ハンターベース 会議室
「以上のことからどんなに急ごうともパイロットとしての適正レベルにまで達するまで早くて1ヶ月はかかってしまいます。しかもこれは飽くまでゲットマシン形態でのもので合体となると更に時間を費やすことになります。」
その日の夜、表世界のハンターベースに到着するなり、タチバナ博士は、気難しい顔をしながら作成したパイロットの育成カリキュラムについて説明する。本来、こう言ったパイロット育成は時間をかけ、徐々にレベルを上げていくのが普通なのだが政府からの無茶な注文でかなりハードな内容になってしまったのだ。いくらレプリロイドとはいえ、ライドチェイサーやライドアーマーと仕様が全く異なるゲットマシンを乗りこなすのは容易ではなく、合体失敗時には死亡する危険性もあることから乗りたがるパイロットも早々いないため、脱落者が多数出るのは目に見えてしまっていた。
「・・・シグナス総監、誠に申し訳ないが私は自ら考えたとはいえ、この育成カリキュラムの導入にはあまり気が進まない。こんな無茶な訓練を行えば、確実に犠牲者が出かねない。何とかVAVA君を条件付きでパイロットにすることはできないものか。」
彼は、無理を承知でVAVAの条件付きの釈放を要請する。正規パイロットとして決められたエックスたちとは違い、VAVAは初めての操縦でゲットマシンの操縦をマスターした。それだけの人材をこのまま閉じ込めておくのは惜しい気がしなくもない。
ただ、シグナスもこればかりは首を縦に振ることはできなかった。
「博士の言い分も分かります。確かにVAVAはあの短時間で上級ハンターすら習得するのに苦労したゲットマシンの操縦をこなした。もし、イレギュラーでなかったら引き抜くこともできたでしょう。しかし、政府は彼のことをシグマとワイリーに並んで警戒している。最悪、強制的に合体解除をしてマシンを持ち逃げされかねないと考えているのでしょう。過去の彼の行動を見ればやりかねないのは認めざるを得ない。」
「うむ・・・」
「奴が俺やエックスとの戦いを通じて何かが変わってきていることは事実だ。少なくともこの戦いが終わるまでは持ち逃げはしないだろう。だが、ここ最近アチモフ一味の動きが読めないのが奴を迂闊に解放できない要因でもある。」
「やはりダメなのか。」
タチバナ博士は、ため息をつく。
パイロットを選ぶようになってしまったのは設計した自分の責任でもある。100年前、同じ状況を体験した曾祖父ならこんなときどんな選択を取っていたのだろうか。
実際、パイロットだった祖母から話を聞いていたがゲッターロボは、三人のパイロットが揃ってこそ性能を最大限にまで引き出すことができるのだ。そのピースが一つでも外れてしまえば炭酸が抜けきってしまったコーラのように本来の力を引き出すことができなくなってしまう。
最新技術で導入して再設計を行ったのがこんな形で仇になってしまうことになるとは。
「すみません、シグナス総監。こんな事態になったのも開発者である私の責任です。」
彼は、頭を深く下げて謝罪を行う。シグナスは、そんな彼を責める気は全くなかった。
「博士は何も悪くありません。寧ろ、こんな状況下で尽力してくれていることに感謝しています。」
「しかし、性能を引き上げてしまったことでパイロットを選ぶ機体になってしまった。設計の段階でパイロットへの安全性をもっと考えておけば・・・・」
「完璧なマシンなんて存在しない。レプリロイドも人間も不完全な存在なんだ。出来ないならできないなりに新しいことを考えればいい。」
傍にいたゼロは、彼の肩を軽く叩きながら励ます。
「ありがとう、ゼロくん。」
「政府の方もシャドウの修理パーツを手に入れるためにヤコブの方で動いています。我々は、今できることを考えましょう。」
「・・・はい。」
