22世紀 Darkメン 地下秘密研究室
エックスの世界で潜入捜査の準備が進められている一方、ここDarkメンの地下に存在する地下研究室では、ワイリーがあるものを入手したことで上機嫌になっていた。
「ヌッフフフフ、でかしたぞシャドーマン。まさか、変身ドリンクだけであのクワガタヘッドの方に気を逸らせ、ワシがこの未知の電子頭脳を手に入れているとはハンター共は知る由もない!」
ケースに収納された電子頭脳を見ながら彼は不敵な笑みを浮かべる。
「しかし、よろしかったのですか?先日、ゼロの奴めに余計な手出しはするなと言われたばかりだと言うのに。」
先日 Darkメン店内
「・・・・・」
ゼロは、無言で目の前に出されているラーメンを渋い顔で見ていた。
「どうしたゼロ?せっかくのドクターの奢りを食べられんと言うのか?」
シグマは、腕を組みながら言う。
「・・・・お前が打った麺になんの細工もされていないという保証があるのか?」
「それは心外だな。ここは戦場ではなく、食事処だ。そんな場所で私が毒を盛ると思っているのか?」
「お前なら有り得る。特にそこのジジイに関してもな。」
ゼロは、目を細めて答える。もし相手がいつも作っているダークマンたちなら悪いと思いながらも頂いていたであろう。しかし、今回作ったのは目の前にいるのは幾度となく戦い続けてきた宿敵、更に奢るのはあらゆる元凶とも言える自分の製作者だ。
結婚式の時に態々兄弟を送って「いつか連れ戻す」とまで伝えられれば警戒されるのも仕方ない。
「・・・ゼロ・・・」
夫の様子をアイリスは隣から心配そうに見る。彼女自身もワイリーからかなり興味を持たれている。そんな二人に対し、ワイリーは流石に痺れを切らしたのか目の前に座って来た。
「全く、たかがワシの奢りで何を警戒しておる!毒を盛るんだったら最初っからナンバーズ全員招集して捕まえるわ!」
「・・・」
「現に向こうの席で食べとるリングマンたちは、平気な顔しておるじゃろ!」
彼は、少し離れた席で食事をしているリングマン一家を指さす。リングマンは様子を窺いながら食べているがリングは特に何事もないようにラーメンを啜っている。同じ時間に出されているため、毒を盛るのならこの場にいる全員にやるはずだ。
「・・・・わかった。だが、変な気を起こすなよ?こっちにはエックスたちも来ているんだ。下手なことをすると全力でお前のこと捕まえに来るぞ。」
「い、頂きます・・・。」
二人は、恐る恐るラーメンを啜り始める。その様子をシグマとワイリーはチラチラと見まわす。
「どうじゃ?中々いいもんじゃろう?」
「お味はいかがかな、ゼロ?」
一旦麺を啜り終えるとゼロは、少し驚いた顔で二人を見る。
「これ、本当にお前が作ったのか?」
「当たり前だ。何しろ、ここで世話になりっぱなしではダークマンたちに面目ないからな。」
「・・・悪くない。」
その言葉にシグマはそうだろうとばかりに笑みを浮かべた。
「だがな、俺はお前たちのことを信用してない。特にシグマ、お前はな。」
「フン、好きに言うがいい。」
「後、ジジイ。アンタも大概にしろよ。今は、問題を起こしていないから見逃されているが俺たちの世界では大罪人なんだからな。」
ゼロは、ワイリーを軽く睨みつけながら言う。
「お前がエックスに勝てばなぁ。そうすればワシがライトよりも優れていることが証明される。」
「Dr.ライトも思っているがいい加減和解したらどうなんだ?少なくともアンタはやることが過激すぎだ。」
その言葉に対し、ワイリーは急に真面目な顔になる。
「ゼロ、お前は何も分かっておらん。今のレプリロイド社会は守るべき人間のエゴでその可能性が押しつぶされようとしているのだぞ。」
「なに?」
その言葉にゼロは、目を見開く。
「確かにライトの言う機械と人間の共存についてはワシも反対するつもりはない。だがな、奴の考えではその境界線を分断・・・・いや、そもそも繋がれてすらいない状態なのじゃ。」
