クリムゾンパレス
宇宙でのシグマとの戦いを終えてゼロたちがクリムゾンパレスの中へと戻ろうとしていた頃、シグマはエックスへの攻撃を終え、ダブルギアと同時に併用した影響で排熱作業を行っていた。
「・・・・終わったか。」
反応がないことからシグマは、エックスが死んだと考えた。
いくらバリアを展開していたとはいえ、パワーギアでブーストした大出力レーザー砲を直に受けていたのだ。一般のレプリロイドどころか巨大メカニロイドに致命傷を与えられるほどの威力だ。
これには流石に過剰過ぎたと感じた。
「ふむ、別世界の私には悪いことをしたな。」
シグマは、そう言いながらレーザー砲を収納しようとする。
「・・・・・ん!?」
その直後、自分の前方から気配があることに気付く。
まさかと思い彼は、目を凝らして見る。
「・・・・・くうぅ・・・」
「なんと!?」
なんとそこには消し飛んだと思われていたエックスが腕をクロスしながら立っていた。全身からは凄まじい量の水蒸気が発生し、無事ではないことは確かだがほぼ五体満足の状態だった。
「あれだけの大出力のものを受けていたというのに・・・・・・まさか、水?」
シグマは、エックスの体から発せられる蒸気を見ながら推測する。
確かにエックスは、レーザー砲をまともに受けた。しかし、まだチャージボルトルネードのバリアが残っているうちに彼は自分の全身にスプラッシュレーザーを弱めて撃っていた。これはアクセルがレッドの戦闘で使っていたものの応用で敵の動きを奪うのではなく、自分の体を守る保護膜として利用したのだ。
実際、彼は過去のイレギュラーとの戦いにおいて水中ではバスターなどのエネルギー光弾の威力が落ちてしまうことを学習している。そこで今回は腕を交互に組んで全身に威力が皆無となったスプラッシュレーザーで保護膜を作り、レーザーの熱で蒸発していく表面を補うように供給し続けていたことでエネルギーを自分の周囲へ拡散させ、ダメージを最小限に抑えることに成功した。
そして、そのダメージはアーマーのボディパーツへと蓄積された。
「まさか!?」
腕のクロスを解こうとした瞬間、シグマはエックスが次に何をしようとしているのか理解した。
「ギガクラッシュ!!」
両手を掲げた瞬間、エックスの周囲に衝撃波が発生する。
「ぬおおおおぉおおっ!?」
冷却は完了したとはいえ、ダブルギアの反動で動きが鈍っていたシグマは、そのまま衝撃波に呑まれて吹き飛ばされる。そして、そのまま壁に激突して落ちてきた瓦礫に埋もれていった。
「・・・・・ハア、ハア。」
体の全身から煙を吹き出しながらエックスは、その場で膝をつく。同時にゼロたちが転送で戻ってきた。
「エックス!」
三人は、部屋の惨状と彼の姿を見るや急いで駆け寄る。エックスは、首を挙げて三人の顔を見るとホッとしたような表情をした。
「みんな・・・・無事だったんだね。」
「当たり前だ。お前も随分無茶したようだな。」
「まあね。」
「ぬううおぉお・・・・」
「「「!?」」」
三人は、声が聞こえたところに目をやると生き埋めになったシグマが瓦礫をどかして姿を見せていた。ギガクラッシュを近距離で受けた影響で外装が外れて剥き出しになり、武装は辺りに散らばっていた。更に胸部に鉄柱が突き刺さり、イレギュラーとはいえ、痛々しい姿であった。
「・・・・・」
「アクセル?」
そんなシグマを見てアクセルは、無言で近づいて彼に銃を突きつけた。
「アンタの負けだよ、『センセイ』。」
「小僧か。」
「アンタのおかげでレッドアラートは滅びた。レッドも一緒にね。」
「・・・・・それで私を殺すというのか?ヌッフフ、無駄ことを。」
脅しのように突き付けてくるアクセルに対してシグマは余裕そうに語る。
「例え私をここで殺してもどこかで蘇るぞ。姿を変えて何度もな。」
「知ってるよ。でも、この距離から撃てばしばらくは生き返らないんでしょ?だったら、撃たせてもらうよ。」
彼は、頭に銃を突きつけて引き金を引こうとする。
「小僧。貴様、一つ大事なことを見落としているな。」
「えっ?」
その直後、シグマの頭部が勢いよく飛び出してアクセルに直撃する。衝撃で彼は体勢を崩し、それを狙うかのようにシグマの体が動いてバレットを奪い、拘束すると頭部に銃を突きつけた。