三人は、今後のネオゲッターの運用をどうするかを考える。機体をデチューンを施してしまえば、パイロットへの安全性は増すが同時に性能が落ちるため、これから先の戦いに不安が残る。かと言って突貫工事で叩き上げた新規パイロットを乗せるのも合体事故のリスクがあるからいいとは言えない。
何か策はないのだろうか。
「・・・性能は心配だがあれを使うしかないかもしれない。」
タチバナ博士は、密かにあることを思いついた。
鏡面世界 ハンターベース
同じ頃、鏡面世界のハンターベースは時間帯が夜になったにもかかわらず騒がしかった。
「な、なんだあの音?」
現場の復旧作業から戻って来た一般ハンターたちは、廊下先から聞こえてくる銃撃音に戸惑いを感じる。射撃訓練にしても施設から離れているため、こんなところまで聞こえるはずがない。しかも音はどんどん近づいてきている。
「もしかして、敵が潜入してきたのか?」
「いや、それならベース中に警報が鳴るはずだ。」
「まさか、VAVAが脱走したんじゃ・・・・」
「「「・・・・」」」
彼らは、手持ちのバスターショットを構えながら恐る恐る入っていく。銃撃が近くなるとこちらに向かって何かが走ってくる音が聞こえ、明らかに追われているのが分かる。
「みんな、構えろ。ここで奴を逃がしたらそれこそ大惨事だ。覚悟を決めて取り押さえるぞ。」
「あ、あぁ・・・」
全員緊張した表情で銃を構え、相手がこちらにやってくるのを待つ。そして、死角から小さい影が飛び出してきた。
「撃て!」
「「うおおお!!」
彼らは、一斉に足元を狙って発砲する。影は突然に攻撃に足を止めると待ち構えたハンターたちに取り押さえされ、下敷きになってしまった。
「捕まえたぞ。さあ・・・・」
「アイタタタ!!何するニャン!?」
「「「えっ!?」」」
聞き覚えのある声に一同は捕まえた相手の顔を見る。そこには攻撃でなったのか白衣や髭が所々焦げたDr.タマの姿があった。
「た、タマ博士!?」
「重いニャン!早く降りてくれないとまずいニャン!!」
「えっ?」
ハンターたちは、一体何が起こっているのか理解できなかったが突然銃撃が止み、辺りが静寂になる。
「?」
「次は何が起こるんだ!?」
「あぁ、Dr.ポチが捕まっちゃったんだニャン。」
しばらくの静寂の後にカツカツと足音が近づいてくる。Dr.タマは、その音を聞くなり顔を真っ青にしてハンターたちの後ろに隠れる。
「は、博士一体何を?」
「頼むニャン、例え聞かれても向こうに逃げたと誤魔化してほしいニャン。でないと・・あわわわ」
足音がすぐそこまで来ると彼は、一人のハンターの背中にくっついて息を潜める。一同は一体何が来るのかと銃口を構えるが足音の正体が角から出てきた瞬間、全員思わず口を開いた。
「フー!フー!あの変態ジジイ~!!どこへ行ったぁあ!!」
目の前にはDr.ポチをまるで子猫のように掴み、倉庫から引っ張り出してきたのか片手に軽機関銃、体にサバイバルナイフ、予備の弾倉や手榴弾などをフル装備したマーティが来ていた。
ただ、身に着けているのはいつものビキニアーマーではなく、一応大事なところは隠れているがほぼ全裸と言っても過言ではないボンデージ風のスーツで所謂ラ〇ボーのような恰好だった。血走った眼で現れたこともあって、一瞬イレギュラー化したのではないかと疑ったが捕まっているDr.ポチに特に目立った外傷がないため、正気のようだ。
「ふ、ふ、副隊長・・・・その格好は?」
「ンン?」
ハンターの一人の問いかけに対し、マーティは振り向く。その顔は最早獲物を求めた獣で彼らは近づいてくる彼女に恐怖する。
「アンタたち・・・・丁度良かったわ・・・この辺にタマ博士が来なかった?こっちの方に逃げてきたんだと思うんだけど?」
「・・・・・」
一同は背後に隠れているDr.タマの方を見ると彼は必死に向こうへ行ったと言うようにとレクチャーを送る。
