山岳地帯 飛行要塞グール
シティ・アーベルから離脱し、山岳地帯に身を隠したグールはネオゲッターとゲッター號の手によって破損した大型兵器の修理を行いながら鏡面世界の基地への通信を試みていた。
「どうだ?鏡面世界の基地と連絡が取れそうか?」
ネロは、通信機器を調べている兵士たちに対して聞く。兵士たちは最初通信機が故障して連絡が取れなかったのではと一度回路を分解して破損や消耗がないかどうかを調べて見たか異常は見られなかった。
「それが全て調べ周ったのですがどこにも異常がないんです。」
「なら、どうして基地と繋がらないんだ?」
「分かりません。ただ、妨害電波のようなものも確認されていないので応答がないはずはないのですが。」
兵士の報告を受けて彼は、首をかしげる。
基地の方で通信トラブルが起きて繋がらないと言うのならまだ話はわかる。しかし、緊急時用に用意された総統への通信も繋がらないのは不自然過ぎる。これはつまり、基地の方で何か重大なことが起こったことを意味する。それにゲートが開かない以上帰ることができず、慎重に行動しなければならない。
「うむ・・・こうなるといつ戻れるか目途がつかんな。ヴェルデ、大型兵器の修理が完了したらデモンガーを出して、周囲を警戒させてくれ。チキュウ側にこの状況を悟られたくない。ロッソ、オーロはそれぞれチームを分けて周囲の護衛。ブルは俺とヴェルデと共にグールに残れ。何か見つけたらすぐに報告、場合によっては緊急離脱も視野に入れなければならない。後、兵士たちには余計な物資の消費は控えさせるように。補給の当てもないのだからな。」
ネロは、そう言うと司令室を出て格納庫で沈黙しているZの元にまで来る。
「・・・周りはこうも変わるのにお前だけはあの時のままだな。」
彼は、感慨深い表情をしながら見ているとヴェルデが報告のために近くに来た。
「ネロ、完全に大破したバイアンとキングダンを除けば全機想定よりも軽傷だ。スカラルド、ヘッドホークはパーツの移植に時間がかかるがグロマゼンは頭部の反射板を取り換えればすぐに復帰できる。」
「そうか。」
振り向かずにネロは、分かったとばかりに答える。その様子を見てヴェルデは呆れながらも彼の視線の先にあるZを見た。これまで多くの大型兵器を見てきたがこの機体のみ何か一線を越えた異彩を放っているようにも感じられる。
「これが『Z』か。話は聞いていたがやはり他の大型兵器とは何か違うな。」
「他の奴らはある程度共同作戦の展開も考慮して作られている。だが、こいつだけは単機での敵の殲滅を視野に入れて開発された・・・と言われている。」
「しかし、疑問だな。この機体は神々が生きていた時代に作られたのだろう?これほど強力な兵器を持ちながら彼らは滅び、何故この『Z』だけが現代まで、それもほとんど風化も劣化もせず残っていたんだ?」
ヴェルデは、Zを目の前に首をかしげる。実際、古代メカトピアの祖と言われているアムとイムを生み出したとされる神々は、本星を中心に栄華を極めていたと言う。この機体を始めとする多くの遺産がその証拠として残されている。
しかし、彼らはなぜ滅びてしまったのか?
