早乙女研究所
「行くぞ、カーネル!!」
ゼロは、疾風牙を繰り出しカーネルに斬りかかる。それをサーベルで防がれるとアイリス、パンクが援護射撃を行い、カーネルがゼロから放す。
「トマホークブーメラン!!」
エンカーは、タイミングを見計らって両肩からトマホークを取り出し投擲する。回転するトマホークは一瞬カーネルに命中したかと思われたが触れた瞬間消えてしまった。
「残像か。」
「俺に任せろ。」
バラードは、ゲッタービジョンで高速移動するカーネルとスピード戦を行う。一瞬残る残像が見える中、バラードのドリルがカーネルの顔を僅かに掠る。割れた装甲の隙間には他のイレギュラー同様インベーダーの肉塊が蠢いているのが分かる。
「どうやら、皮の中に厄介な奴が隠れているようだな。」
バラードは距離をとるや、高速移動をしながらバラードクラッカーを設置していく。カーネルも最初こそは回避して動いていたものの僅かな誤差で触れてしまい爆発。連動するように他のクラッカーも誘爆し、爆風に呑み込まれて行った。
「さあ、正体を見せろ。そのおぞましい姿をな。」
バラードは、ゼロたちの元に戻り煙が晴れるのを待つ。煙が晴れて行くとカーネルの状態が徐々に判明していく。
「きゃああ!?」
アイリスは、思わず悲鳴を上げる。目の前にいる兄の姿は爆発で吹き飛んでいる左腕を含めて体の随所からインベーダーの本体が露わになっており、再生しようとしていた。その光景にゼロも驚愕する。
「カーネル・・・・」
「ウゥ・・・ゼロ・・・・オノレ・・・」
「攻撃した俺ではなく、お前の方を目の敵にするか。困ったものだ。」
カーネルは、再生しきっていない左腕を伸ばして一番動きが遅いパンクを軽く吹き飛ばす。
「うおっ!?」
「「パンク!!」」
エンカーとバラードは、彼を助けようとするがすぐ後ろの壁が崩れて巨大な拳が二人を掴み取る。
「「ぐおっ!?」」
「あの腕は!」
「まさか・・・」
ゼロとアイリスには見覚えがあった。
それはカーネル同様にレプリフォース大戦で戦死したレプリフォース初代総司令官であるジェネラルの腕だった。壁の向こうでは僅かに残された残骸に寄生したのかボディを含む僅かな装甲を纏った巨大インベーダーが顔を出していた。地球を救うために散っていったジェネラルの亡骸すら利用する敵に対し、ゼロは拳を握り締めながら怒りを露わにする。
「・・・死んだ者まで利用するとは・・・・この外道が!!」
彼は、雷神撃で左腕を切断すると一気にカーネルの方へ接近し、円水斬と龍炎刃のコンボを繰り出す。装甲にダメージが入るがインベーダーの自己再生で修復されていく。
「雷神昇!!」
雷を纏った竜巻を起こし、斬撃と雷撃を与える。
「グウ!?」
「三日月斬!旋墜斬!!」
連続でコンボを決め、カーネルの体を切り刻んでいく。後方にいるであろうアイリスは、やめてくれと言っているように感じたがゼロは攻撃をやめない。
「電刃!落鋼刃!!」
胸部の装甲が剥がれるとそこには本体と思われるインベーダーの姿が見えた。ゼロは落鳳破、滅閃光を撃つ要領で拳にエネルギーを纏わせて掴み上げる。
「出ていけ!今すぐカーネルの中から出ていけ!!」
抵抗しようと触手を伸ばすとセイバーで切り落とし、摘出しようと手を伸ばす。
『キィイィイイイイイイ!!』
鷲掴みされたインベーダーは、奇声を上げながら抵抗する。そして、逆にゼロに寄生しようと体の一部をかぎ爪にしてくる。
「今すぐ、カーネルの体から引きずり出してやる!グッ!?」
その時、ゼロの首を何かが掴んだ。よく見るとそれは先ほど切断した左腕であちこちから足を生やしていつの間にか接近していたのだ。
「なっ!?コイツは!?」
