メカトピア星
「・・・・」
この日、ネロは一人ある場所へと向かっていた。そこは、メカトピアの中でも悪名高い元上流階級の支配エリアでその一角にやや古びた研究所が立っている。
「・・・・ビアンコ、いるのか?」
照明がついていない施設の中へ入ると彼は、自然に足を進めて行く。地下に入ると埃があちこちに被っており、その奥では大型コンピュータを動かす老人型ロボットの後姿が見えた。老人は、作業に没頭しているのかネロの方へ振り向く様子はない。
「・・・ふん、来よったか若造。」
「第一棟に姿がないと思いきやこんな懐かしいところに来ていたとはな。」
ネロは、床に落ちている写真を拾って埃を払う。
そこには自分とリルル、そして大勢のロボットに取り囲まれて笑っているビアンコの姿が残されている。ビアンコは相変わらず、コンピュータを操作している。
「・・・・今更ワシの所に何の用じゃ?ワシは忙しい。」
「俺は明後日、総統以下侵攻部隊と共に『チキュウ』と言う星に向かう。アンタが付いて行かないのは意外だった。」
「・・・・また戦争か。よく飽きもせずやるわ。」
ビアンコは、初めて手を止めて振り向く。その顔は、何かを悟ってしまったかのように疲れを感じさせるものだった。
「この星は何も変わらん。戦争が終わったと思えば、また戦争。飽きることなく、戦争・・・・それが神の意志にどれだけ反し、自分たちの首を絞めつけているとも知らずに。」
「・・・メカトピアの古代神話か。そう言えばアイツも好きだったな、アンタから聞かされた昔ばなし。」
ネロは、ビアンコに抱き着いている少女の顔を見ながら懐かしむように言う。
「『太古の昔、神々によって天国のような世界が栄えていた。しかし、神々は自らの業で一度世界を滅ぼす。生き残った神、非を認め自らの手で新たな生命を落とす。その二人のロボットを『アム』と『イム』と名付ける。神、二人の子孫の繁栄を見守りながら星へと帰る。』・・・・これが現在知られている『古代神話』の一節だ。だが、この神話には裏が存在し、過ちを繰り返さないよう星に悪しきもので満たされた時目覚める破壊神を残したと言う。破壊神は、数日であらゆる生命を奪い、無の世界となったこの星に新たな生を与えて世界を創造する・・・・学会ではカルト教団のでっち上げだと言われていたがアンタとセラは真面目に考えていたな。『これがメカトピアの未来を左右するかもしれない』って。」
「だが、未来への希望は絶たれた。そして、今もこの星の最期の日が着々と進みつつある。我々自身の手でな。」
ビアンコが詰まらなそうに言い、再び作業に戻ろうとするとネロは、彼の肩を掴む。
「・・・・何故、リルルを改造した?するなら、軍上層部に先に打診するのが筋じゃないのか?」
「フン、申請してもお前が却下するだろう。」
「当たり前だ。既に何人かのロボットがアンタの改造を受けてから異常に好戦的になり、作戦指示を無視して暴れるようになった。やむを得ず破壊した残骸から解析した結果、全てアンタの所で処置を受けていたことが分かった。そんな男の改造申請など承諾すると思うか?」
「フフフフ、ネロ。お前が今そうしていられるのは誰のおかげだと思っている?妹と共に朽ち果てるのを待つことしかできず、路上で倒れていたお前たちを拾い、軍に志願させてここまで出世できたのもワシとあの子がいたからこそではないのか?」
ビアンコは、不敵な笑み浮かべながら言う。その表情にネロは不満に感じながらも否定しない。
「あぁ、アンタとセラのおかげだ。そのことについては今でも感謝している。あの子に今の生活をさせることができたのもな。だが、それが今じゃどうだ?セラが死んでからアンタはおかしくなった!!」