「クッ!?」
「「アクセル!?」」
「フッフフフフ、形勢逆転だな。」
シグマは飛び出した頭部を反転させることで再装着し、エックスたちと対峙した。
「シグマ!」
「エックス。お前の可能性、確かに見させてもらったぞ。それに免じて今回は私の負けを認めよう。だが、手ぶらではドクターに申し訳ないのでな。手土産としてこの小僧を頂くぞ。」
「ふざけるな!」
三人は、バスターを向けるがシグマはアクセルを自分の前に突き出して盾にする。
「アクセル・・・・」
「さあ、どうする?この小僧を犠牲にして私をここで討ち取るか?」
「うぅ・・・・」
「みんな!僕に構わず撃って!早く!!」
アクセルは、自分の失態を悔いながらも撃つように強要する。
しかし、三人はどうしても撃つことができなかった。ここで彼ごと撃ってしまえばそれこそレッドに申し訳が立たない。
「・・・ダメだ、俺には撃てん。」
レッドの最期を間近で見たこともあり、ゼロはバスターを戻してしまう。
「ゼロ。」
「二人とも、悪いが下してくれ。ここでアクセルを撃つことはできない。」
彼に言われてエックスとアイリスもバスターを戻す。その様子を見てシグマは、満足そうだった。
「賢明な判断だ、ゼロ。どれ、ここも直に崩壊する。道を空けてもらおうか?」
「・・・・」
三人は、悔しそうな顔を浮かべながら道を空ける。そこには脱出用の転送装置が待機していた。
「クッククク・・・・ドクターもさぞお喜びになるだろうな。DNAデータを用いて姿を変えるレプリロイドのサンプルが生きた状態で手に入れられるのだからな。」
シグマは、アクセルを捕らえたまま転送装置へ歩き出そうとする。
その瞬間だった。
「ングォオッ!?」
突如シグマの胸部からビームの刃が突き出てきたのだ。エックスたちは愚か、拘束されていたアクセルも何事かと呆気にとられる。
「なっ・・・・こ、これは・・・・」
シグマは、自分の胸部から突き出ているビーム刃を見るとそれはどこか見覚えのある鎌状のものに見せる。
「この刃先・・・もしかして!?」
アクセルは、動揺して拘束を緩めたシグマの手から離れて後ろを見て見る。そこには既に戦えるかどうかも怪しいぐらいボロボロになっていたものの懐かしい顔があった。その顔を見て4人は、思わず声を上げる。
「「「「レッド!?」」」」
シグマを後ろから攻撃したのは奈落の底へ姿を消したはずのレッドだった。シグマもその存在に気付く。
「レ、レッド!?貴様・・・・・・死んだはずでは・・・・」
「どうだ?・・・・・死神の鎌の味は?えぇ!?センセイよぉお!!」
レッドは、ほとんど動けない体に鞭を打ちながら鎌でシグマを持ち上げる。
「お、おぉおお!?」
「俺が本当にスクラップになったかどうかちゃんと確認すべきだったな!!そして、これが今までの礼だぁ!!」
彼は、そのままバックドロップをするような態勢でシグマを床に叩きつけるとそのまま勢いよく蹴り飛ばす。
壁を突き抜け、シグマはそのまま外に放り出されて地上へ真っ逆さまに落ちていった。
「うぉおおおおおおおおお!!」
エックスとゼロは、彼の断末魔を見届けると倒れているレッドの方へと駆け寄る。アクセルも動揺しながら彼を抱き起す。
「レッド・・・・本当にレッド・・・・だよね?」
今も信じられないのか彼は、傷だらけの体を見ながら言う。その顔を見てレッドは呆れたように答える。
「・・・・これが幽霊に見えるか?心配すんな、足はちゃんと生えてる。」
「でも、あそこからどうやって助かったの?」
「それは・・・・・」
「「「「お~い!!」」」」
そこへ複数の呼びかけ声が聞こえてくる。ゼロが声のした方へ行くとそこにはドラえもんたちが駆けつけていた。
「ドラえもん!?」
「あっ、ゼロさん!みんなも無事で・・・・今はそれどころじゃなかった!!」
ドラえもんは、急いでポケットからお医者さんかばんを取り出してレッドの方へ行く。ジャイアンたちは、エックスを見て驚いている。
「「わぁ~~!!本当に“本物のエックス”だぁ!!」」
「お兄ちゃん、そっくり!」
「そうね。」
「えっ?」