「アンタが昔エックスに言っていたことか?俺たちが今のままでは『道具』に過ぎないって言う。」
「その通りじゃ。今は意識を変えつつあるようじゃがライトの考えで推し進めてはレプリロイドは『人間の都合のいい道具』と言う負の側面を捨てきれん。そして、もう一つの可能性もな。」
「もう一つの可能性?」
「ライトが提唱した『悩み、考え、行動することで人間や他の生物と同じように進化できる可能性』じゃよ。実際、エックスの影響で周囲のレプリロイドも自分で考え、葛藤する輩が増えて来ておる。お前やゲイトもな。しかし、ライトの与えたこの能力は人間にとって不安要素でもある。」
「不安要素?イレギュラー化のことか。」
「お前たちの視点から見ればな。だが、それは人間にとって当たり前のことなのじゃ。本来パートナーとして作られたはずのレプリロイドが人間たちのやるべき労働をすべて押し付けられ、不満に感じるものがいないと思うか?そして、それに気づいて暴れたレプリロイドを同じレプリロイドに始末させる。それが人間に近い感情を与えられてやらせることか?」
ワイリーの複雑な表情にゼロは、何も言えなくなる。
この世界ではロボットは、犯罪を犯せば人間のように更生するチャンスを与えられ、やがて社会に復帰することができる。
しかし、自分たちの世界はどうだろうか?
一度暴走すれば『危険』の烙印を押され、本人の意思の有無に関係なく処分される。実際、リングマンも一度は悪事に手を染めてしまったとはいえ、以降は社会のために活動を続けていた。そんな彼すらも殺されかけたのだ。
レプリフォースのように更生しないまま軍隊に入れてしまい、問題行為を起こして組織内部が腐敗してしまう例も存在するが、自分たちと同じ感情を与えられながらこの仕打ちはあんまりだと言える。
「ワシが行った世界征服計画は確かに世間からしてみれば『悪』そのものじゃ。だがな、そうでもしなければ遅かれ早かれ偽りの共存社会は破綻していたのじゃ。わかるか?『奴隷』が武器を持って集団で反乱するように世間はロボットたちが『不満』を爆発させて自分たちに襲い掛かってくるのを恐れているんじゃ。お前たちの言う『イレギュラー』にな。」
「・・・・」
「『恐れていた』だと?都合のいいように解釈するのはいい加減にしろ!!」
そこへ今まで大人しく家族と食事をしていたリングマンが突然席を立ち、彼の前に来る。
「貴方?」
「パパ?」
突然の行動にエリカとリングは戸惑う。リングマンは、彼の襟を掴むと持ち上げ、憎しみを込めた目で睨みつける。
「お前が世間の考えを変えようと動くのは勝手だ。だがな、それに巻き込まれる民衆のことを考えたことがあるのか?」
「リ、リングマン!?」
ゼロもアイリスも困惑するがワイリーは、表情一つ変えようとしない。その様子に彼はさらに苛立ちを募らせる。
「ツンドラマンにはあんなことを言ったが・・・・私は、貴様のことが憎い!!他のロボットを操って社会を混乱させ、何度も世間を騙し続けた貴様が!!貴様が更生してライト博士と協力していれば、ロボット連盟だってあんな非情な決断はしなかったはずだ!!」
「・・・更生してどうする?ライトと仲良く連中の都合のいいロボットを作っていればいいとでも言いたいのか?人間の言うことを忠実に聞く『玩具』を。」
「それを作らせる原因を作ったのはどこの誰だ!!貴様だろ!!貴様の世界征服計画で罪なき者が大事な人を失い、ロボットを憎ませ、あの血も涙もない『ハンター』を生み出したんだ!!あの時代に生きたロボットたち・・・、コサック博士・・・ブライト、ダイブ・・・・ダスト・・・ドリル・・・トード・・・・ファラオ。貴様のために私は・・・お嬢様は・・・・大事な家族を奪われたんだ!!」
リングマンの怒鳴り声で辺りは騒然とする。幸い表の暖簾が仕舞われていたこともあって他の客はいないが厨房にいるシグマとダークマンたちは、流石に気まずくなってきた。
(やばい・・・)
(リングマンの奴、めっちゃ怒ってる・・・・)
(このままだと博士危なくね?)
