ドラえもん のび太の転生ロックマンX   作:赤バンブル

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今年もあと一か月。


過去

ハンターベース 食堂

 

ネロが潜入を開始した時と同じ頃、ハンターベースの食堂では各方面から戻って来たハンターたちが時間ごとに分かれて食事に来ていた。

 

「はい、Bランチ御待ち遠様。」

 

「ありがとう、ロールさん。」

 

「ロールさん、俺もBランチお願いします!」

 

「俺も!」

 

「俺はAランチ!」

 

「じゃあ、僕はミックスランチで。」

 

中では頭に三角巾、エプロンを付けたロールの姿があり、厨房の方では本来メカニックのライトットが動いていた。

 

「はいはい、しばらくお待ちくださいね~。ライトット、A一つとB二つ!後、ミックスも追加よ!!」

 

「まだ追加ダスか!?勘弁してほしいダス。ワシ、もうくたくたダスよ~。」

 

「文句言わないの!みんな頑張ってるんだから、貴方も自分の部屋(研究所【仮】)に引きこもっていないで手伝わなきゃ!」

 

「ロールちゃんは、厳しいダス・・・」

 

ライトットがヒーヒーと悲鳴を上げて調理をしている傍では、初めての作業で戸惑っているのか材料を恐る恐る切っているリルルの姿があった。

 

「・・・・」

 

「リルル、大丈夫?」

 

冷や汗を掻きながら包丁を動かしている彼女を心配したのか、ロールは厨房に戻ってくるなり傍に来て手本を見せる。

 

「こっちの手は軽く握って材料を押さえる。後は切っていくと同時に少しずつずらしていくの。」

 

「う、うん・・・」

 

彼女の動きを見ながらリルルは、見よう見真似で作業をする。すると今度は目から涙が出てきた。

 

「し、染みる・・・」

 

「あっ、玉ねぎは切ると成分が蒸発して目に刺激を与えるの。だから気をつけて切らないと。」

 

 

 

 

何でこんな状況になっているのか?

 

それは、彼女のケアとしてロールが配置されたときに遡る。

 

最初こそは、抵抗を感じたリルルだったがロールの性格もあって話しているうちに少し打ち解け、互いのことについて少し話し出した・・・所までよかったのだがその最中、食堂の方で人手が足りないという理由からまさかの呼び出しが来てしまった。ロールは、呼ばれるやすぐに向かおうとしたが彼女を一人にするのも何というべきか罪悪感を感じたため、急遽アシスタントとして同行させたのだ。

 

当然だが家庭用として大抵の調理工程をマスターしているロールと違って、全くの素人である彼女の包丁の持ち方はあまりにも危な気で隣で調理しているライトットは、『自分を刺す気なのでは?』と不安そうに見ていた。

 

ともあれ手際の良さが幸いして支障をきたすことなく、昼の配膳は無事終了した。席でぐったりとしているリルルを他所にライトットは、おやつとばかりに持参したネジをボリボリと食べている。

 

「いやぁ、ワシ技術屋なのにこんなことやらされるなんて思っても見なかったダス。おかげで腹が減っておやつ用のネジがあっという間になくなりそうダスよ~。」

 

「ネジは食べるものじゃないと思うんだけど・・・。」

 

掌より少し大きいネジを平然と口へと放り込んでいる彼の姿を見てリルルは、少しばかり表情を引きつる。メカトピアでも変わったロボットはチラホラいたがネジを食べるロボットは流石に見たことがない。そんな様子の彼女にロールは、E缶を手渡した。

 

「はい、お疲れ様。突然付き合わせてごめんね。」

 

彼女は、そう言うと隣に座って自分も蓋を開けてエネルギー補充を行う。リルルも同じように開けてストローを差し込んで飲み始める。

 

「・・・あのう。」

 

「うん?」

 

「ロールはどうして人間のために動くの?」

 

突然の質問にロールは、少しばかり驚く。

 

「どうしてって・・・・うん、人間の生活をサポートするために作られたからって言うのが正直なところなんだけど・・・人間が好きだからかな。」

 

「人間が?」

 

「うん。だって、私たちは、人間から『心』を与えられて生まれたんだもの。彼らと同じように感情を持ち、互いに傷つくこともあればいたわり合うこともできる。」

 

「でも、人間たちは貴方たちのことを都合のいい道具としか見ていないかもしれないのよ?」

 