「そのセラを殺したお前が言うことか!!」
「彼女を戦闘用に改造して前線に送ったのはアンタだ!!あの時は仕方がなかった!もし、暴走した彼女を破壊しなければもっと多くの仲間が破壊されていたんだ!!あの事故は・・・・」
「事故?お前はまだあれを事故だと言うのか!?事故と言う言葉だけであの子の死を片付けるつもりか!セラの死を!!」
ビアンコとネロは睨み合う。それは、憎悪と言うべきものなのかそれとも別のものなのかはこの二人にしかわからない。
「決定打になったのはアンタが神話だけの存在と言われていた古代遺跡を発見し、調査に行ったあの日からだ。帰ってきたあの日から俺は、アンタが何を考えているのか分からない。あの遺跡で何を見たんだ!?」
彼は、ビアンコの襟を掴んで脅迫気味に問い詰める。だが、ビアンコは答える気はなく、彼の拘束を解くと作業に戻った。
「フハハハハ、心配せずともその内分かる。そう遠くないこの星、最期の夜明けが来るときに。そして、お前もこれからするであろう自分の行いを後悔することになる。必ずな。」
「チッ!・・・リルルは会い次第、ナンバーマンに調べてもらう。アンタのことだ、凶暴化させるプログラムが仕掛けられているかもしれないからな。」
ネロは、吐き捨てるように言うとその場を後にしようとする。
「無駄だ、あの娘たちは特別な存在だ。そして、この世界の行く末を決める大きな存在となる。いずれな。」
「何?まさか、ジュドにまで改造を施したのか?クソッ!このイカレマッドが!どこまでも余計なことを!!」
彼が去っていくのを見送るとビアンコは、再びコンピュータの操作をし始める。
「ハハハハ、何も知らない愚か者めが!最早、動き出した歯車を止めることなどできん!!そう、それが例え破滅だとしてもだ!ハハハ、ア~ハハッハッハッ!!」
22世紀 タイムパトロール本部
協議を中断し、会議室ではイレギュラーハンターがある映像を見せられていた。
それは、かつてドラえもんたちが昔鉄人兵団を迎え撃っていた時のもので大軍で迫るロボット軍団に対し、たった四人で挑むドラえもんたちの姿が流されていた。
「・・・・」
「エックス・・・」
暗い過去の映像を見て胸を痛めるエックスの様子にマーティは心配する。映像を見終えるとスクリーンは下がり、部屋の照明が点く。
「これが私たちの世界でも問題として扱われている事件『メカトピア兵団侵攻事件』の全貌です。別惑星で独自の進化を遂げたロボットたちは、自分たちの階級制度を廃止するに当たって新たな労働力として人間を奴隷にしようとこの星へ攻めてきた。当時の地球では認知されず、その戦いは『歴史の改変』によって終わりを迎えることになりました。」
長官は、窓の外の光景を見ながら言う。
本来、時空法の取り締まりにより歴史の大規模な改変は厳しくされ、実行をした者にはそれなりの罰則が与えられることになっている。
しかし、当時のエックス事のび太並びに仲間たちはまだ子供であったこと。もし、当時の地球が侵略されればこの22世紀も消滅しかねない事態だったため、この『メカトピア兵団侵攻事件』は不問と称されて密かに処理されることになった。
当然、ドラえもんにも罰則はなかったが以降は、歴史の改変の起こりうる事件へ対応が強化されることになった。過去の世界で生活を送る場合は事前に許可書を発行し、定期的に更新することが義務付けられている。
「まさか、こちらの世界でもこのような危機に見舞われていたとは・・・」
