ハンターベース アクセルの私室
「ここはこういう風に解くのよ。」
「へぇ・・・・でも、この式とかはどうやって解けばいいの?」
「それはねぇ・・・・」
ドラミがエックスの依頼でハンターベースに来て数日。
アクセルは、次のハンター試験に備えて彼女の勉強を教えてもらっていた。最初は、パレットの時同様に居眠りするか嫌になってパトロールを称して逃げ出すのではないかと不安だったが教え方が良かったのか真面目にやっていた。
「ドラミちゃんって教え方うまいね。もしかして教師とかやってたの?」
アクセルは、今日までの問題の解答率を見ながら聞く。実際、ドラミは子守用ロボットの補助役である妹ロボットで教師をしていた経験はない。但し、天才ロボットグループのリーダーでロボット養成学校を首席と卒業しているため、教師としての素養はあるのかもしれない。
「そんなことはないわよ、みんな学校で教えてもらったものばかりだし。でも、この世界のロボットって学校へ行かないから不便ね。役割以外のことは教えてもらえないんですもの。」
「まあ、考え方が違うからね。」
そう言うと二人は今日の分を切り上げる。
「今日もありがとう。よかったら、今日の昼何かごちそうするよ。」
「本当?じゃあ、ベースの近くのパン屋のメロンパンはいい?」
「えっ、もしかしてあの人気店の!?参ったな、あそこ人気で数量限定だから今から行って売ってるかな。」
アクセルは、困った顔をしながら彼女と一緒に外へと外出する。
「・・・・」
そんな二人の後姿をパレットは、物陰から覗いていた。
「・・・・何よ、私が教えた時はすぐに寝ていたのに。」
パレットは、そんな不満ごとを言いながら仕事に戻る。数日前に堪忍袋の緒が切れて教育を放棄してしまった彼女だがいつもなら次の日には謝りに来て元通りと行くのだが、今回は謝りに来なかった。不審に思って様子を見に来るとドラミが自分に代わって教えていたのだ。
最初は、すぐに自分の方へ戻ってくるだろうと慢心していた。
しかし、オペレーターとして教育を受けた都合で難しく説明してしまう自分のとは違い、ドラミの教え方は分かりやすく、彼も黙々と取り組んでいた。
尤もアクセル自身も何度も怒らせてしまった彼女のことを配慮してある程度時間が経過した後に改めて謝ろうと考えているのだろうが当の本人は分かるはずもなかった。
「・・・・・・」
「パレット、今日は北極の調査でオペレート・・・・」
「うん?」
「・・・・・な、何でもない。今日は復興エリアの各隊のオペレートお願い。」
仕事を頼もうとしたレイヤーは、彼女の眉間に皺を寄せた不機嫌な顔を見て思わず引き下がった。
「・・・・今日は、カリンカさんとスカルマンさんが来るから頼もうと思ったのに。」
「はぁ~~~何とかギリギリ買えた~。」
昼過ぎ頃、アクセルとドラミは包みを持ってハンターベースに帰ってきた。
ドラミの要望で行ったパン屋だが、行ってみると復興して間もないにもかかわらず大行列になっており、二人の番になった頃にはメロンパンは1、2個しか残されていなかった。彼は、後ろから感じる執念深いまなざしを無視してメロンパンを買うとついでにいくつかパンを選んで購入し、ベースの自分の部屋で食事をとることにした。
「ごめんなさいね、こっちに来てからこれに中々お目にかかれなかったから。」
「まあ、僕も実際にああいうお店で買い物したことがないからいい経験になったよ。」
二人は、そんな会話をしながら敷地内に入るとエアポートにタイムパトロールの巡査艇が止まっていることに気が付く。
「あれ?エックスたちまだ帰ってくる予定じゃないのに。」
不思議に思った彼は、巡査艇の方に歩いて行くと中からスカルマンがカリンカを連れて降りてくるのが見えた。
「スカルマン!」
事件以来の再会で彼は思わず声をかけた。
「おっ?誰の声かと思ったらアクセルじゃねえか。久しぶりだな、A級には上がれたか?」
「い、いや・・・・今勉強中・・・でも、どうしたの?こっちの世界に来るなんて。なんか事件?」
「そういうもんじゃねえ。今回は、家のお嬢さんの仕事の手伝いさ。」
