱりラボにいた。これから拘束して無理やり休息を取らせる。ん?・・・あぁ、わかった。ダグラスの方にも無理せず休むように伝えとく。」
通信を終えると彼は、荷車を用意しているアイリスの方を見る。
「アイリス、これが終わったらダグラスに差し入れに行くぞ。」
「えぇ。」
「ちょっと、二人とも私の話を・・・・・」
「駄目です。」
訳を話そうとするエイリアに対し、アイリスは冷たく答えて彼女を荷台に乗せる。
「よし、このままメディカルルームに直行させるぞ。」
「ま、待って!せめて、このデータを・・・・」
「体調が元に戻ってからにしろ。でないと今度は独房入りになるぞ。」
「・・・・・はい。」
エイリアは、渋々メディカルルームへ搬送されていくのだった。
ハイエナ―ド戦のエックスのチャージ攻撃はなんとなくフルムーンレクトを連想して書きました。そりゃ、コスモスも青だし。