「すべての時代がその通りになるとは100%保証されていません。ほんの少しの出来事で歴史が大きく変わることもあるのです。もし、彼らが行動しなければこの世界に大きな悪影響が起こったでしょう。」
「・・・・」
エックスは、複雑な顔をしながらある予感を感じざるを得なかった。
今、自分が生きている世界で再び鉄人兵団が現れた。ということは彼らは既に母星を旅立って地球へ向かってきているはずだ。そうなればいやでもまた戦うことになってしまう。
恐らく彼女とも・・・・
「・・・クッ。」
彼は、無意識に拳を強く握りしめる。シグナスは、腕を組んで話を進める。
「もし、我々の世界に現れたのがその『鉄人兵団』だと言うのなら、目的は同じく『人間狩り』。価値観の違いから考えて説得は厳しいでしょう。」
「シグナス!?」
「エックス、お前もかつて兵団と戦っているのならそれが分かるはずだ。彼らは、自分たち以外の存在を認めていない。戦いを避けることは不可能だ。」
「しかし・・・」
「我々が抱えているのは地球人類だけではない。同盟関係であるチャモチャ星の人間たちもいるんだ。そして、我々が敗北すれば連中はタイムマシンの技術を手に入れ、過去と未来からも人間を奴隷として捕えようと動くだろう。」
「・・・」
その言葉に対して、エックスは言い返せなくなる。シグナスは、彼の気持ちを察しながらも今後の方針を出す。
「お前とゼロ、マーティたちは、今日中に荷物をまとめて明日、ハンターベースに引き上げてくれ。向こうのゲイトたちと合流し、対鉄人兵団戦に備えて部隊をまとめてほしい。」
「・・・・」
「シグナス、いくら何でも話が早すぎるんじゃないか?第一、俺たちはその『ザンダクロス』の頭脳を奪われたままなんだぜ?犯人だと考えていたクワンガーたちも怪しくなってきたし、迂闊に俺たちを返すのはまずいんじゃないか?」
表情を険しくするエックスの様子を見て、ゼロは少し庇い気味に言う。
「確かにお前たち全員を戻すことは良策とは言えんだろうな。だが、こちらの世界に留まっていても手掛かりがないこの現状ではどうしようもない。」
「・・・確かにな。」
彼は、シグナスの言葉を否定することなく認めた。今の自分たちはそれだけの危機的状況に陥っているのだ。
「・・・」
エックスは、無言で部屋を出て行く。
「エックス!」
「のび太くん!」
その後をマーティとドラえもんが追いかける。アイリスも彼らの後を付いて行こうとするがゼロに制され、止められる。
「行かせてやれ。アイツだって、頭の中では分かっているんだ。守るためには戦うしかないことを。今は、少し考えさせる時間をやろう。そうしなければ、アイツは奴らと戦えない。」
「・・・えぇ。」
二人は、部屋の窓から外へ出て行く三人を見守る。一方のシグナスも机で手を組みながら戻ってからの方針を考えていた。
(敵は、何千何万の大軍で総攻撃を仕掛けてくる。もし、エックスたちが体験した歴史通り鏡面世界での前線基地が完成してしまえば、例えレプリフォースと共同戦線を取ったとしても守り切れるかどうか・・・・この戦い、恐らく我々の中でこれまでにない規模の戦争になるかもしれない。)
Darkメン 地下室
その頃、ワイリーは昼食をとった後再び地下室に籠っていた。彼は、ジュドの電子頭脳から抽出したデータを調べていたが一部不明なデータを発見し、不審に思っていた。
「妙じゃのう、別に軍事データでもなければ機密保持のためのデータでもない。データとして形をなしていない不完全なプログラム・・・にもかかわらず、プロテクトが施されておる。一体、製作者はジュドに何をやらせようとしているんじゃ?とても、タダの土木作業をやらせること前提にしては怪しすぎるぞ。」