「手伝い?」
「スカルマン、彼は?」
カリンカは、アクセルを見ながら聞く。
「あぁ、コイツはアクセル。少し前に入隊した新入りハンターさ。エックスとゼロに憧れているがまだまだ勉強不足なところが難点だな。」
「ひどいな・・・・一緒に戦ったんだからもう少し評価してくれてもいいんじゃん。」
相変わらずの辛口評価に彼は凹む。そんな彼にカリンカは、穏やかな顔で挨拶をする。
「初めまして、アクセル君。私は、カリンカ。スカルマンがお世話になったようね。」
「えっ、そ、そうでもないよ。スカルマンには色々教えてもらったし・・・・」
カリンカを相手にアクセルは照れくさそうに答える。
「おい、アクセル。悪いがお嬢さんの荷物運びたいから手伝ってくれ。」
「あっ、うん。」
アクセルは、包みをドラミに手渡すとカリンカのスーツケースをいくつか持ち上げて運び出す。
「どこに持っていけばいいの?」
「研究室だ。ゲイトの奴が事前に準備してくれているから置いといてくればいい。」
ハンターベース 研究室
研究室では、ゲイトが何かの解析作業を行っていた。
「ふむ・・・まさか、こんな形で100年前の技術に手を触れることになるとはね。」
彼は、区切りをつけて紅茶を飲むとすぐ傍で組みかけとなっているロボットの骨組みを見る。そこへ荷物を抱えたアクセルたちがやってくる。
「ゲイトさん、こんにちわ。」
「あぁ、カリンカ。待っていたよ。」
ゲイトは、ティーカップを置いて彼女を出迎える。カリンカは、組みかけのロボットを見ながら口を開く。
「例の解析、どこまで進みました?」
「あぁ、回収していない分を除けばほとんど終了しているよ。後、数日経てば発注したパーツが届くからそれを組み立てて行けばほぼ完成に近い状態になるよ。」
「そうですか・・・」
カリンカは、嬉しいようで寂しいような顔をする。アクセルは、荷物を置くと骨組みのみのロボットを見ながら聞く。
「ゲイト、この作りかけのレプリロイドは何?」
「レプリロイドじゃないよ。これは、100年前に考えられていたロボットさ。」
「100年前?誰の?」
「お父様の遺作なの。」
カリンカは、ロボットに手を触れながら話す。
「元々お父様は、ビートやデューオを作った後にロックマンと一緒に戦うロボットを製作する予定だったの。・・・・・尤も、ロボット連盟の路線変更やロボット狩りの開始で設計のみで終わったんだけどね。」
「そうなんだ・・・・でも、なんで今になって作り始めたの?」
彼女に対して気まずく感じながらもアクセルは、興味津々に聞く。その問いにゲイトが答えた。
「彼女の要望だよ。作られることはなかったとはいえ、Dr.コサックが世の中のために考えたロボットだからね。それにこちらでは予定はないけどこのロボットは量産タイプとして設計されているから運用次第ではタイムパトロールの新規隊員として採用も考えているんだ。」
「へぇ。」
「今日は、残りのデータを回収するために北極に探査チームを派遣することになっているんだ。残りのデータが回収できれば、このロボットも完成する。」
「ふ~ん~。・・・ねえ、僕もそのチームに参加していい?」
「「「えっ?」」」
アクセルの突然の発言に三人は、思わず声を上げる。その反応を見て彼は顔を赤くした。
「いや・・・・だって、街のパトロール暇なんだもん・・・最近はイレギュラーもまともに出ないし。」
「アクセル、これは大事な仕事なんだ。イレギュラーに対応するハンター業務とはわけが違う。」
「分かってるよ!?邪魔にならないようにするからさ!ねっ?」
アクセルは、両手を合わせながら頼み込む。その対応にゲイトとスカルマンはあまりいい顔をしなかったがカリンカは、笑いながら答えた。
「別に構わないわよ。」
「えっ!?本当!?」
「おいおい・・・・お嬢様よぉ、いくら何でもそれはないんじゃねえのか?」
彼女の答えにスカルマンは、顔を顰めながら言う。それに対して彼女はこう答えた。
「確かに今回の『OVER-1』のデータ回収には参加させられないけど、気分転換として他の仮拠点の場所を調べてもらうことはできるでしょ?」