一同の反応にエックスは、戸惑う。そんな彼らに対し、ゼロは状況を考えて話を切り替えようとする。
「お前たち、向こうの世界のエックスの所へいたんじゃないのか?」
「うん。まだしばらく入院しなくちゃいけないから先に直接伝えた方がいいかなっと思ってこっちの世界に来たんだよ。」
「けどよぉ、ドラえもんのタイムマシンの座標固定位置がまだ安定していなかったからこの建物の真下に来ちまったんだよ。そしたら、上からあのおっさんが・・・・」
ジャイアンとスネ夫の説明でゼロは、ある程度察しがついた。あの時確かにレッドは地上に向かって落ちていった。
そこへタイミングよく、時空間からドラえもんたちの乗ったタイムマシンが落下先に出現してくれたおかげでキャッチできたのだ。
重傷のレッドが自分たちの目の前に落ちてきたことで当然彼らは混乱。
結果、タイムマシンの態勢を立て直してクリムゾンパレスに戻り、動ける程度にまで応急処置した彼が先に駆け付けたということだ。
「ったく、俺もついてねえぜ。折角、アイツらと会えるかと思ったらこんな形で助かっちまったんだからな。」
レッドは、ため息をつきながら言う。そんな彼の反応を見てゼロは、鼻で笑った。
「カーネルのおかげじゃないか?」
「あぁ?」
「『ここはまだ貴様の来る場所じゃない!そう簡単にこっち側に来るな!!』ってな。アイツのことだから幽霊になって無理やり助けたと言っても有り得るぞ。」
「・・・・フッ、幽霊か。オカルトもんは信じないがアイツなら化けて出てもおかしくはねえ。ジェネラルのジジイはないだろうが・・・・中途半端なことが嫌いな奴ならな。」
レッドは、口元を緩めて笑う。そうしている間にもクリムゾンパレスの崩壊は進んでいた。
「みんな、ここは危ない!早く脱出しよう!!」
エックスは、これ以上この場にとどまるのは危険と考え撤収を呼びかける。ドラえもんは、急いでレッドの応急処置を済ませる。
「これで動く分には大丈夫です。」
「お、おう・・・・大分楽にはなった。」
レッドは、ゆっくりと起き上がる。一応歩けるぐらいにしたとはいえ、無理の繰り返して数歩歩くと倒れそうになる。
「おっと!?」
アクセルは、慌てて走って彼を支えた。
「大丈夫?レッド。」
「ヘヘッ・・・・俺がお前に肩を貸してもらう日が来るとはなぁ。」
「いいじゃない。今まで頑張って来たんだからさ、こんなことがあったって。」
「言うようになったな、お前も・・・」
「エックスとゼロにはまだまだ敵わないけどね。」
彼は、自虐染みたことを言いながらも顔は笑っていた。
一同は、シグマが使おうとした転送装置を利用して地上のハンターベースへと帰還した。
プルプルプルプル・・・・・・・
「うむ・・・・・またもやしくじってしまったか。」
地上に落ちたと思われていたシグマは、ボディを捨てることでどうにか生き延びていた。
「しかし、まさか別世界のエックスに会うことになるとはな。アチモフ一味も最近別の平行世界に目を付け始めているようだし、私とドクターもこれからは、別世界への進出を考えた方がいいかもしれんな。」
頭のプロペラを回転させながら、彼は崩壊していくクリムゾンパレスから離れて行く。
「まあ、レッドを通じてあの小僧のDNAデータのサンプルが回収できただけでも良しとするか。隠し拠点に予備のボディ何が残っていたかな?できれば、ネコ型は選びたくないな・・・・・」
数日後。
クリムゾンパレスの崩壊により「レッドアラート」の事実上の壊滅がイレギュラーハンターにより発表された。
内容は、密かに復活していたシグマがメンバーを洗脳して組織を掌握。その後、独自に編み出したのか他のレプリロイドからDNAデータを奪って強化する実験をしていたとされ、保護されたメンバーの処遇は不問とされた。
一時はDr.ワイリーも絡んでいるのではないかと疑われていたが彼は今回に限っては不干渉で寧ろ意識不明になっていたエックスの治療に貢献していたことが後に判明した。
アクセルは今回の騒動における活躍でイレギュラーハンターへの入隊が認められた・・・・・がしかし、筆記試験での成績がひどかったため、本来A級になるところをB級にされると言う何とも不名誉な門出となってしまったのであった。