これは古代メカトピア史の中でも最大の謎とされている。各文献では『破壊者』が降臨して星全体を焼き払った末に滅ぼしたと言われているが信憑性が低いことで今は、天変地異説、小惑星衝突説などが有力とされている。
尤もそれならなぜZや大型兵器の原型たちが残されているのかが疑問に残るが。
「謎なんて言うものは生きている限り際限なく現れるものさ。そこまで気にする必要はない。」
「そんなものか?」
「あぁ。・・・だが、時々妙な感覚を味わうんだ。」
「ん?」
ネロの意外な言葉にヴェルデは、彼の顔を見る。
「俺はコイツに乗った回数は数えるほどしかない。でも、何故か何度も乗っていたような感覚があるんだ。そして、巨大な敵を数えきれないほど倒したような気がする。」
「ふむ、度重なる戦闘で感覚がマヒしているかもしれないな。しばしの休息を取るか?」
その言葉に疲れているのではと感じたのかヴェルデは、休息を勧める。実際、ネロはここ数日碌に休んでいなかった。
「だが、もしものことがあったら・・・」
「その時は私とブルで対応するさ。君は妹のことも考えて頑張り過ぎだ。こういう時ぐらい休んでくれ。戻った後も休めそうにないからね。」
彼はそう言うとネロを無理やり部屋へと連行して行った。Zは、その姿を見守るようにただ沈黙する。
数時間前
鏡面世界 メカトピア軍前線基地
Zがネロたちの元へ現れる少し前、鉄人兵団の基地では恐ろしいことが起ころうとしていた。
「閣下、基地の受信装置に暗号化されたメッセージが届きました。送信相手は連絡が取れなくなっていた輸送艦隊です。」
「よし、メッセージを再生しろ。」
総統に言われると通信係はすぐに暗号を解析し、モニターに映像を再生させる。そこには火花を散らしながら燃える艦橋に責任者である艦長がボロボロの姿で映されていた。
『こちら、第三陣輸送艦隊!未知の敵の攻撃を受けている!!被害は甚大、我々はこれより「Z」を始めとする大型兵器と物資を保護カプセルに収容し、単独ワープでそちらに送ります。信号を受信させますので回収をうわああ!!』
艦長は最後まで言い切る前に爆発に巻き込まれ、映像はそこで途切れる。その断末魔を見た一同は、まさかの事態に動揺を隠しきれず、総統自身も状況を理解しきれず、椅子に腰を下ろした。
「かっ、閣下・・・・これは一体・・・」
副官は、怯えながらなんとか助言を乞おうと彼に近づく。一部とはいえ、今まで負けなしと言われていた鉄人兵団の艦隊が謎の存在の前に全滅したのだ。迎撃には大型兵器も投入されたはずだ。にもかかわらず全滅となると不安を感じずにはいられない。
「・・・分からん。今回の事態、私にも一体何が起きているのか。」
総統は、頭に手を当てながら何が原因なのかを電子頭脳の解析によって導き出そうとするが答えを導き出せずにいる。メカトピア星周囲の惑星はロボット以外の生物は害のない小動物程度しか生息しておらず、制圧した宙域も植民惑星にするにあたって事前に調査を済ませているため、そんな危険な生命体が現れるとは考えられない。
ならば、一体何が輸送艦隊を襲ったのか。
思いがけない事態に困惑している中、部屋にビアンコたち三人が入ってくる。
「随分騒がしいようですな。一体何が起こったのですかな、総統閣下。」
「ビアンコか。先ほど連絡を絶っていた輸送艦隊の暗号メッセージが届いたのだ。どうやら、我々の知らぬ敵の手によって全滅したらしい。」
総統は、何とか冷静になろうとしながら話す。それに対してビアンコはその予想外の事態に全く動じる様子を見せない。
「ほう、本星に戻るか援軍を呼べば助かったものを身を犠牲にして任務を遂行しようとしたわけですな。しかし、愚かなことだ。どちらかを選択しておけば自分たちの命が助かったもしれないと言うのに。命令以外の選択肢を選べぬ者たちとは実に哀れなことだ。」
「貴様、何を他人事のように言っている!?我が軍の部隊がやられたのだぞ!!」
彼の態度に副官は、苛立ちをぶつけるが総統はその態度に強い不信感を持った。
「どういう意味だ?」