彼は、セイバーで攻撃しようとするがその前に本体であるカーネルと再結合、勢いよく壁に叩きつけられた。重い一撃にゼロは、ダウンする。
「グウウ・・・」
「マダダ・・・マダ終ワラセナイゾ!!」
カーネルは、ゼロを何度も叩きつけて壁を破壊する。それに呼応するように攻撃で大きく切り開いた傷口からインベーダーが無数に触手を伸ばしてゼロの体を貫いた。
「グアァアア!?」
「「「ゼロ!?」」」
ダメージを受けて吐血するゼロを見てエンカーたちは、声を上げる。カーネルは、倒れた彼を掴み上げるとサーベルを構えてとどめを刺そうと動く。そこへ今まで攻撃を躊躇していたアイリスが動き出す。
「やめて兄さん!」
彼女は、セイバーを展開して斬撃を飛ばす。声に反応したのかカーネルの動きは一瞬止まり、ゼロを掴んでいた腕をまんまと切断されてしまう。
「グッ。」
ゼロは、掴まれている腕を強引に引き剥がして放り投げる。腕は再びインベーダーの姿になって威嚇をするがバスターの光弾で吹き飛ばされ動きを止めた。カーネルは、無言でアイリスの方を見る。
「・・・・」
「兄さん?」
「アイ・・・リス?」
「そうよ。私よ、アイリスよ。兄さん。」
僅かに意思があると感じ、アイリスはセイバーを収めてゆっくりと近づきながら対話を試みる。
「アイリス・・・・ショウグン・・・・ジェネラル将軍ハ・・・“レプリフォース”ハ・・・ドウシタ?」
「えっ?」
カーネルの問いに彼女は、思わず声を出す。意識を乗っ取られているのか彼の記憶はゼロとの戦いを最後に断片的に途切れているらしい。つまり、ダブルの工作で宇宙港が破壊されたことも、自分を庇って重傷を負ったことも覚えていないようだ。
その様子を見てゼロは、困惑する。
「アイツ・・・自分がアイリスを庇ったところから何も覚えていないのか?だとすると今のカーネルは、レプリフォース・・・・軍人としての誇りを第一に考えていた頃のカーネル・・・・。」
「ドウナンダ?アイリス・・・・ショウグンハ・・・・“レプリフォース”ハ勝利シタノカ?」
カーネルは、妹の目の前まで来て再度問いかける。アイリスは、真実を告げるべきか悩むが今も兄の体を巣食うインベーダーの姿を見て告白することを選ぶ。
「・・・レプリフォースは・・・・ジェネラル将軍を始めとする士官の多くを犠牲にして負けました。」
「!?」
「将軍は、自らの過ちを認めて地球を救うべく、最終拠点である戦闘衛星の動力炉に特攻して亡くなりました。」
「馬鹿ナ!?ショウグンガ!我ラ“レプリフォース”ガ負ケルナドアリエン!!」
「事実です!兄さんはあの宇宙港でゼロと戦った末に自ら投降しました。そして・・・私を庇って死んだんです。」
「軍人デアル私ガ死ヌナド!!」
「兄さん・・・・兄さんはもうあの時・・・あの戦いの中で死んだの・・・・」
「嘘ダ!!」
彼女の口から出る真実にカーネルは、動揺する。かつて地上最強の軍隊と呼ばれていたレプリフォースの敗北、増してや自分が既に死亡したことを告げられたのだ。無理もない。
「嘘ダ嘘ダ嘘ダ嘘ダ嘘ダ嘘ダアアアアアア!!」
「兄さん!兄さんはもう自分のことを責めなくていいの!!だから」
「ウゥ・・・・ウゥウ・・・・オマエ・・・・“アイリス”ジャナイナ。“ニセモノ”デコノ私ヲ騙ソウトシテイルノダナ!!」
自暴自棄となったのか彼は、自分の妹を偽物として認識し、顔を夜叉のように顰める。
「違う!私は・・・」
「黙レ、“ニセモノ”!!アイリスハ・・・・“ホンモノノアイリス”ハドコダァアア!!」
「ブッ!?」
怒りのよって急速に肥大化した左腕の拳がアイリスの顔に激突。彼女は勢いのまま吹っ飛ばされる。
