ドラえもん のび太の転生ロックマンX   作:赤バンブル

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真マジンガー見直しているけど改めて見ると面白い( ´∀` )


プラズマバスター

シティ・アーベル市街地

 

「ダブラスのリミッターを解除!あの忌々しいロボットを捻じ伏せなさい!」

 

「ハッ。しかし、それではこちらの制御が難しくなります!」

 

「構わない!ガラダとグロマゼンを下がらせなさい。巻き込まれるわよ。」

 

飛行要塞グールからの命令で二本首の巨大兵器『ダブラス』は、何かが取り外されたかのように目を赤く光らせる。

 

『グルルルルギギギィ!!』

 

まるで獣のように吠えるとダブラスは、四つん這いになって飛び掛かる。

 

『グギギギギギ!!』

 

「へっ、急に野獣みたいになりやがったな。」

 

VAVAは、レバーを押しながら敵の突進を押さえる。するとダブラスは二つの頭部の口に当たる部位からレーザーを放つ。レーザーは、ゲッターの頭部を溶かす勢いで焼いていく。

 

「うおっ!?」

 

あまりの熱量にネオゲッター3は、距離を取ろうと下がる。その瞬間、ダブラスは頭部を掴み上げて持ち上げる。

 

『グガアアアア!!』

 

ネオゲッター3は、そのまま地面に叩きつけられる。その振動はコックピットにも響き、エックスたちは身体が潰されるような衝撃を受ける。

 

「グッ!?」

 

「このままだと私たちが・・・・」

 

「ビビってんじゃねえ!うおおおお!!」

 

ネオゲッター3は、再び叩きつける前に脚部のキャタピラを展開して踏ん張ると逆に今度はダブラスの身体を掴んで持ち上げる。

 

『グギャギャ!?』

 

「コイツはパワー型なんだよ!!」

 

その巨大を振り回し、ネオゲッター3は待機しているガラダたちの所へダブラスを放り投げる。二体は飛んでくるダブラスを確認するや慌てて逃げようとするが間に合わずそのまま衝突して倒れこんだ。

 

「オーロ様!」

 

「レーザーを収束させなさい!あのロボットを溶かすのよ!!」

 

ダブラスは、起き上がるとレーザーを収束させて発射する。収束したことでレーザーは威力段違いに上昇し、ネオゲッターに向かって行く。

 

「コイツはヤバそうだ。」

 

ネオゲッター3は、命中する寸前で分離して回避する。後ろに建っていたビルは命中するや跡形もなく溶けてしまった。

 

「次はお前の番だ、エックス。」

 

「あぁ。マーティたちは大丈夫かい?」

 

「大丈夫よ。」

 

三機は、瞬時にダブラスの背後に回る。

 

「ゲッターチェンジ!!」

 

三機は順番を変えて合体し、もう一つの姿であり、基本形態であるネオゲッター1へと変える。

 

「敵ロボットの姿がまた変わりました!?」

 

「まさか・・・あのロボットは状況に応じて姿を変えるというの?」

 

オーロが驚いている間にネオゲッター1は、両拳を付き合わせて何かを生成し始める。それは剣で柄の双方に斧のような刃が付いていた。

 

「ソードトマホーク!!」

 

エックスの掛け声とともにネオゲッター1は、剣を振り上げてダブラスの首を斬り飛ばす。ダブラスは、首を失いながらもネオゲッター1を取り押さえようとする。しかし、ネオゲッターはしゃがみこんで反転して回避する。

 

「ショルダーミサイル!!」

 

背部のブースターからミサイルが発射され、ダブラスに命中する。ソードトマホークを構えたネオゲッターは、そのまま倒れこもうとするダブラスの胴体を真っ二つに切り裂いて止めを刺した。

 

「ダブラス大破!敵のロボットは依然健在。」

 

「・・・・ガラダとグロマゼンに撤退命令を出してちょうだい。」

 

半数の戦力を奪われたことでオーロは、苦汁をなめさせられたと感じながらも撤退を言い渡す。

 

「よろしいのですか?」

 

「これ以上戦闘を続行させたらあの馬鹿の二の舞になるわ。いや、もうなっているも同然ね。」

 

「・・・・オーロ。」

 

「ブル、この件の報告はアンタに任せるわ。あのチキュウのロボット、只者じゃない。」

 