「そのままの意味よ。奴らは所詮、そこまでの存在。進化が行き詰ったことで滅びる定めになった種族。だから、知らない内に不意を突かれ、滅びる。」
「・・・・」
今の発言で確信したのか、彼は右手を上げる。すると近くで待機していた衛兵たちが銃を構えて三人を取り囲む。その行動に副官は驚く。
「閣下、いきなり何を?」
「ビアンコ・・・・輸送艦隊を全滅させたのもお前たちの手引きか?」
「なっ!?」
「フッフフフ、だとしたら?」
否定をしないビアンコを見て総統は、三人の身柄を拘束させる。
「大戦の後、どんなに招集をかけても応じず研究に没頭していた貴様が突然今回の作戦への同行を求めたことから怪しく思っていた。製造ラインで確認していない助手二人と言い、偵察に向かわせた諜報員の様子がおかしくなるなど不審に感じずにはいられなかった。そして、スペックを偽造した可変タイプの新モデルの大型兵器もな。」
「ほう、そこまで察しておったか。」
「三人を連れて行け。国家反逆罪として本星へ強制送還する。」
「「「はっ。」」」
衛兵たちは、拘束した三人に銃を突きつけると一旦独房へ入れようと連行する。ビアンコたちは特に抵抗する様子もなく外へ出て行こうとした。
だが、ドアを開いた瞬間、意外からの銃撃で衛兵たちは全員その場で倒れた。
「ガッ!?」
「なっ!?」
総統たちは何事かと入口を見るとそこには仲間であるはずの他の衛兵たちが銃を構えて部屋に乗り込んできた。一同は、三人の拘束を外す。
「大丈夫ですか、博士。」
「心配いらん。これも計画通りだからな。」
来ることが分かってたと言うビアンコに対し、副官は動揺しきっていた。
「き、貴様らどういうつもりだ!?反逆者ではなく、味方を撃つとは!!」
「副官殿、残念ながら彼らは我々の同胞だよ。この星に来ている時点でね。」
「全くだね、ロボットと言う輩は自分たちが優勢だと慢心し、他の生物を下等としか見ない。だから、足元をすくわれる。」
コーウェンとスティンガーは、手錠を外しながら皮肉そうに言う。
「総統、貴方は実に優秀な男だ。我々の動きを不審に感じ、様子を窺った上で逮捕する。そこまではいい。だが、貴方もまた進化の袋小路に追いやられた哀れな種族。ここで見納めですな。」
「貴様ら、何者だ?こんなことをして何になる?内輪揉めをすればそれこそ・・・・」
「内輪揉めではございませんよ、閣下。これは儀式なのです。我々、いや、全ての生命体を真のユートピアへ導くための。」
衛兵の一人が銃を下ろして答える。それに応じるかのように全員が銃を下ろす。
「「「そう、我々」」」
「「「ゲッター線と共に生き、共に進む者のための儀式」」」
「「「そして、この宇宙に生きる全ての生命体を新たな世界へと導く」」」
そう言うと彼らの装甲板が何かが蠢く。そして、全員が装甲を開くとそこから無数の目玉の付いた肉塊が飛び出し、瞬く間に部屋を包み込んで総統たちは呑み込まれて行った。
「わ、わああああ!!」
「うわあああ!!」
「ぐわあ!」
悲鳴が部屋中に響き渡るが、しばらくすると何事もなかったかのように静寂が訪れる。司令室には最早黒い肉塊とそれに同化した者たちしか存在せず、総統と副官は完全に肉塊の中に消えていた。
「実に呆気なかったね・・・・・ん?どうしたんだい、ビアンコ君。」
コーウェンは、少し残念そうな顔をしている彼を不思議に持って聞く。ビアンコは、軽く舌打ちをする。
「ふうむ、ワシとしたことが一杯喰わされたわ。」
「なに?」
「総統と副官、そして、一部の衛兵たちの回路をよく見ろ。電子頭脳のバッグアップの転送、削除がされておる。まんまと逃げられたわ。」
ビアンコの読みは当たっていた。
同じ頃、基地のメディカルルームでは作業をしていたナンバーマンが万が一の時として持ってきていた予備ユニットの部屋が突然稼働したことで驚きを隠せずにいた。
「な、何事でマスか!?」
部屋が開くとそこには司令室で職務を行っていたはずの総統を始めとするメンバーが出て来て彼は、ますます混乱する。
「今まで必要ないと思っていた予備ユニットがこんな形で役に立つとは」
