デスログマー 艦橋
「目標、依然進路変化なし!後一時間すればシティ・アーベル上空に到達します!」
デスログマーの中では、エックスたちが治療を受けている傍ら追跡している飛行空母の動向を追っていた。
「目標の大きさはどのくらいだ?」
「はい!大型クラスですがレプリフォース大戦で使用されていた大型飛行空母と同じぐらいの大きさなので恐らく街全体を空爆するには火力不足の可能性があります。」
イーグリードは、レーダーを見ながら調べている部下の報告を聞く。
「・・・・狙いはハンターベースで間違いないようだな。」
「しかし、空母周囲に展開している攻撃艇の数を確認する限りは更に被害を拡大させる恐れがあります。」
「・・・・なら、シティ上空に入る前に叩くしかなさそうだな。」
イーグリードは、厳しい表情をしながら言う。
「ですが隊長、現在我が艦で空中戦に対応できるのは護衛用のイーグル改を除いて復興作業用に使っているキメラしか搭載していません。我々が接近していることに敵が気付けば当然、攻撃艇も我々に向かってくると思われます。」
ハンターの一人が不安そうに彼を見て言う。実はこのデスログマー、復興作業を切り上げて急いで向かったため、攻撃艇を積んでいないのだ。
幸い復興作業用として使っていたキメラには、ホーク装備があるが機動力のある攻撃艇相手には分が悪い。空中戦に特化しているイーグルでも機動力不足が歪めない。
「わかっている。だから、我々はこのポイントで陽動をかける。イーグルを中心としたホーク部隊で攻撃艇の気を引かせ、その間にエックスとアクセルを空母に飛び移らせる。攻撃艇は、編隊を組んでいるから撃破するのは厳しいが司令塔である空母を落とされれば我々を相手にしているどころではなくなるだろう。シティを攻撃するどころか慌てて基地へ引き返すのが山だ。」
イーグリードは、MAPを見せながら全員に作戦を伝える。
失敗すればこちらが撃ち落されかねないが成功すれば空母を撃沈させて敵の戦闘意欲を削ることができる。
「でも、エックスたちは前の戦闘の疲労が残っているわ。あまり無理させるわけには・・・・」
彼の作戦に対してティルは、心配そうに言う。実際、手当てをしたとはいえエックスたちはハイエナ―ドたちの戦闘が終わってからそんなに時間が経っていない。
「僕たちは、大丈夫だよ。ダメージもそこまでひどくなかったし。」
「アクセル・・・」
気遣ってくれる彼女に対してアクセルは、心配ないという風に答える。
「ハイエナ―ドは、エックスが倒してくれたようなもんだから。僕がエックスをフォローするから問題ないよ。それに・・・・」
「それに?」
「・・・・・多分。指揮しているのは彼だと思うから。」
アクセルは、真剣な目つきで言う。
???
「フン!」
「グオッ!?」
黒エックスの回し蹴りが顔面に直撃し、フォルテは廃ビルに激突する。
「あちゃ~アイツまた喰らいおったわい。」
遠くでワイリーが顔に手を当てながら言う。既に再起したフォルテが戦闘を始めてから随分時間が経とうとしている。黒エックスにダメージが入ってきているのは誰の目から見ても分かるが相手は力任せな戦闘をすることで隙が多いフォルテだ。結果的に相性が悪く、ダメージの蓄積は彼の方が大きい。
「・・・・・・まだ動けるか。」
黒エックスが呆れたように言うと崩壊した瓦礫の中からフォルテが姿を現した。
「・・・・ペッ。」
フォルテは口から出ているエネルギーを拭き取ると口の中のものも吐き出す。アーマーのあちこちに罅が入り、いつ倒れてもおかしくないが目の中に宿る闘志はいまだに消える様子を見せない。
「正直、我は貴様に感心しているぞ。まさか、先ほどまで闘気を怯えていた貴様がここまで我と張り合えるようになるとはな。」
「ヘッ、影のてめえに褒められたところで何にも感じねえよ!」
フォルテは、バスターを連射モードに切り替えて攻撃を再開する。黒エックスは光弾の軌道を読み、構えを取ったまま回避していく。