「あっ、た、タマ博士なら向こうへ走っていきました・・・・ものすごい形相で駆け抜けて行きましたよ。」
「本当ね?嘘ついていないでしょうね?」
彼女は、狂った笑みを浮かべながら彼らを見る。バレたら自分たちも機関銃で蜂の巣にされるのではと泣きそうになるのを一同は必死に堪えた。
「・・・しょうがないわね。アンタたちも疲れているところ悪いけど見かけたら連絡を入れてちょうだい。」
「「「は、はぁい・・・・」」」
マーティは、そのまま廊下を歩き去って行った。ハンターたちはいなくなったのを確認するとあまりの恐怖にその場で尻もちをつく。
「いや、本当に助かったニャン。」
Dr.タマは、頭を下げて礼を言う。そんな彼に一同は何が起こったのかを聞こうとする。
「博士、一体何をしでかしたんですか?副隊長があんなにブチ切れるなんて相当ですよ。」
「実は先日の一件であんな大失態をしてしまったもんだから新しいパイロットスーツをプレゼントしたんニャけど・・・」
一同は、先ほどのボンデージ風のスーツを思い出す。
「ま、まさか・・・あれじゃ・・・」
「うん。」
「うん、じゃないですよ!?何であんな痴女と間違われかねないもの送ったんですか!!」
「確かに副隊長の格好はアイリスさんと比べて破廉恥かもしれないけどよりによってあんな変なものをプレゼントするのはおかしいですよ!!」
「エックス隊長は?確か今日は一緒にいるはずだったけど。」
「試着した時にワシたちに飛び掛かろうとした彼女を止めようとして・・・・・ビンタされてのびちゃったニャン。」
「「「隊長~~!!!」」」
この場にいない上官に対し、ハンターたちは思わず叫ぶ。こうしている間にも戻ってくるかもしれない。
「そんなわけだからワシは、ほとぼりが冷めるまで逃げるんだニャン。」
「まあ・・・お気をつけあぁ!?」
「ニャン?」
一人の悲鳴にDr.タマが振り向くとそこにはいつの間にか戻って来たのかマーティが目を光らせていた。
「ニャニャニャ~!?」
「さっきから聞いていたけど『痴女』とか『破廉恥』とか随分言いたい放題言ってくれたわね。そんなにこの変態と一緒に蜂の巣にされたいわけ?」
「「「あ、あわわわ~!!」」」
自分たちもターゲットにされたと知り、ハンターたちはお互い抱き合って震え上がる。マーティは目の前にDr.ポチを放り投げ、機関銃を二人の目の前に向ける。
「さあて、二人とも最後に言い残すことはあるかしら?」
「わ、わ、ワン・・・吾輩たち、別に下心だけでそのスーツを作ったわけじゃないワン!!」
「そうニャン、特殊な軟質素材でできているから衝撃や圧力にも強くて身軽に動けるからスーツとしては最適なんだニャン。」
「何が身軽よ!!周りから見たら変態としか思われないじゃない!!」
「普段の副隊長の格好も中々ですけど。」
「アンタは、しばらくメンテナンスルームから出られないくらい蜂の巣にするわ。」
「ひえ~!!」
彼女は、息を荒くしながら後戻りできないところまで踏み込もうとする。
「さあ、覚悟しなさい!もう原型が残らないほど・・・・」
「もう、そのぐらいにしなよマーティ。」
「えっ?」
そこへようやく遅れてエックスが現れた。右頬は、思いっきり叩かれたことでやや腫れ上がっており、周りから見ても痛々しく見える。彼は、彼女から武器を取り上げると持って来たマントを着させて落ち着かせる。
「博士たちがやるのも大概だけど、このくらいで銃とか乱射していたら昔のVAVAと同じイレギュラーすれすれの存在になっちゃうよ。」
「だって・・・だって、みんなアタシのこと『変態』だとか『痴女』とか言うんだもん。」
「だったら、普段から分厚い装甲でも着てやがれ。この尼。」
彼の後ろから手錠を付けたVAVAが顔を出す。一同は、脱走したのではと疑ったが彼の身体の焦げ具合から見て今回の騒動に巻き込まれたのを理解する。