彼は、不審に思いながらキーボードを操作して正体を突き止めようとする。そこへジュドが一息ついてお茶を淹れてきて持ってきてくれた。
「ワイリー、お茶を持ってきたぞ。」
「おう、気が利くのう。」
ワイリーは、彼からお茶を受け取ると作業を中断して一服する。
「その体には大分慣れたか?」
「最初はリルルたちみたいな身体で戸惑ったけど動きやすくて色々と便利だよ。でも、やっぱりこの凶悪そうな顔だけは馴染めないな。」
「ほっとけ!・・・・・とまあ、それならそれでいいわい。ところでジュド、お前さんこの星に送り込まれる前に何かされてないか?」
彼の問いにジュドは、キョトンとする。
「どう意味だよ?」
「つまり、メンテナンスなりシステムのアップデートを受けていたのかと言うことじゃ。」
「あぁ、それならリルルと一緒にビアンコ博士のアップデートを受けたよ。システムへの伝達を速くして効率よく動けるようにって。」
「ビアンコ?」
「僕やリルルに優しいメカトピア星でも有数の頭脳を持った科学者ロボットだよ。リルルの応急手当てを受けた後、僕のことを直してくれたんだ。貴族階級なのにいい人だったよ・・・セラが亡くなるまでは。」
彼は、少し寂しそうな顔をする。
「それはどういうことじゃ?」
「セラは、ビアンコ博士の娘さんで博士の願いを少しでも早く叶えるために戦闘特化タイプのパワードスーツを装備して戦争に出ていたんだ。・・・・けど、随分前の敵対惑星との戦いで死んじゃったんだ。事故だって聞いているけど。」
「ほう・・・」
ワイリーは、眼鏡を光らせながら興味津々に聞く。
「そこからなんだ。博士に不穏な噂が立つようになったのは。軍人タイプのロボットの何人かを改造しておかしくしたとか、母星のために働いている裏で何かとんでもない研究をしているとか。」
「いきなり180°性格がひっくり返ったな。」
「僕もリルルもそんな噂信じなかったんだけどね。っで、この星に来る前にメンテナンスも兼ねてシステムをアップデートしてくれると言うことで・・・それがどうかしたのか?」
「いや、少し気になったのでな。」
彼は、残りのお茶を一気に飲み干すとジュドに手渡す。同時に上からダークマンたちの声が響く。
「おい、ジュド!そろそろ休憩終わりだろ!悪いけど仕込み手伝ってくれ!!」
「はい!」
ジュドは、走って地下室を後にした。その後姿をワイリーは不審そうに見る。
「・・・・ビアンコか、連中にもかなり高い技術力を持った奴がいるようじゃな。これは一筋縄ではいかんかもしれんのう。」
彼は、パソコンに向き直って謎のプログラムの解析を再開した。
市街地の公園
タイムパトロール本部から逃げるように出て行ったエックスは、公園のベンチに座っていた。
「・・・・」
彼は、手を組んだまま顔を顰める。追ってきたドラえもんたちは、心配していた。
「・・・・のび太くん、僕がこんなことを言うのはなんだけど・・・シグナスさんの言うことは正しいと思うよ。」
ドラえもんは、辛そうな顔をして彼に近づく。
「ドラえもん・・・」
「そりゃあ、君にとっても僕にとっても辛いことだよ。また、あの恐ろしい光景を見ることになるなんてさ。しかも今回はリルルもいるわけじゃないからわかってくれる人もいない。」
「・・・・わかっているさ。」
エックスは、顔を見ながら口を開く。
「分かっているんだ。これから来る『鉄人兵団』はかつて俺たちが相手をした兵団とは似て非なる存在だってことは。俺たちの知っているリルルはもういないことも。」
彼は、両手を見ながら言う。無意識ではあったが手は何かを拒んでいるかのようにひどく震えている。