「クソ!片足上げながら避けるなんて舐めた真似しやがって!!」
苛立ちを感じながらも弾速を変えず、フォルテは特殊武器を混ぜながら攻撃を続行する。
「だが、貴様は所詮『鬼』ではないもの。我を越えることはできぬ!!」
「!?」
黒エックスは、フォルテの真下に入り、紫炎を纏った拳を彼の顎に命中させる。
「ゴバッ!?」
「豪・・・昇龍拳!!」
彼は、そのまま上空につき飛ばそうとする。
「ングググ・・・!!」
「ヌッ!?」
だが、フォルテは技を受けている最中にもかかわらず、彼の腕を掴む。
「何っ!?我の技を耐えただと!?」
黒エックスは、自分の技に耐えたことに驚くがフォルテは空いている右腕の銃口を向けているのに気づく。
「チッ!」
攻撃を察知した彼は、そのままフォルテを放り投げる。
「ライトニングボルト!!」
周囲に高圧電流の落雷が発生し、黒エックスは構えを取ったまま避けようとする。
「なんの、これしきの技。」
彼は容易に回避していくが避けた隙を狙ってフォルテは、複数のリモコン式機雷を放つ。
「リモートマイン!!」
「小賢しい!!」
射程距離内に入る前に黒エックスは、スピニングブレードで機雷を一掃する。だが、爆発による煙の中からフォルテが姿を現す。
「目くらましなど笑止!!」
黒エックスは、迫りくるフォルテに対して右腕に闘気を集中させて背後に回る。
「禊・・・・何!?」
技を首に放とうとした瞬間、右手がフォルテの体から通り抜ける。
「残像・・・・・」
彼がそう思った直後背後から本物のフォルテが炎の剣で斬りかかる。
「フレイムソード!」
「フロストシールド!」
炎の剣を氷の刃で受け止められ、フォルテは口からエネルギーを血のように流しながら苦い顔をする。
「畜生!少しは隙を見せやがれ!!」
フォルテは、距離を取る仕草を取る。
「アイスウェーブ!!」
「ファイヤーウェーブ!」
勿論、ただ距離を取るのではなく反撃も行う。こちらもカウンターで相殺されてしまった。
「ハア・・・ハア・・・・」
流石にダメージの蓄積と技を連続で仕掛けた影響かフォルテは息を荒くする。
「とうとう力を使い果たしたか?」
「うるせえ!!」
フォルテは、バスターを再展開して攻撃を仕掛ける。
一方、少し離れた場所では、エックスの手当てが終わっていた。
「おい、向こうの戦闘音が大きくなってきていねえか?」
ジャイアンは、一緒に見張りをしているスネ夫に言う。
「もしかしてドラえもんやられちゃったんじゃ・・・・」
「縁起でもねえこと言うな!」
ジャイアンは、後ろの方を見る。
「しずかちゃん、のび太の修理は?」
「終わったわ。後はのび太さんが起きてくれればいいんだけど・・・・」
静香は、修理を終えたエックスの姿を見る。確かに破損した箇所の応急処置は済ませたが目を覚ます様子はない。
「もしかして、直し方間違えちゃったかしら?」
目を覚まさないエックスを見て彼女は不安になる。
「・・・・きっと目を覚ますわよ。」
「マーティさん?」
どういうわけか心配している一同とは別にマーティは、落ち着いた様子で言う。
「みんながここにいるもの。だから、絶対エックスは帰ってくる。」
「お姉ちゃん・・・・・」
玉美は、半分泣きそうな顔で彼女の顔を見る。マーティは、そんな玉美を抱きかかえながらあやす様に言葉をかける。
「大丈夫よ、静香が修理してくれたんだもん。お兄ちゃんはもうすぐ目を覚ますわ。」
「うぅ・・・・」
「大丈夫、みんなそのために来たんだから・・・・・・ねっ、エックス。」
彼女は、そう言うとエックスの顔をそっと撫でた。
21XX年 飛行空母内
10分後、デスログマーは目標の飛行空母に追い付いた。
敵は早速攻撃艇を向けてきたがイーグリードの指揮通りに動いたライドアーマー隊の陽動に引っ掛かり、手薄になったところでエックス、アクセルは無事に空母の中へと侵入することに成功した。