「確かにそういう人たちもいるわ。それでも分かってくれる人もいるし、助け合っていく内に受け入れてくれる人たちもいる。だから、人間たちのことを信じられるんだと思う。」

 

「・・・」

 

「ロックだったら、私よりもうまく説明できるじゃないかな。いつも人間たちのために戦ってきてその分悩むこともあったから。」

 

「ロックって?」

 

「私の兄妹、人間で言うとお兄さんって感じかしら。私たちは特にその辺気にしたことないけど。他にもカットマンやアイスマンって姉弟がたくさんいるわよ。エックスもそうだし。」

 

「・・・そうなんだ。」

 

そう言うとリルルは、少し寂しそうな顔になった。

 

「そう言うリルルは兄妹とかはいないの?」

 

「・・・軍に所属している兄さんが一人いるわ。強くて如何なる時も勇ましくて、周りからの信頼も厚い・・・」

 

「へえ、まるでロックみたい!」

 

「でも・・・心は泣いている。辛いときも周りに見せないようにいつも仮面を被り続けている。」

 

その言葉を聞いた瞬間、ロールは顔色を変える。

 

「それって・・・どういう事?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鏡面世界 ハンターベース

 

鏡面世界の方では、エックスの治療がようやく終了して顔の包帯を取っているところだった。

 

「エックス君、目を開けたら私の顔が見えるかどうか正直に答えてくれ。ゆっくりとだ。」

 

全員が見守る中、タチバナ博士の指示でエックスはゆっくりと目を開けると彼の顔をじっと見た。

 

「・・・・」

 

「見えるかい?」

 

「はい、見えます。特に靄や霞みなどは感じません。」

 

彼の言葉を聞くとタチバナ博士は、小型ライトを照らして目をさらに検査する。その様子を傍でマーティは、心配しながら見守る。

 

「・・・」

 

「どうなんだ、博士?」

 

ゼロが聞くとタチバナ博士は、ホッと安堵した表情を見せる。

 

「成功だよ。後遺症が残っていたらゲットマシンに乗れるかどうか心配だったがこれなら問題なさそうだ。」

 

タチバナ博士は、治療が成功したことを見届けると部屋を出る前にエックスに無理をしないよう計画を伝える。

 

「敵がいつここへまた攻めてくるかどうかは分からないがリハビリは明日からだ。今日は一日ゆっくり休んでいるといい。散歩ぐらいなら構わないがマーティ君に付き添ってもらった方がいいだろう。」

 

「えっ?いや、別に俺一人でも・・・」

 

「エックスくん、無理をしてはいけないよ。君はイレギュラーハンターにとってなくてはならない存在だ。それに自分の奥さんを心配させるのも良くないからね。今日は二人の時間を楽しみなさい。」

 

「「ちょっ!?」」

 

彼に何かを察しられてしまったと感じたのか二人の顔が赤くなる。

 

「ん?二人とも、何で顔を赤くしているんだニャン?」

 

「なんか気まずいことでも言ったかワン?」

 

Dr.タマ&Dr.ポチは、不思議そうに見るがドラえもんとゼロはある程度理解しているのか特に気にしている様子はない。

 

「別に気にするようなことじゃないさ。お前たちは、とにかく休んでおけ。最悪、シャドウの代役をすることになるかもしれないんだからな。」

 

「シャドウの代役?どういうことだ、ゼロ。」

 

「アイツの怪我、思っていたよりもひどくてな。今の状態でも戦闘なら問題なく行えるが合体の衝撃には耐えられないそうだ。そして、人間政府のお偉いさんたちは意地でもVAVAの奴を乗せたくないらしい。そこで他のハンターたちも乗れるように養成するそうだ。アイリスとマーティも含めてな。」

 

ゼロは、頭を押さえながら苦笑いして言う。実際のところ、アイリスはパートナー回路を組み込んでいる都合、他のハンターよりも操縦は優秀らしく、おそらくこのままVAVAを釈放しなければ最優先候補として抜擢されるだろう。もし、この間のエックスのような事態になったらと考えると不安を感じずにはいられない。

 

(シグナスには言っておいたがやはり、頭の固い政府の連中は何がなんでも乗せようとするだろうな。参ったもんだ・・・)

 

「ゼロ?どうしたんだい、急にボーっとしちゃって。」

 