(まずいまずい・・・)
(ドクターもお人が悪い。まさか、自ら地雷を踏んでしまうとは。)
5人が冷や汗を掻きながら縮こまって見ている中、彼のワイリーに対する怒りはヒートアップしようとしていた。
「貴様はいつだってそうだ!自分のことを棚上げにして周りのことを何も見ていない!何がロボットは愛すべきものだぁ!!貴様は!貴様はぁ!!」
「貴方。」
そこへエリカが割って入り、二人の間に入った。怒り心頭になっていたのかリングマンは我に返る。
「エリカ・・・」
「もう、やめましょう。リングが怖がっているわ。」
「えっ?」
彼は、自分の座っていた席の方を見る。そこには余程怖がっていたのかリングが泣きかけていた。
「・・・そんなに怖い顔になっていたのか?」
「えぇ、ものすごく。」
「・・・そうか。」
妻の言葉を聞いて完全に落ち着きを取り戻したのかリングマンは申し訳なさそうな顔で彼女目の前に来る。リングは、目の前に来るなり元の優しい父に戻ったと気づいて安心したのか抱き着いて泣き出してしまった。
「うあぁあああ~~~~!!」
「ごめんよ、リング。ごめんな。もう、こんなことしないよ。本当にごめんよ、ごめんよ。」
必死に娘を抱きしめながらあやす彼の後姿を見ながらゼロは、やや複雑な心境で口を開く。
「ジジイ、見ろよ。あれがアンタの理想のために犠牲になった一人のロボットの姿だ。確かにリングマンは、この世界で新しい家族を儲けて幸せに暮らしている。だが、目の前で破壊された兄弟のことや世界に裏切られて傷つけられたことは一生消えることはない。恐らく、これからもな。」
娘をあやしながら代金を支払って店を出るリングマンたちを追うようにゼロもアイリスの手を取って席を立つ。
「このままここで隠遁生活をするというのなら俺は手出ししない。けど、また俺たちやこの世界で事を起こしてみろ。その時は・・・・情けをかけずに斬る。行くぞ、アイリス。」
「え、えぇ。」
彼は、ワイリーの顔を見ることなく店を出る。ワイリーは態度には見せなかったもののやや不満そうにその後姿を見送るのだった。
そして、現在。
「分かっておるわ。ワシはただこの電子頭脳に興味があって回収させただけに過ぎん。用が終わったらちゃんと返してやるわい。」
「返しに行くのは拙者たちなのですが・・・」
彼の言葉にシャドーマンは、困惑した表情でツッコミを入れる。収納されていた電子頭脳は拘束から解放されたと理解するとピピッと音を出しながら彼の手から放れようとする。
「ドクター、動き始めましたぞ。」
「こんなボール球でも一応生きておるからな。さて、最初に会話ができるようにしてやらんとな。」
ワイリーは、暴れる電子頭脳を机に置くとケーブルを空いている穴にいくつか差し込む。
「これでこの発声装置から会話ができるようになるはずじゃ。」
彼が手を放すと電子頭脳は飛び跳ねながら装置を通じて言葉を発する。
『やい、よくも散々狭いケースに閉じ込めてくれたな!体を返せ!』
「こやつ、取り調べられてよっぽど鬱憤がたまっていたようじゃなぁ。お前の体なんぞ、当の昔にバラバラにされてしまっていたぞ。」
『えぇ!?』
彼の一言に電子頭脳は、動きを止めて驚く。
「まあ、ワシにとってはどうでもいいことじゃ。お前とゆっくり話ができるんじゃからな。」
『き、機密情報の大半は、リルルが管理しているんだ!調べても無駄だぞ!!』
「ほう、リルルと言うのか。あの女子。っと言うことは鏡面世界に忍び込んだシェードマンの情報は本当だったというわけか。」
ワイリーは、ニタリと笑みを浮かべて机のディスプレイを操作してスクリーンを映す。