中では警備が厚く、二人は壁際に隠れながら迎撃していたが数の多さに押され気味だった。
「思っていたよりも警備が厳重だな。」
エックスは、バスターで敵の手足を狙って撃つ。
「この数からだとかなりやばそうなものが積み込まれていそうだよ。確実にハンターベース一点に的を絞っているんだろうね。」
アクセルは、バレットとGランチャーを使い分けながら言う。しかし、敵は集まってくる一方でキリがない。
「仕方ない。アクセル、ここに留まっててくれ。」
エックスは、表に出て敵に突っ込むと構えを取る。
「ギガクラッシュ!!」
彼が両腕を高く上げると同時に凄まじい衝撃波が発生し、大量にいた敵を跡形もなく吹き飛ばした。
「わぁ~あんなにいた敵をあっという間に消すなんて。」
アクセルは、驚きながら壁際から出てくる。
「だが、これでアーマーに蓄積していたエネルギーをすべて放出してしまった。しばらくは使えない。」
「でも、あらかた片づけたんだから問題ないんじゃない。早くしないとこの船が街にたどり着いちゃうし、急ごう。」
「あぁ。」
二人は、急いで空母の中を進んでいく。
しばらくして二人は、再び甲板の出てきた。
「ん?」
何かの気配を感じたのかエックスは足を止める。
「エックス?」
足を止めた彼を見てアクセルは、不思議そうな顔をする。
「・・・・何かが近くにいる。」
「えっ?」
アクセルは、周囲を見回しながらバレットを構える。
「・・・周りには何もいないようだけど?」
辺りを見回しても防衛メカニロイドや飛行タイプのイレギュラーの姿は見当たらなかった。しかし、エックスは前に進み、口を開く。
「・・・・どこだ?出て来てくれ。」
すると虚空に風を纏い、鴉型レプリロイドのウィンド・カラスティングが二人の目の前に現れた。
「カラスティング!」
「俺がいることを察知するとは・・・流石だな。イレギュラーハンター エックス。」
カラスティングは、腕を組みながらエックスを見下ろす。
「・・・・」
「今、お前が何を考えているのか当ててやろうか?『できれば戦いたくない』、そう思っているだろう?」
「あぁ。その通りだ。俺はこれ以上誰も傷つけたくない。」
その言葉を聞いてカラスティングは、フッと笑うがすぐに態度を改める。
「噂通りの甘ちゃんだな。だが、無抵抗なまま倒れてはくれそうにはないな。いくら甘ったれた理想を言っているとはいえ、お前の目からは相当の覚悟が見える。しかし、俺もレッドとは長い付き合いだ。悪いが抵抗はさせてもらうぞ。この船をイレギュラーハンター本部にぶつけるまではな!!」
カラスティングは、自分の武器である専用ナイフを構えながら言う。
「やるしかないのか・・・・」
エックスは、彼にも相応の覚悟でここまで来たと悟り、バスターを構えようとする。
「・・・ここは僕がやるよ。」
ところがそこへアクセルがエックスを庇うように前に出た。
「アクセル。」
「久しぶりだね、カラスティング。態々僕たちが出てくるまで待っているなんてらしくないじゃん。アンタなら真っ先に飛んで来ると思ってたのに。」
「・・・・フッ、相変わらずの口だな。戻る気はないんだな?」
「わかってるくせに・・・・」
アクセルは、バレットを回しながら言う。エックスは、その様子を見て恐らくこれがこの船に乗り込む前にアクセルが言っていたことなのだろうと理解した。
「やり合う前に一つ教えてよ。アンタもストンコングも結構レッドとの付き合いが長かったよね?」
「今更何を言っている?」
「アンタもレッドと同じ元レプリフォース出身かなって思ってさ。どうなの?」
『レプリフォース』という単語を聞くなり、カラスティングは意外そうな表情をする。
「お前の口からその言葉が出るとは驚いたな。確かに俺も元レプリフォースだ。とは言っても空軍であるエアフォースの方だったがな。」