「いかん、このままだとあのお嬢ちゃんやられるぞ!?」
「そうは言っても俺たちはこのデカブツを相手にするので手一杯だ。」
パンクの言葉に対し、バラードは巨大インベーダーと対峙しながら言う。強固な装甲を誇っていたジェネラルの一部を取り込んでいることもあってエンカーの放つゲッタービームに対して動じる様子もなく、寧ろ元気になってしまっているようにも見える。
「クソ、図体がデカいせいでビームを食い物にしていやがる!」
「エンカー、これじゃ埒が明かない。あれをやるぞ!」
バラードの合図とともに三人は並び、パンクが両腕を床に突き刺して体を固定させる。同時に下半身の先端が開き、ビーム砲が露出する。続いてバラードとエンカーが体から供給ケーブルを出して互いの体に接続させる。
「三人のゲッター線をパンクのビーム砲に収束させる。」
「いくらデカブツでもこいつを喰らえば腹下して倒れるだろう。」
「俺たちもエネルギーを消耗して動けなくなるがな。」
ビーム砲の方針が緑色に発光し、巨大インベーダーが動揺するほどに集約していく。
「喰らえ!大出力ゲッタービームだ!!」
エンカーの掛け声と同時にビームは放たれ、巨大インベーダーに命中する。インベーダーの体は、大出力のゲッター線を吸収しきれず、飽和状態を起こして溶解。ジェネラルの装甲諸共消滅していく。
「ふう、なんとか仕留められたな。」
「安心している暇はないぜ。早くゼロとアイリスを・・・・グッ!?」
バラードが言おうとした矢先、三人は急に動けなくなる。
「やっぱし、エネルギーの過剰消費で動けなくなったか。嫌なんだよな、毎度しばらく動けなくなるのは。」
三人が動けないでいる中、カーネルはアイリスを壁際に追い詰めて殴り続けていた。
「“ニセモノ”メ!本物ハ、本物ノ“アイリス”ヲドコヘヤッタ!!」
「・・・違う・・・私は・・・偽物なんかじゃ・・・」
何度も殴られたせいでアイリスの顔はひどく腫れ上がっていた。それでも彼は攻撃をやめず、足を掴み上げて睨み付ける。
「モウ一度言ウ。私ノ、私ノ妹“アイリス”ハドコダ!!」
重い一撃が腹部に直撃する。体がダメージに耐えきれず、彼女はその場で吐血。追撃を喰らうたびにその量は多くなっていった。
「吐ケ!居場所ヲ!!ドコダ!教エロ!!」
最早返事をする気力もなくなったのかアイリスは、ピクリとも動かなくなる。カーネルは貴重な手掛かりが失われたと更に怒り狂い、彼女を床に叩きつけてとどめを刺そうとサーベルを突き立てる。
「・・・・・」
「死ネ、“ニセモノ”!!」
サーベルを振り上げて彼は、首を切り落とそうとする。それを見てパンクは、無理してでも助けようと動こうとする。
「やべえ!このままだとあの娘の首が斬り飛ばされるショッキングな事態になっちまう!?」
「とは言っても、エネルギーが最低限回復するまでは満足に動くこともままならないぞ。くそ、ビームが撃てない。」
エンカーは、腹部のゲッタービーム砲を展開するがエネルギー不足のため不発に終わる。カーネルサーベルは、抵抗できない彼女の首元へと迫っていくが寸でのところで別のビーム刃が受け止めたことで未然に防がれる。
「ンン!?」
何事かと顔を上げるとそこには、パートナーを傷つけられたことに激情しているゼロの姿があった。
「ゼロ・・・」
先ほどと打って変わって彼から発せられる途轍もないプレッシャー対してカーネルは、思わず身を引く。ゼロは気を失っているアイリスを抱き上げると睨みつける。
「カーネル・・・敵に操られたとはいえここまでするほど落ちぶれたのか。錯乱していたとはいえ、妹であるアイリスを偽物呼ばわりした上にここまで傷つけて・・・・本来のお前ならこんなことをしないはずだ。」