彼女は、残りの指揮をブルに任せると落ち込んだ様子でブリッジを後にする。ブルは、ブリッジからネオゲッターを見ながら依然と態度を崩さず、新たな命令を出す。

 

「ガラダとグロマゼンが戦闘エリアから離脱後に合流して回収、ジェノサイダーを殿に出す。」

 

「撤退するのに態々余計な被害を出さない方がよいのでは?」

 

「敵ロボット、おそらく三つのタイプに変形できる。おそらく残りが前回の高速タイプ。あのスピードだとグールが撃ち落とされる。ジェノサイダーに高性能爆薬を挿入、敵に少しでも打撃を与える。」

 

「うっ、りょ、了解・・・」

 

淡々としながらも緊張感のある彼の言葉にロボット兵たちは、緊張する。ブルは本来あまりしゃべらない性格で勝利を確信しているとき、また、危険性がないと判断した時は無言で通す。そんな彼がここまで言うということは余程、敵のロボットの潜在能力が高いと見抜いているのだろう。

 

「ジェノサイダー、爆薬の積み込み完了。」

 

「ガラダ並びにグロマゼン、敵エリアから離脱を確認。」

 

「ジェノサイダー、発進。目標、敵ロボット。」

 

グールの口が開き、中から爆撃機に顔と手足を付けたような姿が特徴のジェノサイダーが発進する。

 

「グール、戦域から離脱。合流して撤退した二機を収容する。」

 

「グール離脱。離脱します。」

 

グールは、ジェットを吹かすと高速で戦域を離脱する。残されたジェノサイダーはネオゲッターに向かって飛行を始める。

 

「敵が一体だけ突っ込んでくる!」

 

「見た目から大方特攻と言ったところか。下手に撃ち落としたら街が吹き飛ぶどころの騒ぎじゃすまねえぞ。」

 

「・・・・」

 

迫りくる敵に対し、エックスはどうするべきかを考え始める。

 

ネオゲッターロボには離れた敵を攻撃する武器が装備されていない。否、正確にはこの距離からでも攻撃できる技は存在する。

 

その名も『プラズマサンダー』。

 

ネオゲットマシンのプラズマエンジンを最大出力にしてネオイーグルに送り、両手から精製するエネルギーの塊を稲妻のようにして放つことで敵を一撃で仕留めることができる。だが、その威力を代償にエネルギーの消耗は激しく、一度の戦闘に一発以上放てば、ネオゲッター自身を窮地に追い込みかねない最大の武器にして最後の切り札とも言える諸刃の剣と言えるものなのだ。

 

しかし、この武器にはもう一つの欠点がある。

 

それはエネルギーの塊を生成する際、その余波でネオゲッターロボの周囲に電磁パルスが発生し、現在退避中の一般ハンターたちに害を及ぼしてしまう危険性があるということだ。特攻を仕掛けてくる敵巨大メカニロイドを撃墜しなければ被害を出してしまうが使えば周囲のハンターたちへの被害が計り知れない。

 

「・・・ここでプラズマサンダーを使う訳にはいかない。けれど、奴を撃ち落とさないと・・・」

 

エックスは、今一度ネオゲッターの装備と訓練時にタチバナ博士から聞いた話を思い出す。

 

(ネオゲッター1の装備はチェーンナックル、ショルダーミサイル、プラズマサンダー・・・・後はハンターベースに格納されているガトリング砲・・・いや、あれはどうなっているんだ?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネオゲッターロボの説明時

 

「俺のバスターのデータを?」

 

一通りの操縦指導を受け終えて、エックスは一人タチバナ博士と歩きながら話をしていた。

 

「君にも説明した通り、ネオゲッター1のプラズマサンダーは威力が高い反面、周囲のレプリロイドたちに被害が出てしまう危険性がある。」

 

「はい、ですから使用する際には場所を選ばなければならないんですよね。」

 

「だが、もし市街地で戦闘を行う場合使用しなければならない事態も想定される。そこでネオゲッター1の外付け装備に君の主武装であるバスターを取り付けようと思う。バスターにプラズマエネルギーを送って収束させることで電磁パルスの障害を最小限に抑えた上で相手を撃つ。勿論、攻撃判定の大きいプラズマサンダーよりも使い勝手が悪くなってしまうが。」