「なんでやめたのさ?アンタの実力なら非合法なバウンティハンターよりも軍人として有名になれたんじゃないの?」
「組織の弱さに呆れた・・・・とでも言うべきか。レッドも同じようなことを考えていたと思うがあの当時のレプリフォースは、組織の規模に反して脆弱なところが多かった。俺の所属していたエアフォースも同じ、指揮官であり、本部の参謀長でもあるフクロウルの爺さんは知将と呼ばれている割には、一度切れると総攻撃をしようと全軍を出動させようというお粗末な有様・・・・おかげで振り回されていた俺は組織というものに嫌気を差すようになった。だから、レッドたちが抜けると分かった時一緒に辞めることを決めた。尤もレッドとは訓練でも度々相手にしてもらっていた縁もあったからな。」
カラスティングは、思い出しながら苦笑する。
「アンタも苦労人だったんだね。」
「もう、過ぎたことだ。そろそろ行くぞ!!」
カラスティングは、素早く飛び、アクセルをナイフで切り裂こうとする。
「おっと!?」
以前とは比べ物にならない彼のスピードに驚きながらもアクセルは、バレットでガードをする。
「以前よりも速くなっている!?」
「流石に他のメンバーを相手にしていたことはあるな。以前のお前だったら一瞬で首を刎ねることができたんだが・・・エックスの前の前哨戦としては楽しませてもらえそうだな!!」
そう言うとカラスティングは、アクセルから離れる。
「あのスピードで回り込まれたらマズい!」
アクセルは、牽制としてショットを連続で放つが飛翔しているカラスティングは容易に回避していく。
「射撃の精度も上がっている。いいぞ、アクセル。お前の力をもっと見せてみろ!!」
彼は、翼からミサイルを複数発射する。
「くっ!」
アクセルは、スナイプミサイルを発射して相殺させるが爆煙からカラスティングが出てくる。
「が、ガイアシールド!!」
彼は直ぐに目の前にシールドを出現させて防御態勢に入る。しかし、カラスティングは彼の目の前に着地し構えを取った。
「えっ!?」
「俺が斬りつけに来ると思って油断したな。ハァ!!」
カラスティングは、ギガクラッシュのような体勢で衝撃波を放つ。衝撃波はガイアシールドを貫通し、アクセルを襲う。
「うわあああ!?」
アクセルは、衝撃で甲板の端の方へと吹き飛ばされて姿を消す。
「アクセル!!」
「次はお前だ。エックス・・・・・グッ!?」
アクセルを倒したと判断したカラスティングは、続いてエックスを指名しようとしたが急に頭を押さえ始める。
「グ・・・・グワアァ!!」
「あの症状は・・・・まさか君も・・・・」
激しい頭痛なのかその場で膝をついてしまった彼を見てエックスは、今までのメンバーと同様にDNAデータの過剰摂取による副作用だと見抜く。
「ハア・・・ハア・・・・これで分かっただろう?俺自身、もうそう長くはない。」
「何故、そこまでして戦おうとするんだ!?おかしくなってしまうほどにまでDNAデータを使って・・・・そんなにレッドの命令に従うことが大事なのか!?」
頭を押さえたまま立ち上がるカラスティングに対してエックスは、問いかける。
「ハア・・・・俺も『センセイ』の改造によってご覧の有様だ。いつ自我が崩壊して暴走してもおかしくない状態だ・・・・だが、完全に自分で無くなる前に見ておきたいことがあった・・・・・」
「見ておきたいこと?」
「アクセルが・・・・・・お前たちの所へ行って本当にレッドを越えられるほどの実力を身につけられたのか・・・または・・・アイツが憧れていたお前とゼロがどれだけの実力を持っているのか、その価値に値するのかこの目で確認しておきたかったのさ。」
「カラスティング・・・・・」
エックスは、彼の姿を見て戦死したイーグリードとの戦いを思い出す。彼もまた自分に未来を託すに値するかを試すため自ら悪を演じ、戦いの果てに散って行った。
(彼もまたアクセルに何かを託そうとしているのか?)