「しかし、グズグズしてはおれん。おそらく、他の将校もやられたのかもしれん。」
総統は、すぐに行動しようとナンバーマンの方を見る。
「ナンバーマン、すぐに基地全体に警報を発令しろ。そして、この場にいる全員のボディチェックを終えた後に全員指定した船に乗り込むようにするんだ。この基地を放棄する。」
「え、え、え、え、えっ!?な、な、何があったんでマスか!?」
「ビアンコが反乱を起こした!奴は未知の生物に乗っ取られて、この基地を掌握しようとしている。」
混乱するナンバーマンに対して副官は、やや怒鳴り気味に答える。総統は、そんな彼を宥めるとすぐに基地中に警報を出すように指示を出す。
「我々は先に船を確保して脱出の準備をする。ナンバーマンはここのメンバーのボディに何かが憑りついていないかどうかを確認した後に指定した船に搭乗しろ。」
「わ、分かりました・・・しかし、捕らえたチキュウのロボットたちは如何するでマスか?」
基地には自分たちの仲間だけではなく、独房に捕らえてあるイレギュラーハンターたちがいる。同じロボットであることから連れて行くべきかと悩むものの、彼らの方にもすでにビアンコの魔の手が忍び込んできてもおかしくないため、牢を解除するだけにした。
「牢の電子ロックを全て解除しろ。後、そばにある武器庫を解除して武器を持たせるぐらいのことはしておけ。運が良ければ切り抜けられるかもしれんからな。」
「は、はい・・・」
そう言うと彼らは急いで部屋を出て行った。ナンバーマンは、他に整備スタッフたちに撤収命令を出し戸惑っているパレットに格納庫のキーを渡す。
「パレットちゃん、君も仲間たちと一緒に基地から逃げるでマス。」
「でも・・・」
「牢の部屋から外に出たところに小型移動艇が格納されている倉庫があるでマス。それを使って逃げれば仲間たちの基地へ行けるはずでマス。」
「は、はい・・・」
パレットは、頭を下げてお礼を言うとすぐに独房のある部屋へと急ぐ。
警報がすぐに基地全体へ鳴り響き、それは外で作業をしていたアクセルたちにも届く。
「何の騒ぎだ?」
「俺に分かるわけがねえだろう。基地で何かあったんだ。」
基地の方では、動かす予定のなかった大型兵器が格納庫を突き破って動き出すなどただ事ではないことを見せつける。
「全員作業を中断して、基地に帰還。状況を確認するぞ。」
チームリーダーに言われて、作業兵たちは全員急いで基地へと引き上げていく。アクセルも続くように後を追おうとするがこの隙に乗じて仲間と合流して逃げた方が良いのではと言う考えが頭をよぎった。
(もう、大体の情報は収集したし、そろそろエックスたちに合流した方がいいかな。それにパレットも心配しているだろうし。)
彼は、そう考えると途中で進路を変更して仲間たちが捉えられている独房へと走って行った。
旧日本エリア 浅間山近辺
サービスエリアを後にしたゼロ一行は、その日の内に浅間山の近くにまで辿り着いた。
日は既に沈みかけ、舗装された道路もなければ民家も見当たらず、泊まれるような場所がなかったことから彼らは砂利道から少し離れた所でキャンプを張ることにした。
ロックたちが川の水を掬おうとするとすると何か怪しい機械で検束するワイリーに対し、ゼロは不思議そうに見ていた。
「ジジイ、さっき近くの川の水をなんか調べていたようだが何かあったのか?」
夕飯を取っている最中、ゼロは隣に座っている彼にその疑問をぶつけてみた。ワイリーは、聞き流すように軽く答える。
「別に。汚れておらんかどうか調べただけだ。」
「それなら簡単な調査キットで済ませられるはずだろ。それにこの辺は環境破壊や工場廃棄物の投棄は確認されていない。これから行く場所に何か関係があるのか?」
「・・・・・」
「ちょっと、大事なことならはっきり言ってちょうだい。ここまで来て隠し事するのは大人げないわよ。」
「お前は信じんじゃろう。何しろ、現実的ではない話だからな。」
「どういう意味よ?」