「けど・・・それでもどうしても考えてしまうんだ。また、同じことを繰り返してしまうのではないかと。あの時のように消してしまうんじゃないかって・・・・正直、今の自分が怖いんだ。」
あの時と違い、自分は比べ物にならない強い力を持っている。
多くのイレギュラーを倒し、束の間ではあるもののその度平和を取り戻せるほどに。
しかし、使い方を誤れば取り返しのつかないことになるのもまた事実である。
もし、かつてのリルルのように自分たちの存在を認めてくれたロボットに銃口を向けてしまったら・・・今のエックスにはそれがそれが恐ろしく感じるのだ。
そんな彼の震える手をマーティは、自分の手で優しく包んであげた。
「マーティ?」
「いつも背負い込み過ぎなのよ、アンタは。」
彼女は、そう言うと隣に座る。
「・・・・アタシは、エックスが望むなら戦わない。だって、怖いんでしょ?だったら、無理して戦う必要ないじゃない。それなら、イレギュラーハンターやめましょう。こっちで暮らしても構わないし。」
エックスは、思わぬ発言にマーティの顔を見る。彼女は優しく微笑んでいたがどこか悲しそうに見えた。様子を見る限り、無理をしていると悟った。
彼女自身も怖いのだ。
これから迫りくる得体の知れない勢力によって、自分たちの居場所が戦場になることが。
ハンターベースには、多くの仲間たちがいる。海にはかつて所属していたレスキュー部隊の同僚、腐れ縁であるマッコイーンたちがいる。
戦争になれば、彼らも恐らく攻撃対象にされるだろう。
それを自分のために捨てようとしているのだ。
無論、ケイン博士や向こうにいるミニドラたちも。
このまま自分と一緒に逃げれば、彼女はそのことを一生後悔することになる。
そこまで気づくとエックスは、自分が誤ったことをしようとしていたことを恥じた。
自分は、あの頃の少年時代と背負っているものが違う。かけがえのない仲間や恩師、家族がいるのだ。過去のことで躊躇って戦いを放棄しようとしていた。
かつて、自分の兄が体を張って守り続け、自分たちが守ってきた世界を危うく捨てるところだった。
彼は、マーティを強く抱きしめる。
「ごめん・・・昔のことで危うく大切なものを全部自分の手で捨てるところだったよ。」
「エックス・・・」
エックスは、彼女と向き合う。
「メカトピアとまた戦うことになるのは確かに辛い。でも、今の俺にはそれ以上に守らなければいけない物があるんだ。だから、ここで逃げ出すわけいかない。」
「のび太くん。」
エックスは、落ち着きを取り戻してベンチから立ち上がる。その顔を見てマーティもホッとしたようだった。
「早く準備をしよう。出来るだけ早く戻って対策を考えないと。」
アチモフ一味の基地
「・・・・・!ここは!?」
意識を取り戻したリルルは、目を開けるなり自分が囚われていることに気が付く。
「拘束されている・・・」
彼女は目を閉じて仲間に通信を試みる。
(こちら、リルル。こちら、リルル!敵に捕まり現在基地と思われる施設で拘束されています!至急、場所の特定を・・・?)
ところがいくら呼び掛けても反応がない。最初は、敵の施設に電波遮断されているからと考えたがどうもそれだけではないようだ。身体をよく見てみると何かが違う。
(この体・・・私の身体じゃない。もしかして、眠っている間にメモリーだけ取り換えられたんじゃ・・・)
リルルは、自分の置かれている状況に戸惑いながらもすぐに自分の身体をチェックしてみる。
(簡易チェックモード確認、ボディチェック開始・・・・・タイプ:オペレーター?装備・・・・パレットガン?え、えっ、えっ!?この体、もしかしてパレットの!?)