「だが、アイツはどうやら超えるほどの実力は身につけられなかったようだ。さあ、エックス!今度は貴様の力を見せてもらうぞ!」
激痛が引いたのかカラスティングは、頭から手を放してエックスに標的を変えようとするが背後からの気配を感じた。
「うん?」
振り向くとそこには衝撃波で甲板から吹き飛ばされたと思われたアクセルの姿があった。
「アクセル!?」
「ひどいよ、カラスティング。僕が落ちたことを完全に確認しないで勝った気になっちゃってさ。」
アクセルは、傷を押さえながら言う。急所ではないがかなり深い傷を負ってしまったようだ。どうやら、事前に展開したガイアシールドのおかげで衝撃波の威力が緩和してくれたらしい。
「チッ!俺としたことがこんなミスをするとは!!」
カラスティングは、思わず舌打ちする。
「そうでもないよ、アンタの攻撃・・・・結構効いたからね。」
アクセルは、苦笑しながら言う。実際に立ってはいられるもののこれ以上の激しい戦闘はハンデが大きい。エックスは、アクセルを後方に下がらせて自分がカラスティングの相手をしようと考える。
「アクセル、その傷じゃこれ以上の戦闘は・・・・・」
「さっきはカラスティングの攻撃に警戒してうまく動きが取れなかったけど今度は大丈夫だよ。」
「しかし・・・・」
「やらせてよ、エックス。カラスティングは、僕自身で止めなくちゃいけないんだ。レッドを止めるためにも。」
アクセルは、そう言うとアクセルバレットを構えなおしてカラスティングと向き合う。カラスティングの方も今度は確実に仕留めるとばかりに鋭い眼差しを向ける。
「まさか、その傷で第二ラウンドと行くつもりかアクセル?エックスと変わってもらった方がいいんじゃないのか。」
「これくらい総長と戦った時に比べれば大したことないよ。」
「イノブスキーの事か。あの暴走組と一緒にされるとは舐められたものだな。」
カラスティングは、距離を取ると先ほど以上の数のミサイルを飛ばす。対するアクセルは、Gランチャーを取り出す。
「バカめ、そんなバズーカ砲でこの数を撃ち落とせるものか!」
「どうかな?普通のバズーカだったら確かに無理かもね。」
アクセルは、接近してくるミサイルに向かってランチャーを構える。
「ん?何故すぐに撃たない?」
構えたもののすぐにバズーカを撃たないのを見てカラスティングは、驚きを隠せない。
(今までのアイツならすぐに迎撃を行うはず。そうしなければ、落とし切れず自分に被弾してしまうからだ。だが、アイツは弾速が速いバレットではなく、弾速が遅いバズーカを選択した。一体何を・・・)
バズーカ系の武器は、ライフル系の銃器と比べると火力が高いが弾速が遅いことで軌道を読まれて避けられてしまう。そのため、使うのは後方支援を行う一般ハンターが多い。
いくら自分たちと比べて経験が浅いとはいえ、アクセルもそのくらいのことは熟知しているはず。にもかかわらず、バズーカを選んだ上にすぐに撃たない。一体何を考えているのか。
「エクスプロージョン!」
ミサイルが全弾ほぼ自分の至近距離に集まった瞬間、アクセルはGランチャーの引き金を引く。すると彼の目の前に衝撃波が発生し、ミサイルは次々爆発していった。
「バカな!?」
「ボルトトルネード!!」
動揺した隙を見てアクセルは更に武器をバレットに持ち直し、電気の竜巻を発生させて飛ばす。
「グオッ!?」
動くのが遅かったカラスティングは、防御の姿勢を取るものの攻撃をまともに受けてしまう。同時に頭痛が再発してしまう。
「グウゥウウ!!まだだ!!」
カラスティングは強引に竜巻の中から抜け出し、アクセルに急接近する。
「アクセル!」
「わかってるよ!」
アクセルは、Gランチャーを戻してレーザー銃『レイガン』に持ち替える。こちらはバレットよりも出力が低いため、一発の威力は弱い。しかし、連射性能を高めることによってエネルギー弾が鋭利な形状になっており、かつてエックスが装着したファルコンアーマーのスピアチャージショットのように敵の装甲を貫通することができる。
「ウオォオオオ!!」
カラスティングは、体を弾丸で貫かれながらも突進してくる。
「カラスティング!」
「アクセルゥウ!!」
凄まじい気迫を出しながら彼は、着地寸前ナイフを飛ばす。ナイフはアクセルの目を掠め、一時的ながらも視力を奪った。
「しまった!?目が!?」
「どうだ!いくらお前とてこの目潰しで俺の姿がまともに見えまい!!」
カラスティングは、残ったもう一方のナイフで首を刎ね飛ばそうとする。
「まずい、あの距離じゃ・・・・」
エックスは、バスターを展開して攻撃を阻止しようとするがナイフは、アクセルの首へと迫る。
「間に合わない!!」
「とどめだ!アクセル!!」
???