「いや、これからの対応を急がなくてはなと思っただけだ。俺とタチバナ博士は、これから表世界の本部に行ってシグナスにパイロット養成のプログラムについて話し合いに行く。万が一の時は頼むが無茶をするなよ。アイリス、留守の間はここを頼む。」

 

「分かったわ。」

 

「それでは、行きましょうタチバナ博士。」

 

「うむ。Dr.ポチ、Dr.タマ。君たちは引き続いてエックス君の方を見ておいてください。」

 

「任せるニャン。」

 

「吾輩たちが断じて無理させないワン!」

 

二人の返事を聞くとゼロとタチバナ博士は、表のハンターベースに向かうため部屋を後にする。

 

「じゃあ、俺たちも作業に戻るか。」

 

「そうだね。博士たち、のび太のことしっかり見ててくださいよ。」

 

スネ夫とジャイアンたちも現場作業に戻る。残されたDr.ポチとタマは、部屋にエックスとマーティだけになったのを見計らうとこの間の一件もあるのか急に申し訳なさそうな顔になる。

 

「エックスくん、マーティくんこの間は事故とは言え本当に申し訳ないことをしたワン。」

 

「吾輩たち、研究チームの代表として深く謝罪するニャン。」

 

二人は、彼らの目の前で膝をついて頭を下げる。マーティ自身の無茶が引き起こした騒動とは言え、結果的にエックスに怪我を負わせたうえ、危うくこのハンターベースが崩壊する一歩まで及んだことを余程気にしていたらしい。

 

エックスは、土下座をする二人に戸惑いながらも自分が彼女の傍についていなかったのが一番悪かったのだと分かっていたため、責める気は毛頭なかった。

 

「博士たち、顔を上げてください。別に貴方たちが悪かったんじゃありません。俺がしっかりしていなかったから無理をさせちゃっただけで・・・・」

 

「エックス・・・」

 

「しかし、吾輩たち年甲斐もなく彼女に失礼な態度を取ってしまったんだワン。」

 

「まあ・・・・確かにアタシの無茶で起こった事故だし、その・・・もう、水に流しましょう。いつまでも引っ張っていてもしょうがないし。」

 

マーティも今回ばかりは自分に非があることを認めているのか少し顔を赤くして言う。二人の言葉にポチとタマは、思わず目から涙を漏らす。

 

「うぅ・・・なんと心優しい夫婦なんだワン。」

 

「こんなはしたない老いぼれを許してくれるなんて感謝しかないニャン。」

 

「お、大袈裟過ぎよ・・・」

 

ポチとタマは、涙を拭き取るとしまっておいたのか少し大きめのプレゼント箱を出す。

 

「これは?」

 

「吾輩たちがマーティくんのためにパイロットスーツを制作しといたんだニャン。」

 

「パイロットスーツですって?」

 

「思えばアーマーでゲットマシンを操作するのには無理があったんだワン。そこで君の体格に合わせて吹き飛ぶ心配がないスーツを作ったんだワン。」

 

Dr.ポチとタマは、自信満々に話す。それを聞いたマーティは目を細めながらもプレゼントを受け取る。

 

「ふうん。じゃあ、これを着ればあんな事故にはならないってわけね。」

 

「ささっ、試しに試着してほしいニャン。」

 

二人の博士に進められながら、彼女は一旦着替えてみることにする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハンターベース 

 

同じ頃、表の世界ではネロが本部の使用されていない部屋で情報を収集し始めていた。機密情報に関してはプロテクト解除に時間がかかってしまうが諜報分野にも精通しているのか、容易に解いて行った。

 

「俺たちがこの星に来ることを予測していたとは・・・ジュドとリルルから情報を吐かせたのか。」

 

そして、彼はイレギュラーハンターの主要メンバーのリスト並びに重要施設の配置を持ってきた端末にコピーを取り、本命であるこの世界の秘密を暴こうと動こうとする。

 

「そう、そんなことがあったのね。」

 

「!!」

 

少し離れたところから声が聞こえたことで彼は急いでコンピュータの電源を切って天井裏へと身を隠してその場を後にする。廊下では、ロールとリルルが話しながら歩いているのが見えた。二人は、彼が情報収集を行っていた部屋の向かい側にあるリビングのソファーに座って互いに向かい合う。

 

「それでその後、戦争はどうなったの?」

 

