22世紀
エックスがマーティと共にセワシ宅から帰っている頃。
同じように外出していたゼロとアイリスは、リングマン夫妻の勧めもあって一緒に外食をすることになった。一緒に市街地へ受かって歩きながらゼロは、リングマンと世間話をしている。
「すまないな、ゼロ。折角の休みに来てくれた上にここまで付き合わせて。」
「いや、俺は構わない。別に帰っても明日まで特にすることもないからな。それにアイリスも久しぶりにリングたち会えてうれしそうだし、よかったと思っている。」
「そうか。」
「んで、ジジイの様子はどうなんだ?エックスの一件からまた静かになったそうだが。」
「・・・・現在24時間体制で監視をしているが特に悪事を働いている様子はない。寧ろ気になるのはブラックゼロ指揮するアチモフ一味の残党だ。奴ら、あの手この手でアチモフの脱獄計画を立てているのかもしれない。」
「・・・いっその事このままこの世界で大人しくしてくれればいいんだが。」
ゼロは、何とも言えない複雑な顔をして言う。その様子にリングマンは目を丸くする。
「意外だな、君がそんなことを言うとはな。」
「はあ、今でも奴のやってきたことに関して許していないのは変わらない。シグマとの件と言い、アンタたちの時代へ残した影響の件もな。『ロボット破壊プログラム』についてもだ。・・・だが、そんな奴でも俺の生みの親だ。これ以上悪事の手を染めないのなら、俺だって手をかけない。」
「あぁ、私のそのことに関しては同じだ。だが、奴の性格は侮れない。隠居しているように見せかけて強力な兵器を建造しているのかもしれん。」
「安心してくれ、その時は容赦なく斬るつもりだ。」
ゼロの平然としたと答えにリングマンは、納得したのか感慨深そうな顔をした。
「そこは情けをかけないんだな・・・・そう言えば、ゼロ。ところでこんなことを聞くのもなんだが君はワイリーの顔を見たことがあるのか?」
「直接は見たことはないが兄たちから当時の写真を見せてもらった。後、夢の中でも俺に呼びかけてきたことがある。」
「ふむ・・・」
二人がワイリーに関して話している間、先に前を歩いているアイリスたちはどこで食事をするか話していた。
「リングちゃんは、何食べたいの?」
「ラーメン!パパのお友達のお店の!」
娘の言葉にリングマンは、一瞬気まずい表情に変わる。
リングの言うラーメン屋は、『Darkメン』であそこにはワイリーが潜伏している。彼がこの世界に対して不干渉と言うこともあり今のところは監視程度で済ましているがゼロが彼と再会したらどうなるか。
(・・・はっきり言って今のゼロなら会わせても問題は起こらないだろう。だが、あのワイリーのことだからな。余計な一言を言って怒らせるかもしれん。)
彼の心配を他所に一同は『Darkメン』の前まで来る。外装はやはり人気店のことはあり、かなり綺麗になっている。少し早めに来たおかげなのかいつものように行列はなく、入り口には『営業中』の札が出ていた。
(営業中か。確か、ワイリーが姿を見せるのは準備中のはず。今は恐らく地下に籠って会うことはないだろう。)
そう思いながら彼は、中を確認するべく先に入る。
「どうスか、博士?シグマが打った麺のお味は?」
「ふうむ・・・いつものとは違ってジャンキーな感じじゃのう。でも、試作のスープとの相性もあって結構いけとるぞい。」
「ドクターにそのような評価を頂けるとは歓迎ですな。」
中ではワイリーが客席で新メニューの試作と思われるラーメンを堂々と食べていた。それだけではなく、先日のレッドアラートの件で報告があったシグマが店に合わせたのか麺打ち職人のような恰好をしていつもの四人組と一緒にいる。
リングマンは、彼らに気づかれないようにそっと戸を閉める。
「・・・・」
「貴方?」
「パパどうしたの?」
彼の不審な行動に家族は、不思議そうに声をかける。
「今日はもう混んでいるようだから別の所へ行こう。」
「え~!!」
父の思わぬ言葉にリングは、残念そうな顔をする。
「別に少しくらい待っても構わないぞ?」
「いや、別の所へ行こう。もう少し街中の方へ行けば新しく開店したレストランがある。そこへ行こう。」
「私、こっちがいい!!」
駄々を捏ねる娘にリングマンは、冷や汗を掻きながら説得をする。
「リング、今度の休みに水族館へ連れてってあげるから我慢しなさい。」