「“レプリフォース”ハ敗レルコトハドアルハズガナイ!!アイリスモソレガ分カルハズダ!!」
カーネルは、サーベルから衝撃波を放つ。インベーダーの寄生による性能向上により衝撃波は、全弾二人に命中するが煙が晴れるとそこにゼロの姿はなく、慌てて辺りを見回すとエンカーたちのところへ行って気を失っているアイリスを託していた。
「すまないが彼女を頼む。」
「お、おう。」
ゼロは、彼女を任せるとセイバーを再度展開してカーネルの元へと向かう。その目を見てバラードは何かを察したのか声をかける。
「殺れるのか?アイツを。」
「・・・・」
「彼女の兄妹なんだろう?敵に操られているとはいえ、お前にとっても義理の兄弟みたいなものだ。」
「元を辿ればアイツをあんな怪物にしてしまったのは俺のせいでもある。ダブルの暗殺から守ることができれば今もレプリフォースの第一線で動いていたのかもしれない。だが、今のアイツは過去に取りつかれている。だから、目を覚まさせなければならない。」
「・・・倒せば何言われるかわからんぞ?」
「しばらく口を聞いてくれないかもしれないな。」
二人が向き合って対峙する。カーネルも動揺が収まったのか彼を前に構えだした。最早言葉では語り合えない。
「ゼロ・・・・」
「さあ、カーネル。本物のアイリスに会いたいなら俺を倒してみろ。お前が本当にカーネルならな。」
「ワタシハ“本物”ダァアア!!」
カーネルは、高速移動ではゼロの懐に入り込んで斬りつける。それに対し、ゼロは飛水翔で威力を最小限に抑えて旋墜斬を放つ。
「クッ!」
「どうした?傷つけられたことで怖気づいたか。アイリスが受けた仕打ちはこんなものじゃなかったぞ。」
「クオォォオオオ!!」
ダメージを受けたカーネルは、体内放電を起こして床一帯に電流を流す。ゼロは空円舞で空中に逃れて斬光輪を連続で飛ばしていく。光輪は各方面に回り込んでから体を斬りかかるが体内に潜んでいるインベーダーの攻撃で破壊される。
「飛び道具じゃ引きずり出せないってわけか。ならば・・・・」
「イクゾォオオ!!」
触手が戻ると同時に二人の剣の斬り合いが始まる。ビームの刃がぶつかり合うことで火花が飛び散り、強化された腕力により、ゼロが力に押されていく。
「グウウウウ・・・・」
「うぅう・・・そこまで本物の彼女に会いたいか、カーネル。」
額がサーベルの刃で今にも焼き付けられそうになる中でゼロは、カーネルの顔を見ながら言う。
「ソウダ・・・・アイツハ常ニ平和ヲ愛シテイル心優シイ奴ダ!!ソンナアイリスガ戦場デ・・・コノ私ニ武器ヲ向ケテクルハズガナイ!」
「それで偽物扱いしたのか?・・・だとすれば、今のお前の目が濁っているぞ。アイリスは、そんなに柔な女じゃない。」
「ナニ?」
カーネルは、押されているにもかかわらず真剣な眼差しで自分を見るゼロに対して疑問をぶつける。
「アイツは、確かに優しく、平和を愛している。だが、俺たちと行動しているうちに彼女は優しさだけじゃ、平和を望んでいるだけじゃダメなんだと理解して自分もその未来を創るために戦う道を選んだ。それは同時にお前の魂を忘れないためでもある。レプリフォースの戦いが無意味で悲惨な戦争で終わらせないために。」
「グ、グウウ・・・」
「それだけじゃない。彼女は、こんな俺を支えるために自らの体を改造することも躊躇しなかった。どれだけ危険な目にあっても共に歩むことを決めてくれたんだ。最初こそは、よかったのかどうか悩んでいたが・・・・今の俺がここにいられるのもその支えがあったからこそだ。例え危険な道になろうとも頑なにやめようとしないのはお前譲りだ。そうだろ?」
「グ、グアアァアア!?ガアアア!!」