「コイツ、一人に行かせる気か?最悪、遭難してこっちが探す羽目になるぞ?」
「大丈夫よ、ドラミちゃんに一緒について行ってもらえば。データも後で届けてくれればいいし。」
「・・・・・ドラミの奴大変だな。」
スカルマンは、呆れながら引き下がる。
「私たちは1時間後に北極へ移動するからアクセルくんはドラミちゃんと一緒に他の基地に言ってデータ回収をお願いね。座標は行く前に渡すから。」
「わかった!あっ・・・そう言えば、お昼まだだった!!早く、食べてこないと!!」
彼は顔色を変え、急いで研究室を走り去っていった。
「全く・・・・アイツがあの二人みたいに特A級になる日が想像できないぜ。」
「そう?結構見どころある子だと思うけど。」
「・・・ハア、俺にはお嬢さんの考えが未だに分からねえな。」
22世紀 タイムパトロール本部
同じ頃、22世紀の世界にあるタイムパトロール本部ではタイムパトロールとイレギュラーハンターによる合同会議が開かれていた。席には長官をはじめとするタイムパトロール主要陣、シグナス率いるイレギュラーハンターの面子が座っていた。
「えぇ、それでは本日の会議を始めたいと思います。」
長官の一声で、各陣営はお互い立ち上がって、頭を下げた後に座りなおす。
「では、本日の議題ですがイレギュラーハンターの管轄である21XX年代の世界で現在復元が行われているDr.コサックの遺作である『OVER-1』に関する取扱いです。まず、我々タイムパトロールでは、人工知能を組み込んでテストを終え次第、彼のデータを基に量産タイプ生産。こちらの世界の養成学校に通ってもらい、変化次第では組織以外の分野への進出できるように視野に入れておくべきであると考えています。続いて、イレギュラーハンター代表 シグナス総監。」
「はい、我々イレギュラーハンターに関してもその意見については貴方がたの一任します。但し、『OVER-1』の運用で得られた武装データはにこちらに送っていただくようにお願いします。」
「失礼、シグナス総監。武装のデータを送るということは何かに使用するのかね?」
シグナスの発言に対し、タイムパトロール側の幹部の一人が質問をする。
「武装データに関しては一般ハンター、つまりB級・C級の戦闘力が非常に弱いレプリロイドの支給装備の改良のために使う予定です。『OVER-1』は、その名の通り『着こむ』と言う意味があり、資料で確認されている通り戦況ごとにその姿を変えます。つまり、それだけ武装のオプションが多いことになります。」
「なるほど、要はデータを基にハンターの生還率を上げる装備を開発したいと。」
「その通りです。我々イレギュラーハンターは過去の度々の大戦で多くの隊員たちを失いました。特に各部隊の隊員の死亡率が高く、その多くが内蔵火器非装備であるB・C級ハンターです。彼らの生還率はその上のA級ハンターよりも低く、生存率を少しでも上げることができれば我々にとって幸いです。」
「結構。『OVER-1』で得られた武装データの管理はイレギュラーハンター側にお任せします。ですが、重要データでありますので取り扱いには注意をお願いしますね。」
各代表が意見を交わし、今日も長い会議が続く。
「では、続いての議題はこの時代に潜伏している『Dr.ワイリー』ことアルバート・W・ワイリー、並びに彼の製作した『ワイリーナンバーズ』への対応に関してです。現在、彼は・・・・」
21XX年 北極
「うわぁあ・・・・ここが北極?」
どこでもドアを通り抜けた先の銀世界を見てアクセルは、唖然とする。
「そう、ここが北極。地球の一番北にあるところで下の地面はほとんど氷でできているの。」
ドラミの説明を受けながら彼は、早速近くの雪を触ってみる。
「冷たい・・・・でも、握ると溶けて固くなって氷みたいになるんだ。」
雪や氷の大地などせいぜいデータだけでしか見たことがなかったアクセルは、その初めての感触に夢中になる。
「・・・あっ、でも今回はお仕事のお手伝いで来たんだから遊んじゃ駄目よ。」