「てめえがどんな趣味に走ろうが知ったこっちゃねえが独房にまで攻撃してくるんじゃねえ。拘束具が防御してくれたからよかったが頭の方はあと数ミリで命中してたぞ。今のイレギュラーハンターは拘束する奴まで撃つのが当たり前になったのか?」
「・・・・すみません。」
まさかのイレギュラーに説教されたことで彼女はその場に膝をついてしょんぼりする。しかし、腹の虫が治まらないのかVAVAは、続いてタマたちにまで矛先を向ける。
「お前らもお前らだ、チビ爺。この間あんなことがあったって言うのに余計なもの作りやがって!!ベルカナの野郎でもこんな装備作らねえぞ!何か?レプリロイドの風俗でも創める気か?おう!?」
「「す、すみません・・・」」
「エックス、パートナーの面倒ぐらい自分で見れねえのか?こんな格好で歩き回らせたらお前が変な趣味持ってんじゃねえかって誤解されるぞ。」
「う、うん・・・善処するよ。」
「ったく、大人しくしていたらこんなことに巻き込まれるとは考えても見なかったぜ。後で扉直しておけよ、しねえなら好きに出歩くからな。」
彼は、言いたいことを全部吐き出すと独房の方へと戻って行く。エックスは、散々な言われようで泣きそうになるマーティを両手で優しく包み込みながら慰める。
「マーティは悪くないよ。着てみたらって言った俺が悪いんだから。うん、悪くない悪くない。『変態』なんかじゃないよ。いつもの君が好きなんだから。」
「う、う、うえぇ・・・・・」
自分の中で泣く彼女の頭を撫でながら彼は、VAVAの後姿を見る。一般ハンターたちは、依然と緊張している。
「VAVAも随分変わったな。」
「えっ?何が?」
「昔の彼ならこんなこと言うなんてまず有り得なかった。いつも周囲の被害を考えないで無差別に攻撃をして俺やゼロもそうだけどシグマが独房入りを下すほど危ない存在だった。それが今じゃ、出てきたと思ったら俺たちに説教だからな。」
「そ、そうなんですか・・・!」
突然、ハンターベース中に警報が響き始める。
<緊急事態発生!緊急事態発生!!シティ・アーベル郊外からメカトピアのものと思われる空母を確認!各イレギュラーハンターは防衛ラインで迎撃準備せよ!繰り返す、各イレギュラーハンターは・・・>
恐れていた鉄人兵団の第二攻撃が来たらしい。エックスたちは急いで司令室に向かうとモニターにはシティ・アーベルに向かって巨大な鳥とも翼竜とも言える形状の空母が捉えられていた。
「距離は!?」
「既に防衛ラインに接触しようとしています!」
要塞は、市街地のすぐ傍にまで飛行すると口と腹の格納庫を開いて複数の巨大兵器を発進させる。
「敵空母、巨大メカニロイドを投下。数は6!」
「この間の二倍じゃないか!?」
「あわわわ、本気で来たんだニャン~!!」
「ワンワン、一大事だワン!?」
迫りくる巨大兵器たちに対し、Dr.ポチとタマは混乱する。エックスは、すぐにゲットマシンを発進させなければと考えた。
「ゲットマシンの状況は!?」
「全機メンテナンスは終了しています。ただ、シャドウさんとゼロ隊長が・・・・」
三機発進できる状態になっているが肝心のパイロットが足りない。だが、こうしている間にも敵がこちらに向かってくる。グズグズしていられない。
「三機をゲッター1の状態に合体させてくれ。俺が一人で操縦する。」
「し、しかし、それでは・・・・」
「敵は恐らくゲッターを狙って攻撃を仕掛けてきたんだ。俺が時間を稼いでいる間に全員、この場から避難をしてくれ。指揮系統をレプリフォース本部へ移す!!全員、退避!自爆装置をセット後、脱出せよ!」
エックスが指示を出すと同時にその場にいたオペレーター並びにハンターたちは一斉に荷物を持って非難を始める。遅れてやって来たドラえもんたちは、一体何が起こったのかと驚き、目の前にいる彼に状況を確認する。
「の、のび太くん、この騒ぎは!?」