 

研究室に入ると既にDr.ポチとタマが既にデータ取りの準備を整えていた。エックスが席に座ってバスターを展開すると二人は、外装の一部を取り外してデータの解析を行う。

 

「ネオゲッター1の右腕を君の腕とシンクロさせることで瞬時に撃てるように調整するワン。」

 

「今のところは貸してもらったアルティメットアーマーのアームパーツをベースにしているニャン。これなら、敵に直撃せずともプラズマエネルギーによって装甲を削り取ることができるニャン。」

 

研究室の窓から見える格納庫では巨大なアームパーツが組み立て始められている。これが完成すればネオゲッターロボはある程度の長距離戦闘も可能になる。

 

「それで二博士、この装備の完成にはどのくらい時間がかかる?」

 

「試作品ならほんの数日で組みあがるワン。」

 

「ただ、プラズマエネルギーが収束し過ぎると腕が吹っ飛ぶかもしれないニャン。数回テストを重ねて改良していく必要があるニャン。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだ!あれの試作品がもうできているはずだ。」

 

ネオゲッター1は、背部のバックパックのバーニアを吹かして飛び上がると一旦ハンターベースの敷地内へと戻る。そして、格納庫の天井をぶち破って手を突っ込み始める。その光景に基地で見守っていたDr.ポチたちは、仰天する。

 

『え、エックスくん!?気でも狂ったのかワン!?』

 

「俺は真面目ですよ。」

 

出てきた手には紫がかった試作品のバスターが握られていた。ネオゲッター1は、それを右腕に装着すると飛んでくる敵に向かって左腕を支えにして構えながら上昇していく。

 

『あ、アルティメッターの試作品が!?』

 

『エックスくん、それはまだ未完成ニャン!?』

 

「分かってますよ。けれど、ここで撃たなければ逃げ遅れたハンターたちが巻き添えになる。その前に」

 

『下手したら右腕ごと吹き飛ぶワン!!』

 

Dr.ポチたちに心配されているのを他所にネオゲッターのバスターはマシンからエネルギーの供給を開始し、チャージを開始する。一方、ジェノサイダーは相手が空へ飛び始めたことで街の上に進路を変える。

 

「やはり、ゲッターロボがターゲットか。」

 

エネルギーが収束していき、周囲に火花が飛び始める。ジェノサイダーは、高速で徐々に距離を詰めていく。

 

「ちょっと、敵がどんどん近づいてきているわよ。」

 

「もう少しだ。少しでも街への被害を最小限に抑える。」

 

「馬鹿が。人っ子一人もいねえ街を守ろうとしてどうする。」

 

「防衛ラインから引き上げている部隊がいるだろう。」

 

「フン、お前の甘さは死んでも直らねえだろうな。」

 

VAVAに皮肉を言われながらもエックスは右手レバーを捻り、接続アタッチメントを出す。

 

「右腕接続、シンクロ開始。」

 

右腕をアタッチメントに差し込み、ネオゲッターの右腕とシンクロを始め、同時に自身の身体にプラズマが走った。

 

「ここでミスをすれば右腕が吹き飛ぶどころか四人揃ってあの世逝きか。そんなことになったらおばあちゃんが悲しむどころかカーネルたちに怒られるな。」

 

緊張を和らげるように自分に言い聞かせると彼は、目を閉じて感覚を研ぎ澄ませる。バスターのチャージは限界を迎え、ジェノサイダーはもう目と鼻の先に迫り、ミサイル攻撃を仕掛けてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「プラズマバスター、発射!!」

 

目を見開くと同時にネオゲッターは、最大出力のプラズマの光弾を放つ。飛んできたミサイルはプラズマに打ち消され、ジェノサイダーに直撃する。ジェノサイダーは体のあちこちから爆発が起こり、目の前で大爆発した。

 

「グッ!?」

 

ネオゲッター1は煙を吹いてる右腕と左腕を組んで衝撃を和らげ、地上へと落下していく。コックピットの中ではプラズマの影響を諸に受けたのかエックスは、体のあちこちがショートを起こして倒れた。

 

「まさか・・・これほどとは。」

 

ネオゲッターロボは、動くことのないまま地上に落ちる。

 