「勝ったわ、殲滅と言う結果で。敵の攪乱攻撃によって鉄人兵団は現在でも考えられない犠牲を出して、多くの仲間たちが戦死した。その中でビアンコ博士の娘で私のお姉さんのような存在だったセラもリストに記録されていた。」

 

リルルは懐かしさと寂しさ、虚しさを顔に出しながらも話を続ける。

 

「彼女は明るく、とても優しかった。元々下層階級な上に路頭で迷っていた私たち兄妹に手を差し伸べて博士に私たちを引き取るように頼み、博士も温厚で私たちを快く引き取ってくれた。工場で失敗作と称され、捨てられたことで周囲を信用できなくなっていた私たちは、最初こそ抵抗があったものの二人の人柄に触れているうちにいつの間にか本当の家族のようになっていたのは今でも覚えているわ。」

 

「優しい人たちなのね。」

 

「セラは、大人しそうな見た目に反して子供染みた一面があって戦争が本格的になる前はよく悪戯されていたかな。よくびっくりして泣きながら兄さんの所へ走っていたわ。その後、しょっちゅう喧嘩していたの。」

 

「ハハハ、毎日愉快そうね。」

 

「うん。でも、喧嘩するほど仲がいいって言うみたいに二人の仲はそんな悪いわけじゃなかった。私と博士から見てもお似合いの関係だったわ。兄さんが軍に志願して改造を受けた後もその関係は変わらなかった・・・・けれど敵対惑星との開戦、長きに続く攻防戦で兄さんは戦地から戻ってくることができなくなった。これまでにない戦況の泥沼化に上層部も困惑し、博士も毎日頭を抱えていた。」

 

彼女は、思い出したくないという気持ちを押さえる。

 

「そして、ある日セラは久しぶりに帰ってきた博士にこう言ったの。『私を今研究中のパワードスーツの被験者にして』って。」

 

「どういうものだったの?そのパワードスーツって。」

 

「メカトピアの各地で確認された『神の時代の遺産』と言われているオーパーツのような存在の一つよ。祖先である『アム』と『イム』が生まれる以前、神々が生み出したものでその性能は今のメカトピアの科学技術でも把握できない代物だって聞いているわ。パワードスーツは、その身に着けることによって非戦闘型でも絶大な成果を上げられると予測されたことから戦線への導入が優先的に行われていたの。セラは少しでも早く戦争を終わらせるために・・・兄さんに早く戻って来られるように被検体に志願したの。」

 

「・・・・」

 

「実際テストは良好で彼女は博士に心配されながらも戦地へと送られたわ。行く前に私にこう言ったの。『必ずネロと一緒に帰ってくるからね』と。それがあの人を見た最後の瞬間だった。」

 

余程辛いのかリルルの身体は、小刻みに震えだす。そんな彼女の様子を見てロールは、優しく擦る。

 

「もういいわよ、無理して言わなくて。」

 

「大丈夫・・・彼女や他の被験者たちが戦場に投入されるようになってから戦況は一気に攻勢に移った。消耗していた兄さんの部隊と合流することに成功したセラたちは、その勢いのまま敵の最終防衛ラインまで行くことができたの。本来ならそこで降伏勧告するなり、殲滅戦をするなりで戦争はすぐに終わるはずだった。・・・だったけど、敵は予想外の行動に出たの。」

 

「予想外の行動?だって、もう後がないんでしょ?これ以上抵抗するなんて・・・」

 

ロールは、言おうとしている答えに対して否定をしようとする。しかし、リルルはその重い口を開いた。

 

「・・・敵は鉄人兵団との心中を図った。最後の抵抗で未知のコンピュータウィルスを撒き散らして兵団の感覚回路を麻痺させて動けなくし、巨大兵器は指揮系統が異常を起こして敵味方関係なく暴れ始めた。セラ達は精神こそは狂いはしなかったものの、パワードスーツは装着者の意思に関係なく暴走。動けない味方を無差別に攻撃した・・・。」

 

「ネロさんは?貴方のお兄さんは無事だったの?」

 

「兄さんは前線から離れた補給基地で新しい機体を受け取っていたの。その後すぐに合流するはずだったけど戻ったときは・・・・・地獄絵図だった・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

過去 惑星??? メカトピア鉄人兵団前線拠点

 

燃え上がる炎。

 

周囲に転がるただの鉄の塊となった屍たち。

 