「このベースを放棄する。ドラえもんたちもレプリフォース本部へ移る準備をしてくれ。」
「冗談言うなよ!?せっかくここまで来て先に逃げろなんて!お前だって万全じゃないんだから!!」
基地放棄の判断にジャイアンは、異議を唱える。
「俺だってこんな判断は下したくない。でも、あの巨大メカニロイドに立ち向かうには今のネオゲッターじゃ対応しきれない。」
「だったら、俺が代わりに乗ってやるよ!下駄ロボだがサッカーロボだか知らねえが必要なら遠慮なく頼ってくれ!!」
「てめえじゃ無理だ。」
そこへ独房へ戻ったはずのVAVAがやって来た。彼の言葉に対し、ジャイアンは激怒する。
「なんだと!?」
「あの機体はライドアーマーのように誰でも扱える代物じゃねえ。下手をすれば操縦席でミンチになるぞ。」
「み、ミンチ・・・」
「じゃあ、誰が乗るって言うのさ?ゼロさんもシャドウさんもいなくて、操縦できるのがのび太しかいないのに。」
スネ夫は、ジャイアンを押さえながら聞く。
「・・・俺が乗る。」
「「ハッ!?」」
「VAVA。」
「俺と決着をつける前にあんな木偶の坊どもにお前がやられたんじゃ洒落にならないからな。」
「でも、後一人が・・・・」
「そこの女たちでペアを組んで乗せればいいだろう。」
「「えっ?」」
避難準備をしていたアイリスとマーティは、ポカーンと口を開ける。エックスは、彼女たちを乗せるのはまずいと言おうとするがVAVAは、続けて言う。
「お前の女の方は最初の戦闘で合体までは操縦していたから経験がある。後、ゼロの女は・・・・」
「アイリスです。」
「アイリスの方は、体の機能自体ゼロと規格を合わせているから操作は問題なく行えるはずだ。」
「だけど、彼女はシミュレーションで・・・」
「だから、お前の女を一緒に乗せて補助させるって言ってるんだよ。一人では失敗してもサブパイロットを乗せておけば小回りが利く。」
彼の的確な指導にエックスは思わず、ぐうの音も言えなくなる。まさか敵であるはずの彼がこんなことを言うなど信じられることではない。
「なんで・・・そこまで態々言うんだ?敵なのに。」
「お前のことだ。自分のパートナーとダチのタヌキたちを生かすために自爆まで決行しかねないからな。そうしないための保険よ。」
「・・・・」
「えっ?エックス、本当にそうする気だったの!?」
無言になった夫に対し、マーティは思わずツッコミを入れる。エックスは、見抜かれたとばかりに苦笑する。
「フフッ、まさか見抜かれるなんてね。驚いたよ。確かに俺はゲッターロボを自爆させてでも敵を止めようと考えた。」
「アンタね・・・」
「けど、これには敵にゲッターロボを完全に失ったと思わせるためでもあったんだ。本来の世界では武装の取り付けを行っている予備機が残っている。俺が自爆しようともゲッターの戦線復帰の望みがあるから考えていたんだ!!今回の攻撃で鉄人兵団もかなりの戦力を失うことになる。そうすれば残りの重要拠点であるレプリフォース本部への攻撃も慎重になる。新しいパイロットの育成のために時間稼ぎになるんだ。」
「もう・・・本当馬鹿よ、アンタ。」
マーティは、泣き目で彼を強く抱きしめる。
「エックスくんは、自分の嫁さんを心配させるいけない男なんだワン。」
「早く出動しないとマシンが壊されちゃうニャン。」
Dr.タマは、どこから持って来たのかVAVAの手錠を外す。手首を動かしながら彼はモニターに映る巨大兵器を見る。
「ぐずぐずしている暇はねえぞ。」
「あぁ。」
「マーティ・・・・まさか、そのままの格好で乗るつもりなの?」
一緒に格納庫へ向かおうとしたアイリスは、マントを脱ぐマーティを見て心配そうに聞く。
「それは・・・・もういいわよ!これでまた吹き飛んだらエックスに慰めてもらうから!!」
「えぇ・・・そ、そう(エックス、大変ね。)」
四人は、急いで格納庫に移動し、それぞれのマシンに乗り込む。