「エックス、エックス!?大丈夫なの!?」

 

マーティが心配しながら声をかけるが応答がない。このままではネオゲッターが地上に落ちた衝撃で全員押し潰されてしまう。

 

「ったく、しょうがねえ野郎だ。」

 

VAVAは、特殊マニュアルを開いて強制的にバスターを取り外してネオゲッターの合体解除を行う。ネオイーグルは操縦者が気を失っていることで一時的に不安定だったが自動操縦で安全飛行に移る。アイリスは、エックスからの返事がないことから彼の身に何か起こったのではと感じる。

 

「エックス・・・・まさか」

 

「心配するな、少なくとも死んじゃいねえ。無茶をしたのは間違いないようだがな。」

 

「アンタねえ!よくも人のことをどうでもいい様に・・・」

 

VAVAの発言に対し、マーティが激怒する。ついでとばかりに彼は言葉を付け加える。

 

「そんなに心配なら基地に到着するなり病室に運んでやることだな。その格好で人前を堂々と出歩く勇気があるならの話だがクックックックックッ・・・・」

 

「キーーー!!!人が気にしていることを言いたい放題言って!!」

 

「マーティ、落ち着いて。ここで暴れたら墜ちちゃう。」

 

彼女をなだめながらアイリスは、ネオジャガーを操縦してハンターベースへと引き返す。VAVAは、ネオイーグルの自動操縦をセットし直すと自分のも自動に切り替えてくつろぎ始める。

 

(あのアイリスとかいうオペレーター、サポートがあったとは言えあそこまでマシンを乗りこなすとは伊達にゼロのパートナーをしているわけじゃねえな。変態女の方も格好はともかく実力は確実につけてやがる。シグマはかつてエックスに秘められた可能性が俺たちレプリロイドの進化に繋がると言っていたがこれが答えだというのか?)

 

ベースに戻るや彼は、再び手錠を付けられて警備に連れられ独房の方へと戻る。少し離れた場所ではマーティが気を失っているエックスを担いでメディカルルームへと向かう。

 

「マーティさん、のび太さんは私たちが・・・・」

 

「いい。みんなは部署に戻って作業を手伝ってあげて。怪我人も大勢いるだろうから。」

 

目立つ格好と言うこともあって変わろうとした静香たちに対し、彼女は笑い返して断る。その後姿を見てVAVAは、呆れると同時に度胸があることを認めた。

 

「まあ、あの女が一番影響を受けているんだろうな。露出狂寸前の変態なところも含めて。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハンターベース 個室

 

表のハンターベースでは、一日の作業を終えてジュドとリルルが自分たちの部屋に戻って休んでいた。

 

「・・・・・ジュド、まだ起きてる?」

 

「うん、まだ起きてるよ。」

 

二人は、ベッドで睡眠を取ろうとするが何故か寝つけずにいた。こうしている間にも鉄人兵団は鏡面世界を攻撃してこの世界への攻撃方法を見つけようとしているのかもしれない。そう思うと眠れないのだ。

 

「・・・僕、今日の作業中にここのロボットたちの様子を見ていたんだ。みんな自分のできることをやって、この世界のために精一杯生きているのを。」

 

「私もロールの手伝いで彼らの日常を少しだけ見たわ。兄さんが戦争に出て行く前の私と博士たちの生活を思い出した。」

 

二人は、互いに今日見た光景を語る。それは戦争の前にあったかつて当たり前に感じていた光景でいつの間にか過去の幻想と化してしまったものでもあった。

 

「ダグラスは、こう言っていたよ。『みんな過去の戦いで散った仲間たちの犠牲を無意味にしたくないから進んでいるんだ』って。」

 

「私たちも同じかそれ以上の経験をしているはずなのに・・・・なんでだろう、いつの間にかその感情が風化して忘れさられて行ってしまうような・・・自分でも恐ろしいと感じてしまう。」

 

リルルは、パレットの身体に入れ替わったことで自分が抱えていた感情が何なのかを少しずつ理解し始めていた。

 

感情の薄れ。

 

戦争でかけがえのない家族を失った時の悲しみ。

 

過ちを忘れないようにするべきことを何故か自分は過去のことだと言い聞かせ、心を閉ざしてまで消そうとしたもの。

 