薄暗い部屋の中。
薄い照明に照らされ、機能停止していたレッドは、目を覚ました。
「・・・・・」
『随分と派手にやったようだな。』
照明が届かない暗闇の方から声が聞こえてくる。その人物が誰なのか、レッドには分かる。
「アンタか。まさか、あんな場所にまで来て俺を回収するとはな。」
『お前にはやってもらわなくてはならないことがある。だから、その場でゼロに捕まってもらっては困るのだよ。』
『センセイ』と呼ばれている謎のレプリロイドは、そう言いながらレッドにある映像を映す。カラスティングとアクセルが戦っているところだった。どうやら、戦闘はほぼ互角のようである。
「・・・・」
『正直、彼の能力にはこの私も驚いているよ。あの短期間とはいえ、パワーアップした彼らを相手にエックスとゼロに劣らぬ活躍をするのだからな。』
「けっ。」
面白くなさそうに舌打ちをするとレッドは、自分の体の状況を確認する。
「・・・・完璧に直っているな。」
『当たり前だ。だが、それだけではない。』
「フッ、DNAデータを追加で入れやがったのか。」
『察しが早いな。』
「アンタに散々使いまわされれば嫌でもわかるさ。」
レッドは、モニターの戦闘を見ながらこの戦いが始まる直前の出来事を思い出す。
それは、アクセルがレッドアラートから脱走した直後の話だった。
その日の依頼が終わって戻ってきた彼は、『センセイ』と話をしているところだった。部屋のモニターには各バウンティハンターの姿が写されており、今まで以上の強化がされていることがうかがえる。
『フフフフッ、わかっただろう。DNAデータはこうやって使うのだ。』
「信じられんな。まさかあのDNAデータでこれほどのパワーが身に付くとは!アンタ、すごいな!!」
彼が宝の持ち腐れと言った物。
それは、レプリロイドの『DNAデータ』だった。手始めにサンプルとしてアクセルからDNAデータのコピーをもらい、そこから解析してメンバーに改造を施したのだ。
するとそんなに時間が経っていないにもかかわらず、各メンバーは信じられないほどパワーアップしていった。
元軍人であったレッドにとって、使い物にならないと思っていた代物にこんな使い道があったのは本当に驚かされた。
『少しは私のことを認めてくれる気になったかね?しかもこの程度で驚いてもらっては困る。私に掛かれば君たちをさらに強化できる。』
「なんだと?まだ、強くなれるというのか?」
『そうだ。だが、そのためには逃がしてしまった彼の力が必要になる。そして、もっとデータを集めさせるのだ!そうすれば君たちを最強のハンターにしてやろう!』
この誘惑の言葉にレッドは、乗りかかろうとしていた。
更に強くなれば、自分たちに太刀打ちできる相手はいなくなる。レッドアラートという組織をより強く、イレギュラーハンターよりも頼りになると知らしめることができる。かつて、レプリフォースの信用を蹴落とした時のように・・・・・
しかし、同時にある罪悪感もあって踏みとどまった。
「それは無理な話だ。きっと、奴は戻ってこない。薄々俺たちが手を出しちゃいけないものに触れちまったことに感づいちまっただろうからな。もう、自由にしてやるさ。それにパワーアップももう十分だ。メンバーの何人かが一般レプリロイドに手を出しているからな。」
レッドが気にしているのは、メンバーの中で数人がDNAデータを目当てに一般レプリロイドを襲いだしていることだ。今はまだ数名程度で済んでいるがこれ以上強化をしたらさらに増えるかもしれないと懸念していた。