「ネオイーグル、発進準備完了!」
「ネオジャガー・・・・準備完了しました。」
「ネオベアー、VAVAの方は?」
「問題ねえ、奴らがここに到達する前に仕掛けるぞ。」
VAVAは、操縦機器を確認しながら先ほどの会話を思い出す。
(エックスの奴・・・本当に呆れるほどの馬鹿だぜ。大事なものを守るためとはいえ、自分の命を投げ出すんだからな。最初の戦いから何一つ変わってねえ。周りに下手な嘘をつこうとすることもな。例え予備機が残っているとはいえ、残されたパイロットがゼロ一人じゃ、どのみちこの先の戦いは生き残れねえ。そのくらい分かれってんだ。・・・・だが、奇妙なもんだ。こんな寄せ集めのメンバーで戦況的に不利にも関わらず、負ける気がしない。俺もとうとう電子頭脳がイカレちまったのかもしれねえな。)
三機のゲットマシンは、エンジンを吹かして発進準備に入る。
『エックスくん、マーティくん、ハンターベースは最期までワシたちが守るニャン。』
『君たちは心配しないで精一杯頑張ってくるワン!』
『のび太くん、負けちゃダメだよ!』
『『フレ~フレ~のび太~!』』
『のび太さん、敵がもうすぐ傍にまで来てるわ。ゲットマシン、発進どうぞ!!』
「ありがとうしずかちゃん。・・・・行くぞ、ゲッター発進!!」
エックスの叫びと同時にゲットマシン三機は、発進する。
シティ・アーベル上空 メカトピア軍飛行要塞『グール』
「チキュウのロボット軍の最終防衛ライン突破。間もなく基地に到達します。」
飛行要塞グールのブリッジでは、指揮を執っているオーロが、巨大兵器たちの活躍ぶりを観察していた。
「この間現れた敵の巨大兵器は?」
「まだ確認できません。」
「そう。ゲルベロス、ジェノサイダーとバラスの三体をグールに戻して補給を行ってちょうだい。後、ガラダとダブラス、グロマゼンは三体の補給が終わったら戻して。」
「了解。」
「変ねえ。ここまでして反撃が来ないなんて。前回のロッソの馬鹿の攻撃で基地を放棄したのかしら?」
「・・・・」
「ブル、アンタも何か言いなさいよ。補佐してくれるのはいいんだけど流石に無言じゃ・・・・」
「・・・・来る。」
「えっ?何?」
「敵の巨大兵器、来る。」
ボソっと言うブルの言葉と同時にハンターベースから三機のゲットマシンが飛び出す。
「あの戦闘機は・・・・モニターを拡大して!!」
彼女の指示で兵士たちは、モニターを大きく表示させる。
「形状確認・・・・前回ロッソ隊が確認したものと一致しています。」
「いよいよ来たわけね。命令撤回!ゲルベロスとバラスをあの戦闘機に向かわせて!あの姿になる前に撃ち落とすのよ!ジェノサイダーは先ほどの命令通り、本館に帰投。補給が終わり次第、基地を爆撃!ガラダたちは万が一に備えて地上で待機!!」
オーロが命令すると同時にグールに戻りかけたバラスとゲルベロスは、ゲットマシンを目指して反転する。
「空中タイプが二機こちらに向かってきたわよ。」
「ゲッター2にチェンジする?」
アイリスは、マーティの補助を受けながら聞く。
「いや、ゲッター2のスピードは君たちじゃ耐え切れない。」
「でも・・・」
「俺にやらせろ。」
「VAVA!?」
名乗り出たVAVAに対して、エックスは声を上げる。
「何を言っているんだ!?ゲッター3は水陸両用タイプなんだぞ!?」
「いいから言う通りにしろ。こっちに考えがある。」
ネオベアーは勢いよく上空へと上昇していく。残りの二機も後を追う。
「戦闘機が上昇を開始しました。」
「追撃させて!恐らく距離を取って合体するつもりだわ!!」
バラスとゲルベロスは、上昇するゲットマシン三機の後を追いながら攻撃を仕掛ける。三機はすれすれの状態で回避する。
「ちょっと!このままだと合体する前に撃ち落とされるわよ!?」
「VAVA、奴らの方がスピードが速い。これじゃ・・・」