だが、この星のロボットたちはそれを胸の内にしまいながらも忘れることなく、前に進もうとしている。それが自分たちにもあるべき姿だと知ったのだ。

 

 

「ねえ、ジュド。私たちがこれからやろうとしていることって過去の敵対惑星がかつてメカトピアに攻撃を仕掛けてきたときと同じことよね?」

 

「・・・うん。今の鉄人兵団は、セラを死なせた奴らと同じことをしている。」

 

「それじゃあ・・・・」

 

「だから、僕はそれを止めたい。勿論、メカトピアからは反逆者として見られるのかもしれない。でも、ここで踏み止まなきゃ僕たちはいずれ、悲しむことも喜ぶこともできない存在になってしまう。」

 

ジュドは、手を握りしめながら力の籠った声で言う。その言葉を聞いてリルルは、自分の中で揺らいでいた天秤が大きく傾こうとしていた。

 

「・・・あのね、私・・・」

 

『ウッ!?』

 

『な、なんだ貴様!?グワアッ!!』

 

「「!?」」

 

急に部屋の外が騒がしくなったことに二人は、視線をドアに向ける。入口には監視と警護を兼ねて二人のハンターがついていて、今日も警備をしながら世間話に花を咲かせているはずだった。そんな二人の声が突然途絶え、外は沈黙に支配された。

 

ジュドは、何か良からぬことが起きたのではとリルルを自分の後ろに下がらせる。電子ロックが解除され、ゆっくりと入口が開く。

 

「「あっ!?」」

 

そこには自分たちにとっては見覚えのある人物が立っていた。

 

「兄さん!」

 

リルルは姿が変わっていることを忘れ、思わずその場に立っているネロに近づく。ネロは妹が無事だったこともあり、ホッとした様子で彼女の頭を優しく撫でた。

 

「無事だったか、リルル。よかった・・・」

 

二人は、少しの間再会に余韻に浸る。しかし、リルルは今の自分の身体が自分のものではないことを思い出し、慌てて兄から離れる。

 

「兄さん、どうして私が・・・」

 

「基地のお前の姿をした友達が違和感のある動きをしていたからな。ナンバーマンに調べてもらって正体が分かった。」

 

「パレットが!?彼女は大丈夫なの?」

 

自分の身体と入れ替わったパレットの存在に気づいたと知り、何か尋問をしたのではと彼女の脳裏に不安が過る。

 

「心配するな、お前の友達だ。正体は俺たち二人しか知らない。」

 

「そ、そうなの?」

 

「あぁ。」

 

妹を安心させるように言うと彼は、後ろにいるジュドを見る。ジュドは自分の姿がすっかり変わっていることで敵と思われるのではないかと緊張する。

 

「お前は、ジュドだな?」

 

「は、はい!」

 

「お前にも世話になったな。よく、妹の傍にいてくれた。」

 

ネロは、礼を言うと妹の手を取る。

 

「この場から離脱する。二人とも俺について来い。」

 

彼はそう言って動こうとするがリルルは、歩みを止める。

 

「待って、兄さん。」

 

「ん?」

 

晴れない妹の顔を見てネロは、向き直る。

 

「どうした?」

 

「・・・兄さんは、この作戦・・・『人間奴隷化計画』は正しいと思っているの?」

 

「何を言っているんだ?お前の気にすることじゃ・・・・」

 

「答えて!」

 

「!?」

 

リルルの叫びに彼は、目を丸くする。彼女は、ひと呼吸おくとここまでの経緯を簡単に説明する。

 

「この星に降りてから私は、基地建設と並行して情報を収集するためにこの星のロボットたちに紛れて彼らと生活を共にしてきました。その中で私は、彼らが何のために人間たちのために動いて、どうして彼らを守ろうとするのかを知りました。」

 

「それがどうしたと言うんだ?」

 

「私たちにとって確かに人間は、力の劣る存在なのかもしれません。でも、この星のロボットたちにとっては『親』であり、『かけがえのないパートナー』でもあるんです。それを奪って私たちは正しいと言えるんでしょうか?」

 

「何が言いたい?」

 

妹の言葉に対してネロは何かを感じ取ったのか、表情を険しくする。リルルは、裏切りも覚悟で口を開いた。

 