挑発的に言われたことでカリンカは、不満そうに反応する。ワイリーは、ため息をつきながら食事を終えると食器の片づけをロックに任せ、端末を取り出して机の上に置く。するとディスプレイで映像が現れる。
「今では信じられんだろうがこの辺りは150年以上昔、ある宇宙線を研究するための最先端の技術が培われた研究所があったんじゃ。」
「研究所?」
「ワシらはそれをかつて『ゲッター計画』と呼んだ。」
「ゲッター?それってもしかしてゲッターロボと関係あるんですか?」
アイリスは、ゲッターの名前を聞くなり少し気になって質問する。
「関係ある・・・・と言えば関係なくもない。」
「つまりどういうことだ?」
「『ゲッター計画』は、宇宙から少量だけ地上に降り注ぐ宇宙線『ゲッター線』の研究と開発を行うものでその発見者であり、研究第一人者だったのがこの男、『早乙女』だ。」
モニターに初老の温和そうな男が映し出される。
ワイリーの話によるとこの早乙女はゲッター線を研究し、かつて太古にこの宇宙線が大量に降り注いだ時期が存在し、恐竜が絶滅した一方で、類人猿を人類に進化・誕生を促したのではないかと言う大胆な仮説を立てたと言う。
そんな聞いたことがない話に一行は、少しばかり驚いていた。
「つまり、あれか?そのゲッター線が地上に降り注がなかったら人間は今もサルのままだったと言う事なのか?」
「さあのう、ワシもその辺は分からん。早乙女もゲッター線の全てを解明することができんかった。」
「それは分かったけど、その宇宙線と貴方がここに来た理由がどう繋がるわけ?」
話を聞きながらもここに来た目的が見えないことにカリンカは、早く答えを言うように催促する。
「・・・ワシはかつてその早乙女の下で働いていた時期があった。」
「えっ?」
「ライトと喧嘩別れ同然で大学を出てしばらしくしてな。アイツを見返す策は何かないかと毎日研究をする傍ら、自分を使ってくれそうな研究機関を探していた時にこの先の山に有った研究所に目を付けた。少量でありながらも膨大なエネルギーを生み出す『ゲッター線』。無公害な上に収集量がまだ少ないとはいえ、無限とも言えるそのエネルギーにワシは、これを利用した小型炉心を作り上げようとした。幸い、早乙女は小型炉心の研究に関しては視野に入れていなかったからワシの研究を寛大に受け入れてくれた。だが・・・・メリットの一面ばかり見ていたワシらはゲッター線の未知の領域を見る事を疎かにしてしまった。そして・・・・あの事件が起こった。」
映像を閉じると彼は、席を立って浅間山がある方を見る。
「あの事故さえなければ・・・ワシも・・・・」
ハンターベース
ハンターベースの病室では、意識を失っていたエックスが目を覚ましていた。傍にはマーティとドラえもんたちが心配そうに見ており、隣のベッドでは手錠をかけられた状態ながらも治療が施されたVAVAが寝かされていた。
「俺・・・気を失ってた?」
彼は、頭を押さえながら起き上がろうとするが無理をしてはいけないと彼女の手で寝かされた。
「明日までは安静にしていなさいって。やっぱり、アタシが傍にいてあげなくちゃダメね。」
「似た者同士がよく言う。」
呆れるマーティに聞こえない声でVAVAが余計な一言を言う。エックスは、それを聞かなかったことにしてドラえもんの方を見る。
「ハンターベースの方は?」
「のび太君たちが頑張ってくれたから基地の方はそこまで被害がなかったよ。でも、街は結構壊れちゃったな。折角直って来たのに。」
「また直せばいいさ。」
一同はしばらく話をするとそろそろ面会時間終了だとライフセーバーに言われて部屋を後にしていく。
「マーティ、一人で寝れるかい?」
「眠れるわよ。そんな子供じゃ・・・・」
心配そうに聞く彼に対して彼女は、胸を張って答えようとするが昨日の夢のことを思い出して顔を青くする。
「眠れないかも。」
「今夜は頑張ってくれ。俺も見ないことを祈りたいけど。」
「・・・うん。」
そう言うと彼女は、トボトボと部屋を後にする。
エックスは、天井を見上げると目を閉じてそのまま眠りに入った。
数時間前
鏡面世界 メカトピア軍前線基地