だが、『センセイ』はその言葉を聞くとフードの下の目を細める。
『フン、力はもう必要ないか。お前達にはそれぐらいで十分かも知れないな・・・・だが、彼にはまだ最後の仕事が残っている。』
「最後の仕事?どういうことだ?」
『肝心のデータが揃っていない。最強のレプリロイドのデータがな・・・・・』
「データ?まさか、てめえ。俺たちを・・・アクセルを利用してやがったのか!?」
『センセイ』の反応を見て、レッドは今まで自分たちが利用されていたことに気づく。彼は、ビームサイズを展開すると距離を取って臨戦態勢に入る。
「もうお終いだ。奴を探す気はない。それにこれ以上罪もないレプリロイドを襲うのもゴメンだ・・・・それはアイツが最も嫌ってたことだからな。」
『残念だな。協力しないと言うのか・・・・クックックッ、しかし彼等はどうかな?』
『センセイ』は、不敵な笑みを浮かべると部屋のドアを開く。
そこには仲間であるメンバーたちがいた。だが、その目は焦点が合わず、正気ではなかった。
「ど、どうしたんだお前ら!しっかりしろ!!きさま!俺の仲間に何をした!?・・・・・グッ!?」
レッドが仲間たちに対して叫ぶと同時に彼自身も激しい頭痛に襲われる。
「て、てめえ・・・・・」
『フフフフッ、パワーアップの恩返しをしてもらおうと思ってね。さあ、どうする?簡単な等価交換だ。元の彼等に戻して欲しければ私の言うことを素直に聞いてもらおう。あの小僧を連れ戻し、最強のイレギュラーハンター「エックス」のデータを手に入れるんだ!!』
(自業自得とはいえ、こんな奴の言いなりになる羽目になるなんて俺も堕ちたもんだな。すまねえ、みんな。)
彼は、感慨深い表情をして部屋から出て行った。
『センセイ』の方は、依然とアクセルとカラスティングの戦闘を見ている。
『この調子では持ちはせんな。だが、最後の仕事はやってもらおう。あの空母をハンターベースにぶつけるという仕事をな。』
飛行空母 甲板
同じ頃、甲板上では決着がついていた。
「・・・・・・」
「あ・・・あ・・・・」
ほんの一瞬だった。
カラスティングが首を刎ねようとした瞬間、アクセルは僅かな気配と勘を頼りに彼の胸部に向かってバレットを構え、ムービンホイールを発射。彼の胸を抉り取った。
「や、やるようになったな・・・・・・・アクセル!」
カラスティングは、最後の抵抗のようにナイフを彼に向けるがそのまま仰向けに倒れる。
「ハア・・・・ハア・・・・危なかった。」
アクセルも気が抜けたのかその場で尻餅をつく。
「大丈夫か?アクセル。」
傷のこともあり、エックスは急いで彼の元へ向かい容態を確認する。
「僕は、平気だよ。危うく首がすっ飛ぶかと思ったけどね。カラスティングの方はどう?」
アクセルは、エックスに肩を貸してもらいながら立ち上がる。カラスティングの方は、急所をやられたものの致命傷ではなく、修理は可能なレベルだった。
「あ、アクセル・・・・お前・・・・この期に及んで情けを・・・・」
「勘違いしないでよ。アンタの方だって僕の視力奪って倒そうとしたんだから。それに運が良かっただけで少しでもずれていたら僕があの世逝きだったよ。」
視力が回復していないこともあってアクセルは、支えられながら皮肉を込めて言う。
「フン・・・運も実力の一つだ。強くなったな・・・・・」
傷口を押さえながら彼は、ゆっくりと起き上がり二人と対峙する。
「僕なんてまだまだだよ。エックスもそうだけど僕よりも強い奴なんてたくさんいるよ。ゼロとアイリス、ハンターベースのみんな、スカルマンとか。」