「それが狙いだ。奴らがほぼ同じ位置に集まってくれた方が仕留めやすい。」
「?」
雲を突き抜け、三機は成層圏へと突入する。レーダーで確認すると二体は自分たちのすぐそばまで迫って来ていた。
「クックク、見た目は強そうだがおつむはメカニロイドレベルのようだな。まんまと誘われたとも知らずに。」
VAVAは、自分の作戦が上手くいっていることで笑う。
「VAVA?」
「よし、ここで合体だ。」
「待ちなさいよ!?こんなスピードを落としていない状況で合体なんてしたら衝撃で機体が圧し潰されるわよ!」
「そんな軟な造りかよ、コイツは。それに潰れるならお前らよりもサンドイッチにされるエックスの方が先だぞ。」
「「あっ!」」
合体事故で一番危険な場所を思い出したのか二人の顔に緊張が走る。
「愛しの旦那をスクラップにしたくなければちゃんと計器を見てろ。後はこっちで何とかする。エックス、今更ビビって後悔していないだろうな?」
「まさか、どの道失敗すれば後がないのは俺にも分かっているよ。」
「フン。」
三機は並ぶと推進機を切り、落下を始める。下には先行してバラスが腹部ハッチからミサイルを展開して待ち構えていた。
「全員舌を噛まねえように身構えてろ!成層圏からのスカイダイブだ!!」
落下と同時に三機は連結合体し、変形を始める。同時にバラスから放たれたミサイルが命中した。
が、煙の中から何か巨大な物体が勢いよく衝突。
バラスは体勢を立て直すことなく、巻き込まれる形で急降下し始める。
「バラスが急降下を開始。」
「なんですって!?」
グールの中でオーロは、事態の一変に動揺する。
「原因は何?推進剤はまだ十分あったはずよ。」
「わかりません。ただ、何か巨大な物体が衝突したとしか・・・」
その間にもバラスの反応はドンドン地上に向かって行く。すぐ傍では遅れて上昇を続けているゲルベロスの反応があった。
「ゲルベロスに攻撃命令を出して!」
「しかし、バラスの方はどうするんですか?」
「仕方ないけどその巨大な何かと一緒に撃ち落とすわ。」
「・・・・下がらせた方がいい。」
攻撃命令を出す彼女に対してブルは、身体を横に震わせて言う。
「何言っているのよ。」
「敵、恐らく我々の想像以上の何かを持っている。だから、撤退を推奨。」
「ふざけないでよ、そんなことじゃあの馬鹿と一緒に扱われるわ。」
オーロは、彼の意見を撥ね退けるとゲルベロスに攻撃指令を送る。
上昇していたゲルベロスはその場に滞空し、バラス事落下してくる物体に対して熱線と溶解液、超音波の波状攻撃を同時に行う。
するとバラスの体はたちまち溶解し、その場で爆散した。
「バラスの破壊を確認。」
「ふう・・・これであのロボットもお陀仏ね。」
犠牲は出たものの敵を破壊できたことに彼女は、安堵する。
「・・・・いや。奴、まだやられていない。」
「へっ?」
ブルの発言に対するツッコミを入れる間もなく、オーロは煙の中から出てきた物の正体を見て言葉を失う。
そのロボットの姿は、前回ロッソが交戦した両腕がドリルのロボットではなく、ガッチリした体系のやや黒に近い体色のロボットだった。ロボットは、ゲルベロスに蹴りを入れると両肩の首を掴み上げて引きちぎる。ゲルベロスも残された中央の首で反撃を試みるが背中の突起から発せられる電撃でドロドロに溶かされてしまった。
無力になったゲルベロスは、そのまま動かなくなって下の街に墜落。グシャグシャに潰れてしまった体の上にはロボットが無傷の状態で立っていた。
「嘘でしょ・・・こんなの聞いてないわよ・・・」
いきなり二体も巨大兵器を失ったことに愕然とする彼女に対して煙の中からロボットは、目を光らせて次なる獲物と対峙する。
「こういう使い方もあるってことだ。」
ネオゲッター3は、腕を鳴らしながらその姿を露わにする。
※ゲッター3はこんな使い方してはいけません。