「ハア、ハア!」
パレットは、ナンバーマンと別れた後独房を目指して走っていた。通路は既に何かを物語るように静まり返っており、既に不気味な雰囲気を晒しだしていた。
「みんな、私を見て混乱しなければいいんだけど・・・」
彼女がそう思いながら独房に到着するとそこは既にもの抜けの殻になっていた。彼女はまだ周囲に誰かいないかどうかを見回すと武器庫の方に立っているハンターたちの姿があった。
「よかった!みんな無事・・・・・」
パレットは笑って彼らの元へ近づこうとした瞬間、一人の腕が鋭利な刃物のようなものに変化して彼女の身体を貫こうとした。
「キャ!?」
彼女は、慌てて避けると合わせるかのようにハンター全員が体を突き破ってそのおぞましい姿を露わにする。既に中にいたハンターたちは乗っ取られていたのだ。彼らはあちこちにある口の端を動かしながら近づいてくる。
「そんな・・・」
パレットは、恐怖のあまりに腰を抜かして動けなくなってしまう。元ハンターたちは獲物を狙うように動こうとする。
「待て。お前たちは下がってよい。」
そこへビアンコがやって来て彼らを下がらせる。パレットは、この男がこの事件の黒幕だと判断して近くに落ちていた銃を取って身構えるが彼は両手を広げて彼女に近づく。
「リルル、何を怯えている?さあ、こっちへおいで。」
ビアンコは、悪人面とは思えぬ優しい声で言う。
「・・・私はリルルじゃないです。」
パレットは、自分がリルルと勘違いされていると思って答える。
「何を言っている?お前は、この世界に新たな可能性をもたらす大事な存在なのだ。さあ、リルル。ワシとセラ、そしてジュド共にこの世界の終わりと新たな始まりを見届けようではないか。」
ビアンコは、一歩一歩と距離を縮めていく。彼女は、銃撃を浴びせるが手足が吹き飛ぼうが頭が消されようがそこから黒い肉塊が飛び出して元通りに戻してしまう。その機械とも生物とも言えない存在に彼女は歯をガタガタ震わせる。
「怯えることはない。これも滅びゆく我ら種族が進化していくための過程に過ぎん。お前が力を貸せば世界を変えることができる。あの子が望んでいた悲しみも争いもないユートピアのようなものに・・・・」
「い、いやああああああ!!」
パレットは、縮こまって迫る来る手を目の前に目を閉じる。
そんな時、後ろからの銃撃でビアンコの両腕が吹き飛んだ。
「うん!?」
彼が振り向くとそこにはほとんど取り込んだはずの作業兵が見覚えのないバレットを持って立っていた。
『・・・・』
「ここに来るまでの間に全ての兵は我が同胞へと変えたはずだが・・・・貴様、何奴?」
『そんなことはどうでもいいよ。アンタこそ何しているのさ?その子が怯えているじゃないか?』
アクセルは、銃口を向かせながら言う。だが、ビアンコにとって銃などそれほど大したものではない。
「ワシは、愛しの我が子を迎えに来たに過ぎん。」
『我が子?』
ビアンコは、身体から黒い肉塊を飛ばして攻撃を仕掛ける。アクセルは、動きが鈍い作業兵の姿から本来の姿に戻り、ローリングで回避するとリルルを抱えてその場から逃げようとする。
「おのれ!逃がすものか!!」
叫びと同時に部屋の至る所から黒い肉塊の生物が飛び出してくる。生物たちは、牙を鳴らしながら後を追おうとするがアクセルはGランチャーを展開して武器庫に向かって撃つ。武器庫の武器は命中すると同時に勢いよく爆発すると同時に周囲の生物を巻き込んで吹き飛ばした。
「ヌウウ・・・小癪な!!」
外に逃げ出した二人は、基地の下水に飛び込んで外の水路へと脱出することに成功した。
「プハッ!ケホッ、ゲホッ・・・・・・大丈夫リルル?」
アクセルは、水路から上がると手を差し出して彼女を足場に上げる。
「あれ、雰囲気なんか変わった?」
「えっと・・・その・・・・」
パレットのぎこちない態度に彼は、不信感を持つ。目を細めてジロジロとしばらく観察して胡坐を組んでしばらく考え込むとアクセルは、冗談交じりで質問する。
「まさかだと思うけど、パレットじゃないよね?」
「へっ!?」