一方、生き残ったレッドアラートのメンバーもそれぞれの道を選んだ。
バニシング・ガンガルンは、更生施設を出所した後にライドアーマーの操縦技術を見込まれて現在進められている軌道エレベーター『ヤコブ』の建設チームへの配属が決まる。
トルネード・デボニオンは、まだはっきりとしたことは決めていないが元々興味を持っていた音楽活動をすることに。そこに目を付けたジャイアンに「是非、作曲兼グループメンバーとして参加してほしい!」と懇願され、よりによって『ストロング・スパーキングズ』第三のメンバーになってしまう。ちなみに彼の書いた歌詞は素晴らしいようで一部の音楽活動家からの評価は高い。歌が他のメンバー同様音痴でなければ。
そして、レッドは・・・・・・
レプリフォース本部 独房
「・・・・・」
クリムゾンパレスから脱出した後、レッドの身柄はレプリフォースに引き渡された。彼は治療の後に独房に入れられるが特に抵抗する様子もなく、治療中で体が動けないこともあって大人しく本を読むか端末で世間の情報を見るかで暇をつぶしていた。
「ハハハッ、筆記が壊滅的でB級にされたのか。そう言えば、勉強なんて満足に教えてやんなかったからな・・・」
アクセルからのメールを見て彼は、苦笑していた。元々傭兵稼業だったこともあり、彼には最低限のことしか教えていなかったことがこんな形で仇になるとは予想もしなかった。メール後書きには『現在、A級に上がれるようにパレットに勉強教えてもらっています。』と綴られていた。
「レッド、身体の方は大分マシになったか?」
そこへフクロウルがペガシオンを連れて部屋の前に来た。
「おう、じいさんか。」
「貴様・・・・将軍に対して失礼にも程があるぞ。」
レッドの礼儀知らずの発言にペガシオンは、顔を顰める。入隊した時期が彼が除隊した後のため仕方のない反応だが。
「よい、コイツの口の悪さはよくわかっているからな。」
「将軍・・・・・」
上官に制されたことでぺガシオンは少し後ろに下がる。
「んで、俺になんか用か?まさか、今更不問から処分に変更とかっていう悪いジョークでも言いに来たのか?」
「そんな冗談を言うためだけに来ると思っているのか?」
「だろうな、冗談嫌いのアンタがここに来るというわけは余程の理由だろうな。要件はなんだ?」
レッドは、端末を置いて真面目に向き合う。フクロウルも至って真剣な顔で口を開いた。
「単刀直入に言う。レッド、お前にレプリフォースへ戻ってもらいたい。」
「あぁ?」
「将軍!?」
彼の言葉にレッドは、眉間を僅かに動かす。
「お前も知っているだろうが我がレプリフォースは大戦でジェネラル将軍とカーネル殿を失って以降、一気に衰退してしまった。何とかここまで体制を立て直してきたがかつての規模とは比べ物にならないほどに縮小している。」
「だったら、俺なんか復帰させるよりイレギュラーハンター側からベテランでも呼んでくればいいだろう?現にシグナスの野郎もアンタが推薦して送ったそうじゃねえか。」
「コロニー事件さえなければそれも考えた。だが、この現状を見ろ。再編が早い空軍はいいが見通しが立たない海軍と宇宙軍、増しては主力である陸軍は体制が未だに整いきっていない。」
「まさか、それを俺にやらせようって魂胆じゃないよな?」
「そのまさかだ。」
レッドの質問に対し、フクロウルは平然と答える。
「お前とカーネル殿は一時陸軍指揮官候補として競っていた。なら、彼の後任はお前が適格だと私は判断した。」
「・・・アンタ正気か?後ろの部下が面食らった顔しているぞ。」
事実、ペガシオンは、『何言ってんだこの人!?』とでも言いたげな顔をしていた。いくら元レプリフォース出身とはいえ、シグマに利用されたイレギュラー同然の自分を再雇用、それも自分よりも立場の上の上官として起用しようとしているのだ。そんなこと納得できないのは当然である。
「何か不満かペガシオン?」
フクロウルは、後ろを振り向いて聞く。ペガシオンは、オドオドとしているが正直に答えた。
「え、えぇ・・・・正直に言うと僕は反対です。」
「その理由は?」