そこには最早生存者がいるのは絶望的で指導者を失った巨大ロボットたちは同士討ちで朽ち果てていた。

 

そんな地獄へ空から青い体の西洋の甲冑騎士を連想させる巨大ロボットが赤い翼をはばたかせながら舞い降りる。

 

「・・・どういうことだ?」

 

目の前に広がる光景を見て搭乗していたネロは、絶句する。自分がここを離れていたのはほんの僅か数時間程度だった。補給基地で総統が送ってくれた『神の鎧』と称される巨大兵器を受け取り、戻って来た後に敵に最終通告を送り、応じなければ総攻撃を行う段取りのはずだった。

 

翼を深紅のマントに変え、ロボットの頭頂部にあるコックピットから彼は、出る前にすぐに戻ると言葉を交わした彼女の存在を思い出し、青ざめる。

 

「セラ!セラはどこだ!?」

 

周囲を再確認すると拠点から少し離れたところで彼女が装着しているパワードスーツが仲間の機体に止めを刺しているのが目に映った。ネロは不安が過る中、急いで機体から降りて彼女の方へと駆け寄っていく。

 

「セラ!」

 

「ネ・・・ネロ・・」

 

通信越しでセラの弱々しい声が聞こえてくる。よく見ると何かに苦しんでいるようでスーツは、各部から蒸気を発してオーバーヒート寸前の状態に陥っていた。ぐったりと倒れようとする彼女をネロは、両手で受け止める。

 

「何故、味方を・・・何があったんだ?」

 

「油断・・・・しちゃった・・・敵のウィルス攻撃で味方同士の潰し合いになっちゃって・・・私以外皆・・・・」

 

蒸気がさらに勢いよく吹きだし、機体は外からでもわかるほど高温に包まれている。早く救出しないと命取りになる。

 

「もうこれ以上体を動かすな。俺が外す。」

 

「ダメ・・・私も随分侵されていつ自分を見失うか分からないの。だから・・・このまま私ごと破壊して。そうしないと貴方まで・・・」

 

彼の手をどかし、セラは起き上がる。

 

「このスーツは、胸部に制御コアが組み込まれている。だから、貴方の剣で私を斬って。」

 

「馬鹿言うな、そんな事すればお前も死ぬことになるんだぞ!!」

 

フラフラと浮遊する彼女を目の前にネロは、早まらぬように呼び掛ける。しかし、彼女は首を横に振る。

 

「もう、時間がないの。敵は私たちのこの有様を見てすぐにでも第二第三のウィルスをけしかけてくる。そうなればここまでやって来たことが全て水の泡になってしまう。」

 

「セラ・・・・」

 

「さあ、早く。」

 

セラの懇願でネロは、背中の大剣を引き抜く。いつもの彼らしくなく、剣を握る両腕が震えていた。

 

「・・・うぅ・・・」

 

「どうしたの?早く斬って!!」

 

「・・・俺には出来ん。」

 

ネロは、弱気になって地面に剣を突き刺してしまう。昔からの付き合いもあることもあったがここで彼女を斬れば一生後悔することになるかもしれない。彼女の生還を心から待っているビアンコ博士、そして、自分の妹が待っている。それに何とも言えない感情が自分を押し留めようとする。

 

「セラ、強制停止プログラムを起動させろ。機能を止めれば本星で再起動するまでお前とスーツの汚染を最小限に抑えることができるはずだ。」

 

「無理よ、ウィルス汚染で既にほとんどの機能がイカレて使い物にならないの。それにスーツの出力も私の意思に関係なく上昇を続けている。このまま放っておけば、また暴走を・・・・!?」

 

そのとき不意に彼女の右腕武装が勝手に動いて攻撃を仕掛ける。ネロは咄嗟に避けるが近くにいたこともあって脇腹を貫かれる。

 

「グッ!」

 

「ネロ!!」

 

膝をつく彼に近寄ろうとするセラだが体が意思に反して追撃を行おうとする。

 

「ダメ!動かないで!!」

 

装備されている誘導弾が一斉に発射され、彼の身体に命中する。そのダメージは凄まじくアーマーの一部が溶解していく。

 

「クッ・・・」

 

「お願い、早く私を止めて。」

 

セラは、空中へと浮上して重力発生装置を作動させる。勢いよく地面に激突することで発生する衝撃波でネロの身体を完全に吹き飛ばすつもりだ。彼は、立ち上がることがやっとの状態で突っ込んでくる彼女を見ることしかできない。