「作戦の中止、または再検討をしてください。このまま作戦を続行すれば私たちメカトピアの民とこの星のロボットたちとの間に大きな溝を作ることになります。そうすれば・・・また、あの醜い争いに・・・」

 

「・・・リルル、残念なことだがこの計画は俺一人の意思で変えられるものではない。メカトピア全国民の総意によって決められたことなんだ。」

 

「ならば総統に懇願を!」

 

「総統は第二陣でこの星に到着される。計画に大幅な遅れが出ることになるが二陣が到着次第合流し、こちらの世界に総攻撃を仕掛ける。」

 

「まさか!?」

 

兄の言葉を聞くなり、リルルはこの世界のカラクリが見破られたことを悟る。

 

「ナンバーマンと現行のチームでは大型のゲートに製作に時間がかかるが、第二陣にはビアンコを初めとする主要チームがいる。奴と関わりたくないがメカトピアのためだ。」

 

「・・・・」

 

「どうした、リルル。お前は十分祖国のために役に立ったんだぞ?」

 

「・・・違う。」

 

「何?」

 

「ここに来てようやく気づけた。私は・・・兄さんにこれ以上自分のことを追い込んでほしくないと思ってこの作戦に参加した。」

 

「俺が追い込んでいるだと?」

 

ネロは、目を鋭くして彼女を睨む。その視線に押されそうになりながらもリルルは言葉を続ける。

 

「兄さんは、ずっと後悔している。セラを自分の手で殺めたあの日から・・・」

 

「あれは事故だ!」

 

「嘘!本当は助けたいと思って攻撃を躊躇っていた!けれど、祖国への忠誠心が重しになって斬り捨てる選択を取らなければならなかった!」

 

「違う!!あれは俺自身の判断だ!」

 

「じゃあ、どうして戦争が終わった後も帰って来てくれなかったの!?私は寂しかった。兄さんが帰ってこなくなって、博士も様子がおかしくなって・・・・セラは・・・・あの人はこんな形を望んでいなかったのに!!」

 

「黙れ!!」

 

自分の心の内を見透かされているように感じたのかネロは、今までに見せなかった苛立った顔を見せながら怒鳴る。

 

「兄さん・・・・」

 

「俺は・・・・俺は彼女とあの場で死んだ仲間たちに報いるためにここまで動いてきたんだ。この作戦を中止すれば下層階級のロボットたちの鬱憤は更に溜まり、やがては内部分裂による戦争が起こる。今のメカトピアで行えばどうなる?種の存続のためには何かを犠牲にしなければならない!かつて、神が『アム』と『イム』を残して滅んだように。我々も何かを犠牲にしなければ未来はない!!」

 

「いい加減にしろよ!!」

 

「「!?」」

 

二人の言い合いに対し、ジュドは顔を顰めながら割り込む。

 

「犠牲ってなんだよ、犠牲って!!それこそ、過去から何も学んでいないじゃないか!!」

 

「ジュド・・・」

 

彼の言葉に対し、リルルは何も言えなくなる。ジュドは、彼女を後ろに下がらせるとネロを睨みながら話す。

 

「確かにこの星の人間もロボットも馬鹿な奴はいるさ!世界征服をしようとして何度も失敗する奴や、可能性を見極めるために大胆なことから姑息なことまでやる奴もいる。でも、そんな奴らでも僕たちにはない素晴らしいものを持っている。遠い昔、神が望んでいた『天国のような世界』に繋がるかも知れないものが。」

 

「・・・・祖国に歯向かうと言うのか?」

 

強く出た彼に対して、ネロは冷徹な眼差しで睨み返す。ジュドは、怯まず答える。

 

「この星に手を出すと言うなら僕は裏切ろうが構わない!」

 

「・・・リルル、お前もか?」

 

「私は・・・私は自分の意志でこの星側に付く。それが私たちの可能性になるなら。」

 

彼女も意を決したのか強い眼差しでネロを見る。

 

「・・・そうか。」

 

ネロは、ため息をつきながら大剣に手を取る。ジュドは、攻撃が来るとみて身構える。

 

「ならば・・・意地でも連れ戻すしかないな!!」

 

次の瞬間、部屋が衝撃波で吹き飛ばされた。




ネオゲッター1のソードトマホークの展開は、漫画版號のものをベースにしています(あちらは実体じゃなそうだけど)。

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