「確かに将軍、亡きジェネラル様やカーネルの知人であることは理解しています。しかし、彼は一般レプリロイドにまで手を出したイレギュラー組織のリーダーです。流石に彼を士官にするのは・・・・」
彼の答えにフクロウルは、一回目を閉じて思い出すかのように語り始めた。
「確かに元イレギュラーであるコイツを士官にするのは反発が大きいだろう。だが、今回の件は大戦時同様にシグマの関与で引き起こされたことだ。」
「ですが・・・・」
「それに言いにくいことだが、コイツは除隊する以前にレプリフォース衰退の一因でもある元イレギュラーを軍に雇用していたことに関して度々忠告してきていた。」
「あっ・・・」
彼の言葉でペガシオンは、ハッとあることを思い出す。
レプリフォースの士官たちの中には問題児な輩が多かった。元イレギュラーであるキバトドスもそうだが失敗した部下を自分の判断で処刑にしようとしたビストレオ、武器の密売などで暴利を貪っていたディノレックスなどだ
『何でこんな奴らが士官にいるんだろう?』
昔から思っていたことだ。普通の軍隊ならこんな問題児を士官にするなんてことは考えられない。だが、元々慈悲深い性格のジェネラルの温情だと考えれば納得いく。現にこの過激派は、今は大分落ち着いているフクロウルもそうだが大戦時は率先的動いていた。彼らの存在がレプリフォースのイメージを悪くしてしまった一因ともいえる。
「・・・・・」
「わかるか?我々も奴のことを一方的に非難できる立場ではないのだ。」
「う、うぅ・・・・」
「おいおい、昔の話を持ち上げて部下をいじめてるんじゃねえぞ。イレギュラーになったのは事実だからな、別に間違っちゃいねえ。部下が嫌なら嫌で俺は出て行くから心配ねえよ。」
レッドは、気を遣うように言う。それに対し、フクロウルは向き直って話を再開した。
「我々もお前とあまり変わらないという事を思い出してもらっただけだ。それに出て行ったところで行く当てはあるのか?」
「さあな、決めちゃいねえよ。」
「カーネル殿もお前が後釜なら納得してくれるはずだ。我々のためにも力を貸してほしい。二度と同じ悲劇を繰り返さないためにも。頼む。」
フクロウルは、軍帽を取って頭を下げる。昔の彼からは想像できない行動にレッドは、呆気に取られていたが腕を組んで考える。
「・・・・職務内容はカーネルがやっていた時と同じままか?」
「大体はな。後は、新人の育成と指導も頼む。」
「やれやれ・・・・アクセルの時みたいなことをまたやるのか・・・・」
レッドは、顔を押さえながら言う。このまま断られるのではないかとフクロウルは内心焦るがそれを察したのかペガシオンが動く。
「レッ、レッド殿。」
「ん?」
「先ほどは無礼なことを言ってしまって申し訳なかった。しかし、我々レプリフォースには優秀な士官が不足している。新しい者を用意するにしろ教育と指導が必要だ。残念ながら今の我々にはそこまでの人材の確保は難しい。現に今回の事件もイレギュラーハンターに頼ることになった。」
「だが・・・」
「このままイレギュラーハンターに頼りっぱなしではレプリフォースの面子が立たない。彼らと共に戦えるようになるため組織の再編が必須です。そのためにも身勝手だとは承知だが、ここはどうか力を貸していただけませんでしょうか。今は亡きジェネラル様とカーネル殿のためにも。」
ペガシオンも頭を下げて頼む。そこまで頼まれて流石に断るのは気まずい。と言うよりは断ったら夢に親友が出てきて『ふざけるな!』怒ってくるかもしれない。
「・・・・ったく、アクセルが一人前になったと思ったらまた指導か。参ったな、こりゃあ。」
レッドは、頭を掻きながら言う。
「分かった。大戦の後ジジイやカーネルのことでずっと引きずっていたからな。二人のことに免じて引き受ける。」
「本当か!?」
「但し、アンタが暴走するようなことしたら速攻で辞表叩きつけてやめてやるからな!早まったことするんじゃねえぞ!!」
「お前から見て私は、そんなに短気に見えたのか?」
「・・・・(事実だったから否定できない)」
しばらくして、レプリフォースで長らく空席となっていた陸軍指揮官にレッドが収まった。
同時刻 ハンターベース