 

「うぅ・・」

 

「しっかりして!非情になって!こうなるかもしれないことは分かっていたんだから!!」

 

ネロは、どうにか自分の剣を抜き取り構える。しかし、彼女を斬ろうとするとどうしても体が拒絶をしてしまう。

 

「セラ・・・・」

 

「貴方が死んだら他のみんなはどうなるの!?貴方がいなくなったらリルルが・・・リルルが一人ぼっちになっちゃうじゃないの!!」

 

「!!」

 

セラの叫びで彼の脳裏に自分の帰りを待っている妹の姿が過る。その瞬間、ネロは起き上がり、剣を大きく振り上げて迫りくる彼女に振り下ろす。

 

「うおおおおおおお!!」

 

 

 

 

剣は勢いよく彼女の身体を切り裂いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気がつくと彼は、瀕死の彼女を抱きかかえていた。制御コアを破壊したことでパワードスーツは解除され、やっと自由になったセラは、笑みを浮かべながら彼の顔に手を当てた。

 

「何泣いちゃっているの?貴方のやったことは正しいのよ。これで・・・・これで・・・・みんなが救われる。」

 

「ク・・クウゥ・・・」

 

彼女を救えなかったことでネロは、胸が締め付けられるような感触を味わっていた。同時に彼女が本当にいなくなってしまうことを悲しんでいた。

 

「ネロ・・・」

 

「なっ、なんだ・・・・」

 

「お父さんに伝えてくれない?『こんな親不孝の娘ですみません』って。帰ってくるって約束したのにこんなことになっちゃってさ。」

 

声が徐々に小さくなる。それは彼女の一生が同時に終わりへと向かっていることを意味している。それを受け入れられないネロは、少しでも彼女の気をしっかり持たせようと必死に呼びかける。

 

「ふざけるな・・・お前がいなくなったら誰が俺の口喧嘩に付き合うんだ?お前以外誰がリルルにちょっかいをかけるんだ!?お前の代わりは誰もいないんだぞ!!」

 

「馬鹿だな・・・私た、ち、もうそ、んな歳じゃないじゃ・・・ん。リルルだってもうそんなことで驚か・・・ない・・・し・・・」

 

セラは、最期まで笑顔を絶やさずにいつもと変わらぬ素振りで声をかける。それでもネロは、泣くことをやめられなかった。

 

「でも・・・な・・・」

 

「?」

 

「私・・たち・・・・お似合いだって・・・言わ・・・れ、てたの・・・に・・・ざ・・・ね・・・だ・・・な。」

 

「セラ?おい・・・おい、セラ!セラ!!」

 

その言葉を最後に彼女は二度と動かなくなった。

 

「・・・俺が・・・俺が彼女を・・・みんなを・・・ここにいる全員を殺した・・・俺の判断で死なせた!く、ううおおおおおお!!!」

 

ネロは失ったものへの悲しみと怒り、そして、敵への憎悪を込めて叫ぶ。同時に後ろで待機していたロボットは彼の感情に呼応するかのように全身が濃い青から漆黒へと染まっていく。まるで感情そのものを現しているかのように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『総司令、ウィルスの効果は成功です!あの忌々しいスクラップどもの生体反応が遅れてきた一体を残して全滅しました!』

 

一方、敵は兵団の反応がほぼ壊滅状態になったことを確認していた。その姿は、昆虫とも人とも言い難い異形で彼らは最期の大攻勢へと動こうとしていた。

 

『よし、すぐに次のウィルス入りの弾頭の装填を行え!我等の母星に巣食うあの鉄屑どもを一掃するのだ!!そして、本星の領土を完全に我らの管轄に戻した後に奴らの種族を根絶やしにしてくれる!!』

 

総司令と呼ばれた個体は、すぐに残りの兵団を殲滅するべく次の弾頭の準備を急がせる。これまで追い詰められはしたがその甲斐あって彼らを自滅へと持ち込める兵器の開発に成功したのだ。後は、この兵器の存在を知られる前に星に残っているロボットたちを殲滅し、最終的には彼らの星に直接撃ち込めば自分たちの勝利となる。

 

『弾頭の装填準備完了。』

 

『敵の補給基地より、増援が発進。後、10分後ぐらいに射程距離に入ります。』

 