ゼロの言葉と自分の記憶の食い違いがあるのに気付き始めたのか、カーネルはサーベルを落とし、頭を押さえながら苦しみ始める。それに感づいたのか胸部に潜んでいるインベーダーが彼の記憶を修正しようと触手を伸ばす。
ゼロはその隙を見逃さず、本体の目にセイバーを突き刺し、触手を左手で抑えた。
「キイィイ!?」
「さっきは激情してうまく引きずり出せなかったが今度はそうはいかないぞ。お前にこの男の体は相応しくない。」
セイバーのカードリッジのリミッターを外し、出力を最大に上げる。ゲッター線の出力が急上昇したことにより傷口からグジュグジュと音を立てながら肉体の崩壊が起こり始め、インベーダーは悲鳴を上げる。
「キシャアァァアアア!?」
インベーダーは苦痛のあまり、触手でゼロの体を拘束しようとする。ゼロは、本体をボディから引きずり出そうとするがゲッター線の出力が足りないのか抵抗する力が強くて引き剥がせない。
「クッ、ゲッター線の出力が足りないのか。これではカーネルからこいつを引き剥がすことができない!!」
「グウゥウ・・・ゼロ・・・・」
苦しんでいたカーネルは、意思とは関係なくゼロを掴もうと腕を伸ばす。このままでは引きずり出す前に止められてしまうと彼は焦ったが背後からもう一つのセイバーがインベーダーを突き刺した。
「ギャアアアアァァ!!」
「!?」
ゼロが後ろを見るとそこには気を失っていたはずのアイリスがセイバーを突き立てていた。
「アイリス・・・」
「ゼロ、私も一緒にやる。もう、兄さんを楽にさせてあげたい・・・・。」
彼女は、傷つけられたことよりも敵の傀儡として利用されている兄をこれ以上苦しませたくないという思いの方が強かった。インベーダーの体は進化することで耐えきろうと計るがゲッター線を纏ったセイバーが二本になったことにより再生が追い付かなくなり、崩壊が加速していく。
「グルワァァアア!!」
「・・・アイリス。そうだな、なら一緒に終わらせよう。カーネル、痛みは一瞬だ。もう一度、今度は俺たちの手で眠れ。」
二人のビーム刃が重なった大出力のビームサーベルと化し、体内に巣食っていたインベーダーは細胞を一片残すことなく消し飛ばされる。
「キィイヤアァァァァ!」
消滅すると同時にカーネルの胸部には大きな風穴が空き、支配から解放された彼は力なく崩れ二人に抱きかかえられる。
「カーネル・・・・すまない。また、お前を。」
「兄さん・・・・」
カーネルを壁に寄りかからせるとアイリスは、彼の手を優しく握る。インベーダーがいなくなったことで支配からは脱したが再び兄を死に至らしめることになった。それが何よりも辛い。後ろからエンカーたちは、複雑そうに見つめる。動力炉の代役を担っていた輩が排除されたことで目の前にいる男は再び屍に戻った。もう二度と動くことはない。
と思われた。
「う、うぅう・・・・」
手が僅かに動き、彼女の手を握る。顔を上げるとそこにはカーネルが目を開けて自分たちのことを見ていた。
「あ、アイリス・・・」
「兄さん?本当に兄さんなの!?」
動力炉なしにもかかわらず、動いている彼にアイリスは驚く。それはゼロも同じで彼は、目の前に来る。
「カーネル。お前、俺たちのことが分かるのか?」
「意識を・・・ほとんど封じられていたが僅かながらお前たちを襲っていたのは・・・覚えている。す、すまない・・・ことを・・・したな・・・・ウグッ。」
心臓に当たる部位がないことでカーネルは弱りだしていた。パンクは三人の前に来て供給ケーブルを差し出す。
「このケーブルを彼に繋げるんだ!そうすれば、応急処置だが新しい炉心を組み込むまで持たせられる。」
「そうか。なら・・・」
「待て。」