ハンターベースの方では、22世紀で治療を受けていたエックスがマーティと共に戻ってきた。彼は帰還するなり、別世界の自分と対面。驚きのあまり動揺しているものの自分の代わりに仲間と共に戦ってくれた彼に感謝の言葉を述べ、互いに握手をした。
「えっ?もう帰っちゃうの!?」
ハンターベースの格納庫でアクセルは、驚いた顔で言う。
レッドアラートの戦いの後、Dr.ライトから別世界のエックスを帰すための方法が送られて来ていたのだ。方法は簡単で転送装置に『タイムホール』の回路を組み込み、彼が計算した座標を登録するといったものだった。改修作業は一同が戻ってきてからすぐに行われ、エックスが帰ってきたと同時に完了していた。
「この世界で俺のやるべきことは終わった。だから、本来いるべき場所に戻らなければ。」
「そんなこと言わずに一緒に戦おうよ!こっちのエックスだって戻って来たんだし、みんなでやれば・・・・」
帰ろうとするエックスに対して、アクセルは名残惜しそうに言うが彼は笑顔で返事をする。
「ここにはこの世界の俺がいる。だから、もう心配いらないよ。それはアクセル、君が一番よく分かっているはずだ。」
「エックス・・・・」
そう言うと彼は、この世界の自分と向き直る。
「・・・・色々と世話になったな。ありがとう。」
「それは、こっちの台詞だ。この世界に来たおかげで俺はまた戦う決意を決めることができた。」
二人は、手を取り合い再度握手を交わした。
「向こうの世界の俺たちによろしくな。」
「あぁ。」
「辛いことがあったら思い出してね。貴方は一人じゃないって。」
「頑張るダスよ!」
全員に見送られ、別世界のエックスは転送装置の上に乗った。
「よし、起動するぞ!」
ダグラスは、確認を淹れると装置を起動させる。目に映るみんなの姿が徐々に薄れ、元の世界に帰るのだという実感が湧いてくる。
「・・・・・・ありがとう、ロール姉さん。ミニドラ、リングマン、スカルマン。この世界のゼロ、アイリス、アクセル。」
転送装置の中が眩く光る。
「そして、頼むよ。この世界の俺。」
転送装置の光が消えると中は空になっていた。
「・・・・行ったか。」
エックスは、空になった装置を見ながら一言呟いた。
「ありがとう、“ロックマンX”。」
ハンターベース(原作世界のエックス)
「先週エネルギー生成工場で作業レプリロイドのイレギュラー化による暴動事件が発生。そこにアクセルが現れ、これを鎮圧。イレギュラーはその場で拘束されました。また、3日前に埠頭で発生したメカニロイドの暴走事故では船のハッチを塞いだメカニロイドを破壊し、脱出路の確保に成功。巻き添えで乗組員16名が負傷しましたがいずれも軽傷で済んでいます。他、大小含めて14件のイレギュラーによる事件・事故の事故処理が完了しました。」
ハンターベースの指令室でアイリスがまとめたデータを読みながら席に座っているシグナスに報告する。
「うむ、報告ご苦労。レッドアラートの決戦からまだ一か月しか経っていないがアクセルも大分ハンター業務に慣れてきたようだな。」
彼は、深いため息をして席から立ち上がる。
一か月前、クリムゾンパレスへ向かった3人はかなりのダメージを追ってハンターベースに転送されてきた。その状態に全員驚いたものの、どうやら黒幕であるシグマの最後の抵抗で自爆に巻き込まれたらしく、レッドの身柄を拘束以降の記憶が曖昧だと言う。
ゼロの関しては、他の二人よりも重傷で半月前まで意識が戻らなかった。
エックスの行方もいまだにわからず、捜索は難航していた。そのため、一番軽傷だったアクセルが現場に出ることになった。
「しかし、シグマを倒したとはいえエックスとゼロがいないと言うのはかなりの痛手だな。アクセルがカバーしてくれているからいいがイレギュラーの事件が増加すれば対応できなくなる。留置場にいるレッドにも更生してもらって正式にハンターになってもらえばある程度負担が減るのだが・・・二人の方は?」
「ゼロは順調に回復しています。後、一週間もすれば現場に復帰できるぐらいには。エイリアの方は・・・・・・ダグラスと一緒に転送装置のデータからエックスの行方を調べています。」
彼女の言葉にシグナスは首をかしげる。