『フハハハハッ、飛んで火にいる夏の虫とはまさにこのことだ。移動要塞の変形を開始しろ。奴らを撃ち落とした後に我らが直々に葬ってくれるわ!』

 

総司令の命令が下ると彼らの最後の砦は変形をし始め、虫のように複数の足を生やした移動要塞へと姿を変える。

 

『対空砲、全砲門開け。弾頭発射後、動けなくなった奴らを虫けら一匹たりとも逃がすな!!』

 

『総司令、前方に敵の巨大兵器一機を確認!こちらに向かっています!』

 

『何?』

 

モニターを見るとそこにはネロの登場した機体が飛行しながらこちらに向かってきていた。

 

『さっきの部隊の生き残りか。構わん、奴も相当弱っているはずだ。撃ち落とせ!!』

 

『全砲門、照準を合わせろ!目標、敵ロボット。撃て!!』

 

要塞の全砲門がロボットに向けて発砲を開始する。しかし、漆黒に染まったロボットはそんな砲撃の直撃をものともせず向かってくる。

 

『目標、依然進行を止めず。砲撃によるダメージ確認できません!!』

 

『馬鹿な!熱線砲、撃て!!奴を我が要塞に取り付かせるな!!』

 

総司令の怒声と共に要塞から放たれる攻撃はより苛烈を極める。ロボットは、飛んでくるミサイルや熱線を受けても装甲は溶解する様子はなく、腰に下げられている剣を引き抜くと空から轟く雷を纏わせ、勢いよく要塞に向かって投擲する。

剣は敵の弾幕を掻い潜り、要塞の壁を貫いて動力炉に突き刺さった。数百万ボルトにも及ぶ電流によって要塞の動力は爆発し、各所が誘爆を引き起こす。

 

『動力部破損!周囲に火災発生!!』

 

『消火を急げ!!』

 

『動力部の爆発により各機能が停止!これでは・・・』

 

『ぬう・・・戦闘マシンをすべて出せ!!奴をここに近づけさせるな!!』

 

煙を吹き出してその場に沈黙する要塞の中から無数の昆虫型メカが発進される。彼らは発進するや瞬く間にロボットに纏わりついて溶解液などで溶かそうとするが装甲は腐食することなく、寧ろ握りつぶされる。

 

「・・・・」

 

ロボットは、口の格子部分から竜巻を発する。その竜巻に呑まれたメカたちはたちまち酸化して崩れ落ちて行く。

 

『まだだ!奴をバラバラに切り裂け!!』

 

人型タイプの鉤爪で斬りつけられる。

 

しかし、それでも傷は入ることなく手刀で叩き折られた上に腕が発射されて体を貫かれて破壊されてしまった。ロボットは、目から光線を発射して沈黙した要塞に容赦なく攻撃を加える。

 

『グワァアア!』

 

『うわあああ!?』

 

攻撃は要塞のブリッジにも直撃し、総司令はボロボロになりながらも剥き出しになったブリッジからロボットの姿を見た。その姿は、もはや西洋騎士と思わせていたものが禍々しく形状が変化しており、魔神と呼べる姿だった。

 

「・・・・・」

 

『グウウ・・・何故だ・・・・何故、我らはここで滅びるのだ?我が種族こそがこの宇宙を・・・・』

 

「・・・お前たちに・・・お前たちにこの宇宙で生きる資格はない!!」

 

魔神は、胸部の赤い放熱板を発光させて両腕を上げると同時に数万度にも及ぶ熱線を放った。要塞は跡形もなく吹き飛ばされ、増援が到着した時にその場に残っていたのは本来の姿へ戻ったロボットとコックピットで何も言わず、沈黙したネロのみだった。

 

 

 

 

かくして、戦争は終わった。

 

メカトピア史上最も長く激しい過酷な戦いであり、多くの犠牲を払ったこの戦争はネロと『神の鎧』と呼ばれた大型兵器によって幕を下ろした。

 

『神の鎧』は、ネロと共に戦争を終わらせた英雄として『Z』と言う愛称が付けられ、メカトピア星の守護神として称えられる。

総統は、彼らの活躍を高く評価したがネロはこの日を境に人前で笑うことはなくなり、感情を表に出さないようにした。

 

そして、密かに誓った。

 

『もうこれ以上大事なものを奪わせない。例え自分が犠牲になろうとも。』と。

 




終盤の機体の正体・・・・
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