カーネルは、ゼロがケーブルを受け取って繋げようとするのを止める。
「どうしてだ?」
「お前たちが排除した・・・あの生命体は、そのエネルギーを栄養源として増殖を繰り返しているだけじゃない。寄生した対象と同化することで成りすまして他の物を徐々に乗っ取っていく習性があるんだ。今は私の意識が戻っているが・・・・恐らく、また活動を再開する。」
「なら、ジジイの元へ連れていく。ジジイならお前に新しいボディをくれるはずだ。頼むのは癪だが・・・お前を助けるためだ。躊躇わない。」
「ゼロ・・・私は一度役目を終えた存在だ。この世界に生まれたものにはすべて役割が与えられている。人間とレプリロイド・・・いや、有機物や無機物はその与えられた役割を全うすることでこの世界が成り立っているんだ。私とジェネラル将軍・・・他の同志たちも役割を終えてあるべき場所へと戻っていった。」
「兄さん、何を言っているの?今のレプリフォースにだって兄さんが必要なはずよ。」
「フクロウル参謀、レッドがいるなら・・・心配はいらない。同じ失敗を経験に持つ彼らなら・・・・過ちは繰り返さないだろう。」
カーネルが穏やかな顔で答えるのを聞いてゼロは、違和感を感じる。今までの会話のやり取りで現在のレプリフォースについてのことは一切喋っていないはずだ。レッドが復帰したことについても何故知っているのかわからなかった。
「兄さん。お願い、生きて!兄さんがもう一度死ぬなんて私には・・・」
「アイリス、私は死ぬんじゃない。元の形に戻るだけだ。この姿で生まれる以前の状態に。」
「えっ?」
「かつての私ではわからなかったが・・・・一度命を落とした時・・・今こうしている瞬間にもわかってくるんだ。何故この星に生命が溢れたのか、我々レプリロイドが争い合うのか・・・・・」
「カーネル、しっかりしろ。今、ジジイに連絡する。正気を保つんだ。」
ゼロは、弱っているせいでカーネルが正気を失いかけているのだと考えた。かつて自分も大破したときに意識が朦朧とした経験がある。だから、ここで何とか踏ん張らねばならない。だが、カーネルは首を横に振って否定した。
「私は冷静だよ、ゼロ。こうしてお前たち二人の顔を見ることができただけでも感謝している。おそらく、これから先に起こるであろう大きな試練も乗り越えることができるだろう。」
「試練?どういうことだ。」
「もうあまり時間がない・・・・間もなく外では奴らが持ち込んできた宇宙怪獣が第二フェーズへと成長するはずだ。エックスたちが真ゲッターの元にたどり着くにはまだ時間がかかる。お前たちは急いでネオゲッターに乗り込むんだ・・・・二つの炉心を渡してはならない。」
「なんだと!?」
「Dr.ワイリーは破壊をしようとしているがドラゴンと真ゲッターの炉心がこの宇宙の命運を握っている・・・・何としても守り切れ・・・」
カーネルは、そう言うと目を閉じる。アイリスは、再び亡骸となった彼を抱きしめて泣くがゼロはふと後ろを見ると驚愕な光景があった。
そこには先ほど息を引き取ったカーネルが立っており、すぐ近くには向かえとばかりにジェネラルがいたのだ。
「ジェネラル・・・」
「えっ?」
ゼロの反応でアイリスも顔を上げてみる。ジェネラルは二人を見ると腕を動かして通路の先を指さす。ネオゲッターロボを収納したクジラがある格納庫がある方角だ。
「俺たちに行けと言うのか?ジェネラル。」
ジェネラルは、無言で頷くとカーネルと共に姿を消す。二人は現実離れした現象にしばらく呆然とするが衝撃で天井が崩れてきていることに気が付き、現実へと引き戻される。
「急ごう。こうしている間にも外の事態が悪化している。」