人手が足りないこともそうだが彼が気にしていたのはクリムゾンパレスから帰還した後の三人の様子だった。三人ともレッドの身柄を拘束するところまでは覚えているにもかかわらず、以降脱出するまでの記憶を失っていたのだ。一番現場を知っているであろうゼロに聞いても『シグマを倒したと思うが・・・・何か別の者と戦っていたような気がする』と不穏にも感じる答えが返ってきたため、エックスを見つけ出すことがより重大となってきていた。
「・・・・・」
「シグナス総監?」
深く考える彼のことを気にしていたのかアイリスは心配そうに声をかける。
「ん?あぁ、すまない。まだまだ課題が多いと思ってな。心配いらない、早くゼロの傍に行ってやってくれ。」
「はい。」
彼女は、頭を下げるとそのまま部屋を後にした。
「・・・・・」
同じ頃、エイリアは転送装置のデータ解析に疲れてテーブルに座ってふて寝していた。後ろの方では、ダグラスが依然と転送装置を分解している。
「・・・・どこへ行っちゃったのかしら、エックス。」
データを洗いざらい調べてみたがエックスの転送した座標先は今だに判明せず、時間ばかりが過ぎていく。ひょっとしたらもう戻ってこないかもしれないという諦め。同時に覚えていないが何か途轍もない漠然とした恐怖が脳裏を駆け巡り、作業の手を止めていた。
(覚えていないけど何か恐ろしいものと対峙していたような気がする・・・・・あれがまた目の前に来たらどうしよう?今度は殺されるかもしれない・・・・・)
こんな時にエックスがいてくれれば考えるものの現状望みは薄い。
この不安をずっと引きずっていかなければいかないのだろうか。彼にここまで依存している自分にも驚いているがそれ以上に早く戻ってきてほしいと言う気持ちが強くなっていった。
(帰ってきて・・・・エックス・・・・もう戦わなくていいから・・・・そばにいるだけでいいから・・・)
彼女は、両手を合わせながら祈った。
「うおっ!?な、なんだっ!?」
その直後、電源を切っていたはずの転送装置が突如動き出した。突然の出来事にダグラスが動揺する中でエイリアはもしやと思い、光り始める転送装置を見る。
「ま、まずい!!このままだと装置が爆発する!?」
分解していた影響で装置が耐え切れず、今にも爆発しようとしていた。
「・・・・」
「エイリア、早く伏せろ!爆発に巻き込まれるぞ!!」
ダグラスは急いで物陰に隠れる。同時に部屋を吹き飛ばしかねないほどの爆風が部屋を襲った。
「ゲホッ、ゲホッ・・・・おい、エイリア大丈夫か!?」
ダグラスは、爆風が収まったのを確認すると物陰から出て様子を窺う。エイリアは伏せなかったのか体にいくつもの破片が突き刺さって負傷していた。だが、彼女の目は転送装置があった場所へ向けたままだった。
「・・・・・」
「怪我しているじゃねえか!早く治療・・・・・!?」
ダグラスは、彼女の見ている方を見ると言葉を失う。転送装置のあった場所に人影が見え、それが徐々に明確になる。その姿は、自分たちがよく知っているもので今まで探しても見つからなかった彼だった。
「え、え・・・・・」
「エックス!?」
そこには行方不明だったエックスが立っていた。エックスは戻ってくるなり、爆発が起こったことでかなり驚いていた。
「ゴホッ、ケホッ!?な、なんなんだ!?帰ってきて早々何が起こったんだ!?」
彼は、戸惑いながら周囲を確認する。そこにはダグラスと見た目がだいぶ変わっているがエイリアと思われる女性型がいることに気付く。
「え、エックス・・・・」
「だ、ダグラス・・・久しぶり。」
「久しぶりってお前・・・・本物だよな?まさか、偽物じゃないよな?」
ダグラスは、爆風で罅の入ったゴーグルを外して改めて彼を見る。
「俺は本物だよ。」
「まあ・・・・何が起こったかは分からねえが戻ってきてくれてよかったぜ。いなくなってもう1か月以上になりそうだったからな。」
「1か月!?じゃあ、レッドアラートとの戦いは?」
「ヘッヘヘヘ。聞いて驚くなよ?なんとゼロとアクセルが頑張って解決してくれたんだ!それだけじゃないぞ?何よりエイリアなんか・・・・・・エイリア?」
ダグラスは、返って来たばかりのエックスに武勇伝を教えようと彼女の方を見るとエイリアは顔からポロポロと涙を流し始めた。