「ブ~!!」
しかし、当のリングは頬を膨らませて納得しない。そんなリングマンの様子を見て流石のゼロも違和感を感じる。
「リングマン、どうしたんだ?店の中で何か・・・・」
彼は、説得を行っている彼を避けて店の戸を開く。そこには
「ん?ドクター、意外な客人が来ましたぞ。」
「なぬ?」
店の入り口から顔を出したゼロの目にシグマとワイリーの姿が映る。
「なっ・・・・」
まさかの出来事にゼロは、自分の目を疑う。今まで写真と夢でしか姿を見れなかった自分の生みの親が目の前にいるのだから無理もない。当のワイリー本人は、一瞬目を丸くするものの最高傑作である彼が来たことが嬉しかったのか食事を中断して彼の方へと歩み寄ってくる。
「おぉ~~!!誰かと思えば我が最高傑作のゼロではないか!!まさか、お前さんがこんなところに来てくれるとはのう~~~。うん?リングマンたちも来ておったか。まあ、よい。折角じゃからは入れ入れ!!」
「えっ?」
彼に手を引っ張られながらゼロは、困惑した表情で後ろにいるリングマンたちを見る。突拍子のない再会に動揺しているアイリスとやっちまったとばかりに顔を押さえているリングマンに反してリングとエリカがそんなことに気づくことなく中へ入っていく。
「・・・・リングマンさん。」
アイリスは、どうしようとばかりに顔を押さえている彼を見る。
「・・・・なってしまったのは仕方ない。ここはゼロに任せよう。今はそれしかない。」
「・・・・」
不安を感じながらも二人は店へと入った。
ハンターベース 食堂
謎の巨大ロボットの稼働試験が行われた翌日。
パレットは、ボーっとした顔で食堂で食事を取っていた。いつもなら明るい声で対応するのだが、ここ最近は何か大事なものを失ったかのように覇気のない声で返事をするため、一緒に来ていたエイリアとレイヤーは少し離れたところで心配そうに見ていた。
「・・・・パレット一体どうしちゃったの?」
「分かりません。ここ最近、機嫌もあまりよくなくて・・・・かと言って急に怒り出すこともあって私には何も。」
彼女の視線の先には、ドラミと食事を取っているアクセルの姿があった。彼は、何か楽しそうに話しているがドラミは、聞きながら今日のカリキュラムについて説明していた。
「そう言えば、ドラミちゃんが来てからよね?パレットの様子が変わったの。」
「はい。しかし、彼女が来てくれたおかげで休息時間も確保しやすくなったはずなのでそこが問題とは思えませんが。」
レイヤーは、そう言いながら食後の紅茶を口に含む。そんなところへ厨房で動いているクリスタルマンを除いたアルバイターの7人組が遅れて食事に来た。彼らは、アクセルを見つけるなり声をかける。
「おう、アクセル。今日の調子はどうよ?」
「調子?今日も絶好調だよ!」
聞いてきたストーンマンの問いにアクセルは、自信満々の笑みで答える。その反応を見てジャイロマンも満足そうだった。
「そうかそうか・・・・だが、今日の稼働試験は楽じゃないぞ!!なんせゲイトの頼みで我々が突貫作業で組み立てたスーパーロボットが相手なんだからな!」
「えっ!?そんなの造ってたの?」
「そうね!でも、接着剤とペイントだけで意外に簡単だったから本体はすぐに完成したね!!」
思わぬ材料にアクセルは、滑る。
「せ、接着剤って・・・・・もしかして、プラモデル?」
まさか、本物のロボットに対して玩具をぶつける気なのかと彼は、正直彼らに命令したゲイトの正気を疑う。そんな彼の内心を知ることなく、アルバイターたちは、食事を受け取りに行った。
「今日の稼働試験・・・・ひょっとしてかなりしょぼいのかな?」
「さ、さあ?でも、ゲイトさんのことだから油断しちゃだめよ。」
ドラミに言われるとアクセルは、すぐに食事を平らげて自分の部屋へと戻る。
一方、そんなハンターベースの様子を見張っている輩がいた。
ワイリーの命令で派遣されたシャドーマンと現地で合流したシェードマンだ。彼らは、少し離れた山の木々の上で双眼鏡を使いながらハンターベースの状況を観察していた。
「ふむ、流石にエックスとゼロが不在と言うこともあって本部の方は警備がやや手薄になっているな。」
「えぇ。ですが、やはり機密事項の物が保管されている研究施設の方はセキュリティがかなり厳重にされているようです。早々忍び込むのは厳しいですね。」
シェードマンが言うように研究施設は、他と比べて警備が厳重になっていた。
以前のDr.アチモフによるレプリロイドの残骸の奪う墓荒らし行為、更に過去の大戦の教訓もあって得体の知れないものや危険物に対しての取り扱いが慎重になったからであろう。
しかし、彼らの目的の物はその研究施設に保管されている。
「これでは、正面から行くしかありませんね。しかし、表の警備員さんたちは催眠術でどうにかなりますがカメラに姿が映されては、博士が犯人だとバレてしまいますね。向こうの世界では自由ですがこちらで犯罪を行ったとなればどうなってしまうことやら。」
「そのためにこれがある。」
シャドーマンは、懐から二本の薬瓶を取り出す。それを見てシェードマンは、何か察したようだ。
「なるほど。博士もひどいことをしますねぇ。よりによって、服役中のアチモフ一味に罪を擦り付けるとは。」
「決行は今夜だ。それまでに退路も入れて計画を練るぞ。」
「はいはい。」
二人は悟られることなくその場から姿を消す。
鏡面世界のハンターベース
自室で準備を整えたアクセルは、鏡面世界に行くやロボットのコックピットに乗り込み操縦系統を確認する。
「駆動系異常なし。エネルギー、カメラアイ異常なし。システム、オールグリーン。アクセル、行きま~す!!」
彼が確認を終えるとロボットの目が光り出し、格納庫から歩いて出て来る。外では、ゲイトとドラミがデータを取るために待機している。
「アクセル、準備はいいかい?」
『いつでもOKだよ!!』
アクセルの返事を聞くとゲイトは、アルバイターたちに指示を出して今回の試験の内容を伝える。
「今回は、同じサイズのメカニロイドと戦ってどのぐらいの戦闘能力があるかどうかのテストだ。」
『ジャイロマンたちの昨日造らせたんでしょ?』
「おや、彼らから聞いたのかい?」
『まあね。でも、玩具のロボットと戦わせるなんてちょっと悪ふざけじゃない?』
「本当にそうかな?真面目にやらないと痛い目に合うと思うよ。」
『えっ?それってどういう・・・・・』
「ほら、来た。」
ゲイトが指を指した方をアクセルはロボット越しで見る。すると空から赤が基調のこちらのよりやや悪役っぽく見えるがひと昔のアニメなら出てきそうなロボットが両腕を構えながら飛んできた。
『あれが玩具?』
相手のロボットは、アクセルの前に着地する。その様子を見るや、ジャイロマンはスピーカーを持って彼に声をかける。
「どうだ、アクセル!昨日我々が突貫作業で作ったスーパーロボット『タイタニックロボ』の出来映えは!」
「た、タイタニックロボ!?」
『タイタニックロボ』
それはドラえもんの住む22世紀で一般販売されているプラモデルで大型の箱、全16種類をコンプリートした上で組み立てられる巨大ロボットである。
その造りは子供向けとは思えないほど精密で実際中で操縦することができるなど、クオリティが高い。しかも、この巨体で動力源は単三乾電池4本で10時間と〇ームボーイ並みの稼働時間を実現している。ちなみに10時間と言うのは飽くまで激しく活動した場合で軽い作業ぐらいならもっと長く稼働できる。
『あのゲイト、これのどこがプラモなの!?明らかに本物じゃん!!』
目の前に来たタイタニックロボに対し、アクセルは思わず叫ぶ。
「いや、普通の大型メカニロイドをぶつけるよりもコストが安かったんでね。シグナスに催促してセットでいくつか購入しておいたんだよ。尤も今まで組み立てる暇がなかったから出番もなかったんだけどね。」
『えぇ・・・・』
「あっ、材質については『材質変換機』でその機体と同じものにしてあるから多少の格闘戦なら問題ないよ。」
『いや、そういうことじゃなくて・・・・』
「ちなみに操縦しているのはグラビティーだ。アイツ、本気でやるから気を付けてやらないと怪我するぞ。」
『なんでそんなのに操縦やらせちゃうの!?』
『行くぞ~~~~アクセル~~!!タイタニックロボ、アタック~~!!』
驚いているアクセルを他所にタイタニックロボは、早速とばかりに拳で殴りかかってくる。
『うわっ、危なっ!!』
アクセルは、咄嗟にパンチを避ける。タイタニックロボは勢いのまま転ぶ。
『うみゃああぁああ!?』
『大丈夫なの、これ?』
しかし、起き上がって力比べを始めるとその心配は一変する。腕をガッチリと組んだタイタニックロボは、元々玩具なのにもかかわらずアクセルの機体を押し始め、そのまま倒してしまった。
「「「おぉお!!」」」
「いいぞ!我等のタイタニックロボ!」
タイタニックロボは、倒れた機体に向かってボディープレスを仕掛ける。しかし、アクセルは背部のバーニアを吹かして横にそれ不発に終わる。
『うにゅ~~~~外れた~~!!』
グラビティーマンは、ゆっくりとロボを起こしてアクセルの方へと向き直る。
「くうぅ~~本当にあれ電池で動いてるの?パワーはあっちの方が高い。」
このまま格闘戦をやっては不利だと判断し、彼はオプション項目を開いてロボットの装備を確認する。
「えっと・・・・・肩にミサイルランチャー、目からはビーム砲で腹部には高出力レーザーか!よし、まずはミサイルで!」
アクセルは、武器の発射ボタンを押す。すると両肩の装甲がスライドし、ミサイルの弾倉が現れて一斉にタイタニックロボに向けて発射した。
『わ、わ、わあぁ~~!?』
内心驚いているのかグラビティーマンは、慌ててタイタニックロボを走らせる。ミサイルは次々とハンターベースの施設を破壊し、ゲイトの傍でデータを観測していた一般ハンターたちはその光景を呆然とした様子で見る。
しかし、ホーミング性能が低いのか全く当たらず、タイタニックロボに一発も当たることなく、ミサイルが底をついたのかボタンを押しても発射されなくなってしまった。
「えっ!?もうないの!?搭載量少なすぎでしょ!?」
アクセルが呆然としている様子を見抜いたのかアルバイターたちは更にタイタニックロボに呼びかける。
「グラビティ―、今だ!!タイタニックソードでやっつけろ!!」
クリスタルマンが言うと同時にウェーブマンとストーンマンが巨大なレバーを思いっきり下げる。すると格納庫から巨大な剣が射出され、タイタニックロボの手に届く。
『剣もあるの!?』
「最近増販されたモデルで追加された『タイタニックソード』だ。本当は『タイタニックハンマー』とか『タイタニックスーパーキャノン砲』とかもあったけど時間がなかったから剣だけ仕上げた。」
『行くぞ~アクセル~~!!』
グラビティーマンは、すっかり夢中になっているのか剣を構えて向かってくる。
『ちょ、ちょっと待ってよぉ~~!?』
『必殺、タイタニック爆走斬り~~~!!』
剣を構えて向かってくるタイタニックロボに対し、アクセルはどうするか焦る。
「目のビーム砲じゃ絶対に止められないよね・・・・でも、レーザー砲は威力強すぎる気がするし・・・えっと・・・・・」
『うぉおおお~~~~!!』
タイタニックロボは、もう目前まで迫っている。何でいる時間はもうない。
「えぇい!!もう、どうにでもなっちゃえ!!レーザー砲発射!!」
彼はやけっぱちになってスイッチを押す。するとロボットの腹部の装甲が開き、大型のレーザー砲が露わになる。同時にチャージが開始され、すぐさま発射可能状態になる。
『ふえっ?』
目前まで近づいたグラビティ―マンは、一瞬の眩い閃光に視界を奪われる。
ドドーンッ!!!
放たれたレーザー砲は、タイタニックロボの胸部を貫いて勢いよく吹き飛ばした。その余波は無人の市街地にまで達し、貫通したビルは高熱で溶かされて痛々しい姿となり、レーザーの軌道上は焼け野原となった。
「・・・・・」
予想以上の凄まじい威力を目の前にアクセルは、言葉を失う。近くではその悲惨な状況に一般ハンターたちが動揺している。
そして、ベースの敷地の外で倒れているタイタニックロボの姿を見てアルバイターたちは、口を開いて動揺する。
「あ・・・・あ・・・・・」
ジャイロマンは、レーザーの熱で歪んで変わり果ててしまったロボの姿を見て身震いが止まらなくなる。他の6人も同じで同時に叫び声をあげた。
「た・・・・た・・・・・」
「「「「「「「タイタニックロボ~~~~~~!!!!!」」」」」」」
「って、そこはグラビティ―さんを心配してあげないの!?」
ドラミが思わずツッコミを入れる。
その後、グラビティーマンは気を失った状態でコックピットで発見された。
特に怪我はなかったが彼もまた自分よりもタイタニックロボの変わり果てた姿を見て泣き出してしまったのであった。
「うわぁ~~~~ん~~!!タイタニックロボォ~~~~!!」
次回、ワイリー一味が動くか?