彼女は、カリンカから受け取ったMAPデータを確認する。そう遠くではないものの空を飛んで行った方が早い。
「タケコプター!」
ドラミはお腹のポケットの中から早速タケコプターを取り出し、一つは自分の頭に。もう一つはアクセルに渡す。
「えっ?こんな小さい奴で飛ぶの!?」
「大丈夫よ、スイッチを入れて頭に付けるだけでいいの。」
彼女に言われるままに付けると体は地面から離れて飛んでいく。
「え、え、えっ!?」
「心配しないで。私が誘導してあげるから。」
ドラミは、彼の手を取ると目的地のある氷山の方へと飛んでいく。下は既に数十m離れており、もし電池切れで落ちたらレプリロイドとはいえ、かなりのダメージになる。固唾を飲み込みながらアクセルは彼女に手を引っ張ってもらう。
「あのさ・・・・この道具ってドラミちゃんの世界だと当たり前なの?」
「うん。子供も大人もみんな使うわよ。」
「便利だな・・・・・ハンターベースでも支給してくれればいいのに。」
「それは私たちの世界と貴方たちの世界で決められた規律で秘密道具の多用は技術の流出の恐れがあるから制限がかかっているの。だから、使うことは極力避けられているのよ。」
「へえぇ・・・・」
「これ、筆記試験で出るからちゃんと覚えてね。」
「ここに来てまで勉強のお話しなくても・・・・・」
二人は、氷山を超えると氷で閉ざされた人工物と思われるものを発見する。
「あれ何かの基地かな?」
「カリンカさんのお父さんの秘密基地の一つだと思うわ。今日は天気がいいからうまく見つけられたみたい。」
人口建設物の前に辿り着くとドラミは一つの缶詰をポケットから出す。
「季節缶詰め『夏』!」
施設の中で彼女が缶詰の蓋を開けるとセミの鳴き声と共に周囲の氷がみるみる解ける。
「うわぁ~~すごいや!基地の中だけ暑くなっちゃった!!」
「まだ、お仕事始まったばかりよ。さあ、この基地の座標を記録してデータを確認しましょう。」
ドラミは、基地のコンピュータにアクセスしてデータの抽出を開始する。アクセルはその間に基地の部屋を探索して目ぼしいものはないかどうかを確認する。
「しっかし、100年ぐらい経っているはずなのに綺麗に残るもんなんだな。」
作業机に置かれている机を見ると彼の残したと思われる写真を発見する。覗いてみるとコールドスリープに入る前のカリンカとツンドラマン、そしてコサック自身が並んで写っている。
「これがスカルマンを作った人か・・・・ん?」
写真を眺めて束の間、アクセルは近くのピ、ピ、ピッと言う通信音が聞こえてくることに気付く。ドラミがコンピュータを再起動した影響で機械音が聞こえたかと思ったがどうやら違うらしい。
「何の音だろう?」
彼は音源を探りながら近づいてみる。
『ピピー。ピッ、ピッ、ピ。』
そこには青いボウリングの玉と思われる物体が転がっていた。
「なにこれ?」
アクセルは、拾い上げて試しに振ってみる。どうやら爆弾の類ではないらしい。しかし、かといってただのボウリングの玉でもない。
「・・・・・もしかしてコサック博士とかいう人の発明品かな?」
彼は、早速そのボールを手に持ってドラミの所に戻った。
「ドラミちゃん!」
「あっ、丁度戻って来たわね。じゃあ、次の・・・・・何持ってるの?」
ドラミも持ってこられたボールを不思議そうに見る。
「近くを探っていたら落ちてたんだ。コサック博士の遺品かな?」
「さあ・・・この基地の様子を見てボウリングをしているとは思えないけど・・・・・」
その直後、基地の外からものすごい音と共に振動が二人を襲った。
「「わあぁあっ!?」」
「な、なに!?もしかしてイレギュラー!?」
アクセルは、彼女にボールを渡すとバレットを構えて外に出てみる。
「はっ?」
そこには、先ほど来たときはなかった巨大なメカニロイドのパーツと思われるものが落ちていた。
「「えっ?」」
遅れてきたドラミと共にアクセルは、その巨大なパーツを見て目を丸くする。
OVER-1の再評価のためにもXDiVEに参戦してほしいけど性能が想像できない。