「えぇ。・・・・ゼロ、さっきのジェネラル将軍と兄さんって幻覚だったのかな?」
走りながら彼女は、消えた二人のことについて聞く。ゼロにも原因は分からなかったが少なくとも偽物ではないことは確かだと何故か直感していた。
「わからない。しかし、俺たちがやるべきことを教えようとしていたのは事実だと思う。」
「・・・そうだよね。兄さんや他の人たちのためにも止めなくちゃ。」
その頃、真ゲッターの格納庫では最終調整が完了しようとしていた。
「よし、後もう少しで完了する!」
「でも、大丈夫なのかコイツ?確かに修繕こそしたがほとんど作った当時のまんまだ。動いた衝撃で内部フレームに亀裂が走るとかするんじゃないか?」
「その辺は・・・ライト博士と神さんの腕を信じよう。俺らにできることはこの作業を終わらせることだ。」
作業用のゲッターロボたちは、パネルを操作しながら拘束具で固定された真ゲッターの調整を急ぐ。
「最終調整完了。後は拘束具を解除・・・」
「残念ながらそうはいきませんよ。」
「「「!?誰だっ!?」」」
ゲッターロボたちが上を見上げるとどこから侵入したのかインベーダーを率いたイレギュラーたちが現れ、襲撃を受ける。
「うわっ!?」
「全員物陰に隠れろ!!」
彼らは作業を中断して各自柱やコンテナの背後へと隠れる。周囲の敵を排除したのを確認するとオクトパルドを始めとする数体がその場に降りてきた。
「ふむ、どうやら最終調整まで完了してしまっているようですね。できますか?」
「おう、任せときな。天才のプレイヤー様にかかればこんな旧世代のロボットを掌握するなんて朝飯前よ。」
彼の問いに対し、メタルシャーク・プレイヤーは笑いながら答えて端末の操作を始める。
「では、念のため保険も付けときましょう。ミジニオンさん、これを。」
「ホイホ~イ~!なんかプレイヤーに役割持ってかれて面白くないけど失敗したとき笑えるからセットしておくぜ~。」
インフィニティー・ミジニオンは、オクトパルドから時限爆弾を受け取るや分裂して真ゲッターの各部へと設置に行く。
一方、地上ではD2部隊が迫りくるメカザウルスを迎撃し、エネルギーを消耗しながらもなんとか防衛線を保っていた。
「神さんからの連絡は?これ以上戦線を維持するのは無理だぞ。」
「敷島博士が防衛システム『クジャク』の展開に入った。後は数分の辛抱だ。」
「もう、ゲッターエネルギーの残量が心許ねえ。早くしてくんねえかな?」
彼らは全機ドラゴンの形態へとなり、少しでもエネルギーの消耗を減らすべくマシンガンで応戦する。接近してくるメカザウルスたちは体を次々と撃ち抜かれてその場に倒れていく。
その中で一体奇妙な個体がいた。
トカゲや亀のような体に蜘蛛の手足の生やしたようなその個体はD2部隊が破壊したメカザウルスの残骸を貪り、まるで味方を餌としか見ていないような行動を取っている。
D2部隊も最初こそは一緒に破壊しようとしたものの逃げ足が速い上に他と比べて積極的に攻撃してこないため、後回しにしていた。
だが、そのメカザウルス?は、残骸を捕食していくにしたがって徐々に巨大化していき、膨らんだ胴体部の外皮に亀裂が入り始めた。
「おい、アイツさっきよりも馬鹿みたいにデカくなってねえか?」
「まさか。」
「いや、見ろ!奴の体に罅が!?」
彼らは、この時自分たちの判断が甘かったと悟った。
メカザウルス?の胴体部の外皮が剥がれるとそこには人型の上半身が生えており、目から怪光線を発射しながら消耗しているD2部隊に襲い掛かってきた。
最後に出てきた敵、知っている人そんなにいないと思う。
エンカーたちがやった攻撃は石川先生が書いたチェンゲの前日譚「クレーターバトル」に出てきたものです。