「う・・・うぅ・・・・・」
「え、エイリア?」
「う、うぅ・・ううわああああ~~~~!!」
呆然としている二人を他所に彼女は泣き出してしまった。エックスは、どうしたのかと聞こうとするとエイリアは彼にしがみつき更に泣き方が激しくなる。もう、何が何だかわからなかった。
「ダグラス!一体これはどういうことなんだ!?」
「俺が知るかよっ!?今までのストレスがお前が帰ってきた反動で吹っ切れちまったんじゃねえのか!?」
「えぇ・・・・・」
「俺はとりあえずお前が帰ってきたことシグナスに報告してくる!その間は頼むぞ!!」
「ちょっと・・・・・」
呼び止めようとするエックスを無視して彼は部屋から出て行ってしまった。残された彼は、彼女を落ち着かせようと話しかける。
「エイリア、一体何があったんだ?」
「うぅううう・・・・怖かったの。」
「えっ?」
「よく・・・・憶えていないんだけど・・・何かものすごく怖い何かを感じて・・・・それに・・・・・」
「それに?」
「もう・・・エックス帰ってこないんじゃないかって・・・・不安で・・・・・怖くて・・・・」
自分の知っている彼女とは思えない怯えている表情表情を見てエックスは、それだけ心配されていたのだと理解した。
「そうか・・・心配かけてごめん。今は、もう大丈夫だから。落ち着いていいよ。」
「うぅう・・・・」
(意外だな。エイリアって俺から見たら頼りになるお姉さん的存在だと思っていたのに・・でも、心配してくれていたと分かっただけでも良かったな。)
彼は、彼女が泣き止むまで優しく頭を撫でて挙げた。
その日、行方不明になっていたエックスが帰還。
彼が戦線に復帰したことで弱体化していたイレギュラーハンターは再び活気が付いた。
彼は、今までとやり方は変わらなかったものの戦うことを完全に否定せず、分かり合えないと判断したイレギュラーに対しては容赦ない鉄槌を下すようになった。
彼の変化に対してアクセルは少々驚いていたが、ゼロはむしろ安心していた様子だった。
「ねえ、エックス。なんでまた戦うことを選んだの?」
ある日、任務終了後の帰りアクセルは、思わず聞いてきた。それに対してエックスは
「俺はただ守りたいものを守るために戦っているだけだよ。」
「なに?別世界への進出じゃと?」
シグマの報告を聞いた後、ワイリーはシグマの提案に眉を動かす。
「現にアチモフ一味は平行世界からライドアーマーなどを回収して戦力の増強を図っているようです。我々も対抗して行うべきかと。」
芋掘りロボのボディで全く威厳を感じられない中、シグマは真剣な顔で言う。その言葉に対し、ワイリーは眉間を押さえながらしばらく黙る。
「・・・・・フム、確かにワシも他の世界の監視のためにタイムパトロールと同様にスパイカメラを飛ばすことは考えていた。じゃが、シグマよ。そんなことをすること自体はワシは賛同しかねんな。」
「と言いますと。」
「確かに他の世界の技術を取り入れて強化を図るのはよいかもしれん。だが、それはワシがライトに負けたことを認めることにもなる。」
「何故です?」
「奴もワシ同様にタイムマシンの技術を取り入れた。しかし、使ったのは飽くまで移動手段で他の技術を戦闘に転用すると言ったことはせんかった。それは奴の拘りでもある。それに対してワシがバンバンこの世界の技術を取り入れてロボットを強化なんかしたら・・・・ワシのプライドが許せん。」
「フム・・・・・・お気持ちは分からなくもありませんがこの流れではDr.アチモフの脱獄も時間の問題かと。」
「まっ、ワシも度々脱獄していたからな。あのクワガタ爺も脱走するじゃろう。しかし、他の世界の可能性を見るのも悪くない。技術を取り入れるかどうかはまだ決めんがスパイカメラを飛ばすのは予定通り行うとしよう。」
そう言うとワイリーは仕事机に向き直る。
「・・・・ところでドクター、私の新たなボディは?」
「そんなもんまだ作っておらんわ。その体でしばらく我慢せい。」
「・・・・・」
シグマは、しょんぼりとしながら上の店の手伝いに行くのであった。
レッドが死んだといつ錯覚した?
次回はX8か大長編かはお楽しみです。
ではでは。