自身の今の状態を確認するために簡易チェックモードへ移行したが彼女は、自分と共に囚われたはずのパレットのものだと知り動揺する。
(どういう事?パレットは私と一緒に捕まったはずなのに。)
リルルは、チェックモードを終了させて目を開く。すると、ちょうど部屋にブラックゼロが入って来た。
「目が覚めたようだな。」
彼は、入り口を占めると簡素な食事を乗せた盆を近くのテーブルに置く。同時に傍にあったボタンを押して椅子の拘束と解いた。
「・・・どういうつもり?」
「今のお前にはここから抜け出せるほどの戦闘能力は持ち合わせていない。この部屋から出たとしても基地の警備に引っかかって連れ戻されるのがオチだ。スパイとして送られてきたのだからそのくらいわかるだろう?」
ブラックゼロは、彼女に近づきながら脅しも兼ねて話す。対してリルルは、臆することなく彼と向き合う。
「こんなことをしても無駄よ!どのくらい眠っていたかは把握できていないけど兵団の本隊はもう母星を立っててもおかしくないわ。」
「メカトピア星に滞在している『鉄人兵団』か。確かに計算が正しければもうすぐ出発するだろうな。『人間奴隷狩り』のために。」
「!?」
自分しか知らないことをペラペラと話す彼にリルルは愕然とする。兵団の出発予定は自分や今も基地を建設しているであろうバブルマンたちしか知らないはずだ。なのに何故この男が計画を知っているのか。
「『何故、機密事項を知っているんだ?』と言う顔をしているな。お前が眠っている間にお前の頭脳コンピュータにアクセスして情報を引き出させてもらった。戦力も計画の全貌もな。」
「・・・・だから何?知ったところで地球人たちに勝ち目はないわ!」
「別にどちらが勝とうが俺たちの知ったことではない。俺が欲しいのはお前の兄を含めた親衛隊のエリートたちだからな。」
「えっ?」
不気味に笑うブラックゼロの言葉に彼女は、身震いする。彼は持っていた小型デバイスで映像を照射し、ネロを初めとする親衛隊のメンバーリストを見せる。
「お前の兄もそうだがこいつらは計測の結果、高い戦闘力を持っていることが分かった。他の連中はそこまで高くはないが駒としては役に立つ。」
「な・・・・何をするつもりなの?」
リルルは、不安な表情で聞く。彼は、デバイスをしまって答える。
「お前たちの兵団のど真ん中にウィルスを散布して同士討ちを行わせる。そして、混乱に乗じて駆けつけるであろう親衛隊の面子を洗脳マシンで俺たちの駒になってもらう。数が多いとはいえ、ウィルスで混乱させれば烏合の衆化して計画どころじゃなくなるだろうな。」
「!!」
彼女は、急いで取押さえようとするがブラックゼロはひらりと避ける。
「お前には感謝するぞ。だから、せめての情けでできるだけ快適な生活を保障してやる。」
「待って!」
入り口から出て行く彼を追おうとするもののドアはすぐに閉じ、リルルは部屋に一人取り残されてしまった。
「開けて!お願い、出して!!」
ドアを叩くが反応はない。材質自体も特殊合金を使っているらしく、元の身体でも突き破ることはできないだろう。
彼女はその場で膝をつき、自分のせいで仲間たちがとんでもないことに巻き込まれてしまったことに後悔する。
「どうしよう・・・・兄さんが・・・・みんなが・・・・・」
これは自分たちの行いへの罰なのだろうか。
リルルは、頭を押さえながらこれからどうすればいいのかと考えようとする。
しかし、混乱も生じてかしばらくこれと言った策は思いつかなかった。
「助けて・・・・誰か・・・・助けて・・・・」
「!?」
妙な胸騒ぎがしたのか、ジュドは手を滑らせて洗っている丼を落として割ってしまう。
「あっ!」
「おいおい、大丈夫か?」
慌てて破片を拾う彼を見てダークマンたちは、心配そうに声をかける。
「ご、ごめん!ちょっと手が滑って・・・・」
ジュドは、破片をまとめながら向こうの世界にいるであろうリルルのことを頭に思い浮かぶ。
(なんでだろう・・・ここに来てからずっとリルルの身に何かあったような気がしてならない。)
彼の不安そうな顔を見て何か察したのか、仕込みをしていたシグマは彼の元へと来る。
「ジュド、調子が良くないのなら少し外で休むといい。」
「えっ、僕は別に・・・」
「なら、材料が切らしているものを買いに行こうとしたところだ。気分転換も兼ねて付き合ってくれないか?」
「う、うん?」
ジュドは言われるままにシグマについて行く。
次回は、どっちサイドから始めるか・・・・