「いや、なんて言うか雰囲気がパレットっぽいって言うか・・・・まあ、間違いだったら訂正するよ。パレットの頭ツルツルテカテカでまな板だし。」
「だ、誰がツルツルテカテカでペッタンコよ!このバカ!!」
まさかの爆弾に彼女は顔を真っ赤にして彼の顔を平手打ちする。その反応を見てアクセルは、顔を押さえながら驚く。
「えっ!?まさか、本当にパレットなの!?」
「アクセルが私のことそんな風に思っていたなんて知らなかった!もう知らない、ふん!!」
パレットは、ふくれっ面になりながら歩き始める。彼は慌てて彼女の後を追う。
「ま、待ってよ~!?まさか、リルルと入れ替わってたなんてありえないと思ったから試しただけだよ。別に馬鹿にしたわけじゃ・・・・」
「ふ~んだ!どうせ、私はエイリア先輩やレイヤーみたいな魅力ありませんよ~~だ!!そんなに大きい子が好きなら他の部署に行けば!!」
「何でそんなこと言うのさ。そりゃあ・・・・・パレットはないけど。」
「やっぱり思っているじゃない!!」
「・・・すみませんでした。」
余計なことを言ったと思い、アクセルは謝罪する。パレットは、そんな彼を無視して先に進もうとするが目の前に無数の目が光っているのを見て足を止める。
「ヒッ!?」
「まさかアイツら・・・じゃないようだけど・・・・」
アクセルは、バレットをその場において両手を上げる。
その先にはブラックゼロ率いるアチモフ一味が待ち構えていた。
「敵の基地の反応がおかしいと思ってきてみたらまさかイレギュラーハンターの年少組がいるとはな。」
「えっと・・・その・・・ここで言うのもなんだけどアンタたちも逃げた方がいいと思うよ?なんて言うか・・・相当まずいことになってるし。」
「ほう、なら都合がいい。情報を吐いてもらおうじゃないか。」
「あはははは・・・・お宅らが望むような情報はないと思うんだけど・・・・」
二人は両手を挙げながら連れて行かれる。
???
ネロは夢を見続けていた。
どこだか分らぬ破壊の限りを尽くされた世界。
その中心にはいつも自分がいた。
何度も世界を破滅し続けた彼は、いつしかその空間すらも支配するほどの存在『神』となり、自分こそが最強であり、絶対無敵の存在としてすべての世界に君臨し続けていた。
だが、その途方のない時間の流れの中でその概念は忽然と崩壊する。
自分と言う存在から生まれた新たな可能性を持つ者たちによって。
それまではまがい物すら許さなかったはずなのに不思議と嫌な気分ではなかった。
すぐ近くにいたと思われる青年の言葉を聞いたせいかもしれない。何かに満たされて彼は、消えて行った。
やがて、今度は見知らぬカプセルから出てきたところから始まり、自分が何者なのか分からず彷徨う。
『お兄ちゃん、一人?』
声のした方を見るとそこにはボロ服を着た妹がいた。
『・・・・分からない。君の家族は?』
『いない。私、もういらないって言われて一人になっちゃった・・・。』
彼女は、堪えていたのかその場で泣き出してしまう。彼は、何かを見たのか優しく頭を撫でてあげた。
そして、二人は手を繋いで共に行動するようになった。妹は自分のことを「リルル」と名乗った。
『お兄ちゃんは名前ないの?』
『名前?』
彼は、断片的にしかない記憶の中でどういった名前なのか思い出そうとする。
『・・・・ゼ・・・・ェ・・・ロ?』
『ゼロ?ネロ?どっち?』
妹にはどちらかに聞こえたらしい。
『分からない。』
『じゃあ、ネロお兄ちゃんって呼んでもいい?』
ゼロだと自分たちは何もないと言う風に聞こえて嫌だったのか、妹は後者を選んだ。
二人は、一緒に様々な場所へ行き、やがて博士親子に拾われた。
彼は、少しでも恩返しできるようにと軍に志願し妹のために動くようになった。
そして、あの戦争の終盤。
授与された魔神を見て何かが引っかかるようになるところで夢は終わりを迎える。
その先が一体どうなっているのか。
それはネロにもわからない。
アクセルとパレットのやり取りって大体こんな感じでいいのかな?
最後は・・・・もうお分かりですか?