「そうか・・・・所詮紛い物で力を得た俺では勝てないわけだ・・・・ウゥ。」
「「カラスティング!!」」
二人は、膝をついた彼に近づく。
「ダメージが大きいせいだな。早くハンターベースに連れて行って修理してもらった方がよさそうだ。」
「そうだね・・・でも、どうやって船に戻るの?僕も目がよく見えないからうまく動けないし。」
アクセルは、困った顔をして言う。
「心配ないさ。カラスティングが負けた以上イーグリードたちの方の敵も引き返すはずだ。後は、ティルに連絡して転送してもらえば・・・・」
その直後だった。
急に空母の各所が爆発し始め、高度が下がり始めた。
「うわっ!?」
「何が起きたんだ!?」
エックスたちは突然の爆発に動揺する。そんな中、何かを悟ったのかカラスティングは、口を開く。
「どうやら、『センセイ』が保険として仕掛けていたようだ。」
「「保険!?」」
「万が一に俺が敗北したことを想定し、この船で被害を出せるように爆弾を忍ばせていたんだ。確かに今の距離じゃハンターベースにぶつけることはできないが街に墜とすには打ってつけだ。」
カラスティングは、そう言うと傷口を押さえながら船の中へと向かう。
「カラスティング!」
「エックス、アクセルを頼む。俺は、この船をできるだけ被害の届かない場所へ移動させる。高度が下がってきているとはいえ、まだ操縦系は生きているはずだ。」
そう言うと彼は、船の中へと入ってしまった。
「カラスティング!」
アクセルは、目が見えない状態ながらも彼を追おうとする。
「その目じゃ無理だアクセル!」
「でも!」
爆発はさらに激しさを増す。エックスは、これ以上留まるのは危険と考えデスログマーに通信を繋げる。
「こちら、エックス。船が落ちる。急いで転送を・・・・・」
「エックス!」
「気持ちはわかるけど・・・・・俺たちにはもうどうすることもできない。・・・・悔しいけど。」
エックスは、無念そうに声を低くしながら言う。
一方、空母の操縦室ではカラスティングが操縦桿を握り、船のコースを変えようとしていた。
「このコースからだと・・・・海か!」
直ぐに舵を回し、落下していく船のコースを変更する。部屋の中は既に炎が燃えており、彼は身を焼かれながらも操縦をやめなかった。
船はコースを変え、市街地から海の方へと向かって行く。
「もうすぐだ・・・・もうすぐ・・・・・」
体から火花が散り、警告音が鳴り響く。カラスティングは、これが己の最期だと悟る。
「レッド・・・・アクセルは・・・・アンタが想像していた以上に成長していたぜ・・・・アイツなら・・・・きっと・・・」
高熱で溶けた鉄柱が倒れ、彼を押し潰す。彼は意識が朦朧としていく中、ここにはいないアクセルに言葉を送る。
「アクセル・・・・・後は・・・・・頼んだ・・・・・ぞ・・・・・・」
彼が事切れると同時に操縦室は崩壊し、船は火を上げながら沖へ向かって堕ちて行った。
エックスとアクセルが脱出して約20分後。
レッドアラートが保有する飛行空母は、コースをシティ・アーベルから海の方へと変え、撃沈。
幸い沖で沈んだこともあって沿岸部に被害はなかった。
デスログマーで手当てを受けている二人にその報告が届いた時、アクセルは悔しそうに拳を握り締めた。
助けることができなかった自分への無力さを呪うものなのか、それとも『センセイ』に対する怒りなのか。
それは、アクセル本人のみが知る。
次回は、本作のエックス視線に戻す予定・・・・だと思う。