そこにはワイリータワーの機器を使って本国と通信を行っているリルルたちの姿があった。
『リルル!?』
電子頭脳は思わず映っている彼女に通信をしようと試みる。
「あっ、これ記録映像だから無駄じゃぞ。」
『ウッ!?』
「なあに、ワシは別にお前たちの目的なんぞどうでもいいんじゃ。ちょっとばかし、お前さんの中身を確認したくてのう・・・グフフフフッ。」
『や、やめろ地球人!!僕にこんなことして只で済むと思っているのか!!』
電子頭脳は、彼から感じられるマッドサイエンティスト特有の雰囲気に押されて震える。
「心配することはないぞ!中身を開いて中枢部を取り出して他のボディに移植するだけじゃからな。簡単じゃろ?」
『やめろ~!?そんなことしてみろ!後にやってくる『鉄人兵団』の手によってお前は国民をバラしたという責任によって奴隷どころか、死刑にされるからな!!本当だぞ!!釜茹でにされるかもしれないぞ!!いいのか!?』
「・・・・・早速、情報を吐きよったな。」
『あっ・・・・』
先ほどの発言が冗談だと知り、電子頭脳はしまったとばかりに冷や汗を掻く。ワイリーは椅子に腰を掛けると面白そうにスクリーンを拡大して見せる。
「さてと、ボーリング玉。じっくり聞かせてもらおうではないか『鉄人兵団』とやらのことをな。」
『い、嫌だ!』
「ほう、いいのか?ここはお前がいた世界とは全く別の世界なんじゃぞ。」
『どういう意味だ?』
「いくら助けを求めても応援が来ないということじゃ。」
『いぃい!?』
「安心せい、生憎今のワシはあまり表立った行動ができない身でな。余程のことがないと我が息子に斬られてしまうんじゃ。じゃから、お前さんが話しても仲間たちの計画に支障ができるわけではない。」
『エッ?』
まさかの中立発言に電子頭脳の緊張が少し解れた。
『お前・・・地球人だろ?なんで、ロボットのこと助けるんだ?敵なんだぞ?』
「フン、ワシにとってロボットは我が子のような存在なのじゃ。だから、心配せんで話を聞かせろ。お前の星、お前のことをな。」
『・・・・・・お前、変な奴だな。』
この人間は一体何を企んでいるのか。どうして敵であるはずのロボットにこうも親しく接してくるのか。
・・・・でも、何故か敵でないように感じる。
電子頭脳は、少なくともリルルたちと合流するためにはこの男に情報提供するしかないと判断し、リスクを背負うことを決める。
『わかったよ・・・・・でも、大まかなことしか知らないからな。』
「おぉ、やっとその気になったか大した玉じゃのう。」
『玉とかボーリングとか呼ぶな!僕には「ジュド」って名前があるんだ!!ジュドと呼べ!!』
「ホイホイ、では聞かせてもらおうかのう・・・・」
21XX年 鏡面世界
リルルたちが入手したおざしきつり堀のゲートを通じて、メカトピア星から送られてきた作業ロボットたちは、続々と基地建設のために動いていた。都合よく綺麗な状態だった「ドッペルタウン」に目を付け、追加で送られてきたジュドの予備パーツを組み立て、レーザー砲で街の一部を更地に変える。そこに新たに前線基地を築き、同時並行で兵団を迎え入れるための大型ゲートを建設しようとするがそこで工事が難航していた。
「参ったなぁ~、作るにしてもあのポスターがどうやってこの世界と繋がっているのか仕掛けが分からねえ。」
グランドマンは、設計をしている中でそのことに気づいて頭を抱える。これに関しては表の世界で諜報活動をしているリルルの報告を待つしかない。
一方、基地建設の方もやや作業員たちの不満の声がちらほら上がっていた。
「おい、なんで敵の本拠地じゃなくてこんな田舎くせえ山の間にある街なんかを改造するんだよ!?」
「あっちの方が施設が整っててやりやすいんだろ?」
「ジュドのデカブツを操作して山を消し飛ばして広げるなんてエネルギーの無駄だぜ。どんな判断だよ!?」
単眼が特徴のマンティスタイプの作業員たちは、愚痴を言いながら岩塊を撤去して行く。今日も基地の増設のためにジュドのレーザー砲で山を掘削し、土地を均していたところだ。
「おい、文句言うのはこれくらいした方がいいんじゃねえか。」
「いいんだよ、これくらい。ったく、なんで俺がこんなデカブツの操作しなくちゃならねんだよ!こんなゴミによ!」
操縦席から降りてきた一人は、文句を言いながらその巨体に対して蹴りを入れる。予備パーツで組み立てられたジュドはオリジナルと比べて黒で色が統一されており、夕方と言うこともあって今にも動くのではないかと言う不気味さを出していた。
「おい、よせよ。動いたらどうする気だよ?」
「知るかよ!そもそも当の本人は敵に捕まっちまったんだ。今頃バラバラにされてスクラップになっているだろうぜ。」
そう言うと彼らは、今日の作業を終了にして宿舎へと戻ろうとする。
「今日も働いたな~。あぁ~、早く人間共を捕まえて楽になりたいぜ~。」
「そうだな、一人でも多く人間を捕らえたものには総統閣下から褒美がもらえるんじゃねえか?」
その途中一人が後頭部に何か命中し倒れる。仲間は特に気にすることなく歩いて行くのを確認すると近くの茂みから一般ハンターたちが現れ、彼を運んでいく。
「ターゲット捕獲完了。」
「IDを確認。続いてDNAデータの摘出を・・・・」
「ムグ!ムググ!?」
暴れる作業員を取り押さえ、彼らは認証IDとDNAデータの端末でコピーを取る。そして、それを待機しているアクセルに手渡す。
「アクセル、これが奴のIDとDNAデータだ。」
「ありがとう、早速試してみるよ。」
アクセルは、DNAデータを組み込んでコピーショットを発動する。すると姿はたちまち拘束している作業員のものへと変わった。
「お、俺がもう一人!?」
作業員は、目の前にもう一人の自分が現れたことに驚愕しながら連れて行かれる。
『それじゃあ、行ってくるよ。』
「無茶するなよ、お前にもしものことがあったらリルルちゃん悲しむからな。」
『どうしてリルルの話が出て来るのさ?』
彼女の名前が出たことにアクセルは、首をかしげる。
「えっ?お前、あの子となんか雰囲気がいいじゃん。」
「そうそう、パレットには最近目もくれなくなったしな。」
『パレット・・・・アッ。』
その瞬間、アクセルはすっかり彼女に謝ることを忘れていたことを思い出す。
(しまった~!ハンター試験やメカニロイドのテストですっかり謝っとくの忘れてたよ~!?でも、これから任務だし・・・・けど、戻ってきた後も謝ると遅いって怒られそうだしな・・・・運・・・・)
「おい、先に言っていた連中が戻って来たぞ!」
「奴ら、仲間の一人いなくなったことに気づいたんだ。アクセル、早く行くんだ。」
『わ、分かったよ・・・(仕方ない、帰ってから謝ろう。はあ、また端末頭に投げつけられるかも)』
アクセルは、諦めがついて茂みから出て他の作業員たちと合流する。
「おい、今まで何してたんだよ?点呼するときにいねかったからグランドマンの奴にどやされて探しに来たんだぞ!」
『ごめんごめん、途中で何か物影が見えたから一瞬人間かと思っちゃって・・・近づいてみたらただの岩だったよ。』
「なんだよぉ、ここにはネズミ一匹もいねえってリルルが報告してたんじゃねえか。」
「ドジな奴だな、全く。」
他の作業員たちは、アクセルの正体に気づくことなくそのまま一緒に基地の方へと戻って行った。一般ハンターたちは、それを物陰からひっそりと見送るのであった。
「頑張れよ、アクセル。」
メカトピア星 メンテナンスカプセル第二棟
一方、遠く離れたメカトピア星では鉄人兵団本隊がワープ移動による長旅に備えて各自メンテを受けていた。
その中で上位の実力に入るネロを隊長とする親衛隊がカプセルから目を覚まそうとしていた。
「ネロ隊長、お疲れ様でマス。今回もどこも異常がなかったマスよ。」
頭の電子頭脳が透けて見えるロボットは開いたカプセルから起き上がるネロの傍へと行き敬礼をしながら挨拶をする。
「・・・・そうか。すまないな、ナンバーマン。部下たちも含めてお前の部署に頼ってしまって。」
「とんでもないでマス。態々こんな旧式の設備しかないアッシの所に来てくれるだけでネロ隊長たちには感謝しているでマス!」
ネロは、起き上がると他の空いたカプセルに呼びかける。
「みんな、もう動いていいぞ。」
すると各カプセルからそれぞれ別のロボットたちが出てきた。
「う~~ん~~~流石に長くやっていねえとメンテの時間が延びるな~。同じ夢を何回も見ちまったぜぇ。」
「それは貴様の電子頭脳のレベルが低いせいではないかロッソ?」
腕を振り回すロボットに対し、杖を持った細身のロボットが皮肉を言う。
「あ゛あ゛!?なんだどヴェルデ!てめえ、もう一回言ってみろ!?その細い頭、消し炭にするぞ。」
「おいおい、調査と解析専門の私に暴力でけしかけるのは勘弁しておくれよ。暑苦しいお前の攻撃なんて受けたら繊細な私の電子頭脳がイカレてしまうよ。なあ、ブル?」
「・・・・・」
ヴェルデは、隣にいる青い巨体のロボットに同意を求めるが彼が無言だった。
「てめえは何か喋れよブル!?黙ってたんじゃなんにも分かんねえだろうが!!」
「うるさくてわかんなくなるのはアンタの方よ、このバカ!」
あまりのうるささに頭に来たのか、女性型のロボットは持っている電磁鞭でロッソの頭を叩く。
「ビビビバブデッ!?」
「騒ぐのはそのぐらいにしておけ。」
ネロの声に一同は争うのをやめて彼の方を見る。
「ネロ、でもよぉ・・・・」
「オーロの言い分が正しい。ここはナンバーマンの管轄の場所だ。俺たちが好き放題騒いでいい場所ではない。」
「うぅ・・・・」
上官の言葉でロッソは、不満に思いながらも引き下がる。ネロは、ナンバーマンにお礼を言うと彼らと共に自分の部署へと戻る。
「ねえ、ネロ。」
移動中、オーロは何か気になっていたのかネロに近寄ってきた。
「なんだ?」
「前から気になっていたけど何でいつも2棟の方へ行くわけ?1棟の方が近いし、設備もいいのに。」
「・・・・・」
「いや、アンタが博士のこと嫌いなのはわかるわよ?でも、だからって・・・・」
彼女が話を続けようとした時、ネロは突然歩みを止める。
「・・・オーロ、もうアイツのことを博士と呼ぶな。」
「けど」
「アイツは・・・アイツはもう、俺たちが知っているビアンコではない。あの遺跡の調査からすっかり変わってしまった。他のロボットを改造して・・・・精神回路が狂った奴もいるんだ。」
「ネロ・・・」
「話は終わりだ。行くぞ。」
「え、えぇ・・・」
まだ何か言いたげだったがオーロは、それ以上何も言えなかった。
後日。
シティ・アーベルでは今日も変わらぬ平穏な時が流れていたが正午、不穏なニュースが流れた。
『元イレギュラーハンター スティング・カメリーオ再び脱走!?時間犯罪者の仕業か!?』
『シャドウハンター ザイン&ギーメルも逃走!!発見次第、すぐに通報を。』
なんかもう原作の原型が無